デッドエンド・ウェディング

うてな

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25 セレスタイト:博愛

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璃沙は台所にて、朝食の食器を洗っていた。璃沙は不穏な様子を見せる事もなく、普通そうにしている。そこに綺瑠がやってきた。

「璃沙、僕が代わるよ。」

「私の仕事だ。」

璃沙が冷たく言うと、綺瑠は再び考え込む。璃沙に避けられている気がする…綺瑠はそう感じ始めていた。それをリビングのソファーに座りながらも見守る、美夜と進也。すると綺瑠は閃いた顔をして、璃沙の手首を掴んだ。急に手首を掴まれ、璃沙は驚いた顔。

「そうだ璃沙、今から一緒に出かけよう!」

突然の事に若干の嫉妬を覚える美夜。璃沙も反応を見せたが、すぐに眉を潜めた。

「美夜と行ってこいよ、もうすぐ結婚するんだろ。」

「こんな様子の璃沙を放っておけないよ。」

すると璃沙は葛藤の様な苦しい表情を見せ、小さな声で言う。

「要らない…そういう親切…」

「だって、嫌なんだもん。」

綺瑠は目を丸くしてそう言った。璃沙は顔を上げて綺瑠の方を見ると、綺瑠は続けた。

「そんな暗い顔をした璃沙を見続けるの、僕は嫌だよ。璃沙が元気になるまで、僕は僕なりの愛を見せるよ。」

璃沙は眉を潜めた。

「愛って…美夜以外の女には言うなよ。美夜が悲しむぞ。」

「家族の愛は関係ないでしょ。」

綺瑠はそう言っていたが、璃沙は声を大にしてに言う。

「美夜が苦しむだろ!!」

突然声を大きくした璃沙に綺瑠は反応をする。綺瑠が美夜の方を見ると、美夜は嫉妬しているのか難しい顔。

「美夜…?」

綺瑠が呟くと、璃沙は続けた。

「お前が私に構う度、美夜は悲しい顔をする。いくらお前が『家族の愛』と『恋人の愛』を別と思っていても、私達から見たら違うんだよ…!そのくらいお前が見せる二つの愛は、同じくらい重いって事だよ…!」

そんな璃沙の目には、涙が浮かんでいた。綺瑠はその涙に気づいて呆然と璃沙の言葉を聞いていたが、やがて璃沙に手を伸ばす。綺瑠は璃沙の涙を拭ってあげると、璃沙はやっと自分が涙を流している事に気づく。綺瑠は眉を困らせながら言った。

「ごめん、僕には理解できない。家族が悩んでいるのに、恋人だけを優先にできないよ。恋人の為だけに、家族を蔑ろにするなんて僕にはできない。」

「そうじゃない…綺瑠…!」

璃沙は掠れた声で言うが、綺瑠は璃沙に微笑んだ。

「きっと美夜にだって、僕の為に璃沙を蔑ろにするなんてできないよ。大切な家族じゃないか。」

そう言われると、美夜はドキッと来た。以前まで大切な家族だった璃沙が、美夜の中ではもう敵としか見なされていないためである。綺瑠と自分の考えに大きな違いを感じ、美夜は思わず胸に手を当てて璃沙をジッと見つめた。それは璃沙も知っているのか、綺瑠の言葉で大人しくなる。綺瑠は首を傾げて璃沙を見ると、璃沙は無理に笑みを見せた。

「そ…そうだな。美夜は優しいから…」

そう言われ、綺瑠は璃沙に満点の笑顔を見せた。

「うん!それじゃ行こ!璃沙!」

そして璃沙は断る事も出来ず、力なく綺瑠に連れ去られてしまう。廊下に出た二人を、丁度やってきた広也が眺める。広也はリビングへ入ると、二人に聞いた。

「何があった?」

その問いに進也が答えようとすると、美夜は先に答えた。

「綺瑠さんが璃沙さんとお出かけしたいって…。綺瑠さんは璃沙さんに気を使ってだけど、璃沙さんは一緒に行っちゃった…。璃沙さん、やっぱりまだ綺瑠さんの事を諦めてないのかな…。」

美夜は俯いた様子で言うと、広也は顔一つ変えずに言った。

「璃沙は思いつめた表情だった あまりそういう事を考えてない顔だったがな」

「でも…!」

美夜が敵意を覚えた様子で言うと、広也はその上から話した。

「璃沙はロボットだが 人間と同じ心を持ってる 傷ついたばかりの璃沙が 楽しくお出かけなんてできやしねぇよ …その上なんだ? 『璃沙がまだ綺瑠を諦めてない』って 美夜は何様なんだ 璃沙にだって恋慕を抱く資格はある …それを成就させるかは別としてな」

そう言われると、美夜は聞き入れられない意見なのか黙り込んでしまう。そんな美夜を眉を潜めて見つめる広也。広也はリビングを出て進也に言う。

「ゲームやるぞ」

「わ、わかったっす!」

進也はそう言って、慌てて広也を追いかけた。美夜は部屋で一人になると、俯いて考え事。

(広也くんの言いたい事もわかるけれど…!どうにかして二人を離さないと、また私達が結婚式で殺される結末になってしまうかもしれない…。それだけは…!)



そして、進也の部屋にて。進也と広也は一緒に部屋で携帯ゲームをしていた。進也は言う。

「なーんか最近美夜、様子が変っすよね。」

「そうだな もしかしたら時間を遡り続けてっから 切羽詰まった状態なんじゃねぇか?」

「え…」

すると進也は、よそ見したせいでゲームをミスする。

「あ!負けたっす!」

そんな事お構いなしに、広也は続けた。

「焦ってるっつーか 璃沙を敵視してるっつーか 殺されかけたからにはそうなるのは当たり前だが 恐怖の対象と言うより嫉妬の対象って感じになってきた」

「嫉妬?」

進也は嫉妬という感情がよくわからないのか、首を傾げる。鈍感な様子の進也には慣れっこなのか、広也はわかりやすく言葉を噛み砕いてあげた。

「美夜って前々から 綺瑠が璃沙にベタベタするのを嫌に思ってたっつーか 顔をしかめてたんだよな」

「ん~、確かに考えてみたらそうっすね。」

進也は上の空で考えていたが、やがて眉を潜めて広也を見て言った。

「でも嫌に思う必要はないっすよ、元々綺瑠は美夜のものっすから!」

「綺瑠のスキンシップが激しいのもそうだが 単純にそういう間柄でも嫉妬を感じてしまうんだよ」

「美夜って意外と、独占欲あるんすね!」

進也は閃いた顔でそう言うと、広也はゲームを続けながら言う。

「美夜は綺瑠達に拾われる前は ずっと母親と二人きりで頑張ってきたからな 常に見守られてきたから 綺瑠が少しでも離れると不安なんだそうだ」

その気持ちもまた進也は理解できないのか首を傾げた。

「まるで美夜から聞いた口っすね、兄貴。」

「いや 能力で美夜の記憶を覗いだけだ だからわかる 美夜はオレ達が思う以上に 綺瑠と璃沙の間柄に嫉妬を感じてる」

それを聞いていた進也だが、すぐに笑顔を見せた。

「何か心配でもあるんすか?美夜はすっごく優しいっすから、何もしないっすよ!」

進也を流し目で見る広也。それから溜息を吐いた。

「美夜を凄く優しい人間だって思ってんの お前と綺瑠くらいだぞ」

すると進也は目を丸くした。

「じゃあ璃沙はそう思ってないんすか?」

「まあな 少なくとも 盲目になり勝ちな美夜だから 凄く優しい事はないな 今は自分と綺瑠の事だけを見ているような…俺はそんな気がするぜ」

「兄貴の話は難しいっす…。」

進也は難しい顔をして言うと、広也は話す事を切り上げようと再び溜息。

「後で璃沙のメモリーを見ようと思う 毒入りワインの時のメモリーとか そうしたら本当に璃沙が悪気があったのか わかるはずだ」

「そうっすね!それで悪気も何もなかったら、綺瑠と璃沙のわだかまりも解消できるっす!」

進也は目を光らせて言うと、広也は静かに頷くのであった。しかし広也は、その後すぐに俯いてしまう。

(正直 悪気がある線が強いだろうな… あんま期待できないはずだ…)

対し進也は、不安そうな表情を浮かべて天井を見つめていた。

(美夜が落ち込んでるんすか…。璃沙も美夜も…早く元気になって欲しいっす…。)

璃沙と美夜の間に溝が入った途端、この家の雰囲気は大きく変わってしまった。それは当人達の問題ではなくなり、関係のない進也や広也を心配させる始末となっていた。





綺瑠が璃沙を連れてやってきたのは、遊園地。璃沙は呆然とした。

(コイツ…本当に家族と恋人の割り切り方をわかってないな…。)

綺瑠は笑顔で言う。

「璃沙、ここ覚えてる?」

そう言われると、璃沙は反応を見せた。璃沙はその遊園地を見ると、驚いた様子になる。

「ここ…!」

「そう。僕と夢月ちゃんが遊んだ遊園地。」

それは璃沙にとって屈辱なのか、悔しそうな顔をして俯いた。

(私と夢月は一緒なのか…?)

綺瑠は続ける。

「夢月ちゃんは、この遊園地を気に入っているようだったからね。璃沙も同じかな?知りたくなってきちゃったんだ。」

「同じなわけ…」

璃沙が呟くと、綺瑠は璃沙の手を握った。例え璃沙が俯いたままでも、綺瑠は笑顔を向けてくれる。

「わかっているよ。璃沙はここで遊んだ事ないでしょ。だから感想を聞かせてよ。」

そう言われると、璃沙はふと顔を上げて綺瑠の笑顔を見つめた。綺瑠は手を引くので、思わず璃沙は歩みを進める。そのまま綺瑠が正面を向いて歩くと、璃沙は言った。

「わかった。」

「ありがとう。」

綺瑠は前を向きながらも、嬉しそうに言った。璃沙は俯きながらも、チラチラと綺瑠に視線を向けていた。

(やっぱり私はコイツに弱いな。)

そう思いつつも、綺瑠と遊園地で遊ぶ事となった。
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