ニート 終末 人間兵器

沢谷 暖日

文字の大きさ
上 下
1 / 7
プロローグ 記憶の欠片

000

しおりを挟む
「もし明日、世界が滅びるとしたら、どうする?」
 小学生の頃の記憶なんて今の僕にはほとんど残っていないけど、唯一鮮明に思い出せる記憶と言えば、当時好きだった霧子さんと交わした会話だった。
「急にどうしたの? 今、霧子さんの将来の夢を聞いたんだけど……」
 場所は小学校の裏山。当時の僕たちは割と仲良しで、彼女が家に帰りたくないという時、たまにこの場所で時間を潰していた。彼女が切り株に腰を掛け、僕は木にもたれる形で。
「ふと気になった。いいから教えて、成瀬くん」
 ちなみに霧子さんは、超かわいかった。そんな霧子さんが、僕に意味深な問いかけをしてきた。これは僕にとって重要な問題だった。だから僕は、彼女の気を引こうと、こう答えた。
「世界の終わりか。……なら、好きな人だけは守る、かな」
 冷たい風がひゅうと吹き抜け、僕は『決まったな!』と無邪気に思ったが──。
「ぷっ──あはっ、あはははっ!」
 霧子さんは笑い転げた。僕は笑った意図が分からず、かなり焦った。
 体に何かついていないか冷静を装い見回してみると、霧子さんは「ちがうちがう!」と悶えながら手を横に振るので更に焦る。痺れを切らし「どうしたの?」と問うた。
「いや、カッコいいなって思って。甘酸っぱい臭さで」
「……褒められてる気しないけど」
「まぁまぁ。良い感性だと思う。詩人とか向いてると思うよ」
 最後の最後まで褒められてる気はしなかった。
 何はともあれ、次の日、長年来ると言われていた巨大地震が日本を襲った。
 僕は大怪我をして、両親と妹は家の下敷きになり、僕は叔母さんに引き取られた。
 霧子さんはこの地震を予言していたんだ、と思った。それ以外に有り得なかった。
 だけど、それを聞こうとした頃には、すでに彼女は転校をしていた。
 だから時折、霧子さんのあの質問が蘇ってくる。
 彼女は何を知っていたのか。なぜ僕にあんな質問をしたのか。
 でもようやく気付いた。彼女は知っていたんだ。
 巨大地震が日本を襲うことも。
 隕石が沖縄に落ちることも。
 世界が終わりを迎えることも。
 そして僕が、世界を救うべく兵器に改造されてしまうことも、全て。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

糸と蜘蛛

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:214pt お気に入り:1

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

BL / 連載中 24h.ポイント:555pt お気に入り:76

兄と俺のクラスメイト、そして、俺

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:25

三日月亭のクロワッサン

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

ヴィオレットの夢

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,820pt お気に入り:1,562

おしごとおおごとゴロのこと そのに

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:562pt お気に入り:3

愚かな旦那様~間違えて復讐した人は、初恋の人でした~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:319pt お気に入り:5,189

天才魔道士と努力家剣士!!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...