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最終局面Ⅳ
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「本当であればナリユキがスキルを覚醒してくれていると、もっと有利に戦えるのだがな」
「無茶言うなよ。まだこっちに転生して一年も経っていないんだぞ」
「――そうか。それはそれで逆に凄いな」
「おう。もっと褒めてくれ」
俺がそう言うとルシファーが苦笑を浮かべていた。おい。なんだその反応。
「それよりどうだ? 英雄ノ神が使えるようになったら大分違うか?」
「いや、確かに攻撃のパターンは増えたかもしれないが正直分からない。しかし、英雄ノ神のスキルは龍族に対して強いのだ。龍殺しとでも言うべきか」
「成程な。戦闘値があれだけ離れているのにさっきの攻撃はなかなかの有効打だったもんな」
「そういう事だ。英雄ノ神を所有する者だけが許される固有スキルで黒龍を追い込み、二人で奴にトドメを刺す。状況はどうであれ、我々は一度奴を殺しているんだ。今度こそ仕留めればいいだけだ」
「そうだな。それに――」
「何とか回復できたよ」
「私もよ」
そう言って現れたのはミクちゃんとデアだった。これには流石の黒龍も驚いていた。
「手加減をしたつもりはなかったのだがな」
「いや、本当に死ぬところだったんだから」
「私は転生者のなかでは随分と長い事生きている方だけど、三途の川が見えたのは初めてよ」
「デアでもそういう事言うんだな」
「悪いかしら?」
「いや、別に?」
俺がそう言うと「本当にそうかしら?」とデアは呟いていた。そんな疑い目の目で見ないでくれ。それ合ってるから。
「あとはアスモデウスさんだけか」
千里眼で視たところアスモデウスさんは死んでいないようだ。ただ、体力にはそれほど自信があるタイプではないので、気絶している時間が誰よりも長いのは仕方ない。元々、打たれ強いってタイプでも無さそうだしな。
「ようし。気合いを入れ直して黒龍を必ず倒すぞ」
俺がそう言うとこの場にいる各々返事をしてくれた。一方黒龍はこの状況においても焦燥感は無く、寧ろワクワクしていると言った様子だった。デアが天衣無縫を使ったとしても勝てる自信からきているものだろうか? はたまたシンプルに強くなった自分が天衣無縫で同じ戦闘値になるデアと俺達にどれだけ抗えるかを試したいのだろうか? いずれにせよ、デアが加わってもさっきのように状況が大きく変わる事は無いだろうと直感的に思った。
「さあいくわよ神獄城」
デアがそう唱えた瞬間。俺達は居城のなかに閉じ込められてしまった。
「来るか――」
そう呟きながら何かを覚悟したような黒龍。
「これが神獄城――。戦争と死の神の固有アルティメットスキル」
ルシファーはこのアルティメットスキルにどうやら感心をしていた。一見白を基調とした普通の内装ではあるが、このアルティメットスキルが恐ろしいのはここからだ。
床から何か出て来たと思えば、黒いローブに身を包んだ数多の亡霊が現れた。俺はあまりお化とかゾンビとかそういうの怖くは無いんだけど、垣間見える真っ白な肌と目の部分が真っ黒なその容姿は、どこかおどろおどろしさを感じた。
これらは全て、黒龍を囲うようにして襲い掛かった。驚くべきなのはその亡霊の特殊能力。先程から黒龍が亡霊に攻撃をしているのだが、亡霊には黒龍の攻撃が通じていない。黒龍が一方的に攻撃を受けているだけだった。
「おい。アレどうなっているんだよ」
と、俺がデアに問いかけると、デアは大きく息を切らして返事をできる様子ではなかった。
「MP消費が激しいっぽいね」
「成程な」
デアはこの神獄城を使ってから大量の汗を流していた。ミクちゃんがMPを回復させているにも関わらず辛さはあまり変わっていないようだ。
「私達も斬りこむぞ」
「そうだな」
俺とルシファーは愛刀を持って黒龍に斬りかかった。この亡霊達は面白い事に俺達が触れると透ける。ある意味二つの空間から黒龍は攻撃を受けている事になる。また、黒龍からして厄介なのは亡霊の攻撃は不可避。それ故、黒龍の体は再生と回復を繰り返していた。
「いくぞルシファー」
「勿論だ」
俺とルシファーは刀を一度鞘に納めた。
しれっと奪ったルシファーのこのスキル。
「黒滅斬!」
先程はW黒絶斬だったが、今度はW黒滅斬が炸裂。勿論、黒龍に大きなダメージを与えることができた。黒龍の腹部には大きな十字傷が刻まれ、噴水のように鮮血を散らしていた。
「アンタのスキルを奪って正解だったな」
「魔王のスキルを使えるのだ。光栄に思うがいい」
「俺の神理も使えているんだ。お互い様ってやつだろ?」
「交換条件と言う訳か。いずれナリユキとは真剣勝負をしてみたいものだ。何なら私が剣技を教えてやっても良いぞ? その上でナリユキを打ち破る」
「教えてもらえるのは嬉しいけど、戦うのは遠慮したいな。神理を与えたから俺にあまり有利性ないし、単純な戦闘値なら負けているからな」
「では腕を磨くんだな」
「まあ、その前にコイツを倒さないとそんな事も言っていられないけど――」
俺はそう言って黒龍に視線を向けた。確かに黒龍はボロボロだ。何なら全身血まみれで回復と再生が追い付いていない状況のなか、亡霊によって黒龍の身体は着実に蝕まれている。
