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無念Ⅱ
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ここはガープの記憶のなかだ。ゆっくりと考える時間をくれるために、映像が頭の中で再生されている。
ガープは玉座に座るアードルハイム皇帝の前で、たくさんの帝国兵に囲われるなか跪いていた。
「ガープ貴様の家族は全員預かったぞ。返してほしければ私の部下になるがよい。なあに、任期は10年だ。そして、もし私を裏切るような行動や言動が取れれば、お前とお前の家族は、私のスキルによって心臓に損傷を与える。勿論、今の会話を口外することもできないからな? そして、場合によっては死ぬことになる。命が惜しくば私の命令に忠実に従うのだ。有難く思え。魔族がアードルハイムの為に働くことができるのだ。本来であれば、このような事例は無いのだからな。捕らわれの身だったお前なら理解しておるはずだ」
「はい――」
「よい。無駄な抵抗はもうできない。期待しておるぞ」
「かしこまりました。アードルハイム皇帝陛下の御力になれるよう尽力させて頂きます」
「よい。下がれ」
アードルハイム皇帝は不気味な笑みを浮かべて口角を釣り上げていた。対するガープの瞳には怨嗟がこもっていた。ガープは部屋を出た。玉座があることから、ここはアードルハイム皇帝の皇室だったのだろうか?
ガープは皇室からしばらく離れた廊下に立ち止まり。
「クソオオオ!」
壁を思いっ切り殴った。殴られた壁は当然数メートルほどの巨大なヒビが入っていた。いや、そんなデカいヒビは流石にマズいだろ。
ここでようやく理解することができた。経緯は分からないが、10年という任期がルールで、ガープはアードルハイム皇帝に従わざる得なくなった。そして、内容を口外することができないから、結果としてガープの情報収集が全然できないということだ。
それから、ガープは一心不乱にアードルハイム皇帝の下で働き、ついにはアードルハイム帝国軍の第一騎士団長に上り詰めた。
勿論、ガープが行ったことは許されるべきではない。フィオナと同種族である闇森妖精を、部下に好きにしろと冷たく命令していた。そして、その部下達は抵抗ができない闇森妖精を凌辱していた。
ガープは部下がやりすぎると止めるという立場だった。現段階での考察だが、ガープはこういう立ち回りをすることによって、アードルハイム皇帝が信頼できる部下と云う立場を演じていただけかもしれない。
ガープはアードルハイムを襲撃してきた魔王の軍勢とも戦った。魔王の名前はベリアル。魔界から人類を滅ぼそうと刺客を送り込んできたらしい。三日三晩の戦いの末、魔王ベリアルの魔物の軍勢を退けて、アードルハイム帝国軍は勝利した。そして、アードルハイム皇帝からガープは☆の勲章を授与された。
「随分と派手に暴れたそうだな」
そうガープの声をかけてきたのは葉巻を咥えている男、マカロフ卿だった。今更だけど、マカロフ卿は色々なシーンに出てくるな。
「ああ。これでアードルハイム皇帝陛下のお役に立てたのなら大満足だ。何より国民の命を守れてよかった」
すると、マカロフ卿はゆっくりと煙を吐いた。
「それにしては嬉しくなさそうだな。いい加減に言えよ。俺の顧客に何か握られているのか?」
「ノーコメントだ」
「そもそもお前は囚われ身だった。昔いたベリトという魔族がアードルハイムに背き罰せられたらしいじゃないか。それなのに、人間以外を許さないこの国が、いきなり魔族のアンタを帝国軍に入れて、第一騎士団の団長の座まで譲るなんておかしな話だ。強さを買われていることは分かるがな」
「それだけ魔族の私を信頼してくださっているのだ」
「どうだか」
この光景を見て思うのは俺にはマカロフ卿が何を言いたいのか全く分からないということだ。強さを買われていることが分かっているのであれば、何で団長に任命されたことに不思議に思うのだろう。
「マカロフ。お前が言ってることは、矛盾しているぞ」
マカロフ卿はそう言われて首を小さく左右に振っていた。
「魔族何かより人間のほうがよっぽど汚くて醜い生き物だ。アンタがどういう状況に置かれているか分からんが何となく想像できる――。自分に不幸をもたらした人間を信じすぎるな」
「マカロフからそう言われると妙に説得力があるな。私のほうが1,000年以上生きているというのに」
「だろ? 俺はあっちの世界で酷い目にあっているんだ。私が反乱軍を創って世界に変革をもたらそうとしたのも、全ては腐った世の中を変える為だった。自分の信念の為にな」
「自分の信念のため」
「そうだ。ここの国で面白い言葉があるじゃないか、栄光と自由っていう言葉が。私はそれを胸に秘めながら戦っていたのさ」
「栄光と自由――」
「まあ何かあれば言えよ。私はアードルハイム皇帝からは金貨を貰うが、アンタの頼みなら無償で引き受けてやる。大切なナニカの為に戦っているのは私にはよく分かるからな」
「すまない」
マカロフ卿はそう言って、どこかへ行ってしまった。ガープはひたすら、「栄光と自由」と呟いていた。これを見て思う事――。マカロフ卿はスペツナズに所属していたが、スペツナズと何らかの問題があった。後に反乱軍を立ち上げて、俺達が知らないどこかで、テロを起こしていたに違いない。それはマカロフ卿が思う理想の世界を創るため。
マカロフ卿――。アンタがレンさんを見過ごしたのは、もしかしてガープを助けることができる人物と見込んだからか? 俺達はアンタ達より強い存在だから邪魔をして来るけど、レンさん達ならいつでも潰すことができると言い張れるから、ちょうどいい存在だったのか? アンタの真意は一体何なんだ?
