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二人台本↓
「お江戸の華」(比率:男2)約10分
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甚兵衛:♂
助芥、男:♂
*所要時間:約10分
ーーーーー
夜の道、背中に大量の刀を背負った男ーーー甚兵衛が、歌いながら歩いている。
※歌はオリジナルなので、思うままに歌ってください
甚兵衛「お江戸にゃ~華がなくっちゃなぁ~♪」
甚兵衛「きれぇな~華がなくっちゃな~♪」
甚兵衛「ねぇなら、俺様が咲かせましょ~♪」
甚兵衛「ぱぁ~と、きれぇな赤い華~♪」
甚兵衛「お江戸に華は~今日も咲く~♪」
お昼の街中。団子屋には、助芥という男が一人、店の外に出されたベンチに腰掛け、お茶を飲んでいる。
店の奥から、女性が団子を手に、助芥の前へと運んでいく。
助芥「ありがと、菊さん。では...。」
助芥は、団子を口に運ぼうとする。が、目の前にいる甚兵衛に、ジッと見られていることに気づき、手を止める。
甚兵衛「......。」
助芥「......。」
甚兵衛「......。」
助芥「...あの。」
甚兵衛「......。」
助芥「あの、すみません。」
甚兵衛「...ん? 俺のこと呼んだかい?」
助芥「なんですか? 僕に何か用ですか?」
甚兵衛「え? いやぁ、そこの店ん団子、ちょーーうめぇだろ? いいもん食ってんなぁとおもってよぉ!」
助芥「なら、あなたも食べればいいじゃないですか?」
甚兵衛「たべてぇのは山々なんだがな! 今、懐がちと寒くてよぉ~!」
助芥「そうなんですか、それは残念ですね。」
甚兵衛「あ~いいなぁ~~。俺も食いてぇ~なぁ~~!」
助芥「......。」
甚兵衛「あ~~! 団子がくいてぇぇ...。」
助芥「はぁ...菊さん! 団子、一つ追加お願いします。」
甚兵衛「おっ?」
助芥「ジッと見られて、さらにうるさくされたんじゃ、団子もまずくなってしまいます。」
甚兵衛「なんでぇなんでぇ! 素直に奢りますよって言えばいいじゃねぇかよ!」
助芥「あなたの団子を頼んだとは言ってないですよ。僕が二つ目食べたくて注文しただけかもしれないじゃないですか。」
甚兵衛「おいおい! それはねぇんじゃねぇの!? ここまで期待させといて、それはねぇって! それによぉ...!」
甚兵衛は、助芥に近づき耳打ちする。
甚兵衛「あんた、ここにいる菊ちゃんのことが好きなんだろ? 菊ちゃんにかっこいいところを見せる、いい機会だぜ?」
助芥「んなっ!?」
甚兵衛「よぉ、菊ちゃん! こっちこっち! この団子は俺のもんなのよ! ここにいる、かっちょいいお兄ちゃんが俺のためにって! いやぁ、こういう人と一緒になれると、あんた幸せになれると思うぜ!」
助芥「ちょ、ちょっと!?」
甚兵衛「つーことで! いただきまーーす!!」
助芥「はぁ...なんなんだよ...。」
甚兵衛「んん~~! うめぇ~~! やっぱここん団子はうめぇなぁ! ほらっ、あんたも食えって!」
助芥「あんた、一体なんなんですか?」
甚兵衛「ん? おれかい? 俺は甚兵衛って言うんだ! あんたは?」
助芥「僕は助芥って言います。というか、なんで僕が菊さんのことーーー」
甚兵衛「そりゃ見てたらわかるってぇの。あんた、ここ最近ずぅっとこの団子屋にきてるじゃねぇか。」
助芥「な、なぜそれを...!?」
甚兵衛「俺も好きでよ、よく来てっから! あれ、気づかなかったかい?」
助芥「全然気がつかなかった...。」
甚兵衛「あっ、俺が好きなのは団子であって、菊ちゃんじゃねぇからな! まぁ、菊ちゃんはべっぴんさんだからよ、いつでも大歓迎なんだけどな!」
助芥「あなたのような人に、菊さんは似合いません。」
甚兵衛「なんでぇ! そんなこと言うなよ~!」
助芥「はぁ...うるさい人だ...。」
甚兵衛は、助芥の隣に置いてある刀を、ジッと見つめている。
甚兵衛「......。」
助芥「なんですか、急に黙って? 静かだったりうるさかったりと、お忙しい人ですね。」
甚兵衛「あんた、いいもん持ってんねぇ。」
助芥「いいもん?」
甚兵衛「隣。」
助芥「隣? あぁ、この刀ですか? いいもんでもないですよ。そこかしこ歩いてる人たちがぶら下げてるのと一緒ですよ。」
甚兵衛「いぃや、俺にはわかる! そいつはいいやつだぜ!」
助芥「あなたは、鍛冶屋かなにかですか?」
甚兵衛「そこら辺ふらついてる、阿呆だ!」
助芥「ですよね、聞いた僕がバカでした。」
助芥は、ゆっくりと立ち上がる。
甚兵衛「もう行っちまうのかい?」
助芥「あなたと話すこともありませんし、では。」
甚兵衛「なぁ、おい!」
助芥「なんですか?」
甚兵衛「その刀、名はなんてゆうんだ?」
助芥「名? 刀に名前なんてつけるわけないじゃないですか。刀はただの道具ですよ。」
助芥「菊さん、お代はここに置いておきますね。また来ます。」
甚兵衛「...刀はただの道具、か。悲しいこと言うねぇ。」