しかし、そんな黒龍の様子を見ても誰も表情を緩めていなかった。もっとダメージを与えないと――。
皆が思っているのはこの一点に尽きる。
「無茶言うなよ。まだこっちに転生して一年も経っていないんだぞ」
「――そうか。それはそれで逆に凄いな」
「おう。もっと褒めてくれ」
俺がそう言うとルシファーが苦笑を浮かべていた。おい。なんだその反応。
「それよりどうだ? 英雄ノ神が使えるようになったら大分違うか?」
「いや、確かに攻撃のパターンは増えたかもしれないが正直分からない。しかし、英雄ノ神のスキルは龍族に対して強いのだ。龍殺しとでも言うべきか」
「成程な。戦闘値があれだけ離れているのにさっきの攻撃はなかなかの有効打だったもんな」
「そういう事だ。英雄ノ神を所有する者だけが許される固有スキルで黒龍を追い込み、二人で奴にトドメを刺す。状況はどうであれ、我々は一度奴を殺しているんだ。今度こそ仕留めればいいだけだ」
「そうだな。それに――」
「何とか回復できたよ」
「私もよ」
そう言って現れたのはミクちゃんとデアだった。これには流石の黒龍も驚いていた。
「手加減をしたつもりはなかったのだがな」
「いや、本当に死ぬところだったんだから」
「私は転生者のなかでは随分と長い事生きている方だけど、三途の川が見えたのは初めてよ」
「デアでもそういう事言うんだな」
「悪いかしら?」
「いや、別に?」
俺がそう言うと「本当にそうかしら?」とデアは呟いていた。そんな疑い目の目で見ないでくれ。それ合ってるから。
「あとはアスモデウスさんだけか」
千里眼で視たところアスモデウスさんは死んでいないようだ。ただ、体力にはそれほど自信があるタイプではないので、気絶している時間が誰よりも長いのは仕方ない。元々、打たれ強いってタイプでも無さそうだしな。
「ようし。気合いを入れ直して黒龍を必ず倒すぞ」
俺がそう言うとこの場にいる各々返事をしてくれた。一方黒龍はこの状況においても焦燥感は無く、寧ろワクワクしていると言った様子だった。デアが天衣無縫を使ったとしても勝てる自信からきているものだろうか? はたまたシンプルに強くなった自分が天衣無縫で同じ戦闘値になるデアと俺達にどれだけ抗えるかを試したいのだろうか? いずれにせよ、デアが加わってもさっきのように状況が大きく変わる事は無いだろうと直感的に思った。
「さあいくわよ神獄城」
デアがそう唱えた瞬間。俺達は居城のなかに閉じ込められてしまった。
「来るか――」
そう呟きながら何かを覚悟したような黒龍。
「これが神獄城――。戦争と死の神の固有アルティメットスキル」
ルシファーはこのアルティメットスキルにどうやら感心をしていた。一見白を基調とした普通の内装ではあるが、このアルティメットスキルが恐ろしいのはここからだ。
床から何か出て来たと思えば、黒いローブに身を包んだ数多の亡霊が現れた。俺はあまりお化とかゾンビとかそういうの怖くは無いんだけど、垣間見える真っ白な肌と目の部分が真っ黒なその容姿は、どこかおどろおどろしさを感じた。
これらは全て、黒龍を囲うようにして襲い掛かった。驚くべきなのはその亡霊の特殊能力。先程から黒龍が亡霊に攻撃をしているのだが、亡霊には黒龍の攻撃が通じていない。黒龍が一方的に攻撃を受けているだけだった。
「おい。アレどうなっているんだよ」
と、俺がデアに問いかけると、デアは大きく息を切らして返事をできる様子ではなかった。
「MP消費が激しいっぽいね」
「成程な」
デアはこの神獄城を使ってから大量の汗を流していた。ミクちゃんがMPを回復させているにも関わらず辛さはあまり変わっていないようだ。
「私達も斬りこむぞ」
「そうだな」
俺とルシファーは愛刀を持って黒龍に斬りかかった。この亡霊達は面白い事に俺達が触れると透ける。ある意味二つの空間から黒龍は攻撃を受けている事になる。また、黒龍からして厄介なのは亡霊の攻撃は不可避。それ故、黒龍の体は再生と回復を繰り返していた。
「いくぞルシファー」
「勿論だ」
俺とルシファーは刀を一度鞘に納めた。
しれっと奪ったルシファーのこのスキル。
「黒滅斬!」
先程はW黒絶斬だったが、今度はW黒滅斬が炸裂。勿論、黒龍に大きなダメージを与えることができた。黒龍の腹部には大きな十字傷が刻まれ、噴水のように鮮血を散らしていた。
「アンタのスキルを奪って正解だったな」
「魔王のスキルを使えるのだ。光栄に思うがいい」
「俺の神理も使えているんだ。お互い様ってやつだろ?」
「交換条件と言う訳か。いずれナリユキとは真剣勝負をしてみたいものだ。何なら私が剣技を教えてやっても良いぞ? その上でナリユキを打ち破る」
「教えてもらえるのは嬉しいけど、戦うのは遠慮したいな。神理を与えたから俺にあまり有利性ないし、単純な戦闘値なら負けているからな」
「では腕を磨くんだな」
「まあ、その前にコイツを倒さないとそんな事も言っていられないけど――」
俺はそう言って黒龍に視線を向けた。確かに黒龍はボロボロだ。何なら全身血まみれで回復と再生が追い付いていない状況のなか、亡霊によって黒龍の身体は着実に蝕まれている。
しかし、そんな黒龍の様子を見ても誰も表情を緩めていなかった。もっとダメージを与えないと――。
皆が思っているのはこの一点に尽きる。
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