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サラの片思い
サラの片思い2
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そして、私はこの学園で
彼に再開できた。
すぐに彼があの男の子だって
わかった。
嬉しくて嬉しくて。
そう簡単に近づけれる相手じゃないけど
いつか話してみたい。
彼の視界に私を写してほしい。
大人になった彼は上級生で
それもあの頃よりももっと
ステキな笑顔で。
愛らしい天使な笑顔だったのが
今では大人っぽい笑顔だけど
誰もが見惚れるほどの
甘い微笑み。
キラキラと輝く銀色の髪は
あの頃のまま寸分も違わない。
また彼をみて改めて恋に落ちる。
この数年間、一度だってこの気持ちが
偽りで劣化なんてすることなかった。
一目惚れだったけど
ずっと胸に秘めていた気持ちは
諦めなくていいんだ。
そんな浮かれていたのは一瞬で。
すぐにこの気持ちは
きっと届かないのだろうと
悟ってしまった…。
彼の視線の先には常にあの方がいて。
あの方は他の人のものなのに。
あの方を見る目は他と違くて。
優しさと切なさと羨望と…。
決して近寄ることなく
遠くから見守るその背中が
私と同じで悲しくなった。
きっと他の人は彼が報われることのない
気持ちを秘めていることを知らない。
私だから…。
私だけが彼の気持ちを痛いほど
わかってしまう。
その気持ちがどうか私に向くことは
ないのでしょうか…?
「ほんと!下賤な女が産んだ子供ってどうしてそんなに醜いのかしら!」
「そうよ!貴族を誑かして平民に突き落とした女の子どもがこの学園の敷居を跨ぐなんて!」
「さっさとこの学園からでていけ!」
今日も教室に入るなり
伯爵家のご令嬢たちが
私に近づいてきて
罵詈雑言を浴びせてくる。
いい加減鋼のメンタルの私でも
辟易してくるものがある。
確かに婚約者がいたのに
母と駆け落ちしたのは
誑かした母が悪いなって
ほんの少し思うこともあるけど
いくらなんでも全くの赤の他人に
言われる筋合いはないし
なんなら私は関係ない。
それは親の問題だし
駆け落ちを決断したのは
父と母なのだから。
それに正式に子爵家の籍に
入ったんだから
紛れもなく今は貴族だ。
貴族の子息令嬢は必ずこの学園に
通わなければいけない義務なのだから
辞めます。なんて言えるわけない。
何か余程のことをやらかさない限り
学園を去ることはできないしね。
まぁ私自身ずっと市井で過ごしてきたし
"貴族だ!"なんて微塵も思わないけど…。
でもいちいちこの人たちに
歯向かうのもめんどくさい。
私だって友達もいない、
近寄ってくるのは悪口しか言ってこない
貴族のご令嬢。
遠目からニヤリ顔で見てくる男たち。
こんなとこ本当は今でも
辞めたいに決まってるじゃない。
唯一の癒しが彼をこっそり見るだけで
それも失恋が決定してる今
一秒でもここに居たくなんかない。
「ふん!生意気ね!いい?必ずここから追い出してやるんだから!」
ご令嬢たちはいつまで経っても
無視を決め込む私に
諦めたのか飽きたのか
席に戻って行った。
一人が最後に言葉を残して去ってくと
残りのご令嬢たちも後を追うように
雲の子を散らすようにここから
離れていく。
はぁー。とため息をついてしまう。
本当は貴族令嬢にあるまじき行為で
お爺様が見たらきっと杖が飛んで来るだろう。
優しいけど貴族マナーに対しては
とことん厳しいお爺様。
お父様を亡くして後悔した
お爺様は私たち親子を大切にしてくれる。
父の忘形見である私にそれはもう
猫可愛がりする時だってある。
だけどいざ貴族の顔になった途端
顔色を変えて般若の如く
きびしーーい教育で私をビシバシ
鍛え上げた。
そんなお爺様が今の私を見たら
きっと血相変えて
鍛え直す!って言うだろう。
身分が上の伯爵位のご令嬢を
フル無視した挙句に
堂々と大きなため息なんて…。
そう思った後に首を横に振る。
いやいやもう考えるのはやめ!
