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14 ピンクシェル:直感
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璃沙の記録を見終えた三人は、暫く余韻に浸っていた。いいや、呆然としていたと言うのが正しいか。特に美夜は、動揺を覚えていた。
それは勿論…
(璃沙さんが……綺瑠さんの事を好きだった…?それなのに私、いつも璃沙さんに綺瑠さんとのノロケ話を…!)
美夜は罪悪感に満ちていた。広也は察しがついているのか、声をかけづらくしている。しかし勘の鈍い進也はと言うと、感動して涙を流していた。
「璃沙、綺瑠の事好きだったんすね…!」
広也は進也の様子に若干呆れつつも頭を掻く。
「どうやら 綺瑠が死んだ原因に綺瑠の元カノは絡んでいたみたいだな しかも 火達磨になっちまうとはな 犯人の顔も名前もわかんねぇ」
進也は涙を拭きながら言った。
「もしその元カノが綺瑠を刺さなかったら、全員助かってたっすか?」
広也は首を傾げる。
「あの爆発前に出口側へ逃げていれば助かっていたろうな」
進也はそれを聞いて虚しい表情をすると、広也は美夜に言った。
「ほら美夜 クヨクヨすんな どうせ綺瑠は一人の女のものにしかならねぇ 璃沙が綺瑠を好きだったとしても お前が落ち込む必要はない」
美夜は黙り込んでしまったが、やがて顔を上げた。
「そうね。」
美夜はそう言って、困った眉をしつつも微笑んだ。
「璃沙さんって、命令に忠実な人だから…きっと自分を表現するのが苦手なだけだと思うの…。」
そこまで言うと、真摯な表情で頷いた。
「よし!次こそ絶対に、綺瑠さんを死なせないわ!」
広也と進也はそれを目を丸くして聞いていたが、やる気が出てきていると知ると笑みを見せた。
「おう その粋だ」
「がんばるっすよ…!美夜!」
「うん!私、気が変わる前に行ってくる!」
美夜の言葉に二人は前向きな表情を浮かべる。
「行ってこい」
「行ってらっしゃいっす!」
二人の見送りに、美夜は笑顔で頷いた。
「ありがとう!行ってきます!」
そう言うと、美夜の容姿に変化が起こる。茶髪だった髪が漆黒に染まり、黒い瞳が真っ赤になり、ピンク色の肌が死んだように真っ白になった。美夜が淡く輝くと、美夜は目を深く閉じた。広也と進也は、笑みでそれを見送っている。その瞬間、美夜は時空を超えたのかその場から消えた。
美夜が消えた研究室。そんな中、笑顔で見送っていた広也と進也。進也は笑顔だった表情を急に崩し、再び涙を浮かべた。今度は感動の涙ではない、家族を失った悲しみの涙である。
「一気に三人も家族がいなくなったっす…」
どうやら進也は、辛さを我慢して笑みを見せていたようだ。広也はそれを知っていたのか、優れない表情に。進也は涙を流し、顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら広也に聞いた。
「兄貴はいなくならないっすよね…!?綺瑠や璃沙、美夜…【数成(カズナリ)】みたいに…!」
そう言った進也の手には、家族写真があった。綺瑠と璃沙と美夜と、進也と広也。そしてもう一人、広也と進也と仲良さそうにくっついている少年。進也は鼻水をすすってから言う。
「みんな大事な家族だったっす!でもみんな、呆気なくいなくなっちまったっす…!!」
それに対し広也は溜息。
「消えるかよ お前とオレは 切っても切れない双子だからな」
そう言って広也は再び璃沙のメモリーを遡っている。広也の言葉を聞いた進也は、元気のない笑みを見せると言った。
「そうっすね…!」
その時、広也はメモリーを見て驚いた顔をした。
「嘘だろ璃沙…」
広也が呟くので、進也は目を丸くした。
「璃沙がどうかしたっすか?」
進也が聞くと、広也はすぐにとあるメモリーを再生した。
――それは結婚式当日、璃沙が手紙で呼び出された時のメモリー。そこにはヒカリという女性がおり、璃沙と話をしていた。
「何の用だ。」
璃沙が言うと、ヒカリは言った。
「アナタの足止め。綺瑠を殺すって言ったら、アナタなら止めそうだからね。」
そう言われると、璃沙は驚いた様子になって言う。
「綺瑠を殺す…!?話が違うじゃないか!!」
璃沙はそう言って壁を拳で殴ると、ヒカリは笑う。
「ええ、アナタの情報には感謝するわ。式場の内装も、何もかも教えてくれて…」
そう言われ、璃沙は悔しそうにしていた。――
そのメモリーを見て、進也は愕然とした。
「え…?璃沙が、俺達を裏切ってたっすか…?綺瑠の元カノに情報教えてたって事っすか…?」
「そうなる」
流石の広也も驚いた様子のまま言うと、進也は信じられない様子で言う。
「なんで綺瑠と美夜を裏切ったっすか…?」
その質問に、広也は黙り込んで答えなかった。どう考えても、綺瑠の事で間違いないからだ。
美夜は目を覚ました。
気づいた場所は、見知った公園。しかも、公園の茂みに綺瑠と一緒に隠れていた。美夜はいつ頃かと思っていると、綺瑠の横顔を見て思い出す。
(戻ってきたのは確かにいつもの日なんだけど、時間がズレてる…!夕方になってるわ…!しかも綺瑠さんと一緒に、広也くんと進也くんを迎えに来ている時の…!そしてこのあと…!)
