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リュカ・ガステアは孤独だった。商家の三男として生まれ、オメガの性を授かったその瞬間に、自分の生きる道は決められてしまった。
リュカが生まれ育ったレイスーン王国は武力によって大きくなった国だ。近隣の小国を次々と吸収し、大国になるまでに至ったのは、他の国に比べてアルファの数が格段に多いからだった。
この世界には第二の性と呼ばれるものがあり、アルファはその頂点に君臨する種だ。恵まれた頭脳、体格を持ち、全ての能力において他の種を圧倒する。
その対の存在であり、繁殖能力に長けているのがオメガだ。男女共に妊娠出産が可能で、定期的に訪れる発情期ではアルファを誘惑するフェロモンを発する。アルファがオメガの項を噛むことでそれぞれの身体に刻まれた性印が番印へと変わり、二人は番関係となる。
アルファとして生まれた者には必ず運命の番がいると言われている。互いに同じ性印を持つとされる、その存在は神からの贈り物(ギフト)と呼ばれ、王族が運命の番と出会えば、神に選ばれし者として国王の座を射止めることができる。
レイスーン王国はアルファの国であり、オメガが生まれるのは非常に珍しい。従ってオメガ性を受けた者は家柄に関係なく王家に嫁ぐ習わしだった。
リュカが第三王子であるベルナルドの妻となったのは、今から五年前のことだ。王太子の妻は伯爵家の長男で、少し前に男爵家の次男が第二王子に嫁いだばかりだった。貴族のオメガが続いた後に平民である自分が第三王子の妻となる。それだけでリュカは多少なりと胃を痛めたけれど、嫁ぐからにはうまくやるしかないと腹を括っていた。
こ れでも、故郷ではそれなりにモテたのだ。漆黒の長髪に、陶器のような白い肌。密度の濃い睫毛を震わせる、水分をたっぷりと含んだ大きな瞳。小さな忘れ鼻はいつもほんのり色づいていて、その下でたわわと実る唇は、果実のようにぽってり赤かった。
こんなにもオメガ然としているオメガはそう見られないと、よく持て囃されたものだった。それほどまでに美しい自覚がリュカにはあった。だから、うまくやれると思っていたのだ。ただの商家の息子であっても、王子を陥落させられると。
しかし予想に反して、ベルナルドはちっとも靡かなかった。
――『これは政略結婚だ。番関係を結ぶ必要は、必ずしもあるわけではない』
婚礼の儀を終え、王子の閨で初夜を迎えようという時、ベルナルドはそう言い放ち、リュカを拒んだ。
番になるには、オメガが発情期に突入している必要がある。周期的に自然発生は難しかったので、誘発剤を飲もうとしていたリュカは、この言葉にぐさりと胸を刺されたのだ。
どうやら我が夫は、自分と本当の夫婦になるつもりはないらしい。
運命の番ではないからだろうかと、リュカはすぐに考えた。第三王子である彼を、自分は国王にしてやれない。きっと彼は、今後、運命の相手が現れた時に簡単に乗り換えられるように、リュカを番にしないのだ。きっとそうに違いない。
――そう、思っていたのに。
リュカが生まれ育ったレイスーン王国は武力によって大きくなった国だ。近隣の小国を次々と吸収し、大国になるまでに至ったのは、他の国に比べてアルファの数が格段に多いからだった。
この世界には第二の性と呼ばれるものがあり、アルファはその頂点に君臨する種だ。恵まれた頭脳、体格を持ち、全ての能力において他の種を圧倒する。
その対の存在であり、繁殖能力に長けているのがオメガだ。男女共に妊娠出産が可能で、定期的に訪れる発情期ではアルファを誘惑するフェロモンを発する。アルファがオメガの項を噛むことでそれぞれの身体に刻まれた性印が番印へと変わり、二人は番関係となる。
アルファとして生まれた者には必ず運命の番がいると言われている。互いに同じ性印を持つとされる、その存在は神からの贈り物(ギフト)と呼ばれ、王族が運命の番と出会えば、神に選ばれし者として国王の座を射止めることができる。
レイスーン王国はアルファの国であり、オメガが生まれるのは非常に珍しい。従ってオメガ性を受けた者は家柄に関係なく王家に嫁ぐ習わしだった。
リュカが第三王子であるベルナルドの妻となったのは、今から五年前のことだ。王太子の妻は伯爵家の長男で、少し前に男爵家の次男が第二王子に嫁いだばかりだった。貴族のオメガが続いた後に平民である自分が第三王子の妻となる。それだけでリュカは多少なりと胃を痛めたけれど、嫁ぐからにはうまくやるしかないと腹を括っていた。
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こんなにもオメガ然としているオメガはそう見られないと、よく持て囃されたものだった。それほどまでに美しい自覚がリュカにはあった。だから、うまくやれると思っていたのだ。ただの商家の息子であっても、王子を陥落させられると。
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運命の番ではないからだろうかと、リュカはすぐに考えた。第三王子である彼を、自分は国王にしてやれない。きっと彼は、今後、運命の相手が現れた時に簡単に乗り換えられるように、リュカを番にしないのだ。きっとそうに違いない。
――そう、思っていたのに。
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