ガープは玉座に座るアードルハイム皇帝の前で、たくさんの帝国兵に囲われるなか跪いていた。
「ガープ貴様の家族は全員預かったぞ。返してほしければ私の部下になるがよい。なあに、任期は10年だ。そして、もし私を裏切るような行動や言動が取れれば、お前とお前の家族は、私のスキルによって心臓に損傷を与える。勿論、今の会話を口外することもできないからな? そして、場合によっては死ぬことになる。命が惜しくば私の命令に忠実に従うのだ。有難く思え。魔族がアードルハイムの為に働くことができるのだ。本来であれば、このような事例は無いのだからな。捕らわれの身だったお前なら理解しておるはずだ」
「はい――」
「よい。無駄な抵抗はもうできない。期待しておるぞ」
「かしこまりました。アードルハイム皇帝陛下の御力になれるよう尽力させて頂きます」
「よい。下がれ」
アードルハイム皇帝は不気味な笑みを浮かべて口角を釣り上げていた。対するガープの瞳には怨嗟がこもっていた。ガープは部屋を出た。玉座があることから、ここはアードルハイム皇帝の皇室だったのだろうか?
ガープは皇室からしばらく離れた廊下に立ち止まり。
「クソオオオ!」
壁を思いっ切り殴った。殴られた壁は当然数メートルほどの巨大なヒビが入っていた。いや、そんなデカいヒビは流石にマズいだろ。
ここでようやく理解することができた。経緯は分からないが、10年という任期がルールで、ガープはアードルハイム皇帝に従わざる得なくなった。そして、内容を口外することができないから、結果としてガープの情報収集が全然できないということだ。
それから、ガープは一心不乱にアードルハイム皇帝の下で働き、ついにはアードルハイム帝国軍の第一騎士団長に上り詰めた。
勿論、ガープが行ったことは許されるべきではない。フィオナと同種族である闇森妖精を、部下に好きにしろと冷たく命令していた。そして、その部下達は抵抗ができない闇森妖精を凌辱していた。
ガープは部下がやりすぎると止めるという立場だった。現段階での考察だが、ガープはこういう立ち回りをすることによって、アードルハイム皇帝が信頼できる部下と云う立場を演じていただけかもしれない。
ガープはアードルハイムを襲撃してきた魔王の軍勢とも戦った。魔王の名前はベリアル。魔界から人類を滅ぼそうと刺客を送り込んできたらしい。三日三晩の戦いの末、魔王ベリアルの魔物の軍勢を退けて、アードルハイム帝国軍は勝利した。そして、アードルハイム皇帝からガープは☆の勲章を授与された。
「随分と派手に暴れたそうだな」
そうガープの声をかけてきたのは葉巻を咥えている男、マカロフ卿だった。今更だけど、マカロフ卿は色々なシーンに出てくるな。
「ああ。これでアードルハイム皇帝陛下のお役に立てたのなら大満足だ。何より国民の命を守れてよかった」
すると、マカロフ卿はゆっくりと煙を吐いた。
「それにしては嬉しくなさそうだな。いい加減に言えよ。俺の顧客に何か握られているのか?」
「ノーコメントだ」
「そもそもお前は囚われ身だった。昔いたベリトという魔族がアードルハイムに背き罰せられたらしいじゃないか。それなのに、人間以外を許さないこの国が、いきなり魔族のアンタを帝国軍に入れて、第一騎士団の団長の座まで譲るなんておかしな話だ。強さを買われていることは分かるがな」
「それだけ魔族の私を信頼してくださっているのだ」
「どうだか」
この光景を見て思うのは俺にはマカロフ卿が何を言いたいのか全く分からないということだ。強さを買われていることが分かっているのであれば、何で団長に任命されたことに不思議に思うのだろう。
「マカロフ。お前が言ってることは、矛盾しているぞ」
マカロフ卿はそう言われて首を小さく左右に振っていた。
「魔族何かより人間のほうがよっぽど汚くて醜い生き物だ。アンタがどういう状況に置かれているか分からんが何となく想像できる――。自分に不幸をもたらした人間を信じすぎるな」
「マカロフからそう言われると妙に説得力があるな。私のほうが1,000年以上生きているというのに」
「だろ? 俺はあっちの世界で酷い目にあっているんだ。私が反乱軍を創って世界に変革をもたらそうとしたのも、全ては腐った世の中を変える為だった。自分の信念の為にな」
「自分の信念のため」
「そうだ。ここの国で面白い言葉があるじゃないか、栄光と自由っていう言葉が。私はそれを胸に秘めながら戦っていたのさ」
「栄光と自由――」
「まあ何かあれば言えよ。私はアードルハイム皇帝からは金貨を貰うが、アンタの頼みなら無償で引き受けてやる。大切なナニカの為に戦っているのは私にはよく分かるからな」
「すまない」
マカロフ卿はそう言って、どこかへ行ってしまった。ガープはひたすら、「栄光と自由」と呟いていた。これを見て思う事――。マカロフ卿はスペツナズに所属していたが、スペツナズと何らかの問題があった。後に反乱軍を立ち上げて、俺達が知らないどこかで、テロを起こしていたに違いない。それはマカロフ卿が思う理想の世界を創るため。
マカロフ卿――。アンタがレンさんを見過ごしたのは、もしかしてガープを助けることができる人物と見込んだからか? 俺達はアンタ達より強い存在だから邪魔をして来るけど、レンさん達ならいつでも潰すことができると言い張れるから、ちょうどいい存在だったのか? アンタの真意は一体何なんだ?
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