あきらめきれない恋をした

東 里胡

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*気付かれないように*

敵いませんでした1

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「おはよ、二宮」

 最近は朝の二人の登校風景を見ないで済むようにと、二つ電車を見送ってからだというのに。
 なぜ、この時間に空人くんが歩いているんだろう。
 横に並び歩き出す空人くんは今日は一人で、周りに春香先輩がいないことに少しだけ安心した。

「昨日、真宙と出掛けてた?」

 っ、なんで!?
 声も出せないでいる私に、空人くんは笑う。

「あー、やっぱそうだったんだ。昨日、二宮の最寄り駅のビルにある書店に行ったんだよ。そしたら真宙を見かけて。でも女の子連れてたし、邪魔しちゃ悪いかなって」

 真宙くんに送られていくところを見られてたんだ。

「付き合ってるの? 真宙と」
「ち、違うっ!!」

 絶対に違うとブンブン首を振りまわしたら。

「んな全力で否定されてんの真宙が見たら泣いちゃうだろうから、止めてあげて」

 昨日佐々木さんに、『ただの友達』と伝えた時の真宙くんの反応を思い出して苦笑した。

「写真のね、被写体になって、って」
「へえ、見たいな」
「真宙くんには、誰にも見せないことを条件にして引き受けたので」

 絶対に見せません、と首を振ったら空人くんはちっちゃく舌打ちして笑っていた。
「あ、そうだ。安西って彼氏いないよね?」

 なんでルカのこと?
 疑い深げな私の目に気付いて今度は空人くんが全力で否定した。

「俺じゃないって。ちゃんといるし、俺」

 ……知ってます。

「俺や真宙と同中の梶ってC組のヤツなんだけどさ、安西のこと紹介してほしいって前から言われてて」
「ダメ、どんな人かわかんないから紹介できない」

 即答した私に真宙くんは笑い始める。

「なんで本人より先に二宮が断るわけ?」
「だって」

 だって変な人だったら嫌なんだもん。
 ルカは三年間思い続けていられるほど一途な子で、振られた後もずっと好きだったもん。
 そんな純粋な子には、ちゃんとした人じゃないと。

「友達だもんな、心配だよね」
「空人くんや、真宙くんの友達なら大丈夫とは思うんだけどね?」
「ん、わかった。じゃあさ、夏祭り一緒に行かない? 二宮」
 
 ドキッとした。
 真っすぐに私を見つめる空人くんの視線に、勘違いしてしまいそうになる。

「もうすぐ地元の祭りがあるんだ。毎年、男だけで行ってたんだけど、どう? 二宮の目で見て、梶が信用できそうなら紹介するっていうのは」
「うん、それなら」

 だよね、そりゃそうだ。
 デートの誘いでなんかあるはずがないもん。
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