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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
135.まだよくわからない(延夕玲視点)
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想いは彼の元にはないのに、自分が彼の”つがい”だということを知ってしまった。
どうして想う人の”つがい”が妾ではないのだろう。彼に八つ当たりするように泣いたあの日、少しだけすっきりしたような気がしたが、数日もするとまたもやもやしたものが戻ってきてしまった。
* *
延夕玲は白虎の眷属である白雲に想いを寄せていた。それは恋に恋する少女特有の熱病のようなものだったが、本人は気づいていなかった。四神の眷属の”つがい”は人であることもあるのだと聞き、望みをこめた。
けれど。
やっと会えたと思った時には、白雲に”つがい”がいた。
しかもその”つがい”は人だったのである。
こんな残酷なことがあるだろうか。しかも夕玲は青龍の眷属である青藍の”つがい”だったのだ。
「妾は……貴方を好きにはなりません」
「それでも、そなたは我の”つがい”だ」
青藍は夕玲の行動を把握しているらしく、よく姿を見かけた。しかもいつのまに鄭嬷嬷を手懐けたのか、食事を共にとることになっていた。
「青藍さま……鄭嬷嬷は……」
「彼女は朝と夕方に来ることにしたそうだ。皇太后にもそのように手紙をしたためたから問題ない」
夕玲は絶句した。
「あの、青藍さま」
「なんだ」
「その、四神の眷属というのは……みな青藍さまのように強引に物事を進められるのですか……?」
青藍はほんの少し目を細めた。
「己の”つがい”に対して、ということならばそう大して変わりはないはずだ」
「そ、そうなのですか」
悪びれもせず即答され、夕玲はどぎまぎした。そういえば白雲も侍女頭である陳に迫っていたように記憶している。ということは紅夏もまたかなり強引に紅児に迫っているのではないかと想像して、夕玲は複雑な気持ちになった。
「”つがい”は我ら四神の眷属にとっての唯一無二。いくら花嫁さまとて我らの邪魔をすることは許されぬ」
いつのまにか大きな柱に追い詰められていて、夕玲を囲うように青藍は片手を柱に当てた。いわゆる壁ドンならぬ柱ドンである。
「青、青藍さま……」
戸惑う夕玲の手を取り、その甲に青藍は口付けた。
「青藍さま!?」
「まだ我は若い。そしてそなたは良家の娘だと聞いている。だから花嫁さまがどの神に嫁ぐか決められるまで待とうと思う」
「…………」
何を待つつもりなのか。夕玲には知識がないのでわからない。だからといってここで聞いてはいけないのだろう。香子のように墓穴を掘りまくるのはごめんだった。
夕玲は肯定も否定もしなかった。青藍は確かに強引だったが、夕玲をいつだって愛しくてならないという眼差しで見つめていた。その視線が心地よかった。今までそんな風に求められたこともなかったから。ただ、と夕玲も思う。
(四神の眷属が美しいから、嫌悪感がないだけかもしれないわ)
これが普通の男性だったなら、夕玲は嫌がっていたかもしれない。それぐらい容姿というものは重要だと夕玲も思っている。だが自分を純粋に求めてくれるというところに心が動いた。夕玲にとって結婚といえば親や皇太后が決めるものだと思っていたから。選択肢はないが、青藍が近くにいて自分自身を見てくれていることがかけがえのないもののように感じたのだ。
そうこうして過ごしているうちに花嫁が皇后に呼ばれた。皇后が花嫁の為に布を買い求めたのだという。皇后はどういうわけか花嫁を敵視しているので危険だと思ったが、花嫁はあっけらかんとしていた。そして花嫁が怒っていたのは皇后に対してではなく、皇帝の対応であったということを知り夕玲は衝撃を受けた。その話をなんともなしに青藍にすると、
「花嫁さまは女性の味方だ。だからどうしても困ったことがあれば花嫁さまを頼るといい。もちろん、我にも話してはほしいが」
「……もし、妾が青藍さまのことを困っていると花嫁さまにお伝えしたなら……」
「それはできぬ相談だ。だが、花嫁さまであればできるだけそなたの力になってくれるだろう」
夕玲はその言葉にほっとした。四神の眷属はちゃんと花嫁を尊重しているようだった。
「夕玲、我はそなたを娶るつもりでいる」
「……え」
唐突に言われ、夕玲はどんな顔をしたらいいかわからなくなった。
「だがまずは手順を踏めと花嫁さまに言われた」
夕玲は頷いた。
「そこでだ、そなたの両親と皇太后、どちらにまずは挨拶をするべきだろうか」
自分の気持ちの確認はしないのかとか、ぐるぐるといろいろなことが頭を巡ったが、元より自由恋愛などできる立場にはない。
「そ、そうですね……聞いてまいります」
そうは言ったものの夕玲は途方に暮れてしまった。
四神の眷属はどこまでも真面目で、真摯に夕玲を求めている。おそらくは両親よりも先に皇太后に挨拶をしてもらうべきなのだということはわかっているが、それを言うことはできなかった。
(私は……青藍さまのことを好きになるのかしら?)
