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(そういうところは、年相応だな)
と思った。
そこで思い切って、彼に聞いてみる事にした。
(本当はずっと聞きたかったんだ、本当の父親ではないかもしれないけど、俺にとってはたった一人の父であり、家族なんだ)
そう思いながら彼の答えを待つと返ってきた言葉は意外なものだった。
彼は一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、満面の笑みで答える。
その言葉を聞いて涙が出そうになるのを堪えながら礼を言うと、彼もまた、微笑んでくれた。
それがとても嬉しかったのだが照れくさかったので話題を変える事にした。
(それより今はもっと大事なことがあるんだったよな)
そう思って真剣な表情で見つめ返すと彼女も姿勢を正して話を聞いてくれる体勢になったので口を開くことにする。
そして、今までの経緯について説明していくことにした。
(信じてもらえないかも知れないけど話してみよう)
そう思っていたのだが意外にもすんなりと受け入れてくれた様子だった。
それどころか、むしろ興味津々といった様子で色々と質問を投げかけてくるほどだった為、逆にこちらが驚かされてしまったくらいだ。
そして最後に気になっていた事を聞いてみたのだがあっさりと答えてくれた上にアドバイスまで貰えたのでありがたかったと
思うと同時により一層彼女への尊敬の念が高まったような気がしたのであった。
「分かった、リュート、君の言う通りにするよ、これからは、君を後継者として育てる事にしよう」
そう言って抱きしめてくれたのだが何故かドキドキしてしまった。
その後、二人で話し合った結果、しばらくの間はこのまま暮らす事になったのだが、
その間も俺は、ひたすら鍛錬を続ける事にした。少しでも早く強くなりたいという気持ちが大きかったからだ。
魔王はそんな俺を気遣ってなのか、たまに差し入れを持ってきてくれたりしてくれていたおかげで、
寂しくなる事なく修行に集中することができたのだった。
しかし、魔王からの提案もあり、暫くの間は、アリアと共に冒険の旅に出る事にした。
そんな俺に、アリアは、名残惜しそうにしながらも、笑顔で送り出してくれたのだった。
「行ってくるね!」
そう言うと、アリアは手を振って送り出してくれたので俺も振り返してから出発したのだった。
道中は特に問題もなく順調だった。
途中、ゴブリンやオークの群れに襲われている馬車を発見して助ける場面もあったが難なく撃退することが
できたので安心する事ができていた。
その後も順調に旅を続けていき、目的地の町に到着したところで一旦休息を取ることになった。
宿屋の部屋で休んでいると突然声をかけられたので振り向くとそこには見知らぬ女性が立っていた。
見た目からして人間では無いようだが一体誰なのだろうか?
不思議に思っていると、彼女が話しかけてきた。
「あなたが、リュート様ですね? 初めまして私はリザと申します」
と言うとお辞儀をした。
俺もつられて頭を下げてしまったが、どうして自分の名前を知っているのだろうかと疑問を抱いた瞬間、全てを理解した。
おそらくこの女性が魔王が言っていた護衛の一人なのだろうと……、
とりあえず挨拶を返すことにした俺は自己紹介をしてから名前を尋ねようとしたが、それより先に彼女が口を開いた。
「あなたの事は、お父様より伺っています、なので名前を知る必要はありません」
と言って微笑むと再び頭を下げた。
そう言われてしまっては何も言えなくなってしまうではないか……仕方がないので諦めることにした。
それよりも気になることがあったので尋ねてみることにする。
何故俺のことを知っているのかと聞くと、答えは簡単だった。
魔王から聞いたというのだ。
それを聞いて納得した俺はそれ以上考えるのを止めた。そして、
本題に入ることにする。
まずは何をすればいいのかと尋ねると、まずはこの町にいるという強力な魔物を倒しに行くという事だったので同行することにした。
その魔物の名前はデスワームといって体長十メートルを超える巨大な魔物らしい。
そして現在この町に向かっているそうだ。そいつを倒して欲しいと依頼されて来たのだそうだ。
話を聞いた限りだとかなり強そうだが、果たして勝てるのだろうか……?
不安はあったがやるしかないだろうと思い覚悟を決めることにする。
そんな俺を見て、彼女は安心させるように言った。
その言葉を受けてホッとすると同時に嬉しさが込み上げてきた俺は笑顔で頷くことで返事をした。
そして俺達は、その魔物が出現するという場所へと向かう事にしたのだった。
「着いたようだな」
そう呟く声が聞こえたので顔を上げるとそこは洞窟の入口のようだったが真っ暗で
先が見えない状態だったが躊躇することなく進んでいくアリアに続いて中に入ると少し歩いた先で行き止まりになってしまった。
仕方なく引き返すことにした俺達は来た道を戻り始めたのだがその時、
急に地震が起きたかと思うと地面が崩れて落ちてしまいそうになったところを何とか踏みとどまることができたがほっとしたのも束の間、
上から瓦礫が降ってきたので慌ててその場を離れようとするも間に合わず直撃を受けてしまい気を失ってしまったようだった。
目を覚ますと目の前には知らない天井があった。
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