デッドエンド・ウェディング

うてな

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19 クリソプレーズ:休息

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本郷の家にて。
美夜とエリコは楽しそうに遊んでいた。エリコはすっかり美夜に打ち解けたのか、笑顔に笑い声を上げるほどにまでなっている。美夜は怪物人形を持ち、エリコはロボット人形を持っていた。

「ヒ~ロ~ぱ~んち!」

エリコはそう言ってロボット人形を使い、怪物人形にパンチ。すると美夜は怪物人形を倒して言った。

「ぐぅ~やられた~!」

そう言うと、エリコは陽気に笑う。その無邪気な笑顔に、美夜は思わず安心した。

(良かった。最初はギスギスした様子だったけど、どうやら緊張が解けたみたい。)

「我等の綺羅星、ダイナスペース号!」

エリコはそう言って笑うと、美夜は目を丸くした。

「そう言えばこのロボット人形って、かなり昔に流行っていたアニメのロボットよね。」

(それも、綺瑠さんが大好きなアニメの…)

美夜は不思議に思うと、エリコは人形を抱き抱える。それから俯き、もじもじして言った。

「ママから貰ったの…」

「お母さんから?」

美夜が笑顔を見せると、エリコは首を横に振った。それからエリコはリビングの固定電話の乗った棚の方へ走る。美夜も追いかけると、そこには写真が飾ってあった。
エリコと同じ髪色をした、メッシュを入れたお洒落な男性。ヒナツと赤ん坊のエリコの三人で写っていた。幸せそうな男性の笑顔とヒナツの普段通りの笑み、眠っている赤ちゃんエリコ。ひと目では温かい家族だ。
美夜が目を丸くすると、エリコは男性を指差して言う。

「これが、ママ。」

「え?本郷さんじゃないの?」

そう聞くとエリコは首を横に振った。

「こっちはお母さん、こっちはママ。」

と、明らか男性の方をママと言っている。
美夜は目を丸くして見ていたが、やがてその理由に気づいた。

「あ!この人、綺瑠さんの親戚…!確かオネエなんだっけ…。エリコちゃんのお父さんだよね。」

「うん。だからママなんだよ。」

エリコが言うと、美夜は思わず苦笑。

(わかりにくい…!)

「本当にたまになんだけどね、お母さんにナイショでママが会いに来てくれるの。」

そう語るエリコはなんだか嬉しそうだ。エリコの言葉に、美夜は目を丸くしてその男性の写真を見つめた。

(そっか。綺瑠さんと本郷さんって、付き合う前から接点があったのね。
にしても、本郷さんはなんで親戚さんと別れたんだろ。綺瑠さんの親戚さん、チャラチャラはしているけど悪い人には見えなかったわ。)

美夜は不思議に思って考えていると、エリコは聞いた。

「ママを知ってるの?」

「え、ええ。何度か会った事があるのよ。ママさんは私の彼氏と大の仲良しで。」

そう言って美夜は微笑むと、エリコは笑顔で頷く。

「かれしって…パパの事?そうだよね、ママとパパは仲良しだもん。」

そう聞かれると、美夜は目を丸くした。

「パパ?綺瑠さんの事、パパって呼んでるの?」

「私のパパになるんだって、パパ言ってたんだって。」

美夜は顔を真っ青にした。綺瑠がエリコの父親になるという事は、ヒナツと寄りを戻すのではと考えたからだろう。

(いつ!?だってエリコちゃん七歳よね!?綺瑠さんと本郷さんが付き合ってたのは六年前だし…!)

その時だ、家に誰かが入ってきた。するとエリコは咄嗟に美夜の背に隠れる。

「エリコちゃん?」

美夜は言ったが、そこにやってきたのはヒナツの弟であるリョウキ。リョウキは美夜を見つけると、目を輝かせた。まるで運命の再会を果たした様子で、それでもって犬の様だった。

「美夜さん…!なんで姉貴の家に!?」

「りょ、リョウキくん…」

美夜はそう言ったが、とある事を思い出した。
タイムスリップをする前の事。綺瑠が死んだと聞いても、平然としていたリョウキの事を。それを思い出すと、美夜の表情はあまり優れなかった。

「こ、こんにちはリョウキくん。」

リョウキは機嫌がいいのか、エリコと美夜を見てニコニコ。

「なんだエリコ、美夜さんと遊んで貰ってんのか?いいなぁ、俺も美夜さんに遊んで貰いたいぜ。」

美夜は気不味い様子ながらも、笑顔を見せる。

「今日は何の用で来たの?」

するとリョウキは美夜の傍に来ると、徐々に距離を詰めてきた。美夜は少し離れたが、リョウキは真剣な表情。

「聞いたぜ、あのクズ男に監禁されたんだってな。もうあんな男やめてさ、俺と付き合わねぇか?」

リョウキは美夜の肩に手を伸ばすと、美夜は反射的にその手を払ってしまった。リョウキは驚いた顔をして、それから美夜を睨む。

「なんだよ、そんなにあの男がいいのか?美夜さんも姉貴みたいに、傷だらけになるぞ。」

「綺瑠さんはそんな事しない…!私を監禁はしたけど、それでも暴力なんてしなかったもの…!」

そう言うと、エリコは美夜の服をギュッと握った。
その力に美夜は気づくと、エリコの視線に気づく。エリコはリョウキを睨んでいた。

(エリコちゃんはリョウキくんが苦手なのかしら…)

