Decalogus

百尾野狐子

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異世界生活八日目にしてお風呂に入る許可が出たから、アンジュ君に大浴場まで連れて来て貰った。
大浴場はお城の一階にあって、まるで熱海の有名なローマ風呂のように広くて開放的な所だった。お城は馬鹿みたいに広くて、構造も私には分からないから案内なくして一人では辿り着けないな。
アンジュ君に使い方を教わり、一人で浴場の中に入って久しぶりのお風呂を堪能させて貰った。
驚いた事に、大浴場のお湯は温泉だった。硫黄臭くないし、塩っぽくもない、若干白濁としたとろみのあるお湯だ。美肌効果がありそうだ。そうか、カイル様の年齢より若く見える美肌はこのお湯のおかげかも。
「うぃ~…」
髪も身体も二度洗いして、全身ピカピカにした後、広い浴槽の中に入ってオジサンみたいに唸ってしまった。誰もいない貸し切り温泉なんて、もの凄い贅沢。
「カイル様には感謝してもしきれないなぁ…」
突然召還された異世界で、どうなる事かと思ったけれど、カイル様のおかげで悲観的にならずにすんでいる。
あのまま神殿に残っていたら、遅かれ早かれ私は娼婦みたいに不特定多数の人達の下の相手をさせられていた筈だ。
この世界の事情は同情出来なくはないが、手助けするならば違う方面で手助けしたい。出来るなら、やはりカイル様の役に立ちたいけれど、今の私に何が出来るだろうか。
「…カイル様かぁ」
武人らしく日に焼けた肌は健康的で、張りがあって若々しいけれど、醸し出す雰囲気は覇王のようなオーラがある。でも優しい。とっても優しい。あの魅惑の低音ボイスで名前を呼ばれて、大きくて逞しい手で触れられるだけで溶けそうになる。
出会って間もない人なのに、多分私は今まで出会ってきた人の中でカイル様を一番信用している。彼は私を傷付けないと、根拠もないのに信じてしまっている。
今まで誰にも惹かれた事は無いから、確証はないけれど、もしかしたら私はカイル様を異性として意識しているのかもしれない。そうでなければ、全裸を見られたり、胸や下半身を拭かれるなんて許容出来るわけが無い。
カイル様はどういうつもりで私に接しているのだろうか。私の常識では、いくら看病でもあそこまではしない筈。立場のある方が、しがない異世界人に何故あんなに献身的にお世話してくれたのだろう。
アンジュ君の話だと、カイル様は忙しい方なのだとか。このオクタグラム領の主であるカイル様は、近衛騎士団の最高顧問も兼任しているため、頻繁に王都と領地を往復しているらしい。オクタグラム領軍の将軍でもあり、領主として領地を視察して政務も完璧にこなしているとか。
そんな忙しい方が、私の看病もまめまめしくしてくれたわけだけれど、ただの親切心であそこまでしてくれるなんて、どんなにおめでたい人でも思わないだろう。
「はぁ…」
まるで思春期の少女のように、胸をドキドキさせながらカイル様の事を考えていた。ああ、やっぱり、カイル様の事を考えているだけでこんなに心臓がドキドキするんだから、やはり私はカイル様の事を…。
「ケイコ殿!」
いきなり背後から脇を掴まれて、お湯の外へ抱き上げられた。
「…カ、イル様…?」
心臓の音がうるさい。目が回る。体が熱くてなんだか苦しい。
「ああ、やはり。病み上がりで長湯をしてはいけないよ。湯中りをしている。ケイコ殿、口を開けて」
口?何で口?
