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連行Ⅱ

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 俺達は場所を教えられることなく何処かへ向かっていた。機内は閉鎖的な空間になっており、乗員はブルーのシートの椅子にかけている。隣との間隔は0距離と言ってもよい。

 俺とクロノスを除く5人は終始怯えていた。「これからどうなるんだ」「助けて」と言った類の小言だ。

「俺達どこに連れていかれるんだ?」

「さあ――全く――」

 俺とクロノスがそう小声で話をしているとスーに足を蹴られた。この錠のせいで弁慶の泣き所を蹴られると涙が出てきそうになる。

「次普通に話をしたらナイフで刺すからね」

 スーはそう言って俺とクロノスに果物ナイフを見せびらかしてきた。

「あっそ。分かったよ」

 俺がぶっきらぼうにそう言うとスーは「ほえ~」と何やら感心していた。

「なんだよ」

「君凄いね。ハート強すぎない? 立場分かってる?」

 スーにそう問われたので「分かってるよ」とだけ言って俯いた。

「まあ、国主ともなると頭がおかしい奴がチラチラといるからな。案外、私といるよりかタメになるかもしれないぞ」

「いやいやそれは無いでしょ!」

 と、捕らえている人間がいるのに緊迫感が無い。これならもしかして――。

「なあマカロフ卿」

「何だ」

「せめて彼等だけでも開放してくれないか?」

 俺がそう言って目の前にいるマカロフ卿の顔をじっと見た。

「駄目に決まっているだろ。貴様本当に殺されたいのか? それとも人質を殺してもいいのか?」

 そう俺の目をじっと見てくるマカロフ卿。やはり駄目らしい――。イヤリングはまだ取り上げられていないから、皆を開放してくれればいつでも逃げ切ることができるんだけどな。

「間もなく着陸致します。シートベルトをお締め下さい」

 パイロットがそうアナウンスをしたが、俺達は始めから座った時にシートベルトをさせられていた。勿論、俺達は手枷をされているからできるはずも無く、メリーザが一人一人のシートベルトを律儀にかけてくれていたのだった。

「大丈夫だ。全員締まっている」

 マカロフ卿がそう言うとパイロットがコクリと頷くと同時にオスプレイは減速して着陸態勢に入った。機内が沈んでいく感じが少しだけだが分かる。とまあそれはともかく。オスプレイの運転は誰が教えたのだろう? マカロフ卿って運転できるのか? そういやチャンピオン・ウォーのキャンペーンモードでは、主人公が何でもかんでも乗りこなしていたな――。何か現場でバリバリ戦って成果を上げている登場人物は、操縦士がスナイパーライフルで撃たれたりしたら墜落するから、主人公がとりあえず操縦を試みたりするもんだ。リアルでもそうなのか? それに生きていくうえでのスキルが多かったりもする。軍人ってのは考えれば考えるほど不思議だ。長期の戦争では、無人島サバイバルみたいな生活を送って生き残っていると聞く。元軍人がサバイバルチャンネルに出演して、無人島生活をカメラに収めていたりもするしな。

 オスプレイが完全に停止すると、マカロフ卿の隣に座っていたメリーザがシートベルトを外して、俺達のシートベルトを外していった。

「下手に動かないでくださいね。その瞬間貴方達の首を刎ねますので」

 メリーザはそう言って兵達を徹底的に脅していた。俺と兵達は横並びになっているので、メリーザの目つきが本当に殺すぞいう殺意が込められているのが分かる。

 クロノスがシートベルトを外されて最後には俺といった形だ。

「なあここは一体どこなんだ?」

「すぐに分かります」

 マカロフ卿が先に出ると、その次にアヌビス、ワイズ、兵達、クロノス、俺、メリーザの順に出ていく。そして俺の左隣にはレイ。右隣にはスーといった布陣。

 ここはどこかの山らしい。気候も全く違い正直に言うと寒い。それもそのはず、地面は雪原になっており、30m級の大木の葉にも雪が積もっている。白と緑のコントラストと言ったところか。緑を保っていることを考えると常緑樹なのだろうか?

 そんな自然に囲まれたなかでそびえる黒の巨城――。ここがマカロフ卿達のアジトになるのだろうか? それともログウェルで権力を持つマカロフ卿達のボスにあたる人か? いずれにしても良い事は起きないだろうな。

 それにしても――。

「俺だけ待遇厚くない? VIP待遇なのか?」

「今なら殺せるんだぞ? 本当に分かって口を開いているのか?」

 レイが俺にそう言って小太刀を向けて来た。これ以上刺激したら本当に殺されそうだから止めておこう。てかそもそもだが、俺を捕らえる必要があるのか? それとも何か俺を利用しようとしているのか? 俺が邪魔ならさっさと殺せばいいのに――死にたくないけど。でも冷静に考えたらおぞましい拷問が待っている可能性がある。いや、そうとしか考えられない――。

 けれども一番は無関係なクロノスやカーネル王国の兵達を巻き込んでいる事だ。俺が苦しむのはいいとして、彼等が無抵抗に酷い拷問を受けるのは見たくない。

 俺はそう思いながら歩いていると、マカロフ卿が甲冑に身を包んだ城の守り番に「ご苦労」とねぎらいの言葉を放って城の中へと入って行った。俺達もそれについていくと、メリーザ達に挨拶するなり、「アイツがそうか」という声が聞こえた。恐らくアレがアードルハイム皇帝を倒した人間――とでも言いたいのだろう。

 案内されるがまま城の中へと入って行った。

 
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