異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました

75.モフモフは心を溶かすようです

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 勢いでするにしても”きっかけ”がほしいと香子は思う。
 誰かそういうことの相談に乗ってくれる人がいないものか。
 さすがにもう張錦飛に相談できる内容ではない。しかしどう考えても香子と似た状況にある人はいないのだ。

(男性のハーレムはある程度理解できるけど女の逆ハーはなぁ……)

 自分が抱かれるという立場故に難しいのだ。ただ身体はその都度回復させてもらえるので極端な話何人を相手しても問題はないと思われる。

 問題は、香子の気持ちだ。


『まだ悩んでおるのか』

 白虎のバスにはっとする。四神の声はよすぎて力が抜ける。香子は誤魔化すように白虎に身体を摺り寄せた。

『……すいません』
『香子、我はそなたに悩むなと言っているわけではない。むしろそこまで悩ませてしまう我らが不甲斐ない』
『あ、いえ……これは自分自身の問題なので……』

 白虎は恐縮する香子を横抱きにするとそのまま抱き上げた。

『白虎様?』
『香子、我の毛に埋まりたくはないか?』

 香子の目の色が変わる。

『う、埋まりたい! 埋まりたいです!! ……あ、でもその……』

 即答したはいいがそのまま襲われてはしゃれにならない。白虎は元の姿に戻ると理性というものが限りなく少なくなると言っていた。(下手すると0になる)

『襲いはせぬ。耐えられなんだら戻る故気にするな』
『あ、はい……』

 きっとこれは白虎なりのねぎらいなのだろうと香子は理解した。寝室に移動しベッドの上に降ろされる。あまり変態するところは見ない方がいいと思い香子は白虎から目をそらした。

『よいぞ』

 一瞬後、更に低い唸るようなバスが響き香子は横たわる白虎に間髪入れず抱きついた。美しい毛並みの白虎をモフるのは至福である。わしゃわしゃしていると、

『これ』

 白虎の前足に押さえつけられた。その前足も掴んで肉球をぷにぷにする。ピンク色の肉球はとても綺麗で、はむっとしたい衝動にかられる。香子の顔は完全にとろけた。

(はう~はう~はう~ぷにぷにっぷにぷにっ!)

 アニマルセラピーではないが凝っていた心が溶けだしていくようだ。
 こんなことをされたら惚れてしまうではないか。

(ってそれより青龍様のことっ!)
『……面倒くさい……』

 モフりながら呟く。香子は自分の葛藤が本当に面倒だと思った。

『何がだ? 青龍の想いがか?』
『いえ、私自身です……』

 白虎の毛に顔を埋める。ふわふわした感触が気持ちいい。

『私赤い髪にこだわってて、この国の染料じゃうまく染まらないからって朱雀様の”熱”を受けようとしたんですよね……』
『そうだったな』
『朱雀様のこと大好きですけど、そのとっかかりはどうなんだって思い出して。なのに大祭に出たいから青龍様に抱かれるのは違うとか言ってて、自分でもわけわかんないなって』
『ふむ』
『ようは赤い髪でいたいのも大祭に出たいのも同じだと思うんです。なのに朱雀様はよくて青龍様はダメとかバカじゃないのって。しかも青龍様に抱かれればお肌が赤ちゃんみたいにみずみずしくなるとか聞くとうわあ~って思うんですよ。だけど抱かれたいほど好きなわけじゃないとかぐるぐるしてるんです』
『我に抱かれれば胸が大きくなるらしいが』
『あー、たわわなおっぱいも魅力的ですよね。でもそれを理由に抱かれるのはやっぱり違うと思うんですよ。昔は、っていっても高校生ぐらいの時は”する”ってことに好奇心があって簡単に処女は捨てたんですけどね……』
『なれば青龍に抱かれてもいいのではないか?』

 白虎の言うことも最もだと思う。毛並みを撫でながら香子は首を振った。

『それはそうなんですけど……すごく求められてるのにこんな動機で抱かれるのは失礼だって思うんですよ。気持ちの温度差っていうのかな、私の想いはまだ青龍様に負けてるって思うとこんな状態で抱かれるのは申し訳なくて』
『ふむ。それでも我らはそなたを求めてしまうが』
『こっちの人って基本は親が決めた人と結婚するのが当り前なんだと思うんですけど、私の国では自由恋愛が一般的だったから違和感しかないんですよね。でも……それもなんとなく恋した気になってしちゃってたのかな。私の想いは青龍様に抱いてもらえるほど強くはないなとか……あー、何言ってんだろ……』
『もしや、そなたは自分が青龍にふさわしくないと考えているのか』

 真面目に取り合ってくれる白虎にぎゅうと抱きつく。なんて優しいのだろう。その優しさに香子は全然応えられていないのに。

『……そうかもしれません。まっすぐ見つめられてどきどきするんです。めったに動かない表情が動いた時は感動すら覚えるんです。でもそれは自分がそうさせてるっていう優越感なのかなって。それは青龍様にも白虎様にもすごく失礼だなって……』
『そなたの考えは複雑なのだな』
『すごく自分が面倒くさいと思ってます。もう玄武様と朱雀様に抱かれてるのにまだなんか納得いかなくて』
『何が納得いかないのだ』
『私がこんなにも愛されてることですよ。もちろん”花嫁”だからで説明はつくんですけど、他に理由を求めてしまうというか……あー……』

 また香子はわしゃわしゃと白虎の毛をいじる。何故これだけいじっていて毛が抜けないのだろうと思う。

『つまり、そなたは青龍や我に抱かれたくないわけではないのだな?』
『抱かれたいとははっきりいえませんけど……』

 恥ずかしいし、と口の中でもごもご言うのも白虎は聞き取った。

『ではよいな』

 ん? と白虎の科白に首を傾げた時、寝室の扉が開いた。

『え』

 どういうわけか、青龍がそこにいた。
 青龍はピキーンと固まった香子の側にくると、その手を取った。


『もう待たぬ。今宵、そなたを抱く』


 手に口づけられ、言われた科白の意味がわからない。何故青龍がここにいるのかとか、なんで青龍に抱かれることになっているのかとか香子の頭は?で埋め尽くされた。

『丸一日か。朱雀兄に付き添ってもらえ。確か先代の青龍もそうしたはずだ』
『玄武兄ではいけないのですか』
『”熱”があった方が香子が楽だろう』
『それもそうですね。頼んで参ります』

 頭の上で交わされる会話に香子はまだ混乱状態だった。
 ちゅ……と軽く青龍に口唇を合わされ、

『覚悟しておけ』

 甘く囁かれた。その声にふるりと香子は震える。
 踵を返し青龍が戻っていく。その颯爽とした後姿を見送りながら、

『……え?』

 香子はまぬけな声を上げることしかできなかった。
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