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第9話 セオドアの状態-2
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セオドアは絶対に具合が悪いのに、深刻な雰囲気にならないように気を遣ってくれているのだろう。
「まだ知り合ったばっかりのセオドア様に言われても。あと勝手に呼び捨てですわ」
「婚約者だから、いいだろう? ……この呪いはかなり強力だ。少しでも時間がかせげれば、それでいい。伝手はなくはないから」
「それこそずるいですわ……。でも、ラジュール様の反応が普通ですわ。どうして私の事をそのまま信じたんですか」
一歩間違えばこのまま死ぬのだ。私は解けると自信を持っていたから取引だと思えたが、彼からすれば眉唾すぎる話だったはずだ。
今更ながら、セオドアの非常識に気が付いた。
「あのまま一回は死ぬと思ったし、覚悟した。だから、運命だと思ったんだ。マリーシャを信じると決めた。だから心配しないでくれ。俺は君を裏切らない」
私が誰も信じないという事を知っているかのようなセオドアの言葉に、涙が出そうになる。
……でも、私はあなたを信じない。
その言葉を飲み込んで、私は彼の胸をそっと叩いた。
「……もう。はじめますね。痛かったら手を強く握っていいですから」
「許可が出るなんて嬉しいな」
何故か甘やかすような彼の言葉に惑わされそうだ。
私は片手でセオドアの手を握り、もう片方の手は彼の胸の位置に置いた。
「……解呪魔術ではないのか?」
ラジュールが不審な顔で覗いてくる。今にも私がやる事を止めたそうだ。私の事が信じられないのだろう。当然だ。
……こんな風に、私に任せているセオドアが変なのだ。
解呪魔術は使えるけれど、もう婚約破棄を望んでいる私は魔術を誰にも見せたくない。ハインリヒや家族にも伝わったら困る。
さっきは軽量化の魔術を見られたけど、それは忘れよう。
なので、解呪はしない。
契約通り、力業で遅らせるだけだ。
「魔術は使いません。でも、約束はちゃんと守りますよ」
「俺はマリーシャを信じている。ラジュールは下がっていろ」
「わかりました」
「……では」
私はセオドアに向かってゆっくりと魔力を流した。
魔力はセオドアの身体に広がっていく。他の人の魔力が通ることは苦痛が伴うはずなのに、セオドアは眉をひそめただけで、それ以上の反応はなかった。
「……」
ラジュールが、私の動きを警戒して見張っている。
しかし、もう魔力は流している。それに、この体勢自体がセオドアの生殺与奪の権を握っているようなものだ。
「もっと流します。凄く痛いと思うのですが、手を握っていいのでどうにか耐えてください」
私の魔力がセオドアの全身に広がったのを感じてから、そうささやく。自分の魔力が広がったことで、セオドアの状況がはっきりとわかる。
セオドアの呪いは全身に広がってきている。思ったよりずっと進行が速い。
この状態で、私以外に助けも呼ばずに軽口をたたいているなんて。このまま放置すれば一時間もたたずに手遅れだ。
……そんな風に信じて、死んじゃったらどうするのよ。助けるけど。
「まだ知り合ったばっかりのセオドア様に言われても。あと勝手に呼び捨てですわ」
「婚約者だから、いいだろう? ……この呪いはかなり強力だ。少しでも時間がかせげれば、それでいい。伝手はなくはないから」
「それこそずるいですわ……。でも、ラジュール様の反応が普通ですわ。どうして私の事をそのまま信じたんですか」
一歩間違えばこのまま死ぬのだ。私は解けると自信を持っていたから取引だと思えたが、彼からすれば眉唾すぎる話だったはずだ。
今更ながら、セオドアの非常識に気が付いた。
「あのまま一回は死ぬと思ったし、覚悟した。だから、運命だと思ったんだ。マリーシャを信じると決めた。だから心配しないでくれ。俺は君を裏切らない」
私が誰も信じないという事を知っているかのようなセオドアの言葉に、涙が出そうになる。
……でも、私はあなたを信じない。
その言葉を飲み込んで、私は彼の胸をそっと叩いた。
「……もう。はじめますね。痛かったら手を強く握っていいですから」
「許可が出るなんて嬉しいな」
何故か甘やかすような彼の言葉に惑わされそうだ。
私は片手でセオドアの手を握り、もう片方の手は彼の胸の位置に置いた。
「……解呪魔術ではないのか?」
ラジュールが不審な顔で覗いてくる。今にも私がやる事を止めたそうだ。私の事が信じられないのだろう。当然だ。
……こんな風に、私に任せているセオドアが変なのだ。
解呪魔術は使えるけれど、もう婚約破棄を望んでいる私は魔術を誰にも見せたくない。ハインリヒや家族にも伝わったら困る。
さっきは軽量化の魔術を見られたけど、それは忘れよう。
なので、解呪はしない。
契約通り、力業で遅らせるだけだ。
「魔術は使いません。でも、約束はちゃんと守りますよ」
「俺はマリーシャを信じている。ラジュールは下がっていろ」
「わかりました」
「……では」
私はセオドアに向かってゆっくりと魔力を流した。
魔力はセオドアの身体に広がっていく。他の人の魔力が通ることは苦痛が伴うはずなのに、セオドアは眉をひそめただけで、それ以上の反応はなかった。
「……」
ラジュールが、私の動きを警戒して見張っている。
しかし、もう魔力は流している。それに、この体勢自体がセオドアの生殺与奪の権を握っているようなものだ。
「もっと流します。凄く痛いと思うのですが、手を握っていいのでどうにか耐えてください」
私の魔力がセオドアの全身に広がったのを感じてから、そうささやく。自分の魔力が広がったことで、セオドアの状況がはっきりとわかる。
セオドアの呪いは全身に広がってきている。思ったよりずっと進行が速い。
この状態で、私以外に助けも呼ばずに軽口をたたいているなんて。このまま放置すれば一時間もたたずに手遅れだ。
……そんな風に信じて、死んじゃったらどうするのよ。助けるけど。
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