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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
57.またお誘いがありました
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『老佛爷からのお誘い?』
何日か前にも聞いた話だなと思いながら、香子は首を傾げた。そのことを伝えにきた白雲は、
『また正式な手順は踏んでいないそうです。どうなさいますか?』
と、しれっと付け足した。そういえば、と延夕玲を見やる。夕玲はやっぱり少し申し訳なさそうな顔をした。
正式な手順とは、中書省に話を通し、王英明から四神宮の主官である趙文英に伝え、そこから白雲に尋ねるというものらしい。香子は内心「面倒だな」と思ってはいるが王宮内のことなので口は出さない。
おそらくまた夕玲付きの鄭嬷嬷(年老いた侍女)が直接皇太后から賜ってきたに違いなかった。
『そう……内容は? また茶会かしら?』
『いえ、此度は晩餐会です。場所は慈寧宮。女性のみの内輪の集まりの予定らしいですが、四神の参加は構わないと』
概要を聞かされて香子は怪訝そうな顔をした。
『ふうん。詳細は? 読んでくれる?』
白雲から手紙を受け取った夕玲に頼む。彼女は『承知しました』と封を開けた。
時は明日の夜。場所は白雲が言った通り慈寧宮。参加者は皇太后、皇后、徳妃、延夕玲、白香、白虎と朱雀を希望するとあった。
今回は夕玲も参加者に含まれるらしい。それよりも。
『……朱雀様?』
香子はまた首を傾げた。前回は玄武だったから今度は朱雀を近くで見たいとかそういう理由だろうか。
(……そんな単純な理由で四神を呼びつける人じゃない……)
皇太后には皇太后なりの思惑というのがあるはずだと香子は考える。だがそれが香子にはまだ読めない。
(つーか、こんな小娘に読めるようなものでもないでしょ)
内心一人ツッコミを入れながら、夕玲を見やる。彼女は心持ち困っているようだった。
試しに声をかけてみる。
『ねぇ、夕玲。老佛爷は何を考えていらっしゃるのかしら?』
すると夕玲ははっとしたような表情をした。
『……申し訳ありませんが、わかりかねます』
『……そうよね』
元より期待はしていない。しかし。
『この話、夕玲は知っていたの?』
『いえ、初耳です』
ということはまたも皇太后の独断らしい。付き合わされる皇后や寵妃はたまったものではないだろう。夕玲もただただ戸惑っているようにしか見えなかった。
『どうしようかしら……』
先日の茶会で多少は好印象を与えたように思えたが、もしかしたら生意気な娘と思われた可能性もある。ちくちくと嫌味を言われるのだろうかとげんなりする。そこで香子はあることを思い出した。
『あれ? そういえば慈寧宮って男子禁制じゃなかった?』
『四神は人間ではありませんので』
白雲がしれっと答える。それに香子は眉間に皺を寄せた。
『じゃあ白雲は来ないの?』
『眷属も人間ではありませんから』
(えええええ~~~)
皺が更に寄る。
それは詭弁ではなかろうか。
『……誰の談?』
『……老佛爷です……』
申し訳なさそうに答えたのは夕玲だった。
(それで通るんだ……)
『じゃあ、それで』
面倒くさくなってきたので香子はそれでいいことにした。
香子の一存では決められないので白虎と朱雀に相談することにした。
『今回光基は来ないのか』
白虎の言葉に香子は首を傾げた。
『光基、って誰ですか?』
『皇帝だ』
『ああ……』
そういえば皇帝にも名前があったことを思い出す。当たり前のことなのだが役職で呼ばれることが普通なのでそういうものだと思っていた。
(皇后だって皇帝のことは『皇上』としか呼ばないしなぁ……)
それとも二人きりの時は名前を呼び合ったりするのだろうか。イマイチ想像ができない香子であった。
閑話休題。
『来ないみたいですよ。女性だけの集まりだとか』
『ふむ……』
白虎が少しだけ目線を下げる。
『参加者が、江緑、万瑛、女官に……寵妃か』
朱雀の呟きに香子は目を見開いた。おそらく「万瑛」というのは皇后のことなのだろう。
『……よく名前覚えてますね』
全く興味がなさそうに見えるのに、と香子は失礼なことを思う。
『あれでもこの国の頂点だからな。皇帝、皇后と呼ぶのはどうもしっくりこん』
不機嫌そうに朱雀が答える。以前は皇帝、皇后と役職で呼んでいたように思うが、なんとなく関わりたくないのだろうなということは香子にもわかった。
『どうしましょう?』
本題に戻る。
『香子はどうしたい』
香子はげんなりした。やっぱり決めるのは自分なのか。
『……老佛爷が何を考えてるのかわからなくて……』
『あれの考えをそなたが理解できるとは思えぬ。香子、そなたがどうしたいかだ』
朱雀の言葉に香子はなんだか安心した。朱雀は意地悪なところもあるが、そんな彼にいつだって守られていることもわかる。
『うーん……』
参加しない方が無難だろう。きっと黒月に聞けば参加しないように言われることは間違いない。
(でもなぁ……)
基本香子は面倒くさがり屋である。自分一人だったら絶対参加しないだろう。
けれど。
(白虎様はともかく朱雀様がいるし)
白虎に対して失礼なことを思いつつ朱雀を見やる。相変わらずの硬質な美貌だがその目だけが優しく香子を見守っていた。
