デッドエンド・ウェディング

うてな

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52 エメラルド=愛の成就

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それから数ヶ月経った日の事。
ここはエリコの通う小学校。そこにリョウキがやって来ており、学童保育の先生に話しかけていた。

「あの、『秋田(アキタ) エリコ』を迎えに来ました。」

「あ、リョウキくん。今支度させますからね。」

学童保育の先生はそう言って、リョウキを残してエリコを迎えに行った。リョウキはその間キョロキョロしていると、そこにエリコがやって来た。

「リョウキおじさん!」

リョウキを怖がっていた時と比べ、エリコはリョウキに懐いている様子だった。リョウキに飛び込んでくるので、リョウキはエリコを肩車。エリコは肩車されるとキャッキャッと笑った。リョウキは学童保育の先生に軽く会釈をして立ち去るので、先生も笑顔で見送る。リョウキはエリコと帰り道を歩いていると、傍に一台の車が停車。エリコは車を見ると笑顔を見せた。

「ママ!」

車から出てきたのは海。海はエリコを見ると両手を伸ばした。

「あらエリコお帰り~。お迎え遅れてごめんね~。」

「うぅん!リョウキおじさんがいるから大丈夫!」

そう言われると、海はなんだかエリコを取られた気分になって石の様に固まる。次に嫉妬の眼差しでハンカチを食いしばりリョウキを睨むので、リョウキは思わず冷や汗。海はリョウキを睨み続けながら車の後部座席の扉を開くと言う。

「乗りなさい。」

「お、おう。」

戸惑いながらもリョウキはエリコと共に乗車すると、海も乗車し発進させる。するといつもの調子を取り戻した様子で言った。

「ねえ、リョウキくんは届いた?あの手紙。」

そう聞かれるとすぐにピンと来るのか、リョウキは眉を潜めて溜息。それから窓の外を眺めながらも言った。

「来ましたよ。」

「参加するでしょ?」

海がニコニコしながら聞くと、リョウキは怒りがフツフツと沸くのか微妙な表情。

「嫌です。あの男と美夜さんの結婚式だなんて…!」

リョウキはそこまで言うと、急に綺瑠の風邪を引いた日を思い出す。綺瑠の意外な一面を知れ、美夜の綺瑠への思いも強いと知れたあの日。それを思うと自分が間に入る隙など無いに等しいと感じる。リョウキは二度目の溜息を吐いて言った。

「…まあ、気が向いたら参加に丸つけときます。」

それを聞くなり、海は強く二度頷くのであった。



一方、ここは九州地方。
九州には実は、マヒルの故郷があるのだ。マヒルは家業の文具屋さんにて、子供に文具やお菓子を売っている。退店する子供を笑顔で見送った後、店の奥にある家から声がした。

「マヒル、手紙だよ。」

「えぇ?誰よ。」

そう言ってマヒルが家の方へ向かうと、そこにいる母親から手紙を貰った。その手紙が結婚式の招待状と知ると、マヒルは目を丸くする。

「そっか、結婚するんだ。」

納得した様子を見せたが、やがてある事に気づいて苦い顔を浮かべた。

「待って、なんでうちの住所知ってんの…!?」

思わず戦慄するマヒルであった。



そして場面は刑務所。
刑務所には捕まったヒナツとクルミとヒカリがいる。ヒナツは他の囚人と仲が悪いのか、気の強い同士で口喧嘩になっていた。対しクルミは大人しくしており、しかし非常につまらなそうに毎日を過ごしている様子。テーブルに肘をついてだるそうにしていた。
こんな相変わらずというか少し変わった二人に対し、ヒカリには大きな変化が出ていた。ヒカリは牢屋の中で一通の手紙を読み進めている。それはマキコからの手紙で、ヒカリは手紙を読みながらも笑みを浮かべた。今まで空虚な様子を見せていたヒカリは大きな心変わりがあったのか、少しずつ喜びを取り戻しているようであった。



お次は【朝露】と書かれた表札のある、立派な家にて。
この家はコトネの実家だ。コトネは商売道具の手入れをしており、それを両親と妹のカレンが心配そうに眺めていた。

「コト姉、本当に行くの?あの男の結婚式に。」

カレンに聞かれると、コトネは毅然とした様子で言う。

「ええ。だって、花嫁さんに気に入られちゃったみたいで。」

「えぇ…」

カレンは弱ってしまうが、コトネは心配する家族を見て思わず笑った。他の三人は首を傾げると、コトネは笑みを浮かべる。家族に想われるということを今一度感じているのか、胸に手を当てた。

