嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶

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1章 嫌われ者は学園を去る

第5話

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 (なっ、なッななななにをするんだこのひとッッ!)

 固まってしまっていた僕はハッとして苛立ち混じりに舐められた手のひらを必死に制服のズボンで擦り続けた。

 (な、ななななななんで。なんでこッ、こんな変質者が学園の中にいるんだっ…!?)

 この学園の警備はこの国1番であるはずだ。侵入者が入ってくることは不可能に近いだろう。…ということはこの学園の関係者である可能性もなくはない。

 そう考えた僕がとりあえず僕と同じか少し上くらいに見える男が制服を着てるか確認しようとした時だった。
 未だズボンを擦り続けていた手首がガッと掴まれた。驚いて顔を上げるといつの間に距離を詰めたのか少し困ったような顔をした男が目の前に立っていた。

 掴まれた手を振り払おうとしたが、自分が非力なのかはたまた相手が怪力なのかなかなか振り払えなかった。しかし、掴まれただけでそれ以上危害を加えてくる様子はない。
 それを疑問に感じたものの、仕方なく諦めた僕は落ち着きを取り戻すためにもとりあえず相手を観察して現実逃避する。

 男の肌はこの辺りではあまり見ない褐色で、僕の病的なまでに白い肌とはひどく対照的だ。
 髪色までも僕と真反対で短く、少し癖のある黒髪は前髪を非対称に分けて毛先を遊ばせている。髪で少し隠れている耳には幾つもピアスが着いていた。
 顔のパーツはかなり整っていて中でも一際目立つのが目元だ。少し垂れ気味な目の中にはゴールデンベリルの様なオレンジ色が混じった金色の瞳があり、全体的に暗い色の彼によく映えていた。更に、目元は化粧でもしているのかなんだかキラキラとしていた。

 そのままじっくり観察しながら目線を下に下ろしていくと太く、それでいてスっとしている彼の首が目に入ったとき同時に彼の身につけている洋服が目に入った。
 白くカッチリとした洋服は瞳と同じ金色で縁取られており、幾つもの繊細な刺繍がされており決して華美では無い上品な美しさが見て取れる。


 、、、、、、、学園の制服でないな。


 嫌な汗が首筋を伝った。ただでさえ白い肌が更に青白くなる。
 学校関係者の可能性も無くはないが普通に考えて今まで1ミリたりとも見たことがないとかあるのか。─────いや、そもそもこんな美形だったら見たことがなくとも噂で聞いたりするだろう。8割がた不審者だろう。いや、変質者だ。どうするべきか。
 絶望的な状況に半泣きになり、もはや頭もまわらず放心状態でいた。

 「──── い、、ぉー、、い、、だ、、、ぶか、、、。」

 いっぱいいっぱいになって動かなくなった僕の目から耐えきれずポロリと涙がこぼれ落ちる。


 ぺろっ。、、、ちゅぅっ。


 「、、、、、、、、、、、、ッえ?」

 今、僕の涙舐められたのか?というか吸われたか?
 きょとんっとして男の目を見つめる。すると男は嬉しそうにキラキラと目を輝かせた。

 「やっと目が合ったな。すまない。まさかここまで………っておい。」

 怒涛の出来事にキャパオーバーだった僕は理解するより先に意識を手放した。





 
 
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