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休息Ⅱ

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「誰と話されていたんですか?」

 クロノスは俺にそう問いかけてきた。

「メリーザだよ」

「メリーザと? ナリユキ様お得意の交渉で?」

 クロノスは流石と言わんばかりに小さく拍手を行った。兵士5人に関しても――。

「あのべっぴんさんの森妖精エルフか」

「あの飛行船にいたときものすごく怖かったよな」

 と、口々にしている。

「ああそうだ。メリーザは俺がやったアードルハイム皇帝の討伐には大賛成だったそうだ。それはアードルハイム皇帝を倒したことでアードルハイム帝国の人々どころか、様々な国の人命を救ったという正義は共通認識だそうだ。実際に、森妖精エルフも沢山捕まっていたからな」

「確かにそうですね――ですが、そういう正義感を持っているのであれば、そもそもマカロフ卿達は何故手を貸したのでしょうか?」

黒の殲滅軍ブラック・ジェノサイドのボスがコードっていう人間なんだけど、そのコードがマカロフ卿にアードルハイム帝国に手を貸すように命じたらしい。ただマカロフ卿もマカロフ卿なりの正義があるらしく、自分達が手を貸すことによって、アードルハイムが力をつければ全世界の犯罪件数は減ると見込んだらしく、それで手を貸したがアードルハイムがどんどん酷くなった訳だ。まあ自分達に被害は無いしお金が稼げるから大体の事は目を瞑っていたらしいけど」

「複雑ですね……それは全く知らなかったです」

「アードルハイムという国である意味バランスを保っていたんだろうな。メリーザが言うには犯罪発生率は年々3%減少している時に契約を結んだと言っていたぞ」

「そうでしたか――」

 クロノスだけでなく兵士5人も複雑な表情を浮かべていた。

「まあでもやりすぎはやりすぎなんだ。その数字が本当ならば、壊滅させた俺が新しい施策を考えないとな」

 俺がそう笑みを浮かべるとクロノスの表情がパアと明るくなった。え? 何ですかその表情。

「そうだ! ナリユキ様がアードルハイムの皇帝を兼任すればいいじゃないですか!」

 クロノスの言葉に兵士5人も納得したような表情を浮かべて勝手に盛り上がり始めた。

「やらない! 兼任は絶対に無理!」

「限界の生産性に挑戦しましょう!」

 と、キラキラとした瞳を向けてくるクロノス――頼むから止めてくれ――。

「そんなことしたらナリユキ君が過労で倒れます。いいですかクロノスさん。異世界では寝ずに働くのが苦ではない風習がありますが、私達の世界では御法度です。そもそも長時間働いて良い事なんて1つもないんですから! ね? ナリユキ君?」

「お――おっしゃる通りです」

 ミクちゃんが俺の代わりに言いたい事を全部言ってくれた。とうとうテレパシーでも使えるようになったか?

「そ――そうでしたか。でも助言などはされるんですよね?」

「まあ少しな。だから相談役や顧問みたいな形になるだろうな」

「役職がいっぱいあって大変ですね」

「まあ責任はきちんと負わないとな。さて――」

 いつまでもここで談笑している場合ではない。まずはランベリオンに連絡だ。

「すまんちょっとランベリオンと話す。静かにしておいてくれ」

 俺がそう言うと皆は口元を押さえた。そこまでしなくてもいいんだけどな。

《ランベリオン。聞こえるか? 俺だナリユキだ》

《ナリユキ殿か! 無事だったのだな!? 今どこにいるのだ!?》

 ――。やべえこの場所分からねえ――つか無事だったのか? ってなんで知っているんだ?

《ミクちゃん達が助けてくれたから無事だよ。あとなんで知ってるんだ?》

《カーネル王から報告を受けたからだ。なのでナリユキ殿の事をログウェルで飛び回って探していたのだ》

《そうだったのか。迷惑かけたな。クロノスと他の兵士も無事だから安心してくれ》

《それを聞いて安心した。で、どこにいるんだ? 迎えに行くぞ?》

《場所分からねえんだ。だから後でランベリオンの所にいくよ。その時に情報を教えてくれ》

《ああ。分かった。とりあえず皆の所に戻ったほうがいいぞ? 世間では大騒ぎだからな。あちこちの国でナリユキ殿がマカロフ卿に連行されたと話題になっている。ナリユキ殿の世界の言葉を借りるなら世界的大ニュースと呼ぶべきか》

 俺は苦笑いしかできなかった。皆に大迷惑をかけてしまった事と、自分が思った以上の有名人になっているからだ。

《分かった。とりあえず皆のところに戻るよ。引き続き調査を続けていてくれ》

《了解だ。くれぐれも気を付けてな》

《そっちもな相棒》

《止めろそういうの。照れるでは無いか》

 って言っている間に俺は念話を切った。持ち上げておいて「え!?」って思わせる作戦だ。

「御二人共転移テレポートイヤリングで先に戻っておいていいですよ。私達は私達で帰りますから」

「分かった。雪だし土地勘無いと思うから気を付けてな。飛行船を出せても燃料が無いから意味が無いんだよな」

 俺がそう渋い顔をしながら言うとクロノスは手を左右にブンブンと振る。

「いえいえ大丈夫ですよ」

 クロノスだけがそう言っているので、俺は他の兵士5人の表情を伺ってみた。

「大丈夫ですよ」

 そう5人が口を揃えて言ったので、クロノスを含めた皆と握手を交わした。

「ミク様ありがとうございました」

 クロノスの含めた6人が口を揃えてそう言うと、ミクちゃんは「当り前の事を行っただけです」と謙遜していた。

「じゃあな。ルミエールにも伝えておくよ」

「かしこまりました。ありがとうございました!」

 クロノス達に見送られながら俺とミクちゃんは転移テレポートイヤリングを使ってマーズベルへと帰還した。
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