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第4部 四神を愛しなさいと言われました
46.イベントはこれで終わったのだと思います
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『なにかしら。読んでくれる?』
玄武は当たり前のように、香子を抱いたまま長椅子に腰掛けた。自分がいた方がいいと玄武は判断したのだろう。その心遣いが嬉しいと香子は思った。
延夕玲は困ったような表情をした。玄武がいる前で読み上げてもいいのかと考えているようである。
『読むがいい。我のことは気にするな』
玄武が夕玲を促した。
『かしこまりました……』
ためらいながらではあったが、夕玲はその書状を読んだ。時候の挨拶やら、美辞麗句は置いといて、内容としてはこうであった。
昨日の晩餐会には皇太后も出席していた。その皇太后の元に、四神とその花嫁に直接挨拶をしたいという申し出がいくつか舞い込んできたらしい。
それは主に国内の王(皇帝の親戚に当たる)や豪族たちで、皇太后は全て断るつもりだが中には厄介なのもいるという。四神宮に直接来ることは考えづらいが、しばし四神宮から出ない方がいいと書かれていた。
香子はため息をついた。
皇帝に言っても断られるのは間違いない。だからといって皇太后を困らせるのはいただけない。
『四神に挨拶はわかるけど、私に挨拶してどうするのかしら?』
香子は首を傾げた。侍女が淹れてくれたお茶を啜る。今日もお茶はとてもおいしいと、香子は口元に笑みをはいた。
『……我らに挨拶をしてどうするのか』
玄武が不機嫌そうに呟く。これは香子に挨拶をしたいという者たちに怒りを覚えているのだ。
『さぁ? でもただ挨拶だけで終わるわけはないわよね。もしかして皇后のところにも同様の問い合わせみたいなものがあるのかしら? そうしたら申し訳ないわ』
みなに聞こえるように言う。さすがに皇后にそういう陳情みたいなものがあったとしても、皇后はこちらには言ってこないだろう。皇太后は注意喚起をしてくれただけである。
『ふむ……江緑に声をかけた者たちはわかるだろうか』
『恐れながら申し上げます。おそらく全て記載しているかと』
『そうか』
玄武は少し黙って香子を抱きしめていた。きっと誰かに連絡をしているのだろうと思ったから、香子は玄武の腕の中でお茶を啜っていた。四神は背が高くて身体ががっしりとして安定しているから、腕の中に収まっていると安心する。それに随分慣れてきたなと香子は思った。
(どうしよう)
香子はぼんやりと思う。
四神の腕の中にいるのが好きになってしまった己に、香子は戸惑っていた。
今更といえば今更なのだが、香子はこちらに来てから感情のふり幅がどうにも安定しない。白虎に抱かれてようやく落ち着けるようにはなったが、それまでのメンタルはぐちゃぐちゃであった。
そして冬の大祭も終わり、後はもうイベントらしいイベントもない。
香子はこれから誰に嫁ぐかをしっかり考えなければならないのである。
『香子、如何した?』
玄武に声をかけられてはっとした。随分長くぼうっとしていたらしいということに、香子は気づいた。
『あ……終わりました?』
思わず香子は素で聞いてしまった。玄武が苦笑したのが伝わる。
『……そなたには全て筒抜けだな』
『どんなことを話していたのかは知りませんよ?』
香子にできるのは想像することぐらいだ。
『そなたが知る必要はないが……不安があるならば話そう』
香子は胸が熱くなるのを感じた。随分と四神は丸くなったと香子は思う。玄武は最初から包容力があって好ましかったが、だんだんそこから嫉妬心とかいろいろな感情が見えて翻弄されたりもした。それでもやっぱり好きだなぁと香子は思う。
『んー……趙に伝えた方がいい内容であれば、私も知っておいた方がいいとは思います』
『そうか。ではまた夜に』
『はい』
玄武が離れていくのが寂しいと思ったが、さすがに着替えなければならないだろう。香子は睡衣に長袍を羽織った状態で運ばれてきているので、このままでは部屋の外には出られない。
玄武が部屋を出てから、香子は侍女たちに着替えを手伝ってもらった。
香子からすると、四神宮自体は家の中にいるようなものだから睡衣のままでもいいような気がする。だが食事をしようと思ったら食堂へ向かわなければいけないし、常に侍女たちの目があるわけだから着替えは必須だった。
(もし、誰かの領地に行ってもこんなかんじなのかしら?)