とりあえず適当に頑張って
さっさと卒業しちゃおう。
よし!と心の中で意気込んだ後
ふと窓の外を見やる。
すると彼が中庭の木陰で
本をお腹に乗せて寝ているのが見えた。
相変わらず無防備。
この教室からは中庭が
よく見えるのだけど
彼がいる木陰は目を凝らさないと
よく見えない。
たまたまぼーっと見ていたら
何かが動くのが見えて
それから彼を見つけた。
机に突っ伏しながらじゃないと
見えないから
おそらくこんなことする令嬢なんて
いないので私しか知らない。
彼はよく中庭にある木陰で
今みたいに本を読んでいる。
その姿がまさに様になっていて…。
今日もかっこいいです。
はぁ。ともう1度小さくため息をつく。
彼がこの中庭の木陰にくる理由は
きっとただ本を読むためだけじゃない。
木陰から目線をずらせば
一つのベンチが見える。
あの方がたまに放課後一人で
ポツンと座っているベンチだ。
公爵家のご令嬢でありながら
王太子殿下の婚約者のシェニー様。
綺麗で聡明でどこか儚い美しい女性。
いつも王太子様を注意したりして
怒ってばかりいらっしゃるけど
放課後あのベンチで座ってる
彼女はどことなく儚くて
今にも消えてしまいそうな
なんとも言えない気持ちにさせる。
そんな彼女を遠くから
見えない位置で彼は見守っている。
ほんと悲しくなるよ。
彼が木陰にいるのを
この教室から見つけた時は
なんてラッキーなの!って
浮かれたのに。
公爵家の子息である彼…マーケル様と
元平民。現子爵家の令嬢の私が
身分的にも中身的にも釣り合っていない
時点でどうこうできるわけが無いのだけど。
再会してこれはまさに運命だ!
なんて浮かれて馬鹿みたいに
はしゃいでいたけど
身分差のことなんかすっかり
忘れていたわ。
「ほんと悲しいくらい釣り合わないよ。」
机に突っ伏しながら
木陰で眠る彼をただずっと
眺めていた。
彼に再開できた。
すぐに彼があの男の子だって
わかった。
嬉しくて嬉しくて。
そう簡単に近づけれる相手じゃないけど
いつか話してみたい。
彼の視界に私を写してほしい。
大人になった彼は上級生で
それもあの頃よりももっと
ステキな笑顔で。
愛らしい天使な笑顔だったのが
今では大人っぽい笑顔だけど
誰もが見惚れるほどの
甘い微笑み。
キラキラと輝く銀色の髪は
あの頃のまま寸分も違わない。
また彼をみて改めて恋に落ちる。
この数年間、一度だってこの気持ちが
偽りで劣化なんてすることなかった。
一目惚れだったけど
ずっと胸に秘めていた気持ちは
諦めなくていいんだ。
そんな浮かれていたのは一瞬で。
すぐにこの気持ちは
きっと届かないのだろうと
悟ってしまった…。
彼の視線の先には常にあの方がいて。
あの方は他の人のものなのに。
あの方を見る目は他と違くて。
優しさと切なさと羨望と…。
決して近寄ることなく
遠くから見守るその背中が
私と同じで悲しくなった。
きっと他の人は彼が報われることのない
気持ちを秘めていることを知らない。
私だから…。
私だけが彼の気持ちを痛いほど
わかってしまう。
その気持ちがどうか私に向くことは
ないのでしょうか…?
