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「謝らなくていいんだよ」
しおりを挟む土曜日のイベントを無事に終えて、ようやく休日らしい休日が来た。
日曜日は公休。土曜日が仕事だった為、月曜日は振り替え休日。久しぶりの二連休である。
日曜日は食材を買いに行く日にあて、月曜日は一日のんびりする。
そう決意したのも束の間。
夜になってから、子どもの体調が急変した。
げほげほと、今にも死にそうな表情をしてトイレに食べた物を吐き出す子どもの背をさすってやる。
友人が言っていた「子どもは前触れもなく急に体調を崩す」と。
前触れ……。前触れは、あったはずだ。
最近、子どもの食事の量が減っていた。変化があったのに軽視していたのだ。
お腹が痛い。胃の辺りが変な感じがする。胃が震えてる。何度吐き出しても取れないと、子どもが泣く。不快感に眉間にしわを寄せ、げほげほと無理にでも吐き出そうとしている。
気持ちはわかるが、それ以上吐き出すと喉を痛める。胃の中身は殆ど出たはずで、これから出てくるのは唾液と胃液だ。
子どもが落ち着いてきたところを狙って、便器が引き剥がし、トイレの隣にある洗面台で、口をすすがせる。
その間に、この地域で一番近い夜間救急はどこだったか。広報に載っていたかと、思考を巡らせる。
「まけたくない」
か細い声で、子どもが吐き出す。
まけたくない。
負けたくない、敗けたくない、マケタクナイ。
ふるふると身体を震わせて、子どもが泣く。
何に負けたくないのか。考えられるのは、母親。
この子どもは、母親への嫌悪感もそうだが、恐怖も根強く、心を絞めつけている。顔も見たくないだろう。
家裁に行くのは、この子どもと実の父母だ。俺はただ家裁に子どもを送ってやるだけ。
「病院行くぞ」
くしゃくしゃと、形の良い頭を撫でる。
子どもは小さく「ごめんなさい」と呟いた。
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