死に戻りの王子妃は今度こそ溺愛を逃さない

海辺ユジン

文字の大きさ
2 / 20

2

しおりを挟む
 リュカ・ガステアは孤独だった。商家の三男として生まれ、オメガの性を授かったその瞬間に、自分の生きる道は決められてしまった。
 
 リュカが生まれ育ったレイスーン王国は武力によって大きくなった国だ。近隣の小国を次々と吸収し、大国になるまでに至ったのは、他の国に比べてアルファの数が格段に多いからだった。

 この世界には第二の性と呼ばれるものがあり、アルファはその頂点に君臨する種だ。恵まれた頭脳、体格を持ち、全ての能力において他の種を圧倒する。
 その対の存在であり、繁殖能力に長けているのがオメガだ。男女共に妊娠出産が可能で、定期的に訪れる発情期ではアルファを誘惑するフェロモンを発する。アルファがオメガの項を噛むことでそれぞれの身体に刻まれた性印が番印へと変わり、二人は番関係となる。

 アルファとして生まれた者には必ず運命の番がいると言われている。互いに同じ性印を持つとされる、その存在は神からの贈り物(ギフト)と呼ばれ、王族が運命の番と出会えば、神に選ばれし者として国王の座を射止めることができる。
 レイスーン王国はアルファの国であり、オメガが生まれるのは非常に珍しい。従ってオメガ性を受けた者は家柄に関係なく王家に嫁ぐ習わしだった。

 リュカが第三王子であるベルナルドの妻となったのは、今から五年前のことだ。王太子の妻は伯爵家の長男で、少し前に男爵家の次男が第二王子に嫁いだばかりだった。貴族のオメガが続いた後に平民である自分が第三王子の妻となる。それだけでリュカは多少なりと胃を痛めたけれど、嫁ぐからにはうまくやるしかないと腹を括っていた。

こ れでも、故郷ではそれなりにモテたのだ。漆黒の長髪に、陶器のような白い肌。密度の濃い睫毛を震わせる、水分をたっぷりと含んだ大きな瞳。小さな忘れ鼻はいつもほんのり色づいていて、その下でたわわと実る唇は、果実のようにぽってり赤かった。
 こんなにもオメガ然としているオメガはそう見られないと、よく持て囃されたものだった。それほどまでに美しい自覚がリュカにはあった。だから、うまくやれると思っていたのだ。ただの商家の息子であっても、王子を陥落させられると。

 しかし予想に反して、ベルナルドはちっとも靡かなかった。

 ――『これは政略結婚だ。番関係を結ぶ必要は、必ずしもあるわけではない』

 婚礼の儀を終え、王子の閨で初夜を迎えようという時、ベルナルドはそう言い放ち、リュカを拒んだ。

 番になるには、オメガが発情期に突入している必要がある。周期的に自然発生は難しかったので、誘発剤を飲もうとしていたリュカは、この言葉にぐさりと胸を刺されたのだ。
どうやら我が夫は、自分と本当の夫婦になるつもりはないらしい。

 運命の番ではないからだろうかと、リュカはすぐに考えた。第三王子である彼を、自分は国王にしてやれない。きっと彼は、今後、運命の相手が現れた時に簡単に乗り換えられるように、リュカを番にしないのだ。きっとそうに違いない。

 ――そう、思っていたのに。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

国民的アイドルの元ライバルが、俺の底辺配信をなぜか認知している

逢 舞夏
BL
「高校に行っても、お前には負けないからな!」 「……もう、俺を追いかけるな」  中三の卒業式。幼馴染であり、唯一無二のライバルだった蓮田深月(はすだ みつき)にそう突き放されたあの日から、俺の時間は止まったままだ。  あれから15年。深月は国民的アイドルグループのセンターとして芸能界の頂点に立ち、俺、梅本陸(うめもと りく)は、アパートでコンビニのサラミを齧る、しがない30歳の社畜になった。  誰にも祝われない30歳の誕生日。孤独と酒に酔った勢いで、俺は『おでん』という名の猫耳アバターを被り、VTuberとして配信を始めた。  どうせ誰も来ない。チラ裏の愚痴配信だ。  そう思っていた俺の画面を、見たことのない金額の赤スパ(投げ銭)が埋め尽くした。 『K:¥50,000 誕生日おめでとう。いい声だ、もっと話して』  『K』と名乗る謎の太客。  【執着強めの国民的アイドル】×【酒飲みツンデレおじさんV】

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?

こたま
BL
オメガ男子の小島史(ふみ)は、ネットを中心に展開している中小広告代理店の経理部に勤めている。会社が国の補助金が入る婚活アプリ開発に関わる事になった。テスト版には、自社の未婚で番のいないアルファとオメガはもちろん未婚のベータも必ず登録して動作確認をするようにと業務命令が下された。史が仕方なく登録すると社長の辰巳皇成(こうせい)からマッチング希望が…

竜神様の番

田舎
BL
いつかX内で呟いた、 『えーん、えーん…💦 竜人の攻めが長いこと探してた番の人間くんを探して(半強制的)に結婚したのに、ツンデレどころかクーデレが過ぎてたせいで、ある日人間くんが「離縁します」と置き手紙残して失踪…! 後悔とブチギレしてる話がなきゃ掃除と洗濯できない😭😭』 という自分の愚痴から始まったツイノベもどきを、再構成と校正しました。 「番」とは何かも知らされず、 選択肢すら与えられなかった人間リオと、 大切にしている“つもり”だった竜人のナガレ。 ちゃんとハッピーエンドです。

妹の代わりにシロクマ獣人と真っ白婚!?

虎ノ威きよひ
BL
結婚相手が想像以上にシロクマでした!! 小国の王子ルカは、妹の代わりに政略結婚することになってしまった。 結婚の相手は、軍事大国の皇子のクマ獣人! どんな相手だろうと必ず良い関係を築き、諸外国に狙われやすい祖国を守ってもらう。 強い決意を胸に国を渡ったルカだったが、城の前にデンッと居たのは巨大なシロクマだった。 シロクマ獣人とは聞いていたが、初対面で獣化してるなんてことがあるのか! さすがに怯んでしまったルカに対してシロクマは紳士的な態度で、 「結婚相手のグンナルだ」 と名乗る。 人の姿でいることが少ないグンナルに混乱するルカだったが、どうやらグンナルにも事情があるようで……。 諸事情で頻繁にシロクマになってしまう寡黙な美形攻め×天真爛漫でとにかく明るい受け 2人がドタバタしながら、白い結婚から抜け出す物語 ※人の姿になったりシロクマ姿になったりする、変身タイプの獣人です。 ※Rシーンの攻めは人間です。 ※挿入無し→⭐︎ 挿入有り→★ ※初日4話更新、以降は2話更新

偽りの聖者と泥の国

篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」 自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。 しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。 壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。 二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。 裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。 これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。 ----------------------------------------- 『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。 本編に救いはありません。 セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。 本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。

第八皇子は人質王子を幸福にしたい

アオウミガメ
BL
属国から皇国へ送られてきたのは、留学とは名目ばかりの人質王子。――祖国を離れ、いつ命を奪われても仕方のない国で、王子ははじめて安堵する。 不遇の人質王子が、愛され愛を知り、幸福な日々を送る物語。 注意: ・性表現のある場合は、※をつけます。苦手な方はご注意ください。 ・基本※部分は読まなくても支障はありません。

処理中です...