5 / 23
第5話
しおりを挟む
荷ほどきも終わり、少し落ち着いた数日後。
朝早くに目が覚めてしまい、侍女も疲れているだろうと、起こさずに部屋を1人で出た。
お城の中を、ずっとひたすらに歩いた奥の、扉が少し空いていた。
「?」
少し開いた扉から、人の声がすると思った。
隙間から中を覗くと、そこは聖堂だった。
「あぁ・・・司祭様。」
薄暗い聖堂から、響く女性の声。
なんとなく、聖堂の中に入って、キョロキョロと見渡してしまう。
「あなたの為なら・・・私は・・・・はぁ・・・ん」
声のする方を見ると、そこには、なんと、あの無口で上品なジュリア公爵令嬢がいた。
レオノーラは思わず、自分の口に手を当てて、目を見開く。
深く白いフードを被った、おそらく男性と思われる人と、抱き合っている。
「あぁ・・・わたくしは、貴方の物ですわ。来て・・・。」
甘い声を小さく響かせながら、そのまま、2人は聖堂のベンチに、崩れるように横たわる。
よく見えないけれど、男女2人が何をしているのかは想像がついた。
心の中で、悲鳴を上げながら、レオノーラは猫のように足音を響かせないよう注意して、その場を立ち去る。
なんとか聖堂を出て、廊下を足早に歩く。
ど・・・・どうゆうこと?!ウソでしょ!?スキャンダルだわ!
なにこれ?見てはいけないモノを見てしまったー-----!
お城の庭園に出ると、とりあえず、ダッシュして逃げる。
息切れしまくって、ゼーゼーと呼吸して、噴水まで走ってくると、息を整えた。
これは、皇太子に報告するべきなのだろうけど、とても言えない。
とにかく見なかったことにして、他の候補者をオススメしよう!うんうん。それが1番だわ!
「・・・・。」
それにしても、ジュリア様は恋をしていたんだわ。だから、皇太子妃候補としてココに居るものの、会話にも入らないでいるんだ。
私も・・・エドワードに、会いたいな。
レオノーラの心に、少しの寂しさと恋しさが芽生えてしまっていた。
長い廊下を歩いて、自室へ向かっていたけれど、その足が止まる。
今は、まだ朝の5:30位だろうか?
城勤めの近衛兵は、交代制でお城に居る。
そうしようと思ったのではなくて、体が勝手に動く。レオノーラは、周囲を見渡しながら、近衛兵が居る場所を探し回った。彼に会えるかもしれない。このお城のどこかに、居るかもしれない。
そう思ったら、勝手に彼を探し始めていた。
お城のある一角で、騎士達が手合わせをしている広場があった。
そこをキョロキョロと、見渡すと、近衛隊の服を着こんだエドワードがいた。
見たこともない険しい顔で、手合わせをしている。力強く身軽な剣さばきで、あっという間に、相手から一本とってしまっていた。一瞬、見惚れてしまう。
建物の中を移動しながら、広場を大回りして傍に行こうとすると、彼は剣を鞘に納めて、建物の中に入ってしまう。慌てて、走って行って、1人で廊下を歩くエドワードの後ろ姿をとらえた。
「エドワード!」
声をかけると、彼は振り返った。
大きく目を見開いて、驚いた様子の彼に駆け寄る。
手を伸ばして、触れようとした瞬間、彼は言った。
「何か御用でしょうか?」
「・・・・え?」
「こんな時間に、皇太子妃候補のご令嬢が、このような場所に来るとは。何用かと。」
「・・・」
無表情のエドワードは、目を合わせようとしない。
「どうして、そんな言い方するの?」
「・・・・」
「ねぇ、こっちを見て。せっかく会いに来たのに、なんでそんなに冷たくするの?」
エドワードの腕を掴む。
即座に、その手を払いのけられる。
「エドワード・・・。」
「もう2度と会いに来るな。誰に見られているか分からないだろう!」
小声で、しかも早口で、彼は言う。
「そんな・・・私は、誰に見られても構わないわ!」
言い切ると、エドワードは、やっとレオノーラの目を見た。
そして、困った顔をした。
「・・・我儘を言うな。そんなことを言われたら・・・今すぐ連れて帰りたくなる。」
・・・連れて帰って欲しい。
「エドワード、私ね・・・」
そう言いかけた時だった。
「やぁ、おはよう!エドワード!」
少し離れたところから、そう声をかけられる。
2人で、声の方を見ると、そこには皇太子が居た。
エドワードは、すぐに騎士の礼をとる。
「殿下。おはようございます。」
皇太子は、ニコニコと目の前まで歩いてくると、うんうん、と頷きながらレオノーラの腕を掴んだ。そのまま、引き寄せられる。
