絶対、イヤ。絶対、ダメ。

高宮碧稀

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閑話*

りこちゃんはやさぐれる。2

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怪しい……そう思って、注意して見ていると、どうやらサークルの飲み会の後に逢引してるみたい。

何その秘密の恋!
……ちょっとだけうらやましい。

最近の美夜ちゃんは、いつも二次会に参加せずに帰る。
坂本くんは、二次会の途中にふらりといなくなる。
そして数日後にチラッとのぞく美夜ちゃんのうなじには、新しく上書きされた独占欲の印。
跡を残すことを承諾してるとは思わないけど、恋人のような行為自体は許してるらしい。

美夜ちゃんが高校生の時からずっと、今も好きだっていう人は知らない。
でも……今好きな人は、間違いなく坂本くん。
じゃあ、それはとっても簡単なこと。
坂本くんのこと、高校生の時からずっと好きなのだ。
二人は、何年も両想いを拗らせているのだ。

坂本くんは、秘密にしているのが不満らしく、毎回きっかりうなじにキスマークをつけている。
美夜ちゃんは気づいていない。
気づいてるなら、こんなに無防備に振舞わないもの。
髪で隠れる位置だけど、一緒にいる時間が長ければ目にする機会はたくさんある。
でも、美夜ちゃんからは見えにくい位置だ。……卑怯者だな、坂本くん。
その様子からしてたぶん、隠したがっているのは美夜ちゃんだけだと思う。
そして、美夜ちゃんが頑なな理由は、きっと。

「……未だに坂本くんが私を好きだなんて勘違いしてるの、五十嵐くんだけだよ」

そう。絶対五十嵐くんの余計な立ち回りのせいに違いない。
馬鹿げた勘違いをしているのは、今となっては五十嵐くんくらいだ。
あと、女の子では美夜ちゃんと、綾先輩。
でもそれは口に出さなかった。
彼氏さんは鋭いのに、綾先輩はできる女のようでとても鈍いのだ。
「りこちゃーん!そんなつれないこと言わずに拓眞のこと考えてやってよ!長年の片思いなんだから」
その無神経な一言に、胸の辺りがモヤモヤした。
長い想いの方が、優先されるべきだとでもいうの?
歴史が浅い気持ちなら、踏みにじってもいいの?

「もしそうだったとしても、余計なお世話」
怒ってもいたけど、それ以上に瞳が揺らいだのであわてて立ち上がった。
五十嵐くんの笑顔を、張り倒してやりたい。
引っ掻いて、噛みついて、消えない傷を残してやりたい。
こんな意地悪な気持ちなんて、初めて味わう。
「トイレ行ってくる。坂本くん、五十嵐くんの誤解ちゃんと解かないと、後悔することになるからね」
五十嵐くんの誤解は、そのまま美夜ちゃんの勘違いに繋がってる。
坂本くんは、美夜ちゃんを繋ぎ止めるのにいっぱいいっぱいなのか、そんなことには気づいていない。……ちょっとだけ、ザマミロだ。

私と美夜ちゃんが仲良しで、坂本くんと五十嵐くんがつるんでる。
坂本くんは美夜ちゃんと少しでも一緒にいたくて、そして、五十嵐くんは私と坂本くんをくっつけようとする。
なんとなく4人になることも多い。
その間、五十嵐くんはずっと坂本くんが、いかに私をずっと好きかをからかってばかりいる。
きっとそのせいで、美夜ちゃんはずっと坂本くんが私を好きだと勘違いしたままなのだ。
他の男の子には牽制するくせに、肝心の美夜ちゃんにアピールできないヘタレな坂本くんのせいでもあるのだけど。

立ち上がって、振り向かずにお手洗いを目指す。
五十嵐くんは、私が怒ってたって悲しんでたって、笑顔で坂本くんの隣に座ってるんだろう。
どうか、お手洗いにたどり着くまでに涙がこぼれませんように。
お化粧ポーチを忘れたけど、ごまかせるかな…なんて考える。五十嵐くんに泣いたのを気づかれたくない。

私が、五十嵐くんに『好きです』と告げてから48時間。
返事なんかしてくれなくて、ただ『俺より拓眞の方がいい男だよ』なんてはぐらかした五十嵐くん。
バチがあたればいいのにって、そう思う。

ぐちゃぐちゃに傷ついた私の想いは、まだかさぶたにもなっていないんだから。
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