綺瑠は美夜の視線に気づくと、突然にも美夜の肩を掴む。美夜は顔を真っ赤にして驚いた。
(やっぱりぃ~!)
綺瑠は覗くのをやめて美夜をその場で押し倒す。綺瑠はニヤリと笑った。
「さっきさ、僕との子供が欲しいって言ったよね?」
美夜は紅潮する。
(来ました…!)
しかし、美夜はふと冷静になる。突然、涙を流す璃沙の姿が過ぎったのだ。更には、いつも阻止される結婚式。それらを思い出すと、美夜は思う。
(私って、綺瑠さんと結婚しない方がいいのかな…?)
美夜の様子が変であるのにも気づかず、綺瑠は言う。
「嬉しいんだ。僕も美夜と楽しー事たっくさんしながらね…?美夜をもっと愛したい…そう思ってたの…!」
すると、美夜は顔を逸らした。そうされると、綺瑠はやっと異変を感じて目を丸くした。
「ごめんなさい…。やっぱり結婚の事は…暫く考えさせてください。」
その言葉を聞くと、石のように固まってショックした様子になる。綺瑠は顔を真っ青にする。
「え…?」
「もう少し…考える時間が欲しいんです…。」
美夜の言葉に相当ショックを受けたのか、冷や汗を浮かべて愕然とする綺瑠。美夜は綺瑠の表情を伺う。
(言い過ぎたかな…?裏の綺瑠さん、繊細だから…。)
その瞬間、裏の綺瑠は塞ぎ込んだ。美夜の隣で体育座りをして綺瑠は呟く。
「死にたい…最愛の人に愛されないなんて生きてる意味ないよ僕…リ○カしよ…」
美夜は慌てた様子になって言った。
「ま、待ってください綺瑠さん!別に私はそういう意味で言ったんじゃなくて…!単純に元カノさんにそういう…悪事をされる事も考慮して今だけ距離を…」
美夜が言うと、綺瑠は無表情ながらも目に火を灯していた。
「だったら元カノ全員、僕達の前に現れる事ができないようにすればいいよね…?」
この綺瑠はきっと本気である。それを知っている為、美夜は強めに言う。
「それはダメですぅ!!」
そう言われると綺瑠は膨れ、不貞腐れた様子になった。
「なんで…嫌だ、待った嫌い。」
そんな綺瑠に美夜はハートを打ち抜かれながらも、心を鬼にして対処する。
「い、いいですか?我慢をしてからこそ、結婚時の楽しみもアップするんですよ…!」
しかし綺瑠は解せないのか不貞腐れたまま。美夜は冷や汗を大量に流しながらも続けた。
「そ、それに!裏綺瑠さんは少し鬱っぽい気がします。もう少し周囲の人と関わってみましょ!例えば…他の女性とか?」
綺瑠は美夜を見て目を細めた。
「僕は美夜以外にいない。」
その時、美夜は我に戻った。美夜は自分が言った事を思い返すと、勢いが落ち着いた。
(私、今なんで他の女性を推奨するような事を綺瑠さんに…。まさか、璃沙さんの事が心残りで…。)
美夜が思っていると、綺瑠は元気のない美夜の様子を眺めていた。綺瑠は立ち上がると言う。
「美夜、一体何があったの?僕に隠し事?」
「えっ…いや…」
美夜が声を細くすると綺瑠は眉を潜め、焦りと動揺が混ざった表情をした。綺瑠は美夜の肩を掴んで言う。
「ねぇ、何を隠してるの?僕に何か足りないものでも…!?美夜、僕から離れようとしちゃ駄目だ!」
美夜も綺瑠もは焦りを覚えた表情をしていた。美夜を繋ぎ留めたい綺瑠と、綺瑠を追い詰めるつもりがなかった美夜。予想外の反応に美夜も言葉に迷う。
「え、えっと…」
(大変、不安を煽るような事を言うんじゃなかった…!)
