絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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彼の片想い**

キスしたい。3

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「……美夜ちゃん、明るい道を通って帰ってね」
平静を装って声をかける。
振り仰ぎながら返事を返す美夜ちゃんが、その近さに驚いたのか距離をとった。
自分から離れようとするその仕草に、一瞬だけ黒い感情が胸を占める。
高校の時から好きなそいつってどんなヤツ?
今でも会う機会があるの?
そう問い詰めてしまいたくなる。

たまに会うサークルの活動時と飲み会。
濃厚だけど、あまりに短い部屋での逢瀬。
それ以外はほぼ講義もかぶっていない。
他の時間に美夜ちゃんが誰と会い、何をしているのかなんてすべてわかるわけではない。
映画館や美術展を観にいっている話を聞くが、そういえば誰かと一緒なのかは把握していない。
美夜ちゃんがあまり目を合わせないように最小限の返事だけして、そのまま、じゃあねと急いでその場を離れる。
知り合いと挨拶を交わしながら駅へと急ぐ美夜ちゃんに、とりあえず後で会えるからと自分を落ち着けた。

「ねー、りこ。本当に高校の時は美夜ちゃんと話したことないの?」
山田先輩は未だ美夜ちゃんの想い人を諦めるつもりはないらしい。
「私は美夜ちゃんのこと知ってましたけど、確かに話したことはなかったですね」
りこちゃんから相手を聞き出すのは無理そうだ。
「でも……」
そう言いながらチラリとこちらに視線を流す。
心当たりがあるのかと、思わず山田先輩を押しのけてりこちゃんにつめ寄ろうとした。
ちょうどその時、他のメンバーが二次会についての確認にきた。
一旦諦めて、二次会の店に流れる。
イラついて、飲みすぎないように自戒しないと。
早く美夜ちゃんと二人きりで会いたい。
それから、他の男の跡がないかを丹念に調べなければと決意した。

ふと、友人と話しながら前を歩く後輩が目に入る。
「美夜先輩は?もう帰った?」
映画のチケットをチラつかせていたのを思い出した。
美夜ちゃんに直接『美夜先輩』なんて声をかけているのは聞いたことがないので、いない時にだけ呼んでいるのだろう。
キョロキョロしながら出した映画のチケットは、明日から公開のものだ。
美夜ちゃんが好きな監督を選ぶあたり、なかなか本気のようだ。
こちらも警戒しておかなければと気を引き締めた。

『今日は遅くなるかもしれない』

苛立ちながら美夜ちゃんにメッセージを送信した。
いつも美夜ちゃんを追いかけて、二次会の途中で抜けるのをついに見咎められた。
せめて二次会までは見届けなければならない雰囲気だ。
時間を確認すると、まだかなり早い。
あわてて次いでメッセージを打つ。

『でも、会いたい。待ってて欲しいな』

『今日は帰るね』なんて返ってきては困る。
僕がどんなに今日を楽しみにしていたか、美夜ちゃんは知らないだろう。
わりとすぐ、カフェで待つと返事が来た。
安堵したものの、すぐに心配になる。
飽きて外に出たりしたらすぐに変な輩に絡まれるかもしれない。
駅からすぐの利用者が多いあの店のことだろうから、そこにいてもらう方が安心だ。
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