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協力成立Ⅰ

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「何か話まとまってしまった」

「どうでしたかミロク様は?」

 スペンサー公爵がそう問いかけてきた。崇拝している主を見てどう感じたかを気にしているようだった。

「端的に言うと別次元の存在って感じですね」

「ナリユキ閣下にもそう言って頂けるとは非常に光栄です」

 スペンサー公爵は満足気な笑みを浮かべている一方、アマミヤは「洗脳でもされた?」と悪戯な笑みを浮かべた。

「別に洗脳なんかされていない。ただ、神そのものであるミロクの力が必要だと思ったまでだ。非人道的な実験を瞑る事はできないが――」

「浮かない顔ね」

「ミロクもコヴィー・S・ウィズダムを危険視している訳だが、ミロクの情報が正しければ相当厄介だ――。これから俺達は創世ジェスと協力関係になる。コヴィー・S・ウィズダムに関する情報交換を行うんだ」

「まさか創世ジェスの情報を得ようとしていたのにそこまで話が発展するとはね」

 アマミヤは少し呆れた表情を浮かべていた。まあ快く受け入れる事ができないのも無理は無い。

「あと引っかかる事があるんですけど、ミロクが神そのものって?」

 アマミヤがそう問いかけてきたので、俺が口を開こうとするとスペンサー公爵が首を左右に振った。どうやら口外禁止らしい。

「まあ言葉の綾だな」

「ふーん。まあいいでしょう」

 アマミヤはそう言って伸びをすると、丘の上にある神殿周りに広がっている緑と白い家が点在するノスタルジックな景色を堪能していた。

「何で駄目なんですか。なんか身の危険を感じて言う事聞いちゃったけど」

 俺がスペンサー公爵にひそひそ話で問いかけると――。

「ミロク様の正体を知る者はごく一部です。兄弟であるナリユキ閣下だからこそミロク様はお伝えしたのだと思います。それほど貴方様の事を信頼しているのです」

「だから兄弟って何?」

「――それは言えません。ただ時期に分かりますよ」

「もったいぶられるのあまり好きじゃないんだけど」

「申し訳ございません」

 スペンサー公爵にそう清々しい謝罪を受けた俺は、これ以上とやかく言う気が起きなかった。

「まあいいですよ。スペンサー公爵――いや、Hエイチと呼んだ方がいいですか?」

「素顔の時はそうお呼び下さい。この仮面を付けている時はHエイチと――」

 スペンサー公爵はそう言って金色蛇の仮面を付けた振りをした。

「うわあ。それを持っていると実感わきますね」

「そうですね。ミロク様がああ仰っている以上、私は貴方様の味方です。御恩がありますのでいざとなれば御身を捧げる覚悟も出来ております」

「凄い覚悟ですね――」

「他の幹部がどのように感じているかは分かりませんが、ミロク様の指示が無い限りは、大幹部の命令をも背くつもりでございます」

「大幹部か――。一体どのくらいの強さなんですか?」

「そこまでは言えません」

 そう綺麗に断られた。やはり戦力に関しては情報提供してくれないようだ。

「それにしても良かったですね。これほど話が進展するとは――。それに創世ジェスと争う必要もとりあえず無くなりましたし」

 そう安堵した表情を浮かべて胸を撫で下したマルキージオ卿。

「私は腑に落ちていないですけどね」

 アマミヤはそう呟いた。

「スペンサー公爵。ナリユキ閣下は信用しようとしているかもしれないですが、私は創世ジェスを信用しようとは思わないですから」

「それは仕方ありませんね。私は出来るだけマーズベルの方々と良好な関係を築きたいのですが――」

「うちには貴方達の実験の犠牲者になった子供もいます。それをその子達の前で言えるのでしょうか?」

 アマミヤは鋭い眼光を放ちながら、スペンサー公爵に向けてそう告げた。

「それは――言えませんね」

「コヴィー・S・ウィズダムを倒したら実験を止めるという条件。例え実験が行われなくなっても実験された子供達が世界中にいるのも事実。一度付いてしまった傷は消えない。魔物に姿を変えているのであれば尚更ね」

 アマミヤはスペンサー公爵にそう言い放って神殿から離れて行った。

「アマミヤの言う通りです。完璧に信用するのは私もできません。しかし、協力関係になるという約束は果たすつもりです」

 俺がそう言うとスペンサー公爵の表情は明るくなった。

「情報入手できたらまた会いましょう」

「はい。原則、お会いできない時は転移テレポートイヤリングで私の顔を念じても、ミロク様のご加護を受けている為お会いできません。転移テレポートが成功した場合は問題ございませんので、いつでもどうぞ」

「かしこまりました。ありがとうございます」

 俺がそう言うとスペンサー公爵は満足気な笑みを浮かべていた。

「ではそろそろ行きましょう。一度、青龍リオ・シェンラン様に報告した方が良いでしょう」

 マルキージオ卿の意見に俺は頷いた。

 俺達はスペンサー公爵と別れた後、そのままオストロンに帰国した。正直なところ話すとは長くなるから、青龍リオさんには知性・記憶の略奪と献上メーティスを使って経緯いきさつを説明した。

 勿論、俺がこの目で見たミロクの視覚的な情報も含めて。
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