自分の部屋に誰かがいる生活というのは慣れないものだ。生まれた時からこうであればこういうものだと思うのかもしれないが、時には一人になりたいこともある。寝室にいる時は一人にしてもらえるが、隣の居間には必ず誰かがいるのである。
『夕玲は……部屋付の侍女がいる生活を産まれた時からしているのよね?』
前にも聞いたかもしれないが、聞きたくなってしまった。
『? はい、侍女が一人常に側にはおりました』
『……そうよね』
確か鄭嬷嬷(鄭おばあさん)であったか。最初の頃は夕玲の部屋にいたが、今は皇太后の元にいるはずである。
いろいろなことが済んで、どっと疲れが出たのかもしれない。
『今日は白虎様と過ごしたいわ』
『かしこまりました』
夕玲が礼をして伝えに行った。
(普通は女官にやらせることじゃないんだろうな)
侍女も女官の数も足りないらしいが、香子が四神の誰かの領地に向かったらどうするのだろうと、香子はぼんやり考えたのだった。
玄武は当たり前のように、香子を抱いたまま長椅子に腰掛けた。自分がいた方がいいと玄武は判断したのだろう。その心遣いが嬉しいと香子は思った。
延夕玲は困ったような表情をした。玄武がいる前で読み上げてもいいのかと考えているようである。
『読むがいい。我のことは気にするな』
玄武が夕玲を促した。
『かしこまりました……』
ためらいながらではあったが、夕玲はその書状を読んだ。時候の挨拶やら、美辞麗句は置いといて、内容としてはこうであった。
昨日の晩餐会には皇太后も出席していた。その皇太后の元に、四神とその花嫁に直接挨拶をしたいという申し出がいくつか舞い込んできたらしい。
それは主に国内の王(皇帝の親戚に当たる)や豪族たちで、皇太后は全て断るつもりだが中には厄介なのもいるという。四神宮に直接来ることは考えづらいが、しばし四神宮から出ない方がいいと書かれていた。
香子はため息をついた。
皇帝に言っても断られるのは間違いない。だからといって皇太后を困らせるのはいただけない。
『四神に挨拶はわかるけど、私に挨拶してどうするのかしら?』
香子は首を傾げた。侍女が淹れてくれたお茶を啜る。今日もお茶はとてもおいしいと、香子は口元に笑みをはいた。
『……我らに挨拶をしてどうするのか』
玄武が不機嫌そうに呟く。これは香子に挨拶をしたいという者たちに怒りを覚えているのだ。
『さぁ? でもただ挨拶だけで終わるわけはないわよね。もしかして皇后のところにも同様の問い合わせみたいなものがあるのかしら? そうしたら申し訳ないわ』
みなに聞こえるように言う。さすがに皇后にそういう陳情みたいなものがあったとしても、皇后はこちらには言ってこないだろう。皇太后は注意喚起をしてくれただけである。
『ふむ……江緑に声をかけた者たちはわかるだろうか』
『恐れながら申し上げます。おそらく全て記載しているかと』
『そうか』
玄武は少し黙って香子を抱きしめていた。きっと誰かに連絡をしているのだろうと思ったから、香子は玄武の腕の中でお茶を啜っていた。四神は背が高くて身体ががっしりとして安定しているから、腕の中に収まっていると安心する。それに随分慣れてきたなと香子は思った。
(どうしよう)
香子はぼんやりと思う。
四神の腕の中にいるのが好きになってしまった己に、香子は戸惑っていた。
今更といえば今更なのだが、香子はこちらに来てから感情のふり幅がどうにも安定しない。白虎に抱かれてようやく落ち着けるようにはなったが、それまでのメンタルはぐちゃぐちゃであった。
そして冬の大祭も終わり、後はもうイベントらしいイベントもない。
香子はこれから誰に嫁ぐかをしっかり考えなければならないのである。
『香子、如何した?』
玄武に声をかけられてはっとした。随分長くぼうっとしていたらしいということに、香子は気づいた。
『あ……終わりました?』
思わず香子は素で聞いてしまった。玄武が苦笑したのが伝わる。
『……そなたには全て筒抜けだな』
『どんなことを話していたのかは知りませんよ?』
香子にできるのは想像することぐらいだ。
『そなたが知る必要はないが……不安があるならば話そう』
香子は胸が熱くなるのを感じた。随分と四神は丸くなったと香子は思う。玄武は最初から包容力があって好ましかったが、だんだんそこから嫉妬心とかいろいろな感情が見えて翻弄されたりもした。それでもやっぱり好きだなぁと香子は思う。
『んー……趙に伝えた方がいい内容であれば、私も知っておいた方がいいとは思います』
『そうか。ではまた夜に』
『はい』
玄武が離れていくのが寂しいと思ったが、さすがに着替えなければならないだろう。香子は睡衣に長袍を羽織った状態で運ばれてきているので、このままでは部屋の外には出られない。
玄武が部屋を出てから、香子は侍女たちに着替えを手伝ってもらった。
香子からすると、四神宮自体は家の中にいるようなものだから睡衣のままでもいいような気がする。だが食事をしようと思ったら食堂へ向かわなければいけないし、常に侍女たちの目があるわけだから着替えは必須だった。
(もし、誰かの領地に行ってもこんなかんじなのかしら?)
自分の部屋に誰かがいる生活というのは慣れないものだ。生まれた時からこうであればこういうものだと思うのかもしれないが、時には一人になりたいこともある。寝室にいる時は一人にしてもらえるが、隣の居間には必ず誰かがいるのである。
『夕玲は……部屋付の侍女がいる生活を産まれた時からしているのよね?』
前にも聞いたかもしれないが、聞きたくなってしまった。
『? はい、侍女が一人常に側にはおりました』
『……そうよね』
確か鄭嬷嬷(鄭おばあさん)であったか。最初の頃は夕玲の部屋にいたが、今は皇太后の元にいるはずである。
いろいろなことが済んで、どっと疲れが出たのかもしれない。
『今日は白虎様と過ごしたいわ』
『かしこまりました』
夕玲が礼をして伝えに行った。
(普通は女官にやらせることじゃないんだろうな)
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