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第5章(前)
余話:彼と客
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……ん?
どうした、お前。まだ夜は明けてないぞ? ずいぶん早起きだな。
何? 俺のことを見に来た?
そうか。主としての力を持つ精霊はこの国だともう銀狼くらいしかいないもんな。物珍しいのも分かる……。
いや、確かにそうだがな。
あの場所はもう、アストランじゃないから違うんだ。……って言っても分からないか?
ははは、やっぱりそうだよな。お前らにとって、見えてる場所はどれも「世界」だ。区別なんかないよな。
……そう考えると俺ってなんだろう。人として生きてた頃の記憶もある。なのに精霊としての感情も、聖剣としての意思みたいなものもある……。
すまん、何でもない。
ん? どうした? 何がおかしいんだ?
……くそ、そんなに笑うなよ。
俺も発音が上手くない自覚はあるんだ。でもな、これだってかなり上達したんだぞ。
……まあ、そうだな。
実は俺も、お前みたいな奴が飛んで来てくれる可能性を考えて、窓辺に置いてもらったんだ。この部屋は上階にあるし、俺の気配も見つけやすかったろ?
よし、せっかくだ。少し話そうか。
俺はレオンという。……そうか。俺たちが町に来るのを見てたのか。
いや、俺はここの主となるために来たわけじゃない。人間と一緒に旅をしてるんだよ。ほら、部屋の中で眠ってるあいつらだ。
そう、美人だろ? あいつはローゼといってな。ちょっと困ったところもあるけど、でも俺の自慢の娘なんだ!
え?
……ああ……やっぱり……湯から戻ってくるのが遅いと思ったんだ……。
ん? 違う違う。ローゼはお前を無視したわけじゃない。あいつは精霊が見えないし、声も聞こえない。だからお前が慰めてくれたことも分からないんだ。
ありがとな。俺の娘を気にかけてくれて。
……いや、別にあいつを放っておいてるわけじゃない。
俺もアーヴィンも……あー、もうひとりの人間のことだが、まあ、とにかく俺たちだってローゼを慰めてやりたい。だけどローゼが隠すから、俺たちも知らんふりをしてるんだよ。
ははは、変か。……裏表なんかないお前たちから見れば、人間ってのは変かもしれないな。
ああ。大丈夫だ。近いうちに何とかする。結局は俺があいつらの関係を何とかしてやる必要があるんだしな。……まったく、手のかかる奴らだよ。
なんだ? ……ローゼが泣いてた理由か。
……そうだな、悲しいことがあるといえばある。あいつは、自分がいつまで生きられるのか分からないことを理解しているというか……。
いや、今日明日に死を迎えるってわけじゃない。ただ、このままだと再来年くらいにはどうなってるか分からないんだ。
治す方法?
なんだ、お前は病気を知っているのか。いや、ローゼは病気ってわけじゃないんだ。だから、正直どうしていいのか俺たちはお手上げでな。
だが、まだ時間はある。ローゼは死なせない。
公爵家にある精霊の文献は大神殿よりも多い、とアーヴィンも言ってたし、その中にはきっとローゼを助ける手がかりがあるはずなんだ。何せ、あいつの中にいるのは――。
――っと。
すまん、そろそろあいつらが起きる時間だ。悪いけどここまでにさせてくれ。
いや、こっちこそ、話に付き合ってくれてありがとうな。
ああ、もちろん歓迎だ。見かけたら気軽に声をかけてくれ。
またどこかで会おうな。
どうした、お前。まだ夜は明けてないぞ? ずいぶん早起きだな。
何? 俺のことを見に来た?
そうか。主としての力を持つ精霊はこの国だともう銀狼くらいしかいないもんな。物珍しいのも分かる……。
いや、確かにそうだがな。
あの場所はもう、アストランじゃないから違うんだ。……って言っても分からないか?
ははは、やっぱりそうだよな。お前らにとって、見えてる場所はどれも「世界」だ。区別なんかないよな。
……そう考えると俺ってなんだろう。人として生きてた頃の記憶もある。なのに精霊としての感情も、聖剣としての意思みたいなものもある……。
すまん、何でもない。
ん? どうした? 何がおかしいんだ?
……くそ、そんなに笑うなよ。
俺も発音が上手くない自覚はあるんだ。でもな、これだってかなり上達したんだぞ。
……まあ、そうだな。
実は俺も、お前みたいな奴が飛んで来てくれる可能性を考えて、窓辺に置いてもらったんだ。この部屋は上階にあるし、俺の気配も見つけやすかったろ?
よし、せっかくだ。少し話そうか。
俺はレオンという。……そうか。俺たちが町に来るのを見てたのか。
いや、俺はここの主となるために来たわけじゃない。人間と一緒に旅をしてるんだよ。ほら、部屋の中で眠ってるあいつらだ。
そう、美人だろ? あいつはローゼといってな。ちょっと困ったところもあるけど、でも俺の自慢の娘なんだ!
え?
……ああ……やっぱり……湯から戻ってくるのが遅いと思ったんだ……。
ん? 違う違う。ローゼはお前を無視したわけじゃない。あいつは精霊が見えないし、声も聞こえない。だからお前が慰めてくれたことも分からないんだ。
ありがとな。俺の娘を気にかけてくれて。
……いや、別にあいつを放っておいてるわけじゃない。
俺もアーヴィンも……あー、もうひとりの人間のことだが、まあ、とにかく俺たちだってローゼを慰めてやりたい。だけどローゼが隠すから、俺たちも知らんふりをしてるんだよ。
ははは、変か。……裏表なんかないお前たちから見れば、人間ってのは変かもしれないな。
ああ。大丈夫だ。近いうちに何とかする。結局は俺があいつらの関係を何とかしてやる必要があるんだしな。……まったく、手のかかる奴らだよ。
なんだ? ……ローゼが泣いてた理由か。
……そうだな、悲しいことがあるといえばある。あいつは、自分がいつまで生きられるのか分からないことを理解しているというか……。
いや、今日明日に死を迎えるってわけじゃない。ただ、このままだと再来年くらいにはどうなってるか分からないんだ。
治す方法?
なんだ、お前は病気を知っているのか。いや、ローゼは病気ってわけじゃないんだ。だから、正直どうしていいのか俺たちはお手上げでな。
だが、まだ時間はある。ローゼは死なせない。
公爵家にある精霊の文献は大神殿よりも多い、とアーヴィンも言ってたし、その中にはきっとローゼを助ける手がかりがあるはずなんだ。何せ、あいつの中にいるのは――。
――っと。
すまん、そろそろあいつらが起きる時間だ。悪いけどここまでにさせてくれ。
いや、こっちこそ、話に付き合ってくれてありがとうな。
ああ、もちろん歓迎だ。見かけたら気軽に声をかけてくれ。
またどこかで会おうな。
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