65 / 73
【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
65話「砲撃の嵐」
しおりを挟む「みんな回避優先にゃん! 直撃喰らって耐えられるのはラノアぐらいにゃん!」
「私も無理!」
ユーナちゃんのからの通信で、私達は戦闘を一時中断、空から降ってくるであろう爆弾に備えた。
私達が戦っている場所を囲むように浮かぶ空中戦艦が狙いをこちらへと向けているのが分かる。お腹に響く、花火の打ち上げ音のような音が連続で響く。
「おいおい、いくらなんでもやりすぎじゃねえか?」
陰猫さんが言うとおりで、私は黒い物体が見えただけでも7~9個がこちらに撃たれたのを見えた。
「さすがに一旦退避です」
そう言いながら、私へと薙ぎ払った大剣をペン王ちゃんが戻しつつバックステップ。私も注意を前に向けながらも後ろへと下がる。
ユーナちゃんがここぞとばかりにダーツをスキルでばら撒いている。
私達が戦っていた円形広場の中央に爆弾が降り注いだ。
爆炎と土煙が連続で上がる。一部、ユーナちゃんがいた場所にも落ちたようだが、それを読んで彼女も避けたようだ。
「煙に紛れてまたあいつら来るにゃん! 砲撃は一定時間毎に撃ってくるから、その間に倒しきるにゃん!」
「時間かけたらそれだけあの砲撃に当たる可能性高くなるし、速攻で倒すで!」
「了解した」
「あと、忘れたらダメにゃん。これはチーム戦にゃん!」
私達が再び、中央付近で激突した。蔵人さんの刀を陰猫さんが受け止め、つなかんさんの槍をミリーが躱す。
そして私は。
「どきやがれです! お前の相手は隊長です!」
ユーナちゃんへと攻撃を仕掛けようとするペン王ちゃんへと斧槍を振った。
「行かせないよ」
金属音と火花が散り、ペン王ちゃんの大剣が私の斧槍を防ぐ。お互いに身体より大きい武器を振り回しているせいで、相手の身体に攻撃を当てるのが難しく中々ダメージを与えられない。
合間合間でユーナちゃんが援護射撃をしてくれるが、それも察知して躱す。
んーこれまでのプレイヤーより遙かに強い。
「ペンの! 邪魔を! するなです! 【氷連斬“南極”】!」
しびれを切らしたペン王ちゃんが赤く発光しながら、大剣による連撃を叩き込んできた。その剣先には小さな氷の粒を纏っており、斧槍でガードするも、その上からHPが削られていく。
「喰らいやがれです!【氷連斬“北極”】」
っ! スキル終わりの隙に攻撃しようとした瞬間にペン王ちゃんが再び赤く発光。
嘘、スキルの連続使用って出来るの!?
先ほどの違うモーションの連撃。同じように氷を纏っているせいで、ダメージを防げない!
何とか最後まで受け切れたものの、ダメージが結構痛い。
「ラノア、一旦退避して回復にゃん!」
そう言って、ユーナちゃんが飛び出してきた。
それと交代するように後ろに下がった私は素早くポーションを飲む。
その間に、ユーナちゃんがダーツを連射しながら、ペン王ちゃんの大剣を避けている。
ダメージは相変わらず微量だが、デバフが鬱陶しいらしく、ペン王ちゃんの苛立ちが見えた。
回復したのを確認すると、私は再びそこへと飛び込んだ。
「ありがと!」
短くそう言って、ペン王ちゃんの大剣を斧槍で弾く。
「やっぱり近距離は疲れるにゃん。そろそろ砲撃が来るから注意にゃん」
ユーナちゃんが後退しながら、別方向へとダーツを撃つ。
「ああもう! めんどくさいです!」
「あはは、そう簡単には負けないよ?」
デバフがもりもり入ったペン王ちゃんの動きが鈍くなる。素早さダウンのデバフを喰らっているせいだ。
私はその隙を見逃さず、斧槍による突きでちまちま削っていく。
こうすればきっと、彼女は苛立って……。
「どうしたの? さっきの連撃使いまくれば勝てると思うよ?」
「かっちーん! 黙りやがれです! だったら見せてやるですよ!」
「今度は受けきって見せるよ!」
そう言って防御の構えをする私に向かってペン王ちゃんがスキルを発動。
私は空で響く砲撃音を聞いて、大きくバックステップ。
「っ! 逃げるな!」
スキルモーション中は、動けない。
「砲撃、喰らわないといいね」
私は全力で後退。最初から受ける気なんてこれっぽっちもない。
空から——爆弾が降ってくる。
「しまっ——」
ペン王ちゃんの連撃スキルは本当に強い。
どうやってるかは分からないけど、スキルの連続使用も出来るし。
だけどあのスキルはモーションが長い。
ペン王ちゃんはスキルのモーションとスキルが終わってからの隙で、退避が遅れた。しかも何とか身体が動かそうとしても、素早さダウンのデバフのせいで普段よりも遅い。
なので、
後退しきれなかったペン王ちゃんに、爆弾が降り注いだ。
爆発と土煙の中でもHPゲージだけは鮮明に見えており、それが完全に削れて消えたのが確認出来た。
「ナイスにゃん! ラノアは意外と頭脳派にゃん!」
「意外って言うな! さてと……あの子を倒したからミリーか蔵人さんに加勢して……」
私はそう言いながらも、あの2人には目線を向けず、まっすぐ、向こう側にいるであろう相手を見つめていた。
「アキコ……アキコアキコアキコ……ようやく貴女と戦える……大丈夫かな? すぐに死なないかな? 壊れないよね?」
そうブツブツと呟きながら、悠然とこちらへと歩いてくる偽アキコ。
「じゃ、行ってくる」
「援護は任せろにゃん」
「私はいいよ。それよりもミリーと蔵人さんを助けてあげて」
「……了解にゃん。ご武運を」
「ユーナちゃんありがとね」
私は斧槍を構え直し、走る。
絶対に負けられない戦いが始まる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる