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記念日は忘れないで下さい
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何時あったか、そう聞かれたら無かったと答えるしかない。エーベルハルトがラウラにいれあれげる様になり、時折開かれていたお茶の席をすっぽかして以来エーベルハルトがクラウディアと二人で会う機会は設けられなかったのを、ヘンリックは知っているからだ。
それまでのお茶の席すら会話の弾む楽しいものではなく、始終無言かエーベルハルトが自分の興味のある事を一方的に話すばかりであったが、少なくとも交流という名目はクリアしていた。それすらも無くなり、ラウラと側近三人とで遊び歩いている間、クラウディアが何をしていたかなど気にも留めていなかった。
「だ、だとしてもだ! 婚約を破棄してすぐに婚姻など、前から通じていたとしか思えないではないか! だとしたらふて「違います!」……っ」
これまでのヘンリックであれば、王族の言葉を遮るなどありえなかった。だが余程腹に据えかねたのだろう。思わずエーベルハルトが黙り込むほどの強い口調で睨み付けながら否定をした。
「そもそも殿下がそれをいいますか? 少なくともリュシオン陛下と姉の付き合いは、王家にも黙認される程度の常識的なもののみです。あなたの様に婚約者でもない女性と二人きりで出掛けたり、べたべた触れあいながら至近距離で話し込んだり、高価なプレゼントを贈ったり、夜会で何曲も連続で踊ったりする様な不適切な付き合いは一切していませんが!? ああ、殿下だけではなく貴方方全員に言えますが!」
「……っ」
改めて自分とラウラがどう他人からみられているか指摘され、エーベルハルト達は言葉を失う。確かに不適切と言われても仕方ないかもしれない行動だろう。実際何度も周りから諌められた事もある。
そんな彼らに冷たい視線を向けたまま、取り繕うことなく大きくため息を吐くとヘンリックは口を開きエーベルハルトに問いかけた。
「ここまでの話を踏まえてもう一度お聞きします。殿下が婚約破棄を姉に告げたあの日は、何の日ですか」
さすがにこれだけ聞いたらわかるだろう? そう物分かりの悪い子供に話す様な口調で話すヘンリックに一瞬カッとなるが、言葉の内容を考え、思わず呆然となった。
「……まさか、クラウディアの……」
「ハルト様?」
意味を理解する気がないのだろう。不思議そうにラウラがエーベルハルトの名を呼ぶが、今の彼には聞こえていないだろう。
「……やっと思い出していただけましたか? そうです。あの日は姉の十八歳の誕生日でしたよ。この三ヶ月間の姉の様子を既に御存知だったリュシオン陛下は、公爵家で何時になったとしても待つとおっしゃっていたのに、昼には帰宅した姉の姿に流石に驚いていましたよ。同時に姉の萎れた様子に怒りを覚えてもいらっしゃいましたが」
この国でも誕生日に自宅で他人を呼んでパーティーを開く家はあるが、公爵家ともなると招待客の選定が大変であり、クラウディアが華美を好まなかったこともあって、公爵家ではいつも家族だけで祝っていた。本来なら未来の王太子妃の実家としての権威を示すために開くべきであり、クラウディアが幼い頃は毎年行っていたのだが、招待されるべく有象無象の輩による事件も起きた為にクラウディアが心を痛めたため、という事もあった。
だが、誕生日パーティーが開かれないからといって誕生日が無いわけではない。身内だけではあったがお祝いをしたし、プレゼントも届いていた。届いた贈り物の中には国王陛下夫妻からの物もあったのを知らなかったのだろうか。エーベルハルト自身から誕生日プレゼントが届いた事は一度も無かった。
「誕生日プレゼントだけではありませんね。大規模な夜会が開かれる時には、常なら婚約者にドレスやアクセサリーを贈るものであり、王太子ともなればその為に公費からの計上が認められていますが、今まで当家に殿下から何か届いた事は一度もありません。いつも姉は公爵家で仕立てたドレスを着て、公爵家で用意をした馬車に乗って向かっていましたよ。婚約者に迎えに来ていただけなかったので。ああそうそう。以前財務から苦情が届きましたね。『王太子分の公費からの出費が多すぎるので少し押さえていただけないか』と。不思議ですね。姉の所には何も届かないのに、公費は一体何処に消えたのでしょう?」
それまでのお茶の席すら会話の弾む楽しいものではなく、始終無言かエーベルハルトが自分の興味のある事を一方的に話すばかりであったが、少なくとも交流という名目はクリアしていた。それすらも無くなり、ラウラと側近三人