異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
88 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました

88.固い話は苦手なのです

しおりを挟む
 香子はバイトぐらいはしたことがあるがまだ本格的に働いたことはない。だから福利厚生等はほとんどわからない。
 ただ先日四神の前で話したようなことであれば説明できないこともなかった。

『私のいた世界では、仕事をすれば給金がもらえるのは同じでしょうが、その他に時間外労働ですとか、特別な仕事をすれば更にその分の給金が上乗せされていました』
『ほほう……』

 中書令、王、趙がそれを記録する。
 そして四神宮に勤めている人たちの現状を説く。

『つまり仕事量が増えるからその分上乗せする、ということか』
『はい。それから販売や分配、寄付するにあたっての事務等の人件費も不要品販売で得た利益から出していただければと思っています』
『そうすると寄付する分が減ってしまうがそれでもいいのか?』

 所詮は不要品の処分をどうするかで思いついたことなのでこだわってはいない。ただ溜めこんでおくよりはいいかなと思っただけの話である。

『うーん、正直言うと思いつきを言っただけなので深く考えていないのです。言っちゃ悪いですけど、贈り物をするってことはなんらかの下心があるわけでしょう? だからただもらいっぱなしにするよりは、活用してどこそこに寄付しましたとか礼状を出せば下手な考えは起こさせないですむかなと』

 みな目を丸くした。香子は首を傾げる。またなにかおかしなことを言っただろうか。
 香子の椅子代わりになっていた玄武の腕が動き、香子をきつく抱きしめる。茶器を持っていなくてよかったと香子は思った。

『……大学に通っていたと聞いた』

 皇帝が考えるような表情で呟くように言った。

『卒業はしてきましたが』

 それが何か? と再び首を傾げる。

(そんなあほなこと言ったかしら?)

 でも自分を抱きしめる玄武の腕はとても優しいし、みなに呆れたような色もない。

『そなたの国の教育制度はどうなっている?』

 話が随分と飛んだなーと思いつつ素直に答える。

『ええと、七歳になる年に小学校に入ります。小学が六年、その後中学三年までが男女共に義務教育。その後に高等学校三年、大学が四年あります。通うかどうかは家の経済状況や子どもの学力レベルによります。ただ大体の者は高等学校までは通いますし、大学に行く者も増えてはいます』
『男女共に最低九年も学ぶことができるのか』
『はい』

 中国でも六・三・三制だから間違ったことは言っていないと思う。日本では大卒の人は珍しくもなんともないが、中国ではまだ一部である。都市部ならそれほど珍しくはなくても農村部となるとまだまだ少ない。

『その高等学校や大学というのも女子は通うことが可能なのか?』
『はい、試験はありますしお金もかかりますからそれさえクリアできれば誰でも通うことは可能です』
『……そなたの世界は随分と進んでいるようだな』

 やっぱり女子が学校に行くというのは珍しいのだろう。そうなると識字率は随分と低いのではなかろうか。

『こちらの国の制度などはわからないので私にはなんとも言えません』

 遅れていると考えるのはたやすいが、これで国が回ってきているのだから間違っているとは思えない。

『興味深い話であった。またそなたの世界の話を聞かせてもらいたいと思うのだが如何だろうか』

 皇帝の言葉に、香子は自分を抱きしめている玄武を見やる。
 ようは四神が耐えられるかどうかにかかっている。玄武は香子の意図を理解して苦笑した。

『我らが必ず同席するという条件でならそなたの好きにするといい』

 それに香子は頷く。いくらなんでも四神のいないところで話をする気にはなれなかった。
 香子は皇帝に向き直った。

『かまいませんけど、そんなに難しい話はできませんよ?』

 香子が知っているのは中国の歴史・お茶・経済状況や簡単な地理ぐらいのものである。日本人であることは知られていないから日本のことを話す必要がないのは助かる。何度も言うようだが香子は日本のことの方がよくわかっていないのである。

『もちろん雑談程度で構わぬ』
『それならかまいません』

 香子が頷くと皇帝は満足したような顔をした。
 不要品の販路や寄付先等のリストは明日にでも用意してくれるらしい。
 皇帝の執務室を出るといきなり景色がぶれた。帰りまで歩く気はなかったようだった。
 せめて趙か王に一言言ってしかるべきだろうと香子は嘆息した。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

処理中です...