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第四章 この想いを終わらせるために…始めたんだ…
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自分のマンションに戻っていたリナは、久し振りに桂の部屋を訪れていた。
「どうなの?彼とは…。楽しんでる?」
部屋に入って落ちついた途端リナは亮の事を切り出した。桂は紅茶を入れながら苦笑する。
「お前なぁ、俺のことばっか聞かないで少しは自分の事話せよ。」
リナが土産にと持ってきたケーキを紅茶と一緒にテーブルに出しながら桂はニヤニヤ笑って言った。
最近リナに新しい恋人が出来た事は電話でリナから聞いていた。どんな相手か…今度こそリナが楽しい心を安らげるような恋愛が出来るか、それが桂の心配だった。
リナが10代の少女のように顔を赤らめる。
夜の女に似合わないその初心なリナの様子に桂が微笑んだ。ホントに今幸せなんだな…苦労の多い親友の幸せそうな様子に桂は胸がホッコリと温かくなるような気がする。
「うん…いつまで続くか分からないけど…今とっても幸せよ。」
そうか…良かったな。桂が笑って言うとリナが嬉しそうに顔を綻ばせた。
「かっちゃんはどう?例の彼と付き合っているんでしょ?」
リナは心配そうな表情で訊ねる。桂がリナを心配するように、否それ以上にリナは桂を心配していた。
素直で明るい大らかな性格の桂は誰からも好かれる人気者だった。だが恋愛に関しては桂の性格の良さはいつも裏目に出る。
今だって亮の為に「都合の良い男」を演じているのだ。
リナの心配が分かる桂は安心させるように答える。
「うん。俺もとっても楽しいぜ。彼は一流の恋人だよ。」
本当にその通りだから…桂は答える。リナが顔を歪めた。
「そう…だったら良いけど。でも…かっちゃん…。」
「リナ…大丈夫だから…もう言うなよ。俺は俺の責任でちゃんとけじめをつけているから…。」
けじめをつけている…普通の恋愛には出てこないそのセリフにリナが悲しそうな顔で桂を見る。
リナのその瞳に桂は安心させるように笑うと続けた。
「リナ…後8ヶ月だから。全部終わったら…今度はお前が羨ましがるような大恋愛をするから。」
言って桂は、だから心配するな。と笑って付け加えた。そんな桂にリナが頭を振って言う。
「かっちゃん…どうして我慢するの?かっちゃん彼の事ずっと好きだったじゃない。付き合って…もっと、どんどん好きになっていっちゃっうでしょう?それなのに10ヶ月経って「ハイ、契約終了。じゃさよなら」なんて出来るの?」
考えたくない事をリナはどんどん追求してくる。桂は紅茶を一口飲むと仕方なしに口を開いた。
「最近…思うようにしたんだ。って言うか…気付いたって言うか…。」
何を?と続きを促すようにリナが首を傾げて桂を真剣な面持ちで見詰める。
桂はほんの一瞬躊躇うように視線を揺らすと、溜息を吐きながら続けた。
「俺…多分この気持を終わらせる為に彼と「ごっこ」を始めたんだと思う。」
リナに言いながら…そう…そうなんだと言う思いが桂の中で改めて強くなる。
「どう言う事?」
リナが桂の言いたい事が分からずに聞き返した。リナの戸惑いの表情に桂は少し苦い笑いを見せると
「ほら…俺…ずっと彼に片思いしてただろ。そりゃ片思いは楽しいけど…どうしようも無いじゃないか?俺には山本に告白する勇気もなかったし。あっちには恋人がいたし。」
わかったような、わからないような表情で一応リナが、そうねと相槌を打つ。
「だからさ…いつかはこの俺のバカな片思いを終わらせなきゃダメだって思ってた。でも俺ずっと見ているだけで幸せモードだったから、1年もズルズル気持を引きずっていて…。」
そう…彼を見ているだけで幸せだった。亮がJ’s Barに入ってくるのを見る度、初恋のように胸がドキドキ高鳴った…。
「でも…不毛じゃん。所詮叶わないんだから。だから諦めなきゃいけなかった…。俺…中々諦める決心できなかったろ?リナいっつも俺に早く新しい恋人見つけろって説教してたじゃん。俺もそろそろ終わりにしなきゃなって考えていた矢先に…山本と付き合うようになって…。」
付き合って…今でもそう亮に言われた瞬間が脳裏に鮮やかに甦る。その一瞬だけは本当に幸せだった…。
「俺…多分10ヶ月後…あいつへの片思いを終わらせることが出来ると思うんだ。思いがけず恋人同士をやれて…夢は叶ったから…。ただ…何も出来ずにこの思いを殺すのではなくて…10ヶ月彼と一緒に過ごせた…。多分俺笑ってあいつへの想いを消す事が出来ると思う。」
「かっちゃん…私には…分からない…。どうして、そんな風に思えるの?好きなのに…。セックスフレンドなんて…。いくら恋人ごっこをしているからって…愛が無いのに…。かっちゃんが苦しいだけじゃない…。」
リナの杞憂が胸に痛い。桂はうっすらと微笑んだ。
「だから…前に言ったろう?夢を見るんだって…。俺はあいつへの想いを終わらせるために…このごっこを始めたんだ。夢から覚めれば…俺は新しく始める事が出来ると思う…。だから…残り8ヶ月…俺を見守っていてよ。」
切ない桂の胸の内を聞いてリナが瞳を緩めた。あまりに切なくて…辛くて自分の方が涙が溢れそうになる。
