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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
5.一人にはなれないようです
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香子は憤っていた。
(朱雀様のバカバカバカッ!)
朱雀を初めて受け入れた朝、動けるように治すには全身舐めないと……というようなことを言っていたのは嘘だったのか。
(嘘つきー……)
では熱を受けたくないと怒った自分はなんだったのか、と思ってしまう。熱を受けるのは確かにつらい。だがそれが朱雀の愛情だというならば二回に一回ぐらいは受けても……とは思う。なんだかんだ言って朱雀のことは好きだからあの意地悪っぷりも許しているのだが。
でも今回はちょっと許せないと思う。
全身舐められる、と思ったから玄武に治してほしいとも言わなかった。
彼らは神様だから疲れとか痛みとかには無縁なのだろう。つまり香子が怒った理由も全くわかっていないに違いなかった。そこらへんはやはり話し合いが必要である。
だが今はだめだ。
今は感情的になっているからひどい言葉を投げかけてしまうかもしれない。それは香子の本意ではない。
香子は自分に失言が多いことを知っている。言った言葉を後で訂正したとしてもけっして戻らないことも。だから今は玄武にも朱雀にも会いたくなかった。
『……じゃあ……その……身体を、舐めなくても治せるんですね?』
改めて確認すると、白雲が『はい』と答えた。香子はため息をつく。
二神と今日は過ごさないと決めた以上玄武の室にいるのはおかしいだろう。
『部屋に戻りたいのですが、どなたか運んでいただけますか?』
黒月と白雲を見て言うと、二人はほんの少し戸惑うような表情を浮かべた。
『……花嫁様、本日は玄武様とは……』
『玄武様とも朱雀様とも過ごしません。今日は一人になりたいです』
黒月の言葉を遮ってきっぱり言うと、黒月は目を丸くした。だがそんな香子の科白に白雲は、
『それは難しいかと思います』
と答えた。
『花嫁様の部屋は四神なればどなたでも入室が可能です。我ら眷族もそれを阻むことはできません』
淡々と告げられる言葉は事実だった。香子は困ったような顔をした。
『ですよねー……』
香子もわかってはいる。だからと言って他に行くところもない。昼間はもしかしたら二神も一人にしてくれるかもしれないが夜は無理だろう。そう考えると青龍か白虎と過ごすようかもしれなかった。
(うー……)
青龍のことも白虎のことも好きといえば好きだ。ただ恋愛対象に見れるかと聞かれたら今のところは微妙である。
香子の葛藤を知らぬげに、
『では白虎様とお過ごしになられては?』
と白雲が言った。
『うーん……』
『白虎様がお嫌いですか?』
悩むような声を出した香子に白雲が聞く。
『いえ……嫌いとかではなくてですね……』
香子は顔を上げて白雲の顔を見た。
白髪に金の瞳の美丈夫は非常に目に優しくないと香子は思う。第一世代である白雲は白虎と容姿も雰囲気も似ているのだ。もちろん神々しさと美貌については格が違うのだが。
『四神は花嫁を無条件に愛しているのでしょう? でも私は白虎様のことをそれほど好きというわけではないので、今日一緒に過ごすにしても白虎様の想いを利用するだけのような気がして……』
申し訳なさそうに香子が言うのに、白雲は口元をくっと上げた。
『花嫁様はお優しくていらっしゃる。そう思われるのでしたらなおのこと白虎様と過ごされる機会を作っていただいた方が我らとしても嬉しいです』
『はぁ……』
めったに見れることのない白雲の表情に、香子はぽかんとしてまともに言葉を返せなかった。
何度も言うようだが香子はメンクイなのである。それは家庭の主婦がジャ○ーズにはまるようなノリなので誤解はしないでいただきたい。
『では我がお部屋にお運びいたします』
黒月が進み出て香子を抱き上げる。
まずは香子の部屋に戻してくれるようだった。
『後ほど白虎様が参られます。どうぞよしなに』
『え』
香子の返事を待たず白雲はさっさと玄武の室を出て行った。
『どうしよう……』
『白虎様とお話をされては?』
玄武の室を出て自分の部屋に戻る道すがら呟いた科白に、黒月がアドバイスともつかぬことを言った。
『そうですね……』
どちらにせよ白虎が来ることは決まったのだから、後は話すしかないと香子も思う。
(交流は深めた方がいいんだもんねー……)
そういえば白虎とは一晩も一緒に過ごしていないことに今更ながら香子は気付いた。
(朱雀様のバカバカバカッ!)
朱雀を初めて受け入れた朝、動けるように治すには全身舐めないと……というようなことを言っていたのは嘘だったのか。
(嘘つきー……)
では熱を受けたくないと怒った自分はなんだったのか、と思ってしまう。熱を受けるのは確かにつらい。だがそれが朱雀の愛情だというならば二回に一回ぐらいは受けても……とは思う。なんだかんだ言って朱雀のことは好きだからあの意地悪っぷりも許しているのだが。
でも今回はちょっと許せないと思う。
全身舐められる、と思ったから玄武に治してほしいとも言わなかった。
彼らは神様だから疲れとか痛みとかには無縁なのだろう。つまり香子が怒った理由も全くわかっていないに違いなかった。そこらへんはやはり話し合いが必要である。
だが今はだめだ。
今は感情的になっているからひどい言葉を投げかけてしまうかもしれない。それは香子の本意ではない。
香子は自分に失言が多いことを知っている。言った言葉を後で訂正したとしてもけっして戻らないことも。だから今は玄武にも朱雀にも会いたくなかった。
『……じゃあ……その……身体を、舐めなくても治せるんですね?』
改めて確認すると、白雲が『はい』と答えた。香子はため息をつく。
二神と今日は過ごさないと決めた以上玄武の室にいるのはおかしいだろう。
『部屋に戻りたいのですが、どなたか運んでいただけますか?』
黒月と白雲を見て言うと、二人はほんの少し戸惑うような表情を浮かべた。
『……花嫁様、本日は玄武様とは……』
『玄武様とも朱雀様とも過ごしません。今日は一人になりたいです』
黒月の言葉を遮ってきっぱり言うと、黒月は目を丸くした。だがそんな香子の科白に白雲は、
『それは難しいかと思います』
と答えた。
『花嫁様の部屋は四神なればどなたでも入室が可能です。我ら眷族もそれを阻むことはできません』
淡々と告げられる言葉は事実だった。香子は困ったような顔をした。
『ですよねー……』
香子もわかってはいる。だからと言って他に行くところもない。昼間はもしかしたら二神も一人にしてくれるかもしれないが夜は無理だろう。そう考えると青龍か白虎と過ごすようかもしれなかった。
(うー……)
青龍のことも白虎のことも好きといえば好きだ。ただ恋愛対象に見れるかと聞かれたら今のところは微妙である。
香子の葛藤を知らぬげに、
『では白虎様とお過ごしになられては?』
と白雲が言った。
『うーん……』
『白虎様がお嫌いですか?』
悩むような声を出した香子に白雲が聞く。
『いえ……嫌いとかではなくてですね……』
香子は顔を上げて白雲の顔を見た。
白髪に金の瞳の美丈夫は非常に目に優しくないと香子は思う。第一世代である白雲は白虎と容姿も雰囲気も似ているのだ。もちろん神々しさと美貌については格が違うのだが。
『四神は花嫁を無条件に愛しているのでしょう? でも私は白虎様のことをそれほど好きというわけではないので、今日一緒に過ごすにしても白虎様の想いを利用するだけのような気がして……』
申し訳なさそうに香子が言うのに、白雲は口元をくっと上げた。
『花嫁様はお優しくていらっしゃる。そう思われるのでしたらなおのこと白虎様と過ごされる機会を作っていただいた方が我らとしても嬉しいです』
『はぁ……』
めったに見れることのない白雲の表情に、香子はぽかんとしてまともに言葉を返せなかった。
何度も言うようだが香子はメンクイなのである。それは家庭の主婦がジャ○ーズにはまるようなノリなので誤解はしないでいただきたい。
『では我がお部屋にお運びいたします』
黒月が進み出て香子を抱き上げる。
まずは香子の部屋に戻してくれるようだった。
『後ほど白虎様が参られます。どうぞよしなに』
『え』
香子の返事を待たず白雲はさっさと玄武の室を出て行った。
『どうしよう……』
『白虎様とお話をされては?』
玄武の室を出て自分の部屋に戻る道すがら呟いた科白に、黒月がアドバイスともつかぬことを言った。
『そうですね……』
どちらにせよ白虎が来ることは決まったのだから、後は話すしかないと香子も思う。
(交流は深めた方がいいんだもんねー……)
そういえば白虎とは一晩も一緒に過ごしていないことに今更ながら香子は気付いた。
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