あきらめきれない恋をした

東 里胡

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*気付かれないように*

敵いませんでした2

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「男は俺と真宙と梶。安西は二宮が誘ってくれる?」
「うん、ルカはお祭り好きだから、誘ったら絶対来るよ」

 男女五人、そう思った瞬間に浮かんでくる人。

「春香先輩は、誘わなくていいの?」
「……、誘った方がいいのかな?」

 何だか困ったような顔をする空人くんに驚いた。
 どうしようかな、って小さくため息をついて悩んでいた空人くんは。

「うん、誘った方がいいよな、やっぱ」

 ひとりごとみたいに呟いた。
 何だかさっきから歯切れが悪い。

「春香先輩と、ケンカでもした?」
「ケンカ、つうかさ……、春香が嫌がるんだ。俺が二宮や安西と一緒にいるの」

 いつか感じた視線を思い出して、やっぱりか、と納得した。

「だったら、私は行かない方がいいんじゃ」
「いや、そうじゃないでしょ? だって、二宮が安西に合っているかどうか確認したいってことだもん。だから春香は誘わない方がいいのかと思ったけど、隠れて皆と会ってたって、後で知られたらまたケンカになりそうだし。なら最初から堂々と誘おうかな、って……、いい、かな?」

 嫌だなんて言えるわけない。
 
「もちろんだよ、春香先輩の浴衣姿きっとキレイだろうね。また空人くん惚れ直しちゃうかも」

 言ってて泣きそうになっちゃうから、笑え、私!
 いっぱい笑うんだ!

「俺さ、女子と付き合ったこととかなくって。だからケンカする度にどうしていいのかわかんなくなるんだよね」
「ケンカの理由って、いつも私たちのこと?」
「まあ、大体。でも、友達なのに一緒にいちゃダメなのか? 付き合うって、他の女子とは一切話さないとか、そういうことなの? よくわかんねえや」

 苦笑いして誤魔化そうとする空人くんの気持ちの方が、よくわかる。
 だけど、きっと春香先輩は。

「それだけ、空人くんのことが好きなんだよ」

 好きな人が自分以外を見ているのが寂しいんだよ、きっと。
 素直な人なんだ、空人くんに自分の気持ちをきちんとぶつけられるって、それって。

「羨ましいな」

 ボソリと呟いたはずの私の声は空人くんに届いてしまったみたい。

「二宮は好きなやつ、いんの?」
「いるよ」

 真っすぐに空人くんの目を見つめた。

「いるけど教えない、空人くんだけには」

 内緒と舌を出したら、なんだよ、って空人くんはむくれて。

「真宙には教えるの?」
「かもしんない」
「……、なんかそれってめっちゃ寂しいじゃん。二宮の好きなやつが、どんな男か俺だって知りたい。気になる」

 それは、どういう意味で?
 問いかけてしまいそうになって必死にそれを飲み込んだ。
 これ以上空人くんと話していたら、私の気持ちが全部伝わってしまいそうだから。

「空人ー! ハナちゃーん、おはよ~!」

 後ろからかかる能天気な真宙くんの声に振り向いて手を振る。
 あきらめきれない想いがどんどん募っていく前に。
 あきらめる方法が知りたいと思い始めてた。
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