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進捗報告Ⅰ

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 絶景だな。

 俺はミクちゃんとアリスが戯れているところで、アリシアと呑気にヤシの実ジュースを堪能していた。

「本当にこの飲み物美味しいですね」

「な? 取ってきて正解だろ?」

 沖縄にもあったけど、ヤシに穴をあけてストローをぶっ刺して飲むというシンプルなドリンクだ。勿論、こんなところにストローなんかあるわけないので、俺が創造主ザ・クリエイターで用意したものだ。

「お二人とも楽しそうですね」

「けどまあ、俺達がこう楽しんでいる間に、レンさん達が頑張ってくれているからな」

「それは確かにそうですけど、普段は気を張っているんですから、待機中くらいはもっとリラックスしてもよいのでは? あ! そうだ! マッサージしましょうか?」

 アリシアはそう言って俺にとびきりの笑顔を見せてくれた。アリシアも水着に着替えているので、胸の谷間に嫌でも目がいく。これ、あとでミクちゃんに怒られそうなんだけど。

「手つきエロそうだから却下」

「ふふふ――そんなことないですよ?」

 と、手を妖しく動かしているのでやっぱり却下だ。

 そう呑気に過ごしていると脳に信号が送られてきた。これは念話が送られてきたときのサインだ。俺は急いで海辺に行った。

《ナリユキ様でしょうか? 私、依頼を受けているネオンです》

《無事みたいだな。何かあったか?》

《それが帝国軍に潜入したんですけど、反乱軍の副団長に牢に閉じ込められたと思ったら、作戦無しで捕まっている人達を解放してほしいという任務を課せられました。捕まっているのは、帝国軍基地の地下にあるのですが、全て監視されているようでして、迂闊に動くことができないという状況です。すみません、いきなり色々喋ってしまって》

《いや、大丈夫だ。続けてくれ。まだ何かあるんだろ?》

《はい。それに反乱軍には複数のスパイがいるようです。そのスパイを差し向けた人がなかなか強そうな人間でして――。名前はステータスが阻害されていたので分かりませんでした》

《どんな特徴だった?》

《黒髪をオールバックにしている黒い紳士服を着た葉巻を吸っている男性でした》

 その特徴は一人しか思い浮かばないんだけど。

《多分そいつはマカロフ卿って奴だ。ロシア人の転生者で元軍人だ。スキルが無い概念の世界での人間界なら、トップクラスだろう。気を付けたほうがいい。狡猾で頭がキレるから下手な動きするとすぐにバレるぞ》

《ご忠告ありがとうございます。元軍人というのは何ですか?》

《まあ、帝国軍の兵士みたいな感じだ。俺達がいた世界で反乱軍のトップ的なこともしていたらしい。システマって格闘技を使うから、概要はレンさんに聞いたら多分知ってるかも。聞いている様子だと、ウカウカしていられないな。反乱軍の副団長のヴェルナーさんはそれに気付いていたから慌てて牢にぶち込んだってのもあるな。マカロフ卿はどこで見たんだ?》

《それが場所は分からないんです。私達が閉じ込められている牢には隠し通路があって、しばらく適当に進んでいたら、たまたまそのマカロフ卿がいた感じですから――。金網からそのマカロフ卿達を見下ろしていた感じなので、見える情報だけだと、無機質な部屋だったとしか言えないです》

《成程。その隠し通路は何本も道があったのか?》

《はい。ありました》

 と、言うことはまだ見ていない部屋があるって事だな。マカロフ卿がどこにいたか気になるから、レンさん達にはその隠し通路から出られるところに何の部屋があるのか調べてもらうのは必須だな。

《そうだな。まずは隠し通路から見える部屋が何なのか全て調べてくれ。それである程度調べたらまた牢に戻るんだ。そうやって少しずつ慎重にマップを脳に焼き付けるんだ。すると作戦も立てやすくなるだろう》

《かりこまりました》

《他に何かあるか?》

《ちょっと待ってください》

《おう》

 するとネオンはレン達に喋りかけていた。「分かりました」と言って俺を呼び掛けてきた。

《どうだった?》

《特には無いとのことでした。すみませんお忙しいのにわざわざ時間取っていただいて》

 ――。遊んでるなんて言えねえ――。

《いやいや。君達に比べたら大したことないさ。気を付けろよ? 何度も言うが無理はするな。自分の命を最優先にしろ》

《はい! ありがとうございます! では、また折をみて進捗報告させていただきます》

《分かった。じゃあな》

 そういって連絡を切ると、ミクちゃんが俺の顔を覗きこんできた。

「結構厳しい状況なんですか?」

「めちゃくちゃ厳しいな。これは先手を打つ必要がある。裏切者を見つけし神官ジューダス・プリーストが必要かもな」

「私のスキルですか?」

 そう言って首を傾げるアリスの姿は、妹系女子が好きなオタク達に突き刺さる可愛さの暴力だった。本人は100%自覚していないだろう。

「そうだ。裏切者を見つけし神官ジューダス・プリーストがあれば反乱軍のスパイが誰だか分かるからな。アリス行けるか?」

「ナリユキ様のご命令とあれば何なりと」

 そう言ってアリスは俺にお辞儀をしてくれた。

「ありがとう。あとは編成どうすっかな。ロクに作戦立ててないからな」

「私行きますよ?」

 そう言ってきたのはミクちゃんだった。確かに安心はできるけど、もし何かあったときの事を考えると俺の近くにいてほしいってのが本音だ。勿論、アリスの事を軽んじているわけではない。本音は俺も行きたい。

 でも、何でも自分が側にいたら意味がない事はそれはチーフだったときに痛感している。部下の数字が上がらず、一度放任主義にシフトチェンジしたら数字が上がったからな。

 ただ今は違う。俺は国主だから迂闊に出てはいけない。だから信頼できる人間に任せるって選択は今後も出てくる。どれだけ危険だろうと、その選択肢が一番適切な選択だったりするからな。裏切者を見つけし神官ジューダス・プリーストを持つアリスと、近接戦闘、遠距離戦闘、回復、味方のサポート、結界の展開と解除をできる化け物スペックを持つミクちゃんは絶対に欠かせない。

「そうだな。まずは作戦を立てよう」

 そう言うと、ミクちゃんもアリスも全力の「はい!」で応えてくれた。





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