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《第18章》 ― どうするつもりもない。ただ愛しているだけだ ―
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逢えたらなんて言おう…?何を話す…?
桂は俺を許してくれるのだろうか?それとも…あの夜…告げられた言葉の通り、もう俺たちの関係を終わらせたいと思っているのだろうか?
亮は不安と怯えが綯い交ぜになったぐちゃぐちゃな感情で、それでも桂の部屋に来ていた。
深く呼吸を吸い込むと、リナから渡された鍵で桂の部屋のドアを開ける。
起きているだろうか…?俺を見て、何て言うだろう?
亮は自然に足音を殺してしまう自分に苦笑しながらも、桂の部屋に上がる。静かに歩を進めてワンルームの部屋に入ると、桂の規則正しい寝息が聞こえてきて、亮はドキッとする。
ゆっくりと部屋の奥のベッドに近寄る。以前…二人で抱き合ったこともあったそのベッドに…ゆっくりと近づく。
この1週間激しく求め続けた桂の姿を見つけて、亮の中に熱いものがこみ上げてきていた。
どうしてこんなに愛しいのだろう…?
震える指先で、そっと桂の頬に触れる。1週間前よりも顔色も良くなったその頬に慈しむように指を滑らせる。
こんな風に愛しくて、大切に想うのは桂だけなんだ…。
神聖なものに触れるかのように、その頬に口付ける。唇を滑らせて、耳朶や首筋にキスを落としていった。
終わりになどしない…桂と新しく始めるために…今度こそきちんとした関係を紡いでいく為に…桂とやり直すんだ…。
歪んだ関係を終わらせて、そして桂と始める…。
桂を失ったら……。
そこまで、考えて亮は吐き気をもよおす程の恐れを感じていた。
絶対に…絶対に失ったりしない…絶対に!!
亮はじっと規則正しい寝息を零す桂の顔を見つめた。以前よりも顔色がいい事だけが亮を安心させる。
「…ん……」
桂が亮の指に擽ったそうに顔を微かに捩った。その仕草に亮が柔らかく表情を緩めた。
優しく何度も桂の頬を撫でていく。少しだけふっくらと顔の輪郭が戻ったような気がして亮は安堵の息を吐いた。
どうしてこんな風に間違ってしまったのだろう…。
亮は何度も繰り返した問いをもう一度呟く。
桂は俺の気持ちを信じてはいない…期待させるような事を言うな…そう言う…。
でも俺はお前に期待もして欲しいし、俺の気持ちに気づいて…そして信じて欲しいんだ…。
お前を愛しているって…。
亮は自分の馬鹿さに改めて気づいて顔を苦く顰めた。桂は終わりが来る事しか考えていない。俺がどんなに態度で示そうとしても、かえってそれは桂を追い詰めて苦しめるだけだったのか…。
その事実に亮は愕然とする。自分のすること全てが桂を苦しめていたことがどうしようもない痛みに変わる。
自分が愛しているんだ…と態度で示そうとする度にそれは桂を苦しめ葛藤させるだけだったのか…。
早く健志と終わりにしないと…桂との距離が離れていってしまう。亮は桂の頬を撫で続けながらぶるっと背中を振るわせた。
桂に謝って…そしてもう少しだけ時間をもらわないと…健志と終わりにするまでの時間をもらわないと…。
亮は、桂が自分から離れるのと、桂とやり直せるのとどちらが早いのだろう…と考えて身を竦ませた。
自分たちは10ヶ月限定の関係で、愛の無い…関係で成り立っている…と桂は信じている。
きっと桂には俺があのリナに嫉妬して、見境がなくなっていたなんてことも理解出来ないに違いない。
そこまで考えて亮は苦々しい笑みで表情を歪めた。
生まれて初めて嫉妬して女相手に修羅場を演じたのに、肝心の相手は俺のそんな気持ちに気づきはしない。
なんて皮肉な事か…。
亮は今まで自分が遊んで、切り捨ててきた過去の恋人…仮にも亮はそう信じていたのだが…達を思い出していた。
誰もが自分に縋り、別れないでくれと懇願していた。…それなのに相手の気持ちを思いやる余裕もなく、ごみを捨てる感覚で彼らを捨ててきた・・・。
「…そのつけが今来てるってわけだ…」
亮はククッと耳障りなしわがれた笑い声をたてた。自嘲する皮肉な笑いを止める事が出来ない。
「…ん…」
桂がまどろみから引き戻されるように声を立てた。
亮ははっとすると、桂の頬に触れながら「桂…」と優しく呼んだ。
夢を見ているのか、桂はなかなか意識を戻さない。
自分の傍に引き戻すかのように亮は桂の額にキスを落としながら言い聞かせるように囁いた。
「桂…愛している…愛している…。だから…。俺から…離れるな!!」
桂は俺を許してくれるのだろうか?それとも…あの夜…告げられた言葉の通り、もう俺たちの関係を終わらせたいと思っているのだろうか?
