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彼女の片想い****
絶対、ヤダ。4
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4階から降りてきたエレベーターには、懐に小さなチワワを隠したお姉さん。
『しまった』みたいな顔をしたから、気づかないふりで会釈だけして乗り込んだ。
犬ってあんなに大人しくしていられるのね、と感心する。
内緒でペットを飼ってる人もいるのかと、自分もちょっと想像してみた。
犬や猫、ウサギにフェレット、ハムスターにインコまで……あれこれ浮かべて諦める。
坂本くんとりこちゃんを思うたびに陰鬱な気持ちになる私を、必死に癒す健気な小動物。
そんな役回りを、可愛いモフモフにさせられない。
そのうちクンッと上下に1回揺れて到着した3階で、扉が開くのを待った。
部屋の前で、ちょうど鍵を差し込もうとした時に、隣の部屋のドアが開いて隣人のお兄さんが顔をのぞかせた。
2人してビクッてなった。
ちょっと迷って『こんばんは』じゃなくて『おはようございます』と告げた。
お兄さんも、びっくりしたのが恥ずかしかったのか……バツが悪いような顔で『どうも』なんて返してくれる。
コンビニにでも行くのか、そのまま、ラフな格好で出かけるようだった。
意外とこの時間の方が人に会ってびっくりする。
チワワのお姉さん。隣人のお兄さん。道すがらも、早すぎる犬の散歩やジョギング中の人、2人とすれ違った。
坂本くんがいつも心配してついて来たがるけど、今くらいの時間ならかえって人の目があるから安心なんじゃないかと思ったりして……その考えを打ち消した。
なんで急に意欲的になったのかはわからないけど、手加減しないと宣言されてしまったから恐ろしい。
これ幸いと、毎回この時間まで鳴かされては体力がもたない。
ジョギングとまではいかなくても、真面目にウォーキングを考えてみよう。
なにせ、あらゆるインドア活動をこよなく愛するサークル所属なのだ。運動不足は否めない。
玄関に入って鍵をかける。
それから坂本くんに到着のメッセージを送った。
『鍵をかけてから』というのは坂本くんから固く約束させられた一つ。坂本くんの方が防犯意識が高い。
狭い玄関で靴を脱いで、その壁に掛けてある猫のモチーフの防犯ベルをつついて『ただいま』とひとりごちた。
同じベルが、バッグにもついている。
本当に坂本くんは心配性なのだ。初めての一人暮らし。坂本くんからの引越し祝いは防犯グッズばかりだった。
ペットは当分、この防犯ベルの猫でいいかなって思いながら部屋のドアを開けた。
『無事についてよかった』
すぐに返事が来る。いつものことだ。
だいぶ迷って…
『これからは、最初のシャワーは譲れません』
それだけ送った。これからが、あと何回になるかはわからないのだけれど。
バッグとコートを片付けるうちに、短いメロディが届く。
『美夜の匂い好きだから残念だけど…極力仰せのままに。おやすみ』
……この小さな画面の中でも名前で呼び合うのは有効らしい。
いつもはここでやめてしまうやりとりだけど。文字で見る『美夜』の破壊力に、真っ赤になってしまった頬の仇を打ちたかった。
『おはようの時間だけど、おやすみなさい。拓眞くん』
そんな嫌味を送信して、改めて洗顔して着替えて。白み始める空と反比例するように深い眠りについた。
初めての『おやすみ』に。
文字で見る『拓眞くん』の破壊力に。
私よりも頬を真っ赤に染めて、坂本くんが眠れずにいたなんて
……もちろん知らないままだった。
『しまった』みたいな顔をしたから、気づかないふりで会釈だけして乗り込んだ。
犬ってあんなに大人しくしていられるのね、と感心する。
内緒でペットを飼ってる人もいるのかと、自分もちょっと想像してみた。
犬や猫、ウサギにフェレット、ハムスターにインコまで……あれこれ浮かべて諦める。
坂本くんとりこちゃんを思うたびに陰鬱な気持ちになる私を、必死に癒す健気な小動物。
そんな役回りを、可愛いモフモフにさせられない。
そのうちクンッと上下に1回揺れて到着した3階で、扉が開くのを待った。
部屋の前で、ちょうど鍵を差し込もうとした時に、隣の部屋のドアが開いて隣人のお兄さんが顔をのぞかせた。
2人してビクッてなった。
ちょっと迷って『こんばんは』じゃなくて『おはようございます』と告げた。
お兄さんも、びっくりしたのが恥ずかしかったのか……バツが悪いような顔で『どうも』なんて返してくれる。
コンビニにでも行くのか、そのまま、ラフな格好で出かけるようだった。
意外とこの時間の方が人に会ってびっくりする。
チワワのお姉さん。隣人のお兄さん。道すがらも、早すぎる犬の散歩やジョギング中の人、2人とすれ違った。
坂本くんがいつも心配してついて来たがるけど、今くらいの時間ならかえって人の目があるから安心なんじゃないかと思ったりして……その考えを打ち消した。
なんで急に意欲的になったのかはわからないけど、手加減しないと宣言されてしまったから恐ろしい。
これ幸いと、毎回この時間まで鳴かされては体力がもたない。
ジョギングとまではいかなくても、真面目にウォーキングを考えてみよう。
なにせ、あらゆるインドア活動をこよなく愛するサークル所属なのだ。運動不足は否めない。
玄関に入って鍵をかける。
それから坂本くんに到着のメッセージを送った。
『鍵をかけてから』というのは坂本くんから固く約束させられた一つ。坂本くんの方が防犯意識が高い。
狭い玄関で靴を脱いで、その壁に掛けてある猫のモチーフの防犯ベルをつついて『ただいま』とひとりごちた。
同じベルが、バッグにもついている。
本当に坂本くんは心配性なのだ。初めての一人暮らし。坂本くんからの引越し祝いは防犯グッズばかりだった。
ペットは当分、この防犯ベルの猫でいいかなって思いながら部屋のドアを開けた。
『無事についてよかった』
すぐに返事が来る。いつものことだ。
だいぶ迷って…
『これからは、最初のシャワーは譲れません』
それだけ送った。これからが、あと何回になるかはわからないのだけれど。
バッグとコートを片付けるうちに、短いメロディが届く。
『美夜の匂い好きだから残念だけど…極力仰せのままに。おやすみ』
……この小さな画面の中でも名前で呼び合うのは有効らしい。
いつもはここでやめてしまうやりとりだけど。文字で見る『美夜』の破壊力に、真っ赤になってしまった頬の仇を打ちたかった。
『おはようの時間だけど、おやすみなさい。拓眞くん』
そんな嫌味を送信して、改めて洗顔して着替えて。白み始める空と反比例するように深い眠りについた。
初めての『おやすみ』に。
文字で見る『拓眞くん』の破壊力に。
私よりも頬を真っ赤に染めて、坂本くんが眠れずにいたなんて
……もちろん知らないままだった。
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