甚兵衛「しかし、人は見た目じゃわからんもんだな。」
甚兵衛は、団子を口に放り込む。
夜中、助芥が一人、夜道をフラフラと歩いている。
助芥「......。」
助芥「...早く...早く、早く、早く。」
助芥「早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く!」
助芥「ダメだ、抑えられない...! でも、あの人はもうちょっと後にーーー」
助芥は、後ろに人の気配を感じる。
助芥「誰だ!?」
甚兵衛「よっ、元気してるぅ~?」
助芥「あんた、昼間の...!」
甚兵衛「どったのよ? 夜道を一人ふらふらしてよ。」
助芥「ただの散歩ですよ。あなたこそ何してるんですか?」
甚兵衛「俺は、ふらふらしてるだけだ。」
助芥「そうですか。早く帰った方がいいと思いますよ。」
甚兵衛「辻斬りが出るから...か?」
助芥「...そうですよ。知ってるならーーー」
甚兵衛「あんたもこんな時間に散歩って、危ないんじゃないの?」
助芥「僕は大丈夫ですよ。」
甚兵衛「なんで?」
助芥「僕は、強いですからね。」
甚兵衛「ほんとかよ~? 見た感じじゃ、あんた、ひ弱そうだぜぇ~!」
助芥「......。」
甚兵衛「ん? 怒った? すまんすまん!」
助芥「はぁ...あなたといると調子が狂う。」
甚兵衛「それは、褒めてんのかい?」
助芥「褒めてませんよ。」
甚兵衛「あっ、そうだそうだ。団子のお返し、少ないけど受け取ってくれや。」
助芥「え?」
甚兵衛は、銭を数枚、助芥へと投げつける。
甚兵衛「ほいっと!」
助芥「なっ!? くそっ、なんだ!? お金!?」
甚兵衛「おいおい、よそ見すんなよ。」
助芥「いつの間にっ!?」
甚兵衛は、助芥を蹴り飛ばす。
甚兵衛「よっと!」
助芥「がはっ!?」
甚兵衛「あんたの方が、菊ちゃんとは、にあわねぇと思うがねぇ。人殺しさん。」
助芥「(咳き込む)な、なんなんですか...!? 急に僕のこと蹴り飛ばして!? 僕になにか恨みでもあるんですか!?」
甚兵衛「おいおい、殺気ダダ漏れだぜぇ~? そういうのは、懐に隠してから言えよ。」
助芥「...いつから気づいてた?」
甚兵衛「あんたが団子屋に通い始めた時からだ。あんた、毎日毎日団子屋行くからよぉ、俺の財布が悲鳴あげちまって...。」
助芥「う、嘘だろ...そんな前から...!? な、なんで!? どうして気づいた!?」
甚兵衛「刀が教えてくれたよ。」
助芥「か、刀...? お前は何を言っている!?」
甚兵衛「刀っていうのはよ、なんのために存在してると思う? 人を殺すためのもんか? いいや、ちげぇ。」
甚兵衛「人を、守るためのもんだ。」
甚兵衛「刀っていうのは、そのためにつくられんだよ。なのに手前さんは、人を殺すことにしかつかわねぇ。」
甚兵衛「泣いてんぞ、刀がよぉ。」
助芥「泣いてる? 刀が? お前は何を言っている! 刀が泣くわけがないだろう! お前には聞こえるとでもいうのか!? 刀の声が聞こえるのか!?」
甚兵衛「あぁ、泣いてるぜ。こいつ。」
助芥「ぼ、僕の刀!? いつの間に!?」
甚兵衛「もっと大事に握ってやんなよ。刀も大事に握れねぇ奴は...女の手ぇ握っても、すぐ手離しちまうぜ?」
助芥「く、くそっ! なんなんだよ!? なんなんだよ、手前は!」
甚兵衛「......お江戸にゃ~華がなくっちゃなぁ~♪」
助芥「...は?」
甚兵衛「きれぇな~華がなくっちゃな~♪」
助芥「な、なんだよ...いきなり...?」
甚兵衛「ねぇなら、俺様が咲かせましょ~♪」
助芥「この歌...まさか!?」
甚兵衛「ぱぁ~と、きれぇな赤い華~♪」
助芥「お前、刀狩りの...!?」
甚兵衛「お江戸に華は~♪」
助芥「ま、待て! 待ってくーーー」
甚兵衛は、助芥から奪った刀で、助芥を斬る。
助芥「あぁぁぁぁ!?」
甚兵衛「今日も咲く~~♪っと。」
甚兵衛「...今まで、よく頑張ったな。お前、名前もねぇんだって? 俺がつけてやんよ。」
甚兵衛「今日から手前は...。」
数日後の昼。団子屋の前で、男がヒソヒソと噂話をしている。
男「おいおい、聞いたか? 出たらしいぞ...刀狩りの甚兵衛が...!」
男「...ん? 夜遊びできねぇって...お前は夜遊びやめねぇと、甚兵衛より先に華ちゃんに殺されるぞ。」
男「はっはっは! お前は、甚兵衛よりも華ちゃんに気をつけなきゃなぁ!」
団子屋に、甚兵衛がやってくる。
甚兵衛「よっ、菊ちゃん! 今日も可愛いねぇ~~! いや、団子まけてもらおうと思って言ってんじゃねぇよ! 今日は、たーーんまりと金はあるからよ! とりあえず、団子三つちょうだい!」
甚兵衛「...ん? こいつかい? いいだろ~! 最近のお気に入りでな!」
甚兵衛「ん? 名前? 仕方ねぇな、菊ちゃんには特別に教えてやんよ!」
甚兵衛「刀の名前は、助芥って言うんだ!」
応援ありがとうございます!
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