9 / 9
9.二人で歩む世界(エピローグ)
しおりを挟む
あれから、一年の月日が流れた。
結局、あの後どうなったのかと言うと──乱闘騒ぎがきっかけで大きな革命が起こり、そのまま王政は崩壊した。
その革命によって多数の犠牲者が出てしまい、不幸になった人たちも沢山いた。けれど……人々はまた立ち上がり、生活を再建するために日々奮闘している。
そして──嬉しいことに、ずっと隠蔽されていた“研究結果”が明るみに出たことによって、少しずつ魔女や魔法使いに対する偏見がなくなりつつある。
私とルークスは、長い間住んでいたアルヴィス村を離れ、各地を旅して回っている。(実際、逃亡生活のようなものだが)
あの女が事件の真犯人だったことは、ルークスと交流があったレジスタンス組織の人たちが証明してくれたみたいだ。でも、やっぱりルークスが人を殺したことに変わりはない。
だから、ルークスも最悪、捕まる覚悟でいたようだけれど──乱闘騒ぎや革命のごたごたで、ルークスがあの女を魔法で殺したことを気にしている者がいない所為か、今のところ彼を捕まえようと追いかけて来る者はいない。
まあ、それ以前に……離縁されてからの彼女は、周りと関わらずに暮らしていたようなので、死んでも気にする人がいなかったのかも知れない。
「スカーレット! 久しぶりだな!」
ふと名前を呼ばれたことに気付き、私は顔を上げた。すぐ先に、こちらに向かって大きく手を振っている黒髪の青年の姿が見える。
革命のお陰で牢獄から出られたグレンだ。偶然彼と再会できた私は、こうやって時々彼と会っている。
グレンは今、離れ離れになった恋人の手がかりを探しているらしい。無気力に生きていた彼が、こうして前向きに生きてくれていることがとても嬉しい。
「グレンさん! お久しぶりです!」
「ああ、元気だったか?」
「はい、元気ですよ」
「ルークスも、元気だったか?」
グレンは、私の隣にいるルークスに話し掛けた。
「はい。僕はスカーレットさえ傍にいてくれたら、それだけで元気になれますよ」
ルークスはそう返すと、にっこりと微笑みながら私の肩を抱いた。
「もう、ルークスったら……人前なのに……」
「ははっ……そうやって惚気られると、独り身のおっさんは泣けてくるな」
私たちのやり取りを見たグレンは、やれやれと肩を竦めた。
暫くグレンとの会話を楽しんだ私たちは、彼に別れの挨拶をして、新しい目的地に旅立つことにした。
「今回の目的地はスカーレットが決めましたけど、なんでそこにしようと思ったんですか?」
「え……? えーと、それは……何となく……かな」
ルークスに理由を聞かれ、私は慌てて誤魔化した。と言うのも、私は随分前から彼に内緒で『悪魔との契約を解除する方法』を探しているからだ。
次に向かう街の図書館には、古くから伝わる悪魔伝説について詳しく書かれた書物が保管されているらしい。
そこなら、もしかしたら契約を解除する方法がわかるかも知れない。
ルークスはこう言っていた。「僕は沢山の人を殺した。相手が悪人とは言え、それは変えようのない事実だ。でも、全部スカーレットを守るために取った行動だから、後悔はしていない。倫理を優先させて行動を起こさずにいたら、きっと最愛の人を守れなかったから」と。
さらに、こんなことも言っていた。「悪魔と契約したことは、本当に申し訳ないと思っている。正直、死後のことを考えると怖い。でも、これはきっと罪を犯した自分への贖罪だと思うから、僕はその運命を受け入れる」と。
私は、愛する人に死後もなお苦しんで欲しくない。
だから、自分が生きている間に、彼を運命から解放する方法を見つけようと思う。……なんとしても。
「そう言えば、スカーレット。気になっていたことがあるんですけど……」
「え……何?」
「いつの間にか、喋り方が普通になりましたね。前はずっと変な喋り方をしていましたけど……」
「今さら気付いたの!?」
「いや、気付いてはいたんですよ? でも、何だか聞きづらくて……」
「あの喋り方は……その……明るくて面白い魔女を演じるために、わざとやっていただけだから」
「なるほど。でも、どうして喋り方を変えたんですか? もう定着していたから、わざわざ変えなくても良かったのに」
「それは……うーん……」
私たちの間を、一陣の風がびゅうっと吹き抜けた。
さらさらと風に揺れる自分の長い赤髪を押さえながら、私はルークスの質問への返答を考える。
「そうね。もう『道化』を演じる必要がなくなったから……かしら?」
そう答えると、ルークスは「そうですか」と言って穏やかな笑みを返してくれた。
今の私は、もう自分が魔女であることに引け目を感じていない。何故なら……この世界には、ありのままの自分を受け入れてくれる人たちだって沢山いるからだ。彼らのお陰で、私は自信を持つことができた。
だから、私はこれからも、魔女であることを誇りに思って生きていこうと思う。
──今、自分の隣にいる大好きな人と一緒に。
結局、あの後どうなったのかと言うと──乱闘騒ぎがきっかけで大きな革命が起こり、そのまま王政は崩壊した。
その革命によって多数の犠牲者が出てしまい、不幸になった人たちも沢山いた。けれど……人々はまた立ち上がり、生活を再建するために日々奮闘している。
そして──嬉しいことに、ずっと隠蔽されていた“研究結果”が明るみに出たことによって、少しずつ魔女や魔法使いに対する偏見がなくなりつつある。
私とルークスは、長い間住んでいたアルヴィス村を離れ、各地を旅して回っている。(実際、逃亡生活のようなものだが)
あの女が事件の真犯人だったことは、ルークスと交流があったレジスタンス組織の人たちが証明してくれたみたいだ。でも、やっぱりルークスが人を殺したことに変わりはない。