「レオノーラ嬢、どうして君はここにいるのかな?」
皇太子に顔を近づけられて、距離を取ろうと上半身を逸らすけれど、腰を掴まれて引き寄せられる。
「御覧の通りです!わたくしは、彼に会いに来たのです!何かいけませんか?」
「君は、自分の立場が分かっていて、そんなことを言ってるの?僕の妃候補なんだよ?早朝にこっそり、他の男に会いに行くなんて、ダメに決まってるだろう?」
そう言うと、皇太子は、レオノーラの額にキスをした。
「やっ!なにすんのよ!」
「ふふふ。もう~、僕の可愛いレディは、照屋さんだなぁ。」
皇太子にガッシリとホールドされ、レオノーラは抵抗するように両腕で皇太子の胸を押す。
その時、ガヤガヤと騎士達が現れた。
「殿下、おはようございます!」
「おはようございます!殿下!」
騎士たちが、全員そろって敬礼し、挨拶をする。
皇太子は、にこにことそれに返事する。
「おはよう~。じゃぁ、僕たちはこれで失礼するよ。あ、そうだ。エドワード。」
「はい。」
「もう少し話がしたいから、後で僕の所に来てくれる?」
「承知致しました。」
皇太子は、ニコリと笑って、レオノーラの手を引く。
そのまま、グイグイと引っ張られて、皇太子と2階に上がって行く。
暫く無言だった、皇太子が口を開いた。
「今度、こんなことをしたら、許さないよ?」
「・・・・解りました。」
皇太子は、手を放して、レオノーラを見る。
レオノーラも、皇太子を見上げた。
皇太子の顔は怒っては居ないようだった。
私の家とエドワードの立場を守ってくれた。・・・皇太子は、私が勝手な行動をとったのに、助けに来てくれたんだ。あのまま、他の人間に見られていたら、ラッセル家もエドワードも、社交場で何を言われるか分からない。
・・・解ってた。だけど、エドワードに会いたくて・・・・。
「君は、不器用な子だね。冷静で政治的なセンスを持ってるのに、好きな男の事となると、何も見えない?」
そう言われて、一気に顔面が熱くなる。
レオノーラのその顔を見て、皇太子は笑った。
「はははっ。可愛いな!これはさすがに、エドワードが骨抜きにされちゃうわけだね。」
レオノーラは、からかわれていることが、恥ずかしすぎて、皇太子を睨む。
「もう!私は、これで失礼します!!!」
ダッシュでその場を離れた。
その姿を、皇太子は、じっと見守った。
朝早くに目が覚めてしまい、侍女も疲れているだろうと、起こさずに部屋を1人で出た。
お城の中を、ずっとひたすらに歩いた奥の、扉が少し空いていた。
「?」
少し開いた扉から、人の声がすると思った。
隙間から中を覗くと、そこは聖堂だった。
「あぁ・・・司祭様。」
薄暗い聖堂から、響く女性の声。
なんとなく、聖堂の中に入って、キョロキョロと見渡してしまう。
「あなたの為なら・・・私は・・・・はぁ・・・ん」
声のする方を見ると、そこには、なんと、あの無口で上品なジュリア公爵令嬢がいた。
レオノーラは思わず、自分の口に手を当てて、目を見開く。
深く白いフードを被った、おそらく男性と思われる人と、抱き合っている。
「あぁ・・・わたくしは、貴方の物ですわ。来て・・・。」
甘い声を小さく響かせながら、そのまま、2人は聖堂のベンチに、崩れるように横たわる。
よく見えないけれど、男女2人が何をしているのかは想像がついた。
心の中で、悲鳴を上げながら、レオノーラは猫のように足音を響かせないよう注意して、その場を立ち去る。
なんとか聖堂を出て、廊下を足早に歩く。
ど・・・・どうゆうこと?!ウソでしょ!?スキャンダルだわ!
なにこれ?見てはいけないモノを見てしまったー-----!
お城の庭園に出ると、とりあえず、ダッシュして逃げる。
息切れしまくって、ゼーゼーと呼吸して、噴水まで走ってくると、息を整えた。
これは、皇太子に報告するべきなのだろうけど、とても言えない。
とにかく見なかったことにして、他の候補者をオススメしよう!うんうん。それが1番だわ!
「・・・・。」
それにしても、ジュリア様は恋をしていたんだわ。だから、皇太子妃候補としてココに居るものの、会話にも入らないでいるんだ。
私も・・・エドワードに、会いたいな。
レオノーラの心に、少しの寂しさと恋しさが芽生えてしまっていた。
長い廊下を歩いて、自室へ向かっていたけれど、その足が止まる。
今は、まだ朝の5:30位だろうか?