「ほんと!下賤な女が産んだ子供ってどうしてそんなに醜いのかしら!」
「そうよ!貴族を誑かして平民に突き落とした女の子どもがこの学園の敷居を跨ぐなんて!」
「さっさとこの学園からでていけ!」
今日も教室に入るなり
伯爵家のご令嬢たちが
私に近づいてきて
罵詈雑言を浴びせてくる。
いい加減鋼のメンタルの私でも
辟易してくるものがある。
確かに婚約者がいたのに
母と駆け落ちしたのは
誑かした母が悪いなって
ほんの少し思うこともあるけど
いくらなんでも全くの赤の他人に
言われる筋合いはないし
なんなら私は関係ない。
それは親の問題だし
駆け落ちを決断したのは
父と母なのだから。
それに正式に子爵家の籍に
入ったんだから
紛れもなく今は貴族だ。
貴族の子息令嬢は必ずこの学園に
通わなければいけない義務なのだから
辞めます。なんて言えるわけない。
何か余程のことをやらかさない限り
学園を去ることはできないしね。
まぁ私自身ずっと市井で過ごしてきたし
"貴族だ!"なんて微塵も思わないけど…。
でもいちいちこの人たちに
歯向かうのもめんどくさい。
私だって友達もいない、
近寄ってくるのは悪口しか言ってこない
貴族のご令嬢。
遠目からニヤリ顔で見てくる男たち。
こんなとこ本当は今でも
辞めたいに決まってるじゃない。
唯一の癒しが彼をこっそり見るだけで
それも失恋が決定してる今
一秒でもここに居たくなんかない。
「ふん!生意気ね!いい?必ずここから追い出してやるんだから!」
ご令嬢たちはいつまで経っても
無視を決め込む私に
諦めたのか飽きたのか
席に戻って行った。
一人が最後に言葉を残して去ってくと
残りのご令嬢たちも後を追うように
雲の子を散らすようにここから
離れていく。
はぁー。とため息をついてしまう。
本当は貴族令嬢にあるまじき行為で
お爺様が見たらきっと杖が飛んで来るだろう。
優しいけど貴族マナーに対しては
とことん厳しいお爺様。
お父様を亡くして後悔した
お爺様は私たち親子を大切にしてくれる。
父の忘形見である私にそれはもう
猫可愛がりする時だってある。
だけどいざ貴族の顔になった途端
顔色を変えて般若の如く
きびしーーい教育で私をビシバシ
鍛え上げた。
そんなお爺様が今の私を見たら
きっと血相変えて
鍛え直す!って言うだろう。
身分が上の伯爵位のご令嬢を
フル無視した挙句に
堂々と大きなため息なんて…。
そう思った後に首を横に振る。
いやいやもう考えるのはやめ!
とりあえず適当に頑張って
さっさと卒業しちゃおう。
よし!と心の中で意気込んだ後
ふと窓の外を見やる。
すると彼が中庭の木陰で
本をお腹に乗せて寝ているのが見えた。
相変わらず無防備。
この教室からは中庭が
よく見えるのだけど
彼がいる木陰は目を凝らさないと
よく見えない。
たまたまぼーっと見ていたら
何かが動くのが見えて
それから彼を見つけた。
机に突っ伏しながらじゃないと
見えないから
おそらくこんなことする令嬢なんて
いないので私しか知らない。
彼はよく中庭にある木陰で
今みたいに本を読んでいる。
その姿がまさに様になっていて…。
今日もかっこいいです。
はぁ。ともう1度小さくため息をつく。
彼がこの中庭の木陰にくる理由は
きっとただ本を読むためだけじゃない。
木陰から目線をずらせば
一つのベンチが見える。
あの方がたまに放課後一人で
ポツンと座っているベンチだ。
公爵家のご令嬢でありながら
王太子殿下の婚約者のシェニー様。
綺麗で聡明でどこか儚い美しい女性。
いつも王太子様を注意したりして
怒ってばかりいらっしゃるけど
放課後あのベンチで座ってる
彼女はどことなく儚くて
今にも消えてしまいそうな
なんとも言えない気持ちにさせる。
そんな彼女を遠くから
見えない位置で彼は見守っている。
ほんと悲しくなるよ。
彼が木陰にいるのを
この教室から見つけた時は
なんてラッキーなの!って
浮かれたのに。
公爵家の子息である彼…マーケル様と
元平民。現子爵家の令嬢の私が
身分的にも中身的にも釣り合っていない
時点でどうこうできるわけが無いのだけど。
再会してこれはまさに運命だ!
なんて浮かれて馬鹿みたいに
はしゃいでいたけど
身分差のことなんかすっかり
忘れていたわ。
「ほんと悲しいくらい釣り合わないよ。」
机に突っ伏しながら
木陰で眠る彼をただずっと
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