だから、ルークスも最悪、捕まる覚悟でいたようだけれど──乱闘騒ぎや革命のごたごたで、ルークスがあの女を魔法で殺したことを気にしている者がいない所為か、今のところ彼を捕まえようと追いかけて来る者はいない。
まあ、それ以前に……離縁されてからの彼女は、周りと関わらずに暮らしていたようなので、死んでも気にする人がいなかったのかも知れない。
「スカーレット! 久しぶりだな!」
ふと名前を呼ばれたことに気付き、私は顔を上げた。すぐ先に、こちらに向かって大きく手を振っている黒髪の青年の姿が見える。
革命のお陰で牢獄から出られたグレンだ。偶然彼と再会できた私は、こうやって時々彼と会っている。
グレンは今、離れ離れになった恋人の手がかりを探しているらしい。無気力に生きていた彼が、こうして前向きに生きてくれていることがとても嬉しい。
「グレンさん! お久しぶりです!」
「ああ、元気だったか?」
「はい、元気ですよ」
「ルークスも、元気だったか?」
グレンは、私の隣にいるルークスに話し掛けた。
「はい。僕はスカーレットさえ傍にいてくれたら、それだけで元気になれますよ」
ルークスはそう返すと、にっこりと微笑みながら私の肩を抱いた。
「もう、ルークスったら……人前なのに……」
「ははっ……そうやって惚気られると、独り身のおっさんは泣けてくるな」
私たちのやり取りを見たグレンは、やれやれと肩を竦めた。
暫くグレンとの会話を楽しんだ私たちは、彼に別れの挨拶をして、新しい目的地に旅立つことにした。
「今回の目的地はスカーレットが決めましたけど、なんでそこにしようと思ったんですか?」
「え……? えーと、それは……何となく……かな」
ルークスに理由を聞かれ、私は慌てて誤魔化した。と言うのも、私は随分前から彼に内緒で『悪魔との契約を解除する方法』を探しているからだ。
次に向かう街の図書館には、古くから伝わる悪魔伝説について詳しく書かれた書物が保管されているらしい。
そこなら、もしかしたら契約を解除する方法がわかるかも知れない。
ルークスはこう言っていた。「僕は沢山の人を殺した。相手が悪人とは言え、それは変えようのない事実だ。でも、全部スカーレットを守るために取った行動だから、後悔はしていない。倫理を優先させて行動を起こさずにいたら、きっと最愛の人を守れなかったから」と。
さらに、こんなことも言っていた。「悪魔と契約したことは、本当に申し訳ないと思っている。正直、死後のことを考えると怖い。でも、これはきっと罪を犯した自分への贖罪だと思うから、僕はその運命を受け入れる」と。
私は、愛する人に死後もなお苦しんで欲しくない。
だから、自分が生きている間に、彼を運命から解放する方法を見つけようと思う。……なんとしても。
「そう言えば、スカーレット。気になっていたことがあるんですけど……」
「え……何?」
「いつの間にか、喋り方が普通になりましたね。前はずっと変な喋り方をしていましたけど……」
「今さら気付いたの!?」
「いや、気付いてはいたんですよ? でも、何だか聞きづらくて……」
「あの喋り方は……その……明るくて面白い魔女を演じるために、わざとやっていただけだから」
「なるほど。でも、どうして喋り方を変えたんですか? もう定着していたから、わざわざ変えなくても良かったのに」
「それは……うーん……」
私たちの間を、一陣の風がびゅうっと吹き抜けた。
さらさらと風に揺れる自分の長い赤髪を押さえながら、私はルークスの質問への返答を考える。
「そうね。もう『道化』を演じる必要がなくなったから……かしら?」
そう答えると、ルークスは「そうですか」と言って穏やかな笑みを返してくれた。
今の私は、もう自分が魔女であることに引け目を感じていない。何故なら……この世界には、ありのままの自分を受け入れてくれる人たちだって沢山いるからだ。彼らのお陰で、私は自信を持つことができた。
だから、私はこれからも、魔女であることを誇りに思って生きていこうと思う。
──今、自分の隣にいる大好きな人と一緒に。
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
薫る袖の追憶を捨て、月光の君に溺愛される
あとりえむ
恋愛
名門の姫君・茜は、夫の高彬に蔑まれ、寂れた離れで孤独な死を迎えた……
けれど意識が途切れた瞬間、視界を埋め尽くしたのは命を削って輝く緋色の夕映え。
目が覚めると、そこは高彬との婚約が決まったばかりの十五歳の春に戻っていた。
「二度目の人生では、誰のことも愛さず、ただあの方の幸せだけを願おう」
茜は、かつて自身の孤独を救ってくれた「最推し」の東宮・暁を、未来の知識で密かに支えることを決意する。
執着を捨て、元夫に無関心を貫く茜。
一方、高彬は自分に興味を失った茜の価値に気づき、今更遅い後悔に狂い始めるが……。
「見つけた。お前は俺の、運命の番だ」
正体を隠して東宮を支えていたはずが、冷徹な暁に見出され、逃げ場のないほどの執着と溺愛を注がれることに。
平安の雅な風情の中で描かれる、逆転と救済の物語。
最後は、二人が永遠の契りを交わす和歌で幕を閉じます。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ルークスもスカーレットも寿命は普通の人間と同じです。
仰る通り、老化しにくいだけですね。
面白いと言って頂けてとても嬉しいです。ヤンデレいいですよね。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
ひゃー♪更新ありがとうございます♪ルークスもスカーレットも可愛いっ
今後が楽しみですっ
完結までお供させてくださいっ
応援しておりますっ
ご感想ありがとうございます。
ヤンデレものなので、読む人を選ぶ話かもしれませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。