身代わりにと差し出された悪役令嬢は上主である、公爵様に可愛がられて~私は貴方のモノにはなれません~

一ノ瀬 彩音

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数日後、約束通り彼と出かけることになった私は待ち合わせ場所である広場へと向かっていた。
(一体どんな服を着ればいいのかしら?)
今まで一度も男性と出かけたことなどない私にとって異性と二人きりで外出すること自体が初めての経験であったのだ。
しかも相手はあの有名なレリオ様なのだ、粗相でもしようものならどんな目に遭わされるか分かったものではない。
(うう、緊張してきたわ……)
不安を抱えながらもなんとか目的地に到着したのだが、そこには既にレリオ様が待っていた。
(お待たせしてしまったかしら、早く行かないと……!)
慌てて駆け寄ると、彼はこちらに気づいたようでにこやかに微笑みかけてきた。
「やあ、遅かったじゃないか、待ちくたびれたよ」
嫌味っぽく言われたので思わずムッとするもグッと堪えることにする。
ここで言い返してもろくなことにはならないだろうと判断したからだ。
そんな私の様子を気にすることもなく彼は続ける。
「まあいいさ、それよりも今日は楽しもうじゃないか」
そう言われて差し出された手を取るべきか悩んでいると強引に手を握られてしまう。
そのまま引っ張られるようにして連れて行かれてしまった。
向かった先はこの街で一番大きな市場だった。
そこは多くの人で賑わっており、活気に満ち溢れている様子が見て取れる。
そんな中を進んでいくうちにある店の前で立ち止まったかと思うと、こちらを振り返って言った。
レリオ様に連れてこられたのはアクセサリーショップだった。
店内に入ると様々な商品が置かれている中で、特に目を引いたものがあった。
それはネックレスだ。
銀色のチェーンに赤い宝石のついたシンプルなデザインだったが、それが逆に美しさを引き立てており、とても魅力的に見えた。
値段もそれほど高くなかったのでこれなら買えると思い、手に取ってみる。
「気に入ったのかい?」
背後から声をかけられたので振り返るとそこにはいつの間にかレリオ様が立っており、私の手の中の物を見てニヤリと笑っていた。
慌てて隠そうとしたのだがもう遅い。
あっという間に取り上げられてしまった。
それからしばらく眺めていたかと思うとおもむろに店員さんを呼びつけ、会計を済ませてしまったのだ。
呆気にとられていると戻ってきた彼からそれを手渡された。
恐る恐る受け取ると、どうやらくれるつもりのようだ。
戸惑いつつもお礼を言うと彼は満足そうに頷いた後、手を取って歩き出してしまう。
そのまましばらく歩いていると不意に立ち止まり、振り返ると言った。
「さあ、行こうか、私の可愛いミラ嬢」
どこへですか?
と聞き返す間もなく手を引かれるままについていくと、たどり着いた場所は高級そうなレストランの前だった。
躊躇うことなく入っていく彼に続いて中に入ると、ウェイターに案内され席に着くように促された。
案内された席に着くとメニュー表を手渡され、好きな物を頼んでいいと言われたため遠慮なく注文することにした。
しばらくして料理が運ばれてくると早速食べ始めることにした。
どれもこれも絶品でついつい夢中になってしまい、気づけば全て平らげてしまっていた。
お腹いっぱいになったところでふと我に帰ると、隣に座ったレリオ様がこちらを見つめていたことに気づいた。
その視線はとても優しいもので、まるで慈しむかのような眼差しを向けてきていることに気づき恥ずかしくなった。
私は目を逸らすようにして俯くことしかできなかった。
そんな私に構うことなく彼は話しかけてくる。
そして、耳元で囁くように言った。
「愛している、お持ち帰りしたいぐらいだ」
また、この人は心に思って無い事を……。
「レリオ様、からかわないで下さいませんか、私の事、好きでもい癖に」
その言葉が言い終わらぬうちにキスされてしまう。
しかも、深く濃厚なやつだ。
暫くして解放されると今度は優しく抱きしめられてしまう。
私もそれに応えるように背中に腕を回すと胸に顔を埋めたのだった。
ああ、なんて幸せなんだろう!
もうこのまま時間が止まればいいのに、そう思わずにはいられなかった。
しかし、私はタダの花嫁候補、しかも、レリオ様が本当に好きな相手では無い。
さらにいえば、私がレリオ様について行ければなんてゲームめいた扱いだ。
「レリオ様、考え直してくださいませんか、私は本当に貴方が好き、んぅぅ」
反論しようとすれば口を塞がれてしまう始末だ。
その間にもどんどん話は進んでいき、結局、婚約解消の話は無しになってしまった。
帰り際に渡されたプレゼントはペアリングだった。
嬉しくて泣きそうになるが何とか我慢することに成功したようだ。
こうして、私の人生は大きく変わってしまった。
翌日、朝食を終えたところで、レリオ様がやってきて、私を王宮へと連れて行こうとした。
そこで私は、あることを思いついて、レリオ様を引き止めると、ある提案をした。
その内容とは、レリオ様と一日デートをするというものだ。
もちろん、ただデートをするだけではつまらないので、賭けをする事にした。
内容は簡単で、先に相手に惚れさせた方が勝ちという単純なものだ。
負けた方は勝った方の言うことを聞くという条件で勝負を始めたわけだが、これがなかなか面白い展開になってきたのだ。
まず最初に行ったのはショッピングである。
二人で色々なお店を回って服や小物などを買い漁った。
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