異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第3部 周りと仲良くしろと言われました

84.四神も複雑な気持ちになることがあるようです

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 お茶菓子、という量ではなかった。みなもうお茶以外は受け付けないようである。
 香子はいささか欲望を抑えきれなかったようだった。だが香子からしてみれば”おいしいは正義”である。その他にも”かわいいは正義”とかいろいろ持論はあるが今回は割愛する。

『なかなか得難い経験であったが……花嫁様はこれを妾に食べさせたくて声をかけたわけではあるまい?』
『はい……老仏爺老仏爺のご慧眼には恐れ入ります。実は、四神宮に送られてくる贈物の件でご相談がありまして……』

 香子は最近送られてくる物の傾向を話し、民族衣装などについて言及した。

『ほほう……各国の衣裳が送られてくるのか。確かにそれは困るやもしれぬのぅ』
『はい。着方もわかりませぬし、かとって着方を知る為に外部の者を招き入れるわけにも参りません。ただ本当に美しい衣裳ばかりなのでその布を使ってこちらの衣裳に仕立て直せないかと思ったのです』
『不可能ではなかろう。そういうことであれば近々仕立て屋を呼ぶことにしよう。次はそれらの衣裳を持参せよ。後は仕立て屋が考えるであろう』
『ありがとうございます。ですが中には加工ができぬものもあるやもしれません。その際は無理をしなくてもよいと仕立て屋に伝えていただけると幸いです』

 皇太后はそれを聞いて嘆息した。

『花嫁様はほんに気を使われるのぅ。かようなことは花嫁様が気にすることではあるまいに』

 皇太后はそしてにっこりした。

『じゃが、そこも花嫁様のよきところじゃ。民を思いやる優しい心根、万瑛ワンイン、そなたもそのようにあらねばならぬぞ』
『はい、肝に銘じます』
『そ、そんな大それたものではありません……』

 香子としては貧乏性が高じて、というやつではあるが皇太后はそうはとらなかったようだった。物は考えようである。
 恐縮しつつその日はそこでお開きになった。食べられなかったお菓子は包んでもらえたので、香子はほくほくしていた。ただそのお菓子をいつ食べるのかという問題もあるが。乾き物が主なので翌日でも食べられるだろうが、それを侍女たちが出してくれるかどうかは別である。香子としては持ち帰った菓子は自分以外が食べてくれても全然構わなかった。
 青龍に抱かれて四神宮に戻る。香子は景色を見ながら戻りたいと青龍に告げたので、走廊(廊下)をゆっくり歩いて戻ってもらった。途中他の侍女や官吏などに会ったが、香子は以前ほどは気にしなくてなっていた。抱かれて移動するのはもう今更である。四神が下ろしてくれないのだからしかたない。ここで下ろしてほしいなどと言っても青龍は絶対に下ろしてくれないし、機嫌も悪くなることは間違いなかった。

(私は人形、私は人形……)

 そう思ってやり過ごすこともしばしばである。慣れてはきていても恥ずかしさは変わらない香子だった。
 四神宮に戻ると、青龍はまっすぐ己の室に香子を運んだ。この当たり前に持ち帰りをされてしまうのもどうかと思う。

『青龍様、本日の結果をせめて伝えさせていただいても?』
『白雲が共にいただろう。あ奴が報告をすればいいことだ』

 それはそうなんだけど、とも香子は思ったが、青龍の目を見て何も言えなくなった。
 青龍はとても我慢していたのだ。青龍にとって香子に危害を加えようとした皇后は断罪すべき咎人とがにんだった。だが香子が許せというから聞いているだけである。青龍は何故香子が皇后を気遣うのか理解できない。そもそも理解する必要もない。
 だから今そのやり場のない思いは香子にのみ向けられていた。

『青龍様』

 青龍の足はまっすぐ寝室に向かう。香子は諦めた。今日は付き合ってもらったのだ。触れられるぐらいは許容しなければならないと香子はわかっていた。

『青龍様……抱かないでくださいね。夕食はみなでいただきたいので……』
香子シャンズ、今宵は……』
『そ、それは四神で相談していただければ……』

 香子は頬を染めた。そんなこと聞かないでほしいと香子は思う。

『わかった』

 青龍の口角が上がる。元々四神はあまり表情が動かない。青龍は特に動かないのだが、たまにこのように表情が動いた時、香子はどうしても見惚れてしまう。

(メンクイなんだからしょうがないよね! でも青龍様の言ったこととか忘れてないんだからっ!)

 150年も生きているのに子どものようなことを言った青龍を香子は思い出す。行動まではしていないが、そういうところは皇后と一緒だったではないかと思ってしまうのだ。しかしそれを言ったら逆鱗に触れてしまうかもしれないので香子は決して口には出さないし、心の中で呼びかけたりもしない。
 親しき中にも礼儀あり。ちょっと意味合いが違うかもしれないが、なんでも思ったことを言えばいいものではないと香子も思う。

『香子?』
『青龍様』

 覆いかぶさってきた青龍の口づけを受ける。今日は付き合ってくれてありがとう。そんな気持ちを籠めて香子は口づけに応えた。
 四神に対して、香子は自分が甘いことは自覚している。青龍のことだって今は愛しくてたまらないのだ。ただ、抱かれたら一日がかりだから躊躇してしまうけれど。

(誰かに嫁いだら……本当に愛欲の日々になっちゃうのかな……)

 香子は身震いした。想像しただけで、あらぬところが熱を持ったような気がした。
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