亮は不安と怯えが綯い交ぜになったぐちゃぐちゃな感情で、それでも桂の部屋に来ていた。
深く呼吸を吸い込むと、リナから渡された鍵で桂の部屋のドアを開ける。
起きているだろうか…?俺を見て、何て言うだろう?
亮は自然に足音を殺してしまう自分に苦笑しながらも、桂の部屋に上がる。静かに歩を進めてワンルームの部屋に入ると、桂の規則正しい寝息が聞こえてきて、亮はドキッとする。
ゆっくりと部屋の奥のベッドに近寄る。以前…二人で抱き合ったこともあったそのベッドに…ゆっくりと近づく。
この1週間激しく求め続けた桂の姿を見つけて、亮の中に熱いものがこみ上げてきていた。
どうしてこんなに愛しいのだろう…?
震える指先で、そっと桂の頬に触れる。1週間前よりも顔色も良くなったその頬に慈しむように指を滑らせる。
こんな風に愛しくて、大切に想うのは桂だけなんだ…。
神聖なものに触れるかのように、その頬に口付ける。唇を滑らせて、耳朶や首筋にキスを落としていった。
終わりになどしない…桂と新しく始めるために…今度こそきちんとした関係を紡いでいく為に…桂とやり直すんだ…。
歪んだ関係を終わらせて、そして桂と始める…。
桂を失ったら……。
そこまで、考えて亮は吐き気をもよおす程の恐れを感じていた。
絶対に…絶対に失ったりしない…絶対に!!
亮はじっと規則正しい寝息を零す桂の顔を見つめた。以前よりも顔色がいい事だけが亮を安心させる。
「…ん……」
桂が亮の指に擽ったそうに顔を微かに捩った。その仕草に亮が柔らかく表情を緩めた。
優しく何度も桂の頬を撫でていく。少しだけふっくらと顔の輪郭が戻ったような気がして亮は安堵の息を吐いた。
どうしてこんな風に間違ってしまったのだろう…。
亮は何度も繰り返した問いをもう一度呟く。
桂は俺の気持ちを信じてはいない…期待させるような事を言うな…そう言う…。
でも俺はお前に期待もして欲しいし、俺の気持ちに気づいて…そして信じて欲しいんだ…。
お前を愛しているって…。
亮は自分の馬鹿さに改めて気づいて顔を苦く顰めた。桂は終わりが来る事しか考えていない。俺がどんなに態度で示そうとしても、かえってそれは桂を追い詰めて苦しめるだけだったのか…。
その事実に亮は愕然とする。自分のすること全てが桂を苦しめていたことがどうしようもない痛みに変わる。
自分が愛しているんだ…と態度で示そうとする度にそれは桂を苦しめ葛藤させるだけだったのか…。
早く健志と終わりにしないと…桂との距離が離れていってしまう。亮は桂の頬を撫で続けながらぶるっと背中を振るわせた。
桂に謝って…そしてもう少しだけ時間をもらわないと…健志と終わりにするまでの時間をもらわないと…。
亮は、桂が自分から離れるのと、桂とやり直せるのとどちらが早いのだろう…と考えて身を竦ませた。
自分たちは10ヶ月限定の関係で、愛の無い…関係で成り立っている…と桂は信じている。
きっと桂には俺があのリナに嫉妬して、見境がなくなっていたなんてことも理解出来ないに違いない。
そこまで考えて亮は苦々しい笑みで表情を歪めた。
生まれて初めて嫉妬して女相手に修羅場を演じたのに、肝心の相手は俺のそんな気持ちに気づきはしない。
なんて皮肉な事か…。
亮は今まで自分が遊んで、切り捨ててきた過去の恋人…仮にも亮はそう信じていたのだが…達を思い出していた。
誰もが自分に縋り、別れないでくれと懇願していた。…それなのに相手の気持ちを思いやる余裕もなく、ごみを捨てる感覚で彼らを捨ててきた・・・。
「…そのつけが今来てるってわけだ…」
亮はククッと耳障りなしわがれた笑い声をたてた。自嘲する皮肉な笑いを止める事が出来ない。
「…ん…」
桂がまどろみから引き戻されるように声を立てた。
亮ははっとすると、桂の頬に触れながら「桂…」と優しく呼んだ。
夢を見ているのか、桂はなかなか意識を戻さない。
自分の傍に引き戻すかのように亮は桂の額にキスを落としながら言い聞かせるように囁いた。
「桂…愛している…愛している…。だから…。俺から…離れるな!!」
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