城勤めの近衛兵は、交代制でお城に居る。
そうしようと思ったのではなくて、体が勝手に動く。レオノーラは、周囲を見渡しながら、近衛兵が居る場所を探し回った。彼に会えるかもしれない。このお城のどこかに、居るかもしれない。
そう思ったら、勝手に彼を探し始めていた。
お城のある一角で、騎士達が手合わせをしている広場があった。
そこをキョロキョロと、見渡すと、近衛隊の服を着こんだエドワードがいた。
見たこともない険しい顔で、手合わせをしている。力強く身軽な剣さばきで、あっという間に、相手から一本とってしまっていた。一瞬、見惚れてしまう。
建物の中を移動しながら、広場を大回りして傍に行こうとすると、彼は剣を鞘に納めて、建物の中に入ってしまう。慌てて、走って行って、1人で廊下を歩くエドワードの後ろ姿をとらえた。
「エドワード!」
声をかけると、彼は振り返った。
大きく目を見開いて、驚いた様子の彼に駆け寄る。
手を伸ばして、触れようとした瞬間、彼は言った。
「何か御用でしょうか?」
「・・・・え?」
「こんな時間に、皇太子妃候補のご令嬢が、このような場所に来るとは。何用かと。」
「・・・」
無表情のエドワードは、目を合わせようとしない。
「どうして、そんな言い方するの?」
「・・・・」
「ねぇ、こっちを見て。せっかく会いに来たのに、なんでそんなに冷たくするの?」
エドワードの腕を掴む。
即座に、その手を払いのけられる。
「エドワード・・・。」
「もう2度と会いに来るな。誰に見られているか分からないだろう!」
小声で、しかも早口で、彼は言う。
「そんな・・・私は、誰に見られても構わないわ!」
言い切ると、エドワードは、やっとレオノーラの目を見た。
そして、困った顔をした。
「・・・我儘を言うな。そんなことを言われたら・・・今すぐ連れて帰りたくなる。」
・・・連れて帰って欲しい。
「エドワード、私ね・・・」
そう言いかけた時だった。
「やぁ、おはよう!エドワード!」
少し離れたところから、そう声をかけられる。
2人で、声の方を見ると、そこには皇太子が居た。
エドワードは、すぐに騎士の礼をとる。
「殿下。おはようございます。」
皇太子は、ニコニコと目の前まで歩いてくると、うんうん、と頷きながらレオノーラの腕を掴んだ。そのまま、引き寄せられる。
「レオノーラ嬢、どうして君はここにいるのかな?」
皇太子に顔を近づけられて、距離を取ろうと上半身を逸らすけれど、腰を掴まれて引き寄せられる。
「御覧の通りです!わたくしは、彼に会いに来たのです!何かいけませんか?」
「君は、自分の立場が分かっていて、そんなことを言ってるの?僕の妃候補なんだよ?早朝にこっそり、他の男に会いに行くなんて、ダメに決まってるだろう?」
そう言うと、皇太子は、レオノーラの額にキスをした。
「やっ!なにすんのよ!」
「ふふふ。もう~、僕の可愛いレディは、照屋さんだなぁ。」
皇太子にガッシリとホールドされ、レオノーラは抵抗するように両腕で皇太子の胸を押す。
その時、ガヤガヤと騎士達が現れた。
「殿下、おはようございます!」
「おはようございます!殿下!」
騎士たちが、全員そろって敬礼し、挨拶をする。
皇太子は、にこにことそれに返事する。
「おはよう~。じゃぁ、僕たちはこれで失礼するよ。あ、そうだ。エドワード。」
「はい。」
「もう少し話がしたいから、後で僕の所に来てくれる?」
「承知致しました。」
皇太子は、ニコリと笑って、レオノーラの手を引く。
そのまま、グイグイと引っ張られて、皇太子と2階に上がって行く。
暫く無言だった、皇太子が口を開いた。
「今度、こんなことをしたら、許さないよ?」
「・・・・解りました。」
皇太子は、手を放して、レオノーラを見る。
レオノーラも、皇太子を見上げた。
皇太子の顔は怒っては居ないようだった。
私の家とエドワードの立場を守ってくれた。・・・皇太子は、私が勝手な行動をとったのに、助けに来てくれたんだ。あのまま、他の人間に見られていたら、ラッセル家もエドワードも、社交場で何を言われるか分からない。
・・・解ってた。だけど、エドワードに会いたくて・・・・。
「君は、不器用な子だね。冷静で政治的なセンスを持ってるのに、好きな男の事となると、何も見えない?」
そう言われて、一気に顔面が熱くなる。
レオノーラのその顔を見て、皇太子は笑った。
「はははっ。可愛いな!これはさすがに、エドワードが骨抜きにされちゃうわけだね。」
レオノーラは、からかわれていることが、恥ずかしすぎて、皇太子を睨む。
「もう!私は、これで失礼します!!!」
ダッシュでその場を離れた。
その姿を、皇太子は、じっと見守った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
16
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる