デッドエンド・ウェディング

うてな

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43 サファイア=忠実

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美夜が悩ましく困っていると、そこへ一人の女性がやってきた。それはは最近ヒナツの家に出入りしていた、綺瑠の元カノの姉であるマキコ。マキコは美夜に笑むと言った。

「私があなたの悩みを解決して差し上げましょう。」

の割には、装いは普通に私服。美夜は首を傾げると、リッカは同業者と知った途端に警戒した様子。

「ちょっと、大事な話をしているのよ。」

お構いなしにマキコはトランプを五枚出し、裏面を美夜に見せた。

「一枚選んで?表にしてみてちょうだい。」

「は、はい…」

「ちょっと美夜!」

リッカはそう言ったが、美夜は一枚引いた。そして表を見ると、それは白紙。美夜は目を丸くすると、マキコは言った。

「結婚式の様子が浮かびます…。」

その言葉に美夜は反応する。マキコは目を閉じて空を見上げた。

「どうやら思い通りの結婚ができていないようですね…。おや、恋路を邪魔する方々が…」

言い当てる様を見て、美夜は鳥肌を感じた。するとマキコはペットボトルに入った水を美夜に差し出す。

「私の占いは少し特殊で、この聖水を飲めば少し詳しい未来も見れるのです。」

「そう…なんですか?」

美夜はそう言いながらペットボトルの蓋を開けると、口をつけようとした。しかし美夜は留まった。

(変だわ。まるで私が歩んできた未来を知っている様な口ぶり…。私は過去へ遡っているんだから、未来の出来事は無かった事になっているから、占い師にわかるはずは…。
結婚式の事を知る人は、家の人と後は……アレを企てた本郷さんと繋がっている人だけだわ。しかもこの水…。)

美夜はマキコにペットボトルを返すと、真面目な表情で言う。

「結構です。」

そう言われるとマキコは面白いのかクスクスと笑った。美夜はマキコを睨むと、マキコは会釈した。

「そうですか。では…また。」

マキコはそう言って立ち去っても、美夜は緊張を解かない。リッカは首を傾げると、美夜はリッカに言った。

「あの占い師、誰か知ってる?」

「え?わからないわ。」

「じゃあ、綺瑠さんに聞いてみる。」

美夜はそう言って携帯を開くが…、思わず眉を困らせた。

「あ、今は接触禁止だったんだ…。」





一方、璃沙の家では。綺瑠と璃沙は共にリビングにいた。晩飯の終わって真っ新なテーブルに、二人向かい合わせで座っている。
ちなみに広也と進也は二階の部屋で携帯ゲームを楽しんでいた。そして階下が静かなのに気づき、二人はリビングをコソコソと覗く。綺瑠と璃沙が対面しているのを見た広也と進也は、ただならぬ様子を感じていた。
綺瑠は璃沙をジッと見つめている。逆に璃沙は鬱陶しそうにしていた。

「なんだよ!呼び出しといて!」

「璃沙ってさ、僕の事好きって言ってくれたよね?」

「だからなんだよ!」

「以前、クルミちゃんにチューされた事があってさ。全然胸が高鳴らなかったんだ。璃沙の時はとってもドキドキしたのに…。」

「はッ!?」

璃沙は顔を赤くしてしまうと、綺瑠は深く考え込んだ。

「でも、美夜とのチューはとっても安心したんだ。どっちが恋だと思う?」

そう言われると璃沙は呆れた顔。

「おい、それをロボットの私に聞くか?」

「璃沙は僕とチューした時、どう感じたの?」

綺瑠に聞かれると、璃沙は顔を真っ赤にしてパンク。それから綺瑠から視線を逸らして言う。

「キンチョーした。心臓爆発するかと思った。」

「あ!それ僕もだよ!…じゃあ美夜のは一体なんだろう…?他にも情報を集めないと…。」

綺瑠がそうブツブツと呟くと、璃沙は頭を抱えた。

「あのさ。家族と恋人のスキンシップが同じだから色々言ったけど、そんな深く考える必要は無いと思うんだよ。思った事、感じた事が全てだろ。お前は美夜が好き…そうだろ。」

そう言われると、綺瑠は目を丸くする。それから俯くと呟いた。

「そうだね。璃沙にキスされた時、心が奪われてしまうんじゃないかって…怖くなった。僕は、美夜が好きだから…。」

そう言って自分に胸を当てて拳を握っている綺瑠。璃沙はそれを眺めてから言う。

「じゃあそれがお前の本音だろ。美夜が好きだっていう何よりの証拠だ、何を迷ってんだよ。」

綺瑠は璃沙の言葉に強く反応した。

(…そうだ。美夜は、僕に初めて「好き」に安心を与えてくれた女性…。)

そう考えながらも、今までに付き合ってきた元カノ達を思い出す。殆どが綺瑠の財産目当ての女性だったのでいい思い出が無いのは勿論、そうでない女性でも前述の事が原因で気を遣う事が多かった。

(今まで好きだった子に安心した事なんて無かった。いつ僕が彼女達を傷つけてしまうか不安だったし、それに疲れてしまっていた…。
でも美夜に出会って…僕の割れた心も全て受け入れてくれて…初めて安心した事を強く覚えている…。)