美夜が思っていると、リョウキもその視線に気づく。するとリョウキはエリコを睨み、エリコに手を伸ばしながら言った。

「なんだよその顔は。そういう顔はあのオカマと同じなんだな。」

伸ばされた手を見てエリコの危機を感じ、美夜はエリコを庇った。

「やめて!」

そうされ、エリコはまさか庇われるとは思わなかったのか驚いた顔をしている。美夜はエリコの頭を撫でながら、勇敢な表情でリョウキに言った。

「エリコちゃんに手を出したら、本郷さんだって黙ってないわ。」

それを聞いた途端、エリコは明らかに俯く。しかし、美夜はリョウキを見ている為に気付かなかった。
その時だ。

「ただいまー!白原さん、璃沙さん連れてきたよ!」

とヒナツが元気よく帰ってきた。美夜はそれを聞くと、目を丸くする。

「え!」

リビングにヒナツと璃沙が顔を出すと、美夜は思わず顔が綻ぶ。

「璃沙さん…!」

美夜は嬉しくて言うと、璃沙は眉を困らせつつも微笑んだ。

「馬鹿…心配させやがって。」

リョウキはヒナツを見ると、ヒナツの方へやってきて言う。

「姉貴からも言ってやれよ、あのクズ男から離れろって。」

そう言われると、ヒナツは苦笑。ヒナツは美夜の前に来ると言った。

「白原さん、本当にこれでいいの?綺瑠の傍にこれ以上いたら、白原さんの自由がどんどんなくなっていくわよ?」

美夜は何度も周りに似たような事を言われる為か、同じ言葉で反論するのも億劫に感じるようになってきていた。それを見かねたヒナツは微笑む。

「ま、ゆっくり考えなさい。今日は私の家で飲み会を開く事になったの。勿論白原さんも参加だから、楽しんでね。」

そう言ってヒナツは仕事部屋へ向かう。璃沙はヒナツがいなくなったのを確認して美夜の元へ。

「大丈夫か美夜、綺瑠に何もされなかったか?」

「えっ…」

そう言うと美夜は顔が真っ赤に。裏綺瑠が迫ってきたり、表の綺瑠と抱きしめ合って寝落ちした事を思い出しているのだろう。
平気そうな美夜に璃沙は目を丸くすると、美夜は誤魔化すように笑った。璃沙はそれを聞いて少し間を空けたが、それから言う。

「飲み会、一人知らない人が参加するらしい。私も参加しろって言われたから、私と話しながら時間でも潰すか。」

「え、ええ…」

美夜が返事をすると、璃沙は悩んだ顔を見せた。美夜は璃沙の様子に気づく。

「璃沙さん?元気が無いようですが。」

すると璃沙はピクっと反応をした。それを誤魔化すように璃沙は別の話をする。

「あ、いや何でもない。綺瑠のヤツ、相変わらず美夜が好き過ぎて盲目になり勝ちだなって。
美夜に迷惑かけた分、どうしてやろうか考えてんだ。」

璃沙の「好き」というワードを聞いて、美夜は思い出した顔を浮かべる。

(そうだ。璃沙さんも綺瑠さんの事が好き…なんだよね。璃沙さんも私から綺瑠さんを奪い取りたいって思っているのかな?クルミさんみたいに…。)

美夜は俯いていたが、やがて心に決めて真摯な表情になる。

(私も綺瑠さんの事が好き。だから璃沙さんでも、綺瑠さんは渡さない。綺瑠さんも私の事を一途に見てくれているんだもの、私もそれに応えないと…!
そしていつか…!綺瑠さんと幸せな結婚式を…!)

美夜は再び、かつての目標を追い始めたのだった。



そんな皆とは別の部屋、仕事部屋にいるヒナツはと言うと。
ヒナツは誰かに電話をかけている様子だった。ヒナツは怪しい笑みを浮かべており、彼女のこんな表情は誰も見た事が無いだろう。ましてや、想像さえもしていないはずだ。

「そうそう、今日やっちゃうの。だからあなたも協力して。」

相手の話を聞きつつ、ヒナツはクスッと笑う。

「ええ勿論…【毒】で殺すのよ。早く…あの子の絶望顔を拝みたいわ。」

ヒナツはそう言い、堪えられない笑いを小さく上げる。
実はヒナツは…黒だった。
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