『私は……行ってみたいと思います』
黒月の怒った顔が浮かんだが、白虎か朱雀に押し付けることにした。
何日か前にも聞いた話だなと思いながら、香子は首を傾げた。そのことを伝えにきた白雲は、
『また正式な手順は踏んでいないそうです。どうなさいますか?』
と、しれっと付け足した。そういえば、と延夕玲を見やる。夕玲はやっぱり少し申し訳なさそうな顔をした。
正式な手順とは、中書省に話を通し、王英明から四神宮の主官である趙文英に伝え、そこから白雲に尋ねるというものらしい。香子は内心「面倒だな」と思ってはいるが王宮内のことなので口は出さない。
おそらくまた夕玲付きの鄭嬷嬷(年老いた侍女)が直接皇太后から賜ってきたに違いなかった。
『そう……内容は? また茶会かしら?』
『いえ、此度は晩餐会です。場所は慈寧宮。女性のみの内輪の集まりの予定らしいですが、四神の参加は構わないと』
概要を聞かされて香子は怪訝そうな顔をした。
『ふうん。詳細は? 読んでくれる?』
白雲から手紙を受け取った夕玲に頼む。彼女は『承知しました』と封を開けた。
時は明日の夜。場所は白雲が言った通り慈寧宮。参加者は皇太后、皇后、徳妃、延夕玲、白香、白虎と朱雀を希望するとあった。
今回は夕玲も参加者に含まれるらしい。それよりも。
『……朱雀様?』
香子はまた首を傾げた。前回は玄武だったから今度は朱雀を近くで見たいとかそういう理由だろうか。
(……そんな単純な理由で四神を呼びつける人じゃない……)
皇太后には皇太后なりの思惑というのがあるはずだと香子は考える。だがそれが香子にはまだ読めない。
(つーか、こんな小娘に読めるようなものでもないでしょ)
内心一人ツッコミを入れながら、夕玲を見やる。彼女は心持ち困っているようだった。
試しに声をかけてみる。
『ねぇ、夕玲。老佛爷は何を考えていらっしゃるのかしら?』
すると夕玲ははっとしたような表情をした。
『……申し訳ありませんが、わかりかねます』
『……そうよね』
元より期待はしていない。しかし。
『この話、夕玲は知っていたの?』
『いえ、初耳です』
ということはまたも皇太后の独断らしい。付き合わされる皇后や寵妃はたまったものではないだろう。夕玲もただただ戸惑っているようにしか見えなかった。
『どうしようかしら……』
先日の茶会で多少は好印象を与えたように思えたが、もしかしたら生意気な娘と思われた可能性もある。ちくちくと嫌味を言われるのだろうかとげんなりする。そこで香子はあることを思い出した。
『あれ? そういえば慈寧宮って男子禁制じゃなかった?』
『四神は人間ではありませんので』
白雲がしれっと答える。それに香子は眉間に皺を寄せた。
『じゃあ白雲は来ないの?』
『眷属も人間ではありませんから』
(えええええ~~~)
皺が更に寄る。
それは詭弁ではなかろうか。
『……誰の談?』
『……老佛爷です……』
申し訳なさそうに答えたのは夕玲だった。
(それで通るんだ……)
『じゃあ、それで』
面倒くさくなってきたので香子はそれでいいことにした。
香子の一存では決められないので白虎と朱雀に相談することにした。
『今回光基は来ないのか』
白虎の言葉に香子は首を傾げた。
『光基、って誰ですか?』
『皇帝だ』
『ああ……』
そういえば皇帝にも名前があったことを思い出す。当たり前のことなのだが役職で呼ばれることが普通なのでそういうものだと思っていた。
(皇后だって皇帝のことは『皇上』としか呼ばないしなぁ……)
それとも二人きりの時は名前を呼び合ったりするのだろうか。イマイチ想像ができない香子であった。
閑話休題。
『来ないみたいですよ。女性だけの集まりだとか』
『ふむ……』
白虎が少しだけ目線を下げる。
『参加者が、江緑、万瑛、女官に……寵妃か』
朱雀の呟きに香子は目を見開いた。おそらく「万瑛」というのは皇后のことなのだろう。
『……よく名前覚えてますね』
全く興味がなさそうに見えるのに、と香子は失礼なことを思う。
『あれでもこの国の頂点だからな。皇帝、皇后と呼ぶのはどうもしっくりこん』
不機嫌そうに朱雀が答える。以前は皇帝、皇后と役職で呼んでいたように思うが、なんとなく関わりたくないのだろうなということは香子にもわかった。
『どうしましょう?』
本題に戻る。
『香子はどうしたい』
香子はげんなりした。やっぱり決めるのは自分なのか。
『……老佛爷が何を考えてるのかわからなくて……』
『あれの考えをそなたが理解できるとは思えぬ。香子、そなたがどうしたいかだ』
朱雀の言葉に香子はなんだか安心した。朱雀は意地悪なところもあるが、そんな彼にいつだって守られていることもわかる。
『うーん……』
参加しない方が無難だろう。きっと黒月に聞けば参加しないように言われることは間違いない。
(でもなぁ……)
基本香子は面倒くさがり屋である。自分一人だったら絶対参加しないだろう。
けれど。
(白虎様はともかく朱雀様がいるし)
白虎に対して失礼なことを思いつつ朱雀を見やる。相変わらずの硬質な美貌だがその目だけが優しく香子を見守っていた。
『私は……行ってみたいと思います』
黒月の怒った顔が浮かんだが、白虎か朱雀に押し付けることにした。
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