綺瑠の人格を知っている人は度々いたが、大抵は裏の綺瑠をあまり好かなかったり否定する人が多い。それは例え、家族であろうとだ。それを優しく受け入れたのは、美夜が初めてだったようだ。

(それが特別で、強く魅力に感じたから僕は美夜を好きになったんじゃないか。家族に抱く愛とは…完全に別物だ。)

綺瑠は整理がついたのか、真摯な表情を浮かべる。

「確かに璃沙の言う通り…変な迷いだ。」

その表情を見た璃沙は反応を見せたが、すぐに綺瑠と同じような表情を浮かべた。

「…美夜の命は長くない。今クヨクヨしてたら、後悔するぞ。シャキっとしろ!」

綺瑠はそう言われると強く頷いた。璃沙は言う。

「美夜の好きな所は?」

そう聞かれた途端、綺瑠の瞳は強い光を帯びた。

「え?夢に一直線な所でしょ、笑顔とか、頼りにしてくれる所、料理の味付けが好みとか、出せばキリないよ。」

綺瑠が楽しそうに言うと、璃沙は微笑ましいのか弱ったような笑みを見せた。綺瑠は続きを言おうとしたが、やがて璃沙の様子に気づいて首を傾げる。

「璃沙はどうして、僕の事が好きなのに美夜とくっつけようとしてくれるの?」

そう言われると、璃沙は聞かれた事が意外だったのか反応を見せた。続いて笑みを浮かべる。

「お前が幸せだと、私も嬉しいから。」

「え?」

「さっきまでのお前は、美夜との関係を悩んでずっと塞ぎ込んでいた。そんな綺瑠と過ごすのは、私には耐えられない。」

「璃沙…。」

綺瑠が呟くと、璃沙は目を閉じて暫く黙り込む。それから目を開くと言った。

「綺瑠、私はお前が好きだ。お前の返事を聞かせてくれないか?」

真摯に一直線に向けられる視線。綺瑠はその視線に目を逸らす事無く言った。

「ごめんね璃沙。僕は美夜が好きなんだ。」

そう言われると、璃沙は視線を落として静かに頷いた。すると綺瑠は璃沙に続けて言う。

「でも、家族としては好きだよ。もし僕と美夜が結婚出来たとして…。その時も、僕と仲良くしてくれるかい璃沙?今まで通りに。」

綺瑠の言葉に、璃沙は強く反応した。やがて、璃沙の目に涙が浮かぶ。
思わぬ反応に綺瑠も驚くと、璃沙は胸に手を当てた。璃沙は笑みを浮かべると、胸に刻むように呟く。

「うん…。そうだな、そうなんだよな…。」

「え、何が?」

綺瑠の問いに答える事もなく、璃沙は独り言を続けた。

「美夜と結婚したら、所有者の綺瑠は私を忘れるものだとばかり思っていて…。どうにか繋ぎ留めておきたくて…。怖かったんだな。」

すると璃沙は今まで見せた事のない、屈託のない優しい笑みを綺瑠に向けた。

「勿論。
ずっと、仲良くして欲しい。今までと変わり無い…家族として。」

その顔に綺瑠は目を丸くして、頬をピンクに染める。それから嬉しそうに笑みを浮かべると、綺瑠は言った。

「良かった、璃沙も僕と同じ気持ちで。」

「ああ。そういう意味では、両思いだな。」

璃沙が笑顔で言うと、綺瑠はクスッと笑う。

「確かにそう!」

二人の笑い声がリビングに響くと、リビングを覗いていた広也と進也はお互い見合わせて笑みを浮かべた。進也はニコニコしていたが、広也だけは璃沙を見つめている。

(ま そう言うしかないよな…)

そう意味深な事を考えて。綺瑠は席を立つと、冷蔵庫から缶チューハイを出す。

「なんか機嫌がいいから飲んじゃお!」

それを見るなり、璃沙は眉を吊り上げた。

「おい、お前はすぐ酔うからやめろ!」

「璃沙が介抱してくれるからいいじゃん。」

「そういう問題じゃないだろ!」

リビングがガヤガヤし始めると、広也は微妙な反応。しかし進也は笑顔だった。

「なんか、以前と同じ空気が戻ってきたっす…!兄貴!俺達も混ざるっすよ!」

「更に混沌にしようとしてんじゃねぇよ!」

広也はそう言ったが、進也は既に二人の方へ向かっていた。進也は二人の間に入って言う。

「俺も飲むっす~!」

「はいはい、ジュースな。」

璃沙に言われ、進也は嬉しそう。綺瑠は笑顔で言う。

「進也達が大人になったら、お父さんと乾杯しようねー。」

「するっす、するっす!」

そんな様子を見て、広也も思わず笑み。それから広也もリビングへ入室すると言った。

「オレにも水」

「広也は本当に水ばっかりだよね。あと野菜ジュース?他のも飲んでみたら?」

綺瑠に言われると、広也はケチを付けられた為か怒り顔。

「オレ様のセンスに口出すな!」

そんなこんなで、今宵は盛り上がった。
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