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二人で秘密な事をしよう?

二人で秘密な事をしよう? 第三話

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 生まれて初めてのラブホテル体験の相手が、まさか瞬ちゃんになるなんて、昔は夢にも思ってなかった。
 
「……連れ込んじまってごめん」
 
 何時もと違うムーディーなライトアップと、自棄に広いサイズのベッド。
 如何にも『エッチな事をする為の部屋』という造りに、俺は思わず笑ってしまった。
 
「えー?でも瞬ちゃんスケベだし、別に何時もの事じゃない?」
 
 そう言ってからかう様に笑えば、瞬ちゃんがほんの少し傷付いた様な表情を浮かべる。
 俺は良くない事を云ったのかとほんの少しだけ言葉を飲めば、また瞬ちゃんがいっぱいいっぱいの顔になった。
 地雷を踏んだかもしれない。そう思った瞬間に瞬ちゃんが俺を抱きしめる。
 その腕は珍しく震えていた。
 
「………お前の心は手に入んないの解るからって、身体ばっか求めてごめん」
 
 そう言われた瞬間に、瞬ちゃんが俺を外に連れ出してきた理由を理解する。
 瞬ちゃんは瞬ちゃんなりの自己嫌悪と戦っているのだ。
 この時に俺は思わず、秀人に対して思っていた事を思い返す。
 秀人に褒められる度に、それなら俺で良いだろうって何度何回思ったんだろうかと。
 思うばっかりの恋の辛さを解ってる癖に、残酷なことこの上ない。
 それに瞬ちゃんの場合は俺と体の関係さえあるというのに、心ばかりは渡されないなんて状態だ。
 こんなの俺なら耐えきれない。
 こんな俺みたいな人間なんかを宝物みたいに扱ってくれる人なんて、この世できっと瞬ちゃんだけだ。
 そう感じた時に俺は初めて、瞬ちゃんを喜ばせたいと思った。
 
「今日さ、最後までしよ……?」
 
 最初は多分憂さ晴らしでしかなかったし、それで気持ちが良かったらそれで良かった。
 だけど今俺は瞬ちゃんに抱かれたいと思った。
 初めての人は瞬ちゃんでいいじゃなくて瞬ちゃんが良い。
 俺の事をべたべたに愛してくれる瞬ちゃんにあげたい。
 そんなことをいう俺を見て瞬ちゃんが完全に戸惑っているのが解る。
 
「……それって同情?」
 
 瞬ちゃんがそう囁いて悲しそうな目で俺を見る。
 だから俺は首を左右に振ってから瞬ちゃんの首に腕を回した。
 
「ううん、初めて抱かれる人、瞬ちゃんが良いんだ……」
 
 俺がそう囁いた瞬間に、瞬ちゃんが俺の身体をきつく抱き寄せる。
 瞬ちゃんは俺に食らい付くようなキスをしてから俺の身体をベッドに倒した。
 瞬ちゃんの指先はなんだか奮えているみたいで申し訳なくなる。
 そして瞬ちゃんをこんなに、傷付けていた自分を心底恥じた。
 
「今日、優しくするから……」
 
 そう囁いて優しく俺の服を脱がせてゆく瞬ちゃんに、俺は身体を静かに預けた。
 自分が楽になることしか考えられなかった俺が、瞬ちゃんを喜ばせたいと感じている。
 自分の心の中の小さな変化を肌で感じながら瞬ちゃんのキスにキスで応えてゆく。
 その時になんだかくらくらして、身体がやけにあったかくて、なんだか不思議な感覚だ。
 なんだかよく解らないけれど今日は何時もより気持ちが良い。
 俺の胸元を軽く吸い上げて舌先でなぶる。
 何時もの行為と変わらないのに身体が自棄にビクリと跳ねた。
 
「あ………んっ………はぁっ!!」
 
 瞬ちゃん関節が太くて長い指先が、俺の履いているショートパンツを丁寧に脱がせてゆく。
 その時に俺は何となく瞬ちゃんの着ているカットソーの下に手を潜らせた。
 背中を指先で撫でた瞬間に瞬ちゃんが小さく息を漏らす。
 その瞬間の表情がやけに綺麗に見えて、愛しいと思ってしまった。
 
「……祐希?」
 
 瞬ちゃんが熱っぽい表情を浮かべて、俺の顔を覗き込む。
 俺の瞬ちゃんの耳元に唇を寄せた。
 
「瞬ちゃん、今日させて欲しいことある……」
 
 俺の手で瞬ちゃんの服を脱がせていきながら、瞬ちゃんの肌に触れてゆく。
 瞬ちゃんのズボンに手をかけて、ゆっくりとそれを下げる。
 そして下着越しに膨れ上がったものに唇を寄せれば、瞬ちゃんが真っ赤な顔で口元を押さえた。
 