それとももう好きなっているのか夕玲にはよくわからなかった。
ーーーーー
皇后の下りについては第二部98,99話以降を参照してください。
どうして想う人の”つがい”が妾ではないのだろう。彼に八つ当たりするように泣いたあの日、少しだけすっきりしたような気がしたが、数日もするとまたもやもやしたものが戻ってきてしまった。
* *
延夕玲は白虎の眷属である白雲に想いを寄せていた。それは恋に恋する少女特有の熱病のようなものだったが、本人は気づいていなかった。四神の眷属の”つがい”は人であることもあるのだと聞き、望みをこめた。
けれど。
やっと会えたと思った時には、白雲に”つがい”がいた。
しかもその”つがい”は人だったのである。
こんな残酷なことがあるだろうか。しかも夕玲は青龍の眷属である青藍の”つがい”だったのだ。
「妾は……貴方を好きにはなりません」
「それでも、そなたは我の”つがい”だ」
青藍は夕玲の行動を把握しているらしく、よく姿を見かけた。しかもいつのまに鄭嬷嬷を手懐けたのか、食事を共にとることになっていた。
「青藍さま……鄭嬷嬷は……」
「彼女は朝と夕方に来ることにしたそうだ。皇太后にもそのように手紙をしたためたから問題ない」
夕玲は絶句した。
「あの、青藍さま」
「なんだ」
「その、四神の眷属というのは……みな青藍さまのように強引に物事を進められるのですか……?」
青藍はほんの少し目を細めた。
「己の”つがい”に対して、ということならばそう大して変わりはないはずだ」
「そ、そうなのですか」
悪びれもせず即答され、夕玲はどぎまぎした。そういえば白雲も侍女頭である陳に迫っていたように記憶している。ということは紅夏もまたかなり強引に紅児に迫っているのではないかと想像して、夕玲は複雑な気持ちになった。
「”つがい”は我ら四神の眷属にとっての唯一無二。いくら花嫁さまとて我らの邪魔をすることは許されぬ」
いつのまにか大きな柱に追い詰められていて、夕玲を囲うように青藍は片手を柱に当てた。いわゆる壁ドンならぬ柱ドンである。
「青、青藍さま……」
戸惑う夕玲の手を取り、その甲に青藍は口付けた。
「青藍さま!?」
「まだ我は若い。そしてそなたは良家の娘だと聞いている。だから花嫁さまがどの神に嫁ぐか決められるまで待とうと思う」
「…………」
何を待つつもりなのか。夕玲には知識がないのでわからない。だからといってここで聞いてはいけないのだろう。香子のように墓穴を掘りまくるのはごめんだった。
夕玲は肯定も否定もしなかった。青藍は確かに強引だったが、夕玲をいつだって愛しくてならないという眼差しで見つめていた。その視線が心地よかった。今までそんな風に求められたこともなかったから。ただ、と夕玲も思う。
(四神の眷属が美しいから、嫌悪感がないだけかもしれないわ)
これが普通の男性だったなら、夕玲は嫌がっていたかもしれない。それぐらい容姿というものは重要だと夕玲も思っている。だが自分を純粋に求めてくれるというところに心が動いた。夕玲にとって結婚といえば親や皇太后が決めるものだと思っていたから。選択肢はないが、青藍が近くにいて自分自身を見てくれていることがかけがえのないもののように感じたのだ。
そうこうして過ごしているうちに花嫁が皇后に呼ばれた。皇后が花嫁の為に布を買い求めたのだという。皇后はどういうわけか花嫁を敵視しているので危険だと思ったが、花嫁はあっけらかんとしていた。そして花嫁が怒っていたのは皇后に対してではなく、皇帝の対応であったということを知り夕玲は衝撃を受けた。その話をなんともなしに青藍にすると、
「花嫁さまは女性の味方だ。だからどうしても困ったことがあれば花嫁さまを頼るといい。もちろん、我にも話してはほしいが」
「……もし、妾が青藍さまのことを困っていると花嫁さまにお伝えしたなら……」
「それはできぬ相談だ。だが、花嫁さまであればできるだけそなたの力になってくれるだろう」
夕玲はその言葉にほっとした。四神の眷属はちゃんと花嫁を尊重しているようだった。
「夕玲、我はそなたを娶るつもりでいる」
「……え」
唐突に言われ、夕玲はどんな顔をしたらいいかわからなくなった。
「だがまずは手順を踏めと花嫁さまに言われた」
夕玲は頷いた。
「そこでだ、そなたの両親と皇太后、どちらにまずは挨拶をするべきだろうか」
自分の気持ちの確認はしないのかとか、ぐるぐるといろいろなことが頭を巡ったが、元より自由恋愛などできる立場にはない。
「そ、そうですね……聞いてまいります」
そうは言ったものの夕玲は途方に暮れてしまった。
四神の眷属はどこまでも真面目で、真摯に夕玲を求めている。おそらくは両親よりも先に皇太后に挨拶をしてもらうべきなのだということはわかっているが、それを言うことはできなかった。
(私は……青藍さまのことを好きになるのかしら?)
それとももう好きなっているのか夕玲にはよくわからなかった。
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皇后の下りについては第二部98,99話以降を参照してください。
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