ぐるぐるする視界に目を開けていられず、目を閉じながらも言われた通りに口を開けた。
「…ん」
ヒヤリとした感触が唇を覆い、冷たい何かが口の中に入ってきた。冷たくて、甘くて、気持ちいい。私は口に注がれるモノを無心に求め、何度も喉を鳴らして飲んだ。
「ケイコ殿…もっと飲むか?」
掠れたカイル様の美声に、ゾワゾワと腰が痺れた。私は反射的に頷き、カイル様は再び私の唇に冷たい何かを注いだ。
ゆっくりと注がれる何かが水で、私の唇を覆っているのがカイル様の唇だと気付いた頃には、既に私の体は湯中りの熱とは違う熱にその温度を上げていた。
「ん…」
いつの間にか私の舌に絡み付く肉厚なそれがカイル様の舌だと分かっても、私は拒む気など起こらなかった。
これが所謂大人のキスとな。
舌を絡めたり、相手の唾液を飲んだりするなんて生理的に無理だと思っていたけれど、相手がカイル様だからなのか、とても気持ちが良い。
「ん、あふ、うん…っ」
口の中の粘膜がこんなに敏感だとは知らなかった。上顎を舌先でなぞるように舐められるのも、喉の側の柔らかな粘膜を優しく撫でられるのも気持ちが良い。舌同士を擦り合わせ、互いの唾液を混ぜ合わせながら飲み込むのも良い。
「ケイコ殿…嫌ではないか?」
キスの合間にカイル様に何度も確認され、その都度嫌ではないので頷く。
背後から抱き締められながら唇を重ねて、更に胸に触れられた。私の胸は小さくは無い筈だが、カイル様の手が大きいから無理なく包めてジャストフィット。やわやわと揉みしだかれ、胸の先端がギュウッと硬くなっていくのが自分でも分かった。
自分で触れても何も感じた事なんてなかったけれど、カイル様に触れられると身体が悦んで先端がジンジンと痺れてくる。
「あ、あ、待って、駄目」
両手で私の二つの胸を各々包み、リズミカルに揉みながら器用に指で先端を刺激してくるカイル様の手腕は、やはり経験値の差を感じられて少々複雑な気持ちになった。
「駄目?胸は気持ち良くないか?」
魅惑の低音ボイス攻撃が、私の鼓膜を犯す。カイル様の声が、ただでさえ既に恥ずかしい状態になっている股の間を更に濡らした。
「良すぎて駄目…っ」
私は変な声が出そうになり、カイル様の唇から距離を取って自分の口を手で押さえた。
カイル様は私の言葉に嬉しそうに笑い、無理に手を退かす事なく、唇を私の耳に滑らせてハムハムと甘噛した。
「んんっ」
ゾワゾワっと甘い痺れが耳を起点に全身に広がり、舌で舐められたり、歯を立てられたり、唇で吸い付かれたりする度に身を震わせられた。ああ、私は耳も感じるのか。何となく、自分は不感症なのではないかと思っていたけれど、どうやら違ったみたいだ。
「ひゃっ、や、あぁ…」
耳から首筋に舌が移動して、チクチクとした痛みと痺れが生まれては消え、その度に下腹の奥が熱く疼いて腰が揺れた。
胸を包んでいたカイル様の右手が左手を残したままゆっくりとお腹を撫でながら下に移動して、下腹の毛を撫でた。
「ん…」
指先が下の毛を掻き分けるように侵入して、既にぬるぬると濡れた場所をゆっくりと撫でた。未だに清く正しいとは云え、私は現代日本の三十路女だ。自分の体の状態が今どうなっているのか、カイル様が何をしようとしているのかは分かった。
清拭とは違う、明らかに性的な意味で触れているカイル様の手を、私は不思議な事に拒む気など全く起きない。
どういうつもりで私に触れているのか、カイル様の気持ちは分からないけれど、私の気持ちは今確実にカイル様の手を喜んでいた。
下の毛に隠されていた小さな突起を見つけたカイル様は、とろみのある私からの分泌物を指に纏わせてゆっくりとそこを撫でた。
「あぅっ、んんっ、や、ま、待って…っ」
「痛むか…?」
「ああっ」
意図的にそこを擦りながら、別の指で襞を掻き分けて膣口の浅い場所を撫でた。カイル様の指は武人らしく一本一本が太くて節高い。第一関節までしか入っていないのに、確かな存在感で私の狭い孔を開く。
「…ここも…ジョージは触れたのか…」
ボソリと低く呟いたカイル様は、ゆっくりと中指を膣の奥まで侵入させた。
「あぅっ、んんっ」
沢山濡れているから痛みはないが、開かれる圧迫感はあった。
ところで、カイル様、ジョージって誰?
いつの間に脱いだのか、全裸のカイル様の逞しい胸筋に後頭部を擦り付けるようにして喘ぐ。背中に触れるカイル様の隆起した筋肉の感触に、下腹の奥がまた疼いた。
「ケイコ殿…痛みは無いか?」
何度も痛みは無いかと確認してくれるカイル様の優しさに、私の胸が甘く疼く。
「…無いですけど…」
はぁはぁと体に溜まった熱を吐き出すように浅い呼吸を繰り返す私を見て、カイル様は挿入した中指の動きを止めた。
「大丈夫だ。無理に開く事はしない。久しぶりなのだろう?酷く狭い」
は?え?ちょっと待って。イヤイヤイヤ、久しぶりも何も私は未経験ですよ。タンポンは使用した事はあるので、膣に物を入れるのは初めてじゃないですけど。今の言い方だと、私が経験者みたいじゃないですか。
「貴殿のように美しく、魅力的な女性を長く放置しておくなど…貴殿の相手は男の風上にも置けないな」
「…私の、相手…?」
って、誰?誰の事ですか、カイル様!?
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