「大丈夫、もうどうでもいいもの。心配ありがと。」



場面は変わり、広也と進也が通う中学にて。
広也と進也はいつも通り、友人の数成と共に休み時間を過ごしていた。数成は二人からとある話を聞いたのか目を丸くする。

「結婚式に僕を招待する?それまたなんでだ?」

「エリコにも会えるっすよ!」

進也がドヤ顔で言うと、広也は呆れ顔。数成はそれに笑ってしまうと言う。

「いいや、遠慮しておこう。僕が行くと、君達がうるさくなって式どころではなくなる。」

「確かにっすー!」

進也が目を剥いて納得すると、広也は進也の頭を軽くチョップした。

「お前は本当に黙れよ 本っ当にうっせーから」

「保証は出来ないっす。」

進也が即答すると、広也は進也に怒り顔を向ける。広也の怒りは進也の笑いを誘うだけなのか、進也は大爆笑していた。



次の場面は白原家。
白原家には璃沙と綺瑠がおり、綺瑠が不機嫌な表情を見せていた。この不機嫌加減は裏綺瑠の表情で間違いないだろう。綺瑠は璃沙に言う。

「美夜がまたアンと遊びに行ったよ。どうして、僕という伴侶がいながら…!」

「アンをなんだと思ってんだ、ただの友達だろ。」

璃沙は綺瑠の相手は疲れるのか、呆れた様子を見せていた。すると綺瑠はどんどんネガティブになるのか、床で寝転がりながらダンゴムシの様に丸まっていく。

「僕の魅力が足りなくて…アンの方が…!…どうせ僕なんか…。」

そのネガティブに耐えられないのか、璃沙は頭を抱えた。

「うるさいな!ネガティブになるな!お前には魅力が山ほどあるだろ!それはもう、美夜と結婚出来るくらいにな!」

そこまで言われると、綺瑠は驚いた様子を見せている。璃沙は綺瑠のポカンとした顔を見ると冷や汗を浮かべた。すると次の瞬間、綺瑠は錯乱した様子で璃沙から逃げ出す。

「なんか璃沙が優しい!怖い!!」

必死な様子で逃げる綺瑠に、璃沙は思わず投げやりな怒りを浮かべた。

「なんだよ悪いかッ!」

その怒りを見ると逆に落ち着くのか、綺瑠は大人しく戻ってくる。それを見ると璃沙は微妙な表情を見せた。

「お前本当にめんどくさいな。」



そして最後に、とあるファミレスにて。
美夜はアンとリッカと共にお洒落トークで盛り上がっていた。持ち寄った雑誌やブランドを写真越しで見せ合ったりしている。するとアンは美夜に聞いた。

「そう言えばもうすぐ結婚だね。楽しみ?」

美夜はそう聞かれると頬を真っ赤に染めるので、アンとリッカは思わずニヤニヤ。美夜は視線を泳がせながらも言う。

「楽しみというか…不安でいっぱいです…。」

「なんでー?普通ワクワクするでしょ!」

美夜の苦労を知らないリッカはそう言い、アンは逆に綺瑠に不満があるのかと考え始める始末。美夜はそんな二人を掠れた笑顔で眺めた後、窓の外から空を見上げた。

(今までの経験から不安な気持ちもあるけれど…。今度こそは大丈夫だって、そんな気がしてワクワクもしています。)

そう思って幸せな表情を浮かべる美夜。アンとリッカは一人表情豊かにしている美夜を見ると、顔を合わせて笑みを浮かべた。





そして遂に、美夜と綺瑠は結婚の日を迎える。
扉を前にした美しいウェディングドレスを身に纏った美夜は、ドキドキした様子で扉を見つめていた。
そうしている内に式場に音楽が流れ、扉が開かれる。美夜の見つめる先には、穏やかな笑みで待っている綺瑠。美夜は一歩ずつ進みながら、微かに視界に入る参列者を確認していた。誰もが二人のめでたい日を祝している。それを思うと、美夜は頬を赤らめた。

(平和な時間、静かな式場…。やっと、やっと私達は幸せな結婚式を挙げられる…。)

バージンロードを歩き終え、美夜が祭壇まで上ると挙式は進む。

(「以前」は日本の式場で、結婚式を小さく挙げたわよね。更に「その前」は、海外で挙げたい…って私が提案したっけ…。)

二人は神父に向かうと、神父は言った。

「夫たる者よ。汝、健やかなる時も、病める時も、常にこの者を愛し、慈しみ、守り、助け、この世より召されるまで固く節操を保つ事を誓いますか。」

「誓います。」

綺瑠は優しくそう答えた。続いて神父は美夜に問う。

「妻たる者よ。汝、健やかなる時も、病める時も、常にこの者に従い、共に歩み、助け、固く節操を保つ事を誓いますか。」

美夜はそう聞かれると、不思議と緊張も解けて言葉が出た。

「誓います。」

「それでは、指輪の交換を。」

神父の言葉に合わせて二人はお互いに指輪を交換する。

(でもどの結婚式も、失敗に終わった…。だけど…)

美夜は指輪がはめられて幸せの余韻に浸っていた。対し綺瑠は穏やかな笑みを浮かべ、美夜を見つめ続ける。美夜はみんなの前で見つめ合うなど恥ずかしくて視線を逸らしそうなのに、綺瑠は一切美夜から目を離さない。だから美夜も一生懸命、綺瑠から目を逸らさないようにする。

(だけど、今度こそは。)

すると綺瑠が声をかける。

「美夜、」

その言葉に美夜は微笑みを浮かべると、綺瑠はウェディングベール捲って嬉しさを交えた幸せな笑みを見せた。

「愛してる。」

こうして二人のシルエットが重なり合った時…。






 二人の願いは結ばれましたとさ。

                  Fin.
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