「え、祐希?!待って……!!」
 
 俺の身体を制そうとする瞬ちゃんに俺は悪戯っぽい笑みをわざと浮かべる。
 そして下着をずらして、瞬ちゃんのものに舌を這わせた。
 男のものの舐め方なんて正直よく解っていない。
 だけど今、こうしたいと感じた。
 
「っ………!!!」
 
 瞬ちゃん顔を真っ赤にしながら、瞬ちゃんのものを咥える俺の顔を覗き込む。
 喉奥に自ら突っ込めば苦しくて思わず涙が出た。
 咳き込みそうになるのに耐えながら頭を上下に動かす。
 でも慣れない動作に噎せ込んだ瞬間、瞬ちゃんが俺の口から自身を引き抜いた。
 
「……無理すんなって」
 
 瞬ちゃんがそう囁きながら涙目の俺にキスをする。
 さっきまで自分のを咥えていた唇にでも、この人は躊躇せずに触れてくれるのが嬉しいと感じた。
 ベッドの上に寝かされて両足を拡げられる。
 瞬ちゃんが俺の入り口にローションで濡らした指先を宛がう。
 その指が俺の中に入り込んだ瞬間、身体中に鳥肌が立つ。
 こんな風になるのは正直初めてだった。
 
「ぁ………!!なにこれ……!!!」
 
 瞬ちゃんの指先が的確に俺の好きな場所を擦り、声が漏れて視界が滲む。
 身体が感じてしまう事が制御出来ない。
 シーツを握り締めて身体をくねらせれば、瞬ちゃんが左手を俺に伸ばす。
 俺は瞬ちゃんの手をとって、その手を握り締めた。
 ずっと呼吸困難になりそうな位に感じていて、脚がガクガク震えている。
 この時に俺は自分の身体が女の子みたいにイッてる事に気がついた。
 
「あ!しゅんちゃ……!これだめ……ぇ……!!もう……!も………だめ……!!」
 
 瞬ちゃんが俺の入り口から指を引き抜けば、俺の身体が勝手に弓形に跳ねる。
 頭は真っ白なままで必死に呼吸を繰り返す。
 すると瞬ちゃんが俺の頭上に手を伸ばし、ゴムを一つ手に取った。
 口にそれを咥えて器用に封を開けて、自分のものに付けてゆく。
 瞬ちゃんが俺の入り口にものを宛がい、俺の脚を抱き締めた。
 
「……祐希、好きだよ」
 
 瞬ちゃんのものが俺の中に入った瞬間に、俺の身体はすぐに仰け反る。
 身体の中に今瞬ちゃんが入ってる。
 そう感じたら、俺の身体はまたすぐにさっきみたいにおかしくなった。
 
「あぁぁあぁぁぁぁあああ!!!」
 
 思わず大きな声を張り上げて乱れれば、瞬ちゃんが俺の身体を抱き締める。
 瞬ちゃんの身体に必死でしがみつくように抱き付けば、瞬ちゃんは優しいキスをくれた。
 俺の身体が瞬ちゃんのを全力で締め上げているのが正直自分でよく解る。
 お互いに余裕なんてない。いっぱいいっぱいで訳が解らない。
 でも気持ち良くて仕方無い。
 
「はぁっ……!!動いていいか………??」
「ぁ……いい……よ?……しゅんちゃんいっぱい、して……!!」
 
 瞬ちゃんが腰を動かした瞬間に、俺の身体がまた何度もガクガクと震え出す。
 すると瞬ちゃんが眉を潜めて汗ばんだ肌で息を漏らした。
 この人の腕が、熱が、吐息が、表情が、愛しくて堪らない。
 何度も何度も身体が女の子みたいにイッて何にも考えられなくなってゆく。
 すると瞬ちゃんのものが俺の中で急に大きくなった。
 
「……だめ、いきそう!!」
 
 瞬ちゃんが俺にそう囁いて、唇に唇を重ね合わせる。
 その時に俺のものから何かが押し出されるような、そんな感覚がした。
 
「あ………!おれ、も、だめぇぇぇ!!」
 
 瞬ちゃんの身体が俺の上に崩れるのと一緒に俺のものから何かが溢れる。
 俺はどうやら後ろでされて完全にイッてしまったようだ。
 余りにも体力を使いすぎた俺は瞬ちゃんの腕の中で気を失った。
 気が付けば瞬ちゃんは俺の隣で俺をきつく抱き締めて、静かに寝息を立てている。
 俺は眠る瞬ちゃんの顔を見ながら、やっぱり愛しいと感じていた。
 眠る瞬ちゃんの唇に気付かれない様にキスをする。
 それだけで愛しさが溢れてどうしようもなくなってしまった。
 そして俺は今更、瞬ちゃんの事を好きになりかけている事に気が付いたのだ。
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