それでも笑って「見守っていてよ。」と言う桂の言葉にリナは声もなく頷いた。
「どうなの?彼とは…。楽しんでる?」
部屋に入って落ちついた途端リナは亮の事を切り出した。桂は紅茶を入れながら苦笑する。
「お前なぁ、俺のことばっか聞かないで少しは自分の事話せよ。」
リナが土産にと持ってきたケーキを紅茶と一緒にテーブルに出しながら桂はニヤニヤ笑って言った。
最近リナに新しい恋人が出来た事は電話でリナから聞いていた。どんな相手か…今度こそリナが楽しい心を安らげるような恋愛が出来るか、それが桂の心配だった。
リナが10代の少女のように顔を赤らめる。
夜の女に似合わないその初心なリナの様子に桂が微笑んだ。ホントに今幸せなんだな…苦労の多い親友の幸せそうな様子に桂は胸がホッコリと温かくなるような気がする。
「うん…いつまで続くか分からないけど…今とっても幸せよ。」
そうか…良かったな。桂が笑って言うとリナが嬉しそうに顔を綻ばせた。
「かっちゃんはどう?例の彼と付き合っているんでしょ?」
リナは心配そうな表情で訊ねる。桂がリナを心配するように、否それ以上にリナは桂を心配していた。
素直で明るい大らかな性格の桂は誰からも好かれる人気者だった。だが恋愛に関しては桂の性格の良さはいつも裏目に出る。
今だって亮の為に「都合の良い男」を演じているのだ。
リナの心配が分かる桂は安心させるように答える。
「うん。俺もとっても楽しいぜ。彼は一流の恋人だよ。」
本当にその通りだから…桂は答える。リナが顔を歪めた。
「そう…だったら良いけど。でも…かっちゃん…。」
「リナ…大丈夫だから…もう言うなよ。俺は俺の責任でちゃんとけじめをつけているから…。」
けじめをつけている…普通の恋愛には出てこないそのセリフにリナが悲しそうな顔で桂を見る。
リナのその瞳に桂は安心させるように笑うと続けた。
「リナ…後8ヶ月だから。全部終わったら…今度はお前が羨ましがるような大恋愛をするから。」
言って桂は、だから心配するな。と笑って付け加えた。そんな桂にリナが頭を振って言う。
「かっちゃん…どうして我慢するの?かっちゃん彼の事ずっと好きだったじゃない。付き合って…もっと、どんどん好きになっていっちゃっうでしょう?それなのに10ヶ月経って「ハイ、契約終了。じゃさよなら」なんて出来るの?」
考えたくない事をリナはどんどん追求してくる。桂は紅茶を一口飲むと仕方なしに口を開いた。
「最近…思うようにしたんだ。って言うか…気付いたって言うか…。」
何を?と続きを促すようにリナが首を傾げて桂を真剣な面持ちで見詰める。
桂はほんの一瞬躊躇うように視線を揺らすと、溜息を吐きながら続けた。
「俺…多分この気持を終わらせる為に彼と「ごっこ」を始めたんだと思う。」
リナに言いながら…そう…そうなんだと言う思いが桂の中で改めて強くなる。
「どう言う事?」
リナが桂の言いたい事が分からずに聞き返した。リナの戸惑いの表情に桂は少し苦い笑いを見せると
「ほら…俺…ずっと彼に片思いしてただろ。そりゃ片思いは楽しいけど…どうしようも無いじゃないか?俺には山本に告白する勇気もなかったし。あっちには恋人がいたし。」
わかったような、わからないような表情で一応リナが、そうねと相槌を打つ。
「だからさ…いつかはこの俺のバカな片思いを終わらせなきゃダメだって思ってた。でも俺ずっと見ているだけで幸せモードだったから、1年もズルズル気持を引きずっていて…。」
そう…彼を見ているだけで幸せだった。亮がJ’s Barに入ってくるのを見る度、初恋のように胸がドキドキ高鳴った…。
「でも…不毛じゃん。所詮叶わないんだから。だから諦めなきゃいけなかった…。俺…中々諦める決心できなかったろ?リナいっつも俺に早く新しい恋人見つけろって説教してたじゃん。俺もそろそろ終わりにしなきゃなって考えていた矢先に…山本と付き合うようになって…。」
付き合って…今でもそう亮に言われた瞬間が脳裏に鮮やかに甦る。その一瞬だけは本当に幸せだった…。
「俺…多分10ヶ月後…あいつへの片思いを終わらせることが出来ると思うんだ。思いがけず恋人同士をやれて…夢は叶ったから…。ただ…何も出来ずにこの思いを殺すのではなくて…10ヶ月彼と一緒に過ごせた…。多分俺笑ってあいつへの想いを消す事が出来ると思う。」
「かっちゃん…私には…分からない…。どうして、そんな風に思えるの?好きなのに…。セックスフレンドなんて…。いくら恋人ごっこをしているからって…愛が無いのに…。かっちゃんが苦しいだけじゃない…。」
リナの杞憂が胸に痛い。桂はうっすらと微笑んだ。
「だから…前に言ったろう?夢を見るんだって…。俺はあいつへの想いを終わらせるために…このごっこを始めたんだ。夢から覚めれば…俺は新しく始める事が出来ると思う…。だから…残り8ヶ月…俺を見守っていてよ。」
切ない桂の胸の内を聞いてリナが瞳を緩めた。あまりに切なくて…辛くて自分の方が涙が溢れそうになる。
それでも笑って「見守っていてよ。」と言う桂の言葉にリナは声もなく頷いた。
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