「違うんです!今のは口が滑ったというか…!」
必死に弁明を行うが綺瑠の不安を煽るだけで、綺瑠は珍しく声を荒らげた。
「口が滑ったって何!?美夜は僕に何か隠してるんでしょ!?」
綺瑠はそう言うと無理に美夜の腕を引っ張る。
「綺瑠さん、どこへ…?」
「家。」
どこへ連れられるか不安だった為か、美夜は家と聞いてホッとした様子。
「進也くんと広也くんのお迎えはいいの…?」
「いい、別にまた二人は遊んでるだけだろうから。」
淡々と喋る綺瑠に、美夜は違和感を感じていた。
(棒声なのは裏綺瑠さんはいつも通りなんだけど…なんかいつもと違う様な…。)
家に着くと、綺瑠は車の方までやってきた。「なぜ車?」と美夜は思って目を丸くすると、綺瑠は美夜を車に押し込んだ。
「きゃ!」
無理に後部席に寝かされ、車は発進する。美夜は綺瑠が何をするのか、全く理解できなかった。
「綺瑠さん!?急になんですか!?」
車を運転しながらも、綺瑠は腰についてるウェストポーチから携帯の様な機械を取り出す。綺瑠はそれを眺めながら言った。
「この機械があると、璃沙にGPSで追われるから捨てとくか。」
そう言って車の窓から投げ捨てるので、美夜は嫌な予感がした。美夜が青ざめると、綺瑠は「ふふっ」と怪しく笑う。ミラーに映る綺瑠の表情は、狂気的な笑みへと変わっていた。
「美夜が僕から離れようとするのはさ、僕の愛が足りないからだよね?」
「え…?」
美夜が恐怖を覚えた表情で呆然とすると、綺瑠は言う。
「大丈夫、僕が教えてあげるから。愛を全部。」
「愛…?」
美夜はそのワードを聞くと、どうも悍ましく感じる。背筋を凍らせ、美夜は顔を青くして俯いた。
(裏の綺瑠さんはいつも、『愛』と言って彼女を監禁し暴力を奮ってきた…。この綺瑠さんは、暴力を愛情表現だと思っていた人だから…。その愛が、私に向こうとしている…?)
美夜はそう思いながら、身体が震えた。
それは勿論…
(璃沙さんが……綺瑠さんの事を好きだった…?それなのに私、いつも璃沙さんに綺瑠さんとのノロケ話を…!)
美夜は罪悪感に満ちていた。広也は察しがついているのか、声をかけづらくしている。しかし勘の鈍い進也はと言うと、感動して涙を流していた。
「璃沙、綺瑠の事好きだったんすね…!」
広也は進也の様子に若干呆れつつも頭を掻く。
「どうやら 綺瑠が死んだ原因に綺瑠の元カノは絡んでいたみたいだな しかも 火達磨になっちまうとはな 犯人の顔も名前もわかんねぇ」
進也は涙を拭きながら言った。
「もしその元カノが綺瑠を刺さなかったら、全員助かってたっすか?」
広也は首を傾げる。
「あの爆発前に出口側へ逃げていれば助かっていたろうな」
進也はそれを聞いて虚しい表情をすると、広也は美夜に言った。
「ほら美夜 クヨクヨすんな どうせ綺瑠は一人の女のものにしかならねぇ 璃沙が綺瑠を好きだったとしても お前が落ち込む必要はない」
美夜は黙り込んでしまったが、やがて顔を上げた。
「そうね。」
美夜はそう言って、困った眉をしつつも微笑んだ。
「璃沙さんって、命令に忠実な人だから…きっと自分を表現するのが苦手なだけだと思うの…。」
そこまで言うと、真摯な表情で頷いた。
「よし!次こそ絶対に、綺瑠さんを死なせないわ!」
広也と進也はそれを目を丸くして聞いていたが、やる気が出てきていると知ると笑みを見せた。
「おう その粋だ」
「がんばるっすよ…!美夜!」
「うん!私、気が変わる前に行ってくる!」
美夜の言葉に二人は前向きな表情を浮かべる。
「行ってこい」
「行ってらっしゃいっす!」
二人の見送りに、美夜は笑顔で頷いた。
「ありがとう!行ってきます!」
そう言うと、美夜の容姿に変化が起こる。茶髪だった髪が漆黒に染まり、黒い瞳が真っ赤になり、ピンク色の肌が死んだように真っ白になった。美夜が淡く輝くと、美夜は目を深く閉じた。広也と進也は、笑みでそれを見送っている。その瞬間、美夜は時空を超えたのかその場から消えた。
美夜が消えた研究室。そんな中、笑顔で見送っていた広也と進也。進也は笑顔だった表情を急に崩し、再び涙を浮かべた。今度は感動の涙ではない、家族を失った悲しみの涙である。
「一気に三人も家族がいなくなったっす…」
どうやら進也は、辛さを我慢して笑みを見せていたようだ。広也はそれを知っていたのか、優れない表情に。進也は涙を流し、顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら広也に聞いた。
「兄貴はいなくならないっすよね…!?綺瑠や璃沙、美夜…【数成(カズナリ)】みたいに…!」
そう言った進也の手には、家族写真があった。綺瑠と璃沙と美夜と、進也と広也。そしてもう一人、広也と進也と仲良さそうにくっついている少年。進也は鼻水をすすってから言う。
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それに対し広也は溜息。
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そう言って広也は再び璃沙のメモリーを遡っている。広也の言葉を聞いた進也は、元気のない笑みを見せると言った。
「そうっすね…!」
その時、広也はメモリーを見て驚いた顔をした。
「嘘だろ璃沙…」
広也が呟くので、進也は目を丸くした。
「璃沙がどうかしたっすか?」
進也が聞くと、広也はすぐにとあるメモリーを再生した。
――それは結婚式当日、璃沙が手紙で呼び出された時のメモリー。そこにはヒカリという女性がおり、璃沙と話をしていた。
「何の用だ。」
璃沙が言うと、ヒカリは言った。
「アナタの足止め。綺瑠を殺すって言ったら、アナタなら止めそうだからね。」
そう言われると、璃沙は驚いた様子になって言う。
「綺瑠を殺す…!?話が違うじゃないか!!」
璃沙はそう言って壁を拳で殴ると、ヒカリは笑う。
「ええ、アナタの情報には感謝するわ。式場の内装も、何もかも教えてくれて…」
そう言われ、璃沙は悔しそうにしていた。――
そのメモリーを見て、進也は愕然とした。
「え…?璃沙が、俺達を裏切ってたっすか…?綺瑠の元カノに情報教えてたって事っすか…?」
「そうなる」
流石の広也も驚いた様子のまま言うと、進也は信じられない様子で言う。
「なんで綺瑠と美夜を裏切ったっすか…?」
その質問に、広也は黙り込んで答えなかった。どう考えても、綺瑠の事で間違いないからだ。
美夜は目を覚ました。
気づいた場所は、見知った公園。しかも、公園の茂みに綺瑠と一緒に隠れていた。美夜はいつ頃かと思っていると、綺瑠の横顔を見て思い出す。
(戻ってきたのは確かにいつもの日なんだけど、時間がズレてる…!夕方になってるわ…!しかも綺瑠さんと一緒に、広也くんと進也くんを迎えに来ている時の…!そしてこのあと…!)
綺瑠は美夜の視線に気づくと、突然にも美夜の肩を掴む。美夜は顔を真っ赤にして驚いた。
(やっぱりぃ~!)
綺瑠は覗くのをやめて美夜をその場で押し倒す。綺瑠はニヤリと笑った。
「さっきさ、僕との子供が欲しいって言ったよね?」
美夜は紅潮する。
(来ました…!)
しかし、美夜はふと冷静になる。突然、涙を流す璃沙の姿が過ぎったのだ。更には、いつも阻止される結婚式。それらを思い出すと、美夜は思う。
(私って、綺瑠さんと結婚しない方がいいのかな…?)
