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黒龍復活Ⅴ

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「冗談キツイスキルじゃの」

「任せろ」

 アスモデウスさんがそう呟いた後に真っ先に飛び出したのはマルファスさんだった。マルファスさんは、魔妖烏の指揮官クロウ・ロードを使用した。飛んでくる黒滅龍炎弾ニゲル・ルインフラムの数だけ魔妖烏クロウを出現させた。

 何かアクティブスキルを無効にするスキルでも発動するのだろうか? と思っていたが、そうじゃなかった。

 漆黒の業火に焼き尽くされる魔妖烏クロウは全頭俺達の壁となって塵と化した。

「容赦ねえ」

魔妖烏クロウに関してはいくらでも召喚することができるからね。確かにアクティブスキルを無効化する能力を持っているけど、恐らくアレを防ぐことは出来ない。あまりにも実力差がありすぎる」

「確かにそうじゃな。マルファスの判断は賢明だったと思う」

 そう解説をしているアスモデウスさん。確かにそうかもしれないけど割と残酷だな。魔物に心臓を捧げさせている。

「ところで、マルファスは魔真王サタンを使えるのか?」

「使える筈がないでしょ!」

「そうか。それは残念じゃ」

 アスモデウスさんは大きく息を吐いて深呼吸を行った。そして目を瞑って詠唱を行っているようだ。しかし何て言っているのか分からない。

「ほう――魔真王サタンか。面白いでは無いか」

 黒龍ニゲル・クティオストルーデもアスモデウスさんの魔真王サタンには興味津々だった。

「何て言っているんですか?」

「我、魔族における最大の力を発揮せん。我が道を阻む者総て破壊の対象となる。続きは真紅の瞳が紅桔梗べにききょうの瞳に変わるとき、あらゆる邪気を我の力とせん。と言っている」

 ん? あらゆる邪気を我の力にする?

「それってつまり――」

「そうだ。アスモデウスの魔真王サタンは邪気が空気中に多い程強くなり、そして開眼する。魔眼の最高到達地点へと――」

 青龍リオさんが続いてそう解説を入れてくれると、アスモデウスさんの瞳は、真紅では無く紅桔梗べにききょうと呼ばれる色味の濃い紅紫色へと変色した。

「普段はこんな技を使わずとも、色欲支配アスモデウスを使えば何とかなるのじゃが、そういう相手では無いからのう。力尽くで倒させてもらうぞ?」

 アスモデウスさんの魔真王サタンの戦闘値はインフレとかいうレベルでは無かった。戦闘値は8,000。つまりZ級だ。

「Z級が2人もいるのか。これは面白い。しかしその力はいつまで持つか見物だな」

「そうなる前に消し飛ばして見せよう。皆、妾に続くのじゃ」

 そう言って姿を消した。次の瞬間には黒龍ニゲル・クティオストルーデの顔に蹴りを入れていた。俺は真っ先に縮地を使って距離を詰めた。アスモデウスさんが蹴りを入れた勢いで宙で逆さになった瞬間、俺は黒紅煉刀くろべにれんとう黒龍ニゲル・クティオストルーデに一太刀浴びせた。

 一瞬でこんな動きを可能にしたのは、アスモデウスさんの覚醒した魔眼のスキルの1つ。共鳴シンパシーだ。これにより、お互いが考えている事を黙っていても汲み取ることができるという効果だ。ランベリオンが持っている同化感覚リンク・センスとの違いは、あれはランベリオンから発信される一方的な意思で、発信している人間にこっちの意思を発信することができない。このスキルは互いが考えていることが分かるので、意思疎通が簡単に出来るという訳だ。

 俺は一太刀入れた瞬間、黒龍ニゲル・クティオストルーデから離れた。するとアスモデウスさんは、宙で逆さになった状態でこう言い放った。

魔真王の破壊光サタン・ディストラクション!」

 アスモデウスさんの手からは赤黒い邪気と雷をまとった禍々しい闇のエネルギー光が放たれた。これはとてつもない威力だ。さっき黒龍ニゲル・クティオストルーデが放った黒滅龍炎弾ニゲル・ルインフラムと同等の邪気だ。しかし、禍々しさはあるものの、どこか温かみのあるオーラを放っていた。恐らくこれがアスモデウスさんが言っていたプラスの邪気というやつだろう。

 垂直に落ちていく魔真王の破壊光サタン・ディストラクション。零距離で放った事により黒龍ニゲル・クティオストルーデ魔真王の破壊光サタン・ディストラクションを避けることはできず、そのまま森に落下した。

「ふむ。とりあえず龍を地へ追いやることはできたようじゃな」

 アスモデウスさんはそう言って少し満足気な笑みを浮かべていた。

「先に行きます」

 俺はアスモデウスさんにそう言うなり、青龍リオさんとアイコンタクトを取る。黒龍ニゲル・クティオストルーデのとこへ行くと同時に、地上で構えていた仲間達と合流することができた。そのなかにはランベリオンも混じっていた。

「――蠅がわらわらとたかっていやがるな」

 そう言って唾を吐き捨てるケロッとした表情を浮かべている黒龍ニゲル・クティオストルーデ。原則、アクティブスキルは効かないから大したダメージを与えることはできていない。あんな大量のMPを使いそうな攻撃をア行って大したダメージが無いというのも悲しいけどな。

 黒龍ニゲル・クティオストルーデが地面へと落下したのも、俺の黒紅煉刀くろべにれんとうの攻撃を受けたことにより、一瞬の怯みが出来た。それでパッシブスキルが一時的に使用することができずに、直撃してそのまま落下したようだ。

「どうやら俺様を倒す方法はきちんと共有されているようだな」

「当り前だろ」

 バチバチと青い雷を全身に帯びている青龍リオさん。

「旧友のアスモデウスの魔真王サタンを見て余も刺激を受けたようだ。余裕をかましていられるのも今のうちだぞ?」

「ほう。ならやってみるが良い」

 黒龍ニゲル・クティオストルーデがそう挑発をすると、今度は青龍リオさんが姿を消した。天眼を使って見ているのに、本当に皆出鱈目な速さを出しているな。
 
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