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初雪が降る前に冬の匂いがした
傷み②
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無事に切符を購入し安堵のため息をついた私に、朝陽は寝たふりを止めて困った顔をしている。
「あのさ、リッちゃん。仙台までの切符買って残り幾らあるの?」
「四千円くらい、後ICカード持ってる」
「中身は?」
そういえば幾ら入ってたっけ?ICカード確認アプリを翳したら。
「ジュースしか買えないじゃん」
残金二百五十円を見て朝陽は信じられないと苦笑している。
「仙台着いてどうすんの? 俺も手持ち二千円しかないから函館帰れないよ、リッちゃん」
「っ、そうだ、どうしよう、そうか、そうだよね」
帰ること何も考えてなかった。
銀行カードも持ってきてないし、スマホにもそういった機能を付けていない。
参ったな、と項垂れた私に朝陽はため息をつく。
「大体、なんで乗ったりなんかしたの?」
「そんなすぐ出ると思わなったべさ、電車なんかいっつも早めに来てしばらく止まってるもの」
「電車と新幹線を一緒にしないの! もう、いいよ、仙台で俺も降りる。ATMでお金卸して貸すからすぐ帰りなよ?」
「……、なして帰りなよ、なの? なして朝陽も帰ってくれないの?」
「だって俺は東京に家あるし……、転校した理由知ってんでしょ? 親はちゃんと日本にいるからさ、俺が帰るのは東京なの。わかった?」
「わかりたくない」
ふくれっ面で泣き始めた私にまた朝陽の大きなため息。
「ねえ、リッちゃんってこんなに面倒くさい子だったっけ」
「そうだよ、だから最初に言ったはずでしょや? 本当はなまら口悪いし、話してると嫌な気分になるかもしんないよ? って」
「ん~、でもこんなにわけわからず屋じゃなかったんだけどなあ」
朝陽の言葉に勝手にチクリと感じて思い出すのは母さんの顔だ。
でもいい。わけわからず屋とか思われたって! 二度と朝陽に会えなくなるよりはマシだもの!
「朝陽、ちゃんと話して? そして朝陽が帰ろうと思った理由聞かせて?」
朝陽の口から聞きたい、きっと誰にも言えずに一人で抱えていたこと。
私にだけは聞かせてほしいんだ。
あの日あの場所に朝陽がいた理由も。
「あのさ、リッちゃん。仙台までの切符買って残り幾らあるの?」
「四千円くらい、後ICカード持ってる」
「中身は?」
そういえば幾ら入ってたっけ?ICカード確認アプリを翳したら。
「ジュースしか買えないじゃん」
残金二百五十円を見て朝陽は信じられないと苦笑している。
「仙台着いてどうすんの? 俺も手持ち二千円しかないから函館帰れないよ、リッちゃん」
「っ、そうだ、どうしよう、そうか、そうだよね」
帰ること何も考えてなかった。
銀行カードも持ってきてないし、スマホにもそういった機能を付けていない。
参ったな、と項垂れた私に朝陽はため息をつく。
「大体、なんで乗ったりなんかしたの?」
「そんなすぐ出ると思わなったべさ、電車なんかいっつも早めに来てしばらく止まってるもの」
「電車と新幹線を一緒にしないの! もう、いいよ、仙台で俺も降りる。ATMでお金卸して貸すからすぐ帰りなよ?」
「……、なして帰りなよ、なの? なして朝陽も帰ってくれないの?」
「だって俺は東京に家あるし……、転校した理由知ってんでしょ? 親はちゃんと日本にいるからさ、俺が帰るのは東京なの。わかった?」
「わかりたくない」
ふくれっ面で泣き始めた私にまた朝陽の大きなため息。
「ねえ、リッちゃんってこんなに面倒くさい子だったっけ」
「そうだよ、だから最初に言ったはずでしょや? 本当はなまら口悪いし、話してると嫌な気分になるかもしんないよ? って」
「ん~、でもこんなにわけわからず屋じゃなかったんだけどなあ」
朝陽の言葉に勝手にチクリと感じて思い出すのは母さんの顔だ。
でもいい。わけわからず屋とか思われたって! 二度と朝陽に会えなくなるよりはマシだもの!
「朝陽、ちゃんと話して? そして朝陽が帰ろうと思った理由聞かせて?」
朝陽の口から聞きたい、きっと誰にも言えずに一人で抱えていたこと。
私にだけは聞かせてほしいんだ。
あの日あの場所に朝陽がいた理由も。
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