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第4部 四神を愛しなさいと言われました
155.女子会は思ったより疲れるものでした
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皇帝が行ってしまったので、香子は途端にご機嫌になった。
皇太后とのお茶会は基本女子会である。多少の遠慮はあるが皇后とも現在仲は悪くないので香子は楽しみにしていた。
『花嫁様、どなたのところへ向かわれるのかは……』
皇太后がいたずらを思いついたような顔で聞いてきた。
『まだ言いません!』
顔の前でバッテンを作り、香子はきっぱりと答えた。
『失礼ですが……それでは四神のご領地でも花嫁様をお迎えする準備が整わないのではないでしょうか?』
皇后が少し困ったように小首を傾げた。香子はそんな皇后を見て、改めてキレイな人だなと思った。女性に対して恋愛感情は持たないが、香子はメンクイなのである。(大事なことなので何度でも言う)
『発言させていただいてもよろしいでしょうか?』
こういった場所では珍しく白雲が口を開いた。それにみな首肯する。
『……少なくとも西の地ではいつでも花嫁様をお迎えする準備は整えております。花嫁様が降臨されると伺ったその日から、我ら眷属は待ち望んでおりますゆえ』
『そう、なのですか。たいへん失礼しました』
皇后は恥ずかしそうに目を伏せた。
香子は背筋を冷汗が流れるのを感じた。白雲と黒月の視線が非常に痛い。暗に早く決めろと言われているのはわかっている。
だがしかし、香子はまだ囚われるわけにはいかないのだ。
『気になさることはありません。私、老仏爺と万瑛(皇后の名)に会いたかったのですから』
『花嫁様……!』
皇后は感激したように目を輝かせた。皇太后は嘆息した。
『花嫁様が四神と共になるのは嬉しいですが、こうして気軽に会えなくなるのは寂しいですのぅ』
『そうですね』
四神の誰かの領地へ向かったら、おそらく床から出してもらえないに違いない。それは香子も理解していた。
(エロ同人みたいなかんじになっちゃうよねぇ……毎晩抱かれてるのにそれでも我慢しているらしいし)
香子は身震いした。
『香子、如何した?』
椅子になっている白虎にはそれが伝わってしまった。
『いえ、想像したくないことをしてしまいまして』
『そうか』
それ以上白虎は追及しなかった。香子は話題を変えた。
『最近お変わりありませんか?』
『暖かくなってきたのでだいぶ調子はよいです。花嫁様がどなたかの領地に向かわれた後は、西の地に戻ろうかと思っていたのですが少し悩んでおります』
『まぁ、老仏爺。そのようなことおっしゃらないでくださいませ』
皇后が慌てて皇太后に声をかけた。
『本宮は、老仏爺にはこちらにずっと滞在していただきたいですわ』
皇后の言葉は本心なのだろうと香子は思う。香子が四神の領地へ移動し、皇太后までいなくなったら皇帝の態度がまた変わるかもしれない。それが想像できてしまうのが情けないと香子は思うのだが、皇帝はそうは考えないのかもしれなかった。
『……そうじゃのう。あと一年ぐらいはいてもいいのかもしれぬが……』
『老仏爺!』
皇后は目を輝かせた。
『花嫁様がどなたの領地に向かわれるかにかかっておりますな』
『えっ』
いきなり矛先を向けられて、香子は冷汗をかいた。そういえば皇太后は白虎を気に入っているから西の地に移り住んだのである。香子が白虎の元へ向かうなどと言ったら、皇太后もすぐさま西の地へ戻ろうとするだろう。
『花嫁様?』
皇后の圧がすごい。なんだか今日はよく冷汗をかく日だなと香子は思う。
『な、なんでしょう……?』
『わかっておりますよね?』
『……約束はしません。言いませんよ、私は!』
そう、一月後まで香子は絶対に口を割らない予定である。もし無理矢理口を割らせようとする輩がいたら、香子は誰にも嫁がない宣言をする覚悟だった。……それによる弊害を香子はあまり想像できていないのだが。
『そうですの』
皇后は残念そうに引き下がった。
『一月後が楽しみですなぁ』
皇太后が楽しそうに言う。香子としてはあまり楽しみでもないのだが、それはここで言ってもしょうがないことなので笑むに留めた。
お茶会が終わり、香子は疲れを感じた。
四阿を辞した途端白虎は香子を抱いたまま四神宮に飛んだ。
『もう……びっくりしますからせめて一声かけてください』
『すまぬ』
白虎が飛んだ先は白虎の室の中の寝室のようだった。白虎は香子を抱いたまま床に腰掛ける。
『……わかってはいる。そなたが我を選ばないということは』
それに香子はギクリとしたが、わかってはいるだろうなと内心開き直った。とはいえここで「はい、白虎様は対象外です」などと言うわけにもいかない。
『……今触らせていただくことは可能ですか?』
『無理だな。襲ってしまいそうだ』
『そうですか』
それは残念だが、こうして正直に伝えてもらえたのは香子としてもありがたかった。虎の姿をもふるのは好きだが、虎に襲われるのはまだ恐ろしい。こればかりは生物としての本能だからしかたないと香子は思う。
(ん? 私はもう人ではないはずだけど、それでも人としての本能とかあるのかな?)
また香子がとりとめもないことを考えようとした時、香子は首の後ろにやんわりと手を添えられて白虎の口づけを受けた。
「んっ……」
こうして求められるのが香子は嫌ではない。
だが百年単位で共に過ごすのならばとはどうしても考えてしまうのだった。
皇太后とのお茶会は基本女子会である。多少の遠慮はあるが皇后とも現在仲は悪くないので香子は楽しみにしていた。
『花嫁様、どなたのところへ向かわれるのかは……』
皇太后がいたずらを思いついたような顔で聞いてきた。
『まだ言いません!』
顔の前でバッテンを作り、香子はきっぱりと答えた。
『失礼ですが……それでは四神のご領地でも花嫁様をお迎えする準備が整わないのではないでしょうか?』
皇后が少し困ったように小首を傾げた。香子はそんな皇后を見て、改めてキレイな人だなと思った。女性に対して恋愛感情は持たないが、香子はメンクイなのである。(大事なことなので何度でも言う)
『発言させていただいてもよろしいでしょうか?』
こういった場所では珍しく白雲が口を開いた。それにみな首肯する。
『……少なくとも西の地ではいつでも花嫁様をお迎えする準備は整えております。花嫁様が降臨されると伺ったその日から、我ら眷属は待ち望んでおりますゆえ』
『そう、なのですか。たいへん失礼しました』
皇后は恥ずかしそうに目を伏せた。
香子は背筋を冷汗が流れるのを感じた。白雲と黒月の視線が非常に痛い。暗に早く決めろと言われているのはわかっている。
だがしかし、香子はまだ囚われるわけにはいかないのだ。
『気になさることはありません。私、老仏爺と万瑛(皇后の名)に会いたかったのですから』
『花嫁様……!』
皇后は感激したように目を輝かせた。皇太后は嘆息した。
『花嫁様が四神と共になるのは嬉しいですが、こうして気軽に会えなくなるのは寂しいですのぅ』
『そうですね』
四神の誰かの領地へ向かったら、おそらく床から出してもらえないに違いない。それは香子も理解していた。
(エロ同人みたいなかんじになっちゃうよねぇ……毎晩抱かれてるのにそれでも我慢しているらしいし)
香子は身震いした。
『香子、如何した?』
椅子になっている白虎にはそれが伝わってしまった。
『いえ、想像したくないことをしてしまいまして』
『そうか』
それ以上白虎は追及しなかった。香子は話題を変えた。
『最近お変わりありませんか?』
『暖かくなってきたのでだいぶ調子はよいです。花嫁様がどなたかの領地に向かわれた後は、西の地に戻ろうかと思っていたのですが少し悩んでおります』
『まぁ、老仏爺。そのようなことおっしゃらないでくださいませ』
皇后が慌てて皇太后に声をかけた。
『本宮は、老仏爺にはこちらにずっと滞在していただきたいですわ』
皇后の言葉は本心なのだろうと香子は思う。香子が四神の領地へ移動し、皇太后までいなくなったら皇帝の態度がまた変わるかもしれない。それが想像できてしまうのが情けないと香子は思うのだが、皇帝はそうは考えないのかもしれなかった。
『……そうじゃのう。あと一年ぐらいはいてもいいのかもしれぬが……』
『老仏爺!』
皇后は目を輝かせた。
『花嫁様がどなたの領地に向かわれるかにかかっておりますな』
『えっ』
いきなり矛先を向けられて、香子は冷汗をかいた。そういえば皇太后は白虎を気に入っているから西の地に移り住んだのである。香子が白虎の元へ向かうなどと言ったら、皇太后もすぐさま西の地へ戻ろうとするだろう。
『花嫁様?』
皇后の圧がすごい。なんだか今日はよく冷汗をかく日だなと香子は思う。
『な、なんでしょう……?』
『わかっておりますよね?』
『……約束はしません。言いませんよ、私は!』
そう、一月後まで香子は絶対に口を割らない予定である。もし無理矢理口を割らせようとする輩がいたら、香子は誰にも嫁がない宣言をする覚悟だった。……それによる弊害を香子はあまり想像できていないのだが。
『そうですの』
皇后は残念そうに引き下がった。
『一月後が楽しみですなぁ』
皇太后が楽しそうに言う。香子としてはあまり楽しみでもないのだが、それはここで言ってもしょうがないことなので笑むに留めた。
お茶会が終わり、香子は疲れを感じた。
四阿を辞した途端白虎は香子を抱いたまま四神宮に飛んだ。
『もう……びっくりしますからせめて一声かけてください』
『すまぬ』
白虎が飛んだ先は白虎の室の中の寝室のようだった。白虎は香子を抱いたまま床に腰掛ける。
『……わかってはいる。そなたが我を選ばないということは』
それに香子はギクリとしたが、わかってはいるだろうなと内心開き直った。とはいえここで「はい、白虎様は対象外です」などと言うわけにもいかない。
『……今触らせていただくことは可能ですか?』
『無理だな。襲ってしまいそうだ』
『そうですか』
それは残念だが、こうして正直に伝えてもらえたのは香子としてもありがたかった。虎の姿をもふるのは好きだが、虎に襲われるのはまだ恐ろしい。こればかりは生物としての本能だからしかたないと香子は思う。
(ん? 私はもう人ではないはずだけど、それでも人としての本能とかあるのかな?)
また香子がとりとめもないことを考えようとした時、香子は首の後ろにやんわりと手を添えられて白虎の口づけを受けた。
「んっ……」
こうして求められるのが香子は嫌ではない。
だが百年単位で共に過ごすのならばとはどうしても考えてしまうのだった。
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