美夜の様子が変であるのにも気づかず、綺瑠は言う。
「嬉しいんだ。僕も美夜と楽しー事たっくさんしながらね…?美夜をもっと愛したい…そう思ってたの…!」
すると、美夜は顔を逸らした。そうされると、綺瑠はやっと異変を感じて目を丸くした。
「ごめんなさい…。やっぱり結婚の事は…暫く考えさせてください。」
その言葉を聞くと、石のように固まってショックした様子になる。綺瑠は顔を真っ青にする。
「え…?」
「もう少し…考える時間が欲しいんです…。」
美夜の言葉に相当ショックを受けたのか、冷や汗を浮かべて愕然とする綺瑠。美夜は綺瑠の表情を伺う。
(言い過ぎたかな…?裏の綺瑠さん、繊細だから…。)
その瞬間、裏の綺瑠は塞ぎ込んだ。美夜の隣で体育座りをして綺瑠は呟く。
「死にたい…最愛の人に愛されないなんて生きてる意味ないよ僕…リ○カしよ…」
美夜は慌てた様子になって言った。
「ま、待ってください綺瑠さん!別に私はそういう意味で言ったんじゃなくて…!単純に元カノさんにそういう…悪事をされる事も考慮して今だけ距離を…」
美夜が言うと、綺瑠は無表情ながらも目に火を灯していた。
「だったら元カノ全員、僕達の前に現れる事ができないようにすればいいよね…?」
この綺瑠はきっと本気である。それを知っている為、美夜は強めに言う。
「それはダメですぅ!!」
そう言われると綺瑠は膨れ、不貞腐れた様子になった。
「なんで…嫌だ、待った嫌い。」
そんな綺瑠に美夜はハートを打ち抜かれながらも、心を鬼にして対処する。
「い、いいですか?我慢をしてからこそ、結婚時の楽しみもアップするんですよ…!」
しかし綺瑠は解せないのか不貞腐れたまま。美夜は冷や汗を大量に流しながらも続けた。
「そ、それに!裏綺瑠さんは少し鬱っぽい気がします。もう少し周囲の人と関わってみましょ!例えば…他の女性とか?」
綺瑠は美夜を見て目を細めた。
「僕は美夜以外にいない。」
その時、美夜は我に戻った。美夜は自分が言った事を思い返すと、勢いが落ち着いた。
(私、今なんで他の女性を推奨するような事を綺瑠さんに…。まさか、璃沙さんの事が心残りで…。)
美夜が思っていると、綺瑠は元気のない美夜の様子を眺めていた。綺瑠は立ち上がると言う。
「美夜、一体何があったの?僕に隠し事?」
「えっ…いや…」
美夜が声を細くすると綺瑠は眉を潜め、焦りと動揺が混ざった表情をした。綺瑠は美夜の肩を掴んで言う。
「ねぇ、何を隠してるの?僕に何か足りないものでも…!?美夜、僕から離れようとしちゃ駄目だ!」
美夜も綺瑠もは焦りを覚えた表情をしていた。美夜を繋ぎ留めたい綺瑠と、綺瑠を追い詰めるつもりがなかった美夜。予想外の反応に美夜も言葉に迷う。
「え、えっと…」
(大変、不安を煽るような事を言うんじゃなかった…!)
「違うんです!今のは口が滑ったというか…!」
必死に弁明を行うが綺瑠の不安を煽るだけで、綺瑠は珍しく声を荒らげた。
「口が滑ったって何!?美夜は僕に何か隠してるんでしょ!?」
綺瑠はそう言うと無理に美夜の腕を引っ張る。
「綺瑠さん、どこへ…?」
「家。」
どこへ連れられるか不安だった為か、美夜は家と聞いてホッとした様子。
「進也くんと広也くんのお迎えはいいの…?」
「いい、別にまた二人は遊んでるだけだろうから。」
淡々と喋る綺瑠に、美夜は違和感を感じていた。
(棒声なのは裏綺瑠さんはいつも通りなんだけど…なんかいつもと違う様な…。)
家に着くと、綺瑠は車の方までやってきた。「なぜ車?」と美夜は思って目を丸くすると、綺瑠は美夜を車に押し込んだ。
「きゃ!」
無理に後部席に寝かされ、車は発進する。美夜は綺瑠が何をするのか、全く理解できなかった。
「綺瑠さん!?急になんですか!?」
車を運転しながらも、綺瑠は腰についてるウェストポーチから携帯の様な機械を取り出す。綺瑠はそれを眺めながら言った。
「この機械があると、璃沙にGPSで追われるから捨てとくか。」
そう言って車の窓から投げ捨てるので、美夜は嫌な予感がした。美夜が青ざめると、綺瑠は「ふふっ」と怪しく笑う。ミラーに映る綺瑠の表情は、狂気的な笑みへと変わっていた。
「美夜が僕から離れようとするのはさ、僕の愛が足りないからだよね?」
「え…?」
美夜が恐怖を覚えた表情で呆然とすると、綺瑠は言う。
「大丈夫、僕が教えてあげるから。愛を全部。」
「愛…?」
美夜はそのワードを聞くと、どうも悍ましく感じる。背筋を凍らせ、美夜は顔を青くして俯いた。
(裏の綺瑠さんはいつも、『愛』と言って彼女を監禁し暴力を奮ってきた…。この綺瑠さんは、暴力を愛情表現だと思っていた人だから…。その愛が、私に向こうとしている…?)
美夜はそう思いながら、身体が震えた。
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