あきらめきれない恋をした

東 里胡

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*気付かれないように*

敵いませんでした3

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 友達と夏祭りに行くと伝えたら、パパとママにまず反対をされた。
 そうだろうと思ってまずは話し合い、それでもダメだったから実力行使。
 だったらもう再来週の定期健診に行かない、と部屋に閉じこもり、駄々をこねてみたら渋々だけどOKが出た。
 渋々なれど、ママは浴衣を着せてくれて髪も可愛く結ってくれる。
 パパはママには内緒だぞ、ってお小遣いを渡してくれた。
 その内ルカが迎えに来て、パパは祭り会場まで車で送ってくれて。

「帰りに連絡寄こしなさい。迎えに来るから。少しくらいなら遅くなっても、いや、そんなに遅くなっちゃダメだけど」

 娘大好きなパパの優しさを見て、ルカはこみ上げる笑いを必死に抑えてた。
 ありがと、パパ。いってきます!


 ルカには正直に話した、今日皆で集まる理由。
 梶くんって人のこと。
 顔は知らない、と言いながら、気になってC組を覗いてきたらしく。

『どうしよう、タイプかもしんない』

 と真っ赤になって戻ってきた時には、拍子抜けしてしまった。
 これは最早、私がどうのこうの口を挟むべきではないのかもしれない。

 待ち合わせ場所は神社の鳥居前、たくさんの人が待ち合わせをしている中でその人だけを私の目はしっかりと捉える。
 白いTシャツにハーフパンツ姿の空人くん。
 その周囲を見渡せば、ニッと白い歯を出して手を振る真宙くんとこっちに頭を下げる背の高い男の子、きっとあれが梶くんだ。
 それからもう一人、空人くんのTシャツの裾を掴む浴衣美人を確認して、頭を下げた。

「ハナちゃん、可愛い~!」

 白地に紫の花模様の浴衣はママが高校生の時に着ていた浴衣だ。
 ちょっと大人っぽいかもと思ったけれど、帯を黄色にしたら可愛くなった。

「ルカっちも可愛いよ」
「真宙、なんか私はついでみたいじゃん!」

 ふんっと膨れた紫陽花柄の浴衣姿のルカを見て、梶くんは慌てて首を振る。

「んなことない! 可愛いじゃなくって、キレイだと……思う、けど」

 勢いよく最初は頑張ったのに最後は声がちっちゃくなったのは残念だよ、梶くん。
 だけど、めちゃくちゃいい人そうだ!
 真っ赤になった梶くんに対し、ルカもうなじまで真っ赤になってお互いに意識し合ってるのがわかった。
 二人の様子にニマニマしちゃったら、空人くんと目が合って嬉しそうに頷いている。

「んじゃ、行きますか」

 空人くんの言葉に皆、立ち並ぶ屋台に向かって歩き出す。
 空人くんと並んで前を歩く春香先輩は、今日は一段と美人だなって女の私でも見惚れてしまう。
 水色生地にオレンジや白い花が咲いた浴衣は、色白の春香先輩を引き立たせる色だった。
 その後ろを四人で並んで歩きながら、お似合いの二人を見ていたら。
 空人くんの手に軽く触れる春香先輩の手。気づいた空人くんは、優しくそれを握った。

「ハナちゃん、りんご飴食べない?」

 ツンと私の袖を引き、立ち止まる真宙くんに足を止めたら。

「行こ」

 私の手を引き、りんご飴の屋台に並ぶ。


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