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700層目の強敵ノアⅠ

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 700階層に来たのはいいものの、目の前にいるのは10にも満たない緑色の髪の少年だった。

「めちゃくちゃ可愛いですね」

 そう言っているミクちゃんの目が怪しい。ちょっと、ここに来てショタコン発動しているんですか! で、見るとランベリオンは――。

「わ、我が子供に恐れを抱いたのは初めてだ。次元が違う!」

 最近、ランベリオンは俺にもそんな事を言うのだ。でも言わんとしていることは分かる。鑑定士で測定できないのは仕方がないとしよう。ただ――。

「ナリユキがこの中で一番強いね! その次にミク。最後はランベリオンか。S級の魔物がこっちに来て間も無い人間に劣るって珍しいこともあるもんだね。あ、僕の名前はノアだよ! 宜しくね!」

 ひょうひょうとした口調ではあるがここまで油断ができない敵は正直初めてだ。

「ナリユキ殿。三人で戦おう」

「だな」

「私も今回はヤバい気がします」

「本当に戦うの? 死んじゃうよ? ボク、めちゃくちゃ強いから」

「一度やってみないと分からないだろうが!」

 俺はいつも通り岩山を落とした。直径20m程だ。そしてミクちゃんは光のアクティブスキル、燦爛の光線シャイニング・レイという極大の美しく輝く光線を手から放つ。

 ランベリオンは龍の咆哮ドラゴン・ブレスを放ったが、少し疲労しているように見えた。いつもよりMPを消費したようだ。

 普通ならもうこれで勝ちが確定する。しかしノアは頬を手で掻いては余裕を浮かべている。この時間は何だ。俺達の時間があまりにもゆっくりすぎる。そしてノアもまたゆっくりとした時間を過ごしている。ほんの一秒が十秒ほどに感じる――。

「ほい」

 ノアは俺が落とした岩山を左手で受け止めた――そんな馬鹿な話があってたまるか!

「それ!」

 ノアはまたもや曲芸を見せた。ミクちゃんの燦爛の光線シャイニング・レイとランベリオンの龍の咆哮ドラゴン・ブレスを右手で上空へと飛ばした。勿論天井に穴が開いてしまったのは言うまでもない。ただ、ボス戦では天井に穴が開こうがすぐに天井は修復されて穴が塞がる。言わば、一度入ると出れない仕組みになっている。俺、あんまり気にしていなかったんだけどな。ここに来て嫌になるぜ。

「あれ? 思ったより大分強いね。ここまで来た君達も凄いけど僕の手を腫れさせたのも凄いや」

 いや、こっちからしたら怪我はむしろそんだけですか? って言いたくなるわ。やべ――俺の無双エピソードオワコンだぞ。ワロエナイ。

「ナリユキさん――これヤバくないですか? 怪我をしたってことはただの耐久力ですよ?」

「だな。ただMP尽きてしまうぞ」

「我のアルティメットスキルを使うか?」

地獄の火炎玉ヘル・フレイムボールでもそんなにダメージを与えることはできないだろうな。今まで、銃撃無効ってスキルを持っている奴はいなかったから、結局銃が一番いいかもな。二人が剣で引き付けてくれ俺は隙を見て、ショットガンをお見舞いしてやる」

「了解です」

「分かった」

 俺は、ランベリオンにジェネラル・ワイバーンの素材で出来た刀を、創造主ザ・クリエイターで出して渡した。実は、680層目辺りでジェネラル・ワイバーンとワイバーンが大量に出来たので、それを素材にしてランベリオンに造ってやった。創ってやったのほうが正しいか。勿論、俺も防具を強化している。

「よし!」

 ランベリオンが俺から受け取った刀を振ると、振った後に炎が発生した。いつも思うが炎の化身のようだ。実に似合っている。

 対して、ミクちゃんは650層目の中ボス戦で、燦爛の光線シャイニング・レイと同時に入手した、上位天使アーク・エンジェルの素材を使って、レイピアを強化していた。全体が水色だったレイピアは刀身が水色で、柄の部分はプラチナパールのような色をした美しい代物となっている。

 普通であれば、このような代物を揃えていて、俺には唯一無二の創造主ザ・クリエイターがあるからまあ負けることはない――ただノアは違う。てか名前の時点でボスキャラ感出ているよな。せこくね?

「行きますよランベリオンさん!」

「ああ!」

 ミクちゃんとランベリオンは身体向上アップ・バーストを使っていつもの如く、音を超越した速さで斬りかかった。

「なかなか速いね」

 と、呑気に感想を述べているノアは化け物だ。そして、二人の攻撃を軽々と避けている。さっき見たあれだ。

 恐らく時間を遅延させるスキルか、時間を操ることできる類のスキル。クロノスとは別のベクトルで時間を操っているらしい。ミクちゃんとランベリオンには迷いが無さそうだ。だとすると、ノア一人がゆっくりの時間を過ごしている可能性がある。

 あまりにも鮮やかな躱しっぷり。しかし、うちの二人も負けてはいない。ミクちゃんは翻弄する者Ⅴのパッシブスキルを駆使して、ランベリオンはもうただの戦闘センスで全て避けている。こう考えると竜族ってのは凄いな。

「へえ。凄いね。ミクに至ってはボクの攻撃当たる気がしないんだけど」

「あれ? スキル視てないの?」

「スキルを視る? 何それ?」

 ノアの発言に一度引き下がるミクちゃんとランベリオン。そしてこっちに来た。いや、戦えよ。こっち隙が出来るの見ているんだから。

「ノアくん鑑定士持っていないらしいよ?」

「そうだ。ミク殿に対してすっとんきょんな発言を漏らしておった」

「聞いてたっての。分かったから隙を作ってくれ」

 ミクちゃんはとランベリオンは頷いて、再びノアに襲い掛かった。いや、緊張感無さすぎいいいい。
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