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9章【そんなに依存させないで】

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 ──まさか、ツカサと浴室でセックスをする日が二度もくるとは。

 カナタはつい数分前まで、考えてもいなかった。


「んん、あ……っ! は、ぁ……っ」


 内側に、ツカサの肉棒が押し入ってくる。
 それと共に、まるで便乗するように浴槽のお湯までもが……。

 二度目の感覚と言えど、慣れるはずもない。

 カナタは戸惑ったような色を含ませつつ、甘い声を漏らした。


「カナちゃん、苦しくない? 大丈夫?」


 優しく問いかけるツカサに、カナタは一生懸命、縦に頷く。

 ツカサの劣情が、カナタを犯している。
 しかもこんな、本来ならば性交に使わないような場所で……。

 カナタは懸命にツカサへしがみつき、快楽と羞恥に耐える。


「ナカ、凄い締め付け……っ。嬉しいのかな? それとも、気持ちいい?」
「どっち、も……っ」
「まだ挿れただけなのに? でも、素直なカナちゃんもエッチで可愛いよ」


 囁きながら、ツカサはカナタの後頭部を撫でた。

 挿れただけだというのに、はしたなく感じてしまっている。
 普段のカナタならば絶対に肯定しない言葉だったけれど、今日のカナタは違う。

 ツカサと離れていた時間が、想像よりも精神的に参っていたらしく……。


「ツカサ、さん……っ。動いて、ください……っ」


 らしくない言葉たちが、次から次へと溢れて仕方ない。


「オレ……ツカサさんが、ほしいです……っ」


 それでも、止めようとは思えなかった。

 当たり前のように在るものが、当り前じゃないと知って。
 たかが数時間離れていただけだというのに、予想以上に寂しかった。
 そばにいてくれるだけで、こんなにも胸が温まる。

 そして相手が、自分と同じくらいの愛情を持ってくれているのだ。


「我慢、できません……っ。ツカサ、さん……っ」


 だからこそカナタは、自分の気持ちを吐露することができる。

 そして、そんなツカサが相手だからこそ……。


「はっ、あ……っ! んっ、んぅ……っ!」


 カナタはどこまでも、浅ましい自分を晒すことができた。

 浴槽に満ちていた湯が、ユラユラと揺らめき始める。
 それは、ツカサが動いたからではない。


「あっ、ぁあ、っ! んっ、は……あぅ、んっ!」


 ──カナタが自ら、腰を振り始めたからだ。

 耳まで赤くなるほど恥じらっているというのに、カナタは自分の行動を止めようとは思わない。

 ツカサにしがみついたまま、カナタは何度も腰を振る。
 尻を上げて、ゆっくりと落とす。
 そしてまたゆっくりと尻を上げ、また落としての繰り返し。

 不慣れ且つ、湯の中という動きづらい状況。
 それでもカナタは、懸命に体を揺らし続けた。


「気持ち、いぃ……っ! ……ツカサさん、好きっ、大好きです……っ!」


 パシャパシャと、何度も湯が跳ねる音。

 あまりにも、カナタらしくない行動。
 決して激しくはない動きだが、それがどこかカナタらしい。

 自らの意思で動くカナタを見て、ツカサは瞳を細める。


「上手に動けて偉いね、カナちゃん」


 そんな、甘く優しい言葉を添えて。

 ツカサはカナタの頭を撫でながら、満足そうに囁く。


「嬉しいなぁ。カナちゃんが自分から、俺のをほしがってくれるなんて」
「んっ! あぁ、っ!」
「あはっ、可愛い。自分で気持ちいいところに当ててるの、俺には分かるよ? カナちゃんって本当に、そこを突かれるの好きだよね?」
「ひっ、あ、っ! んあっ、あ……っ! ……す、好き、好きです……っ、好き、ぃ……っ!」


 優しくされると、堪らなく満たされてしまう。

 カナタはツカサの耳元で、何度も『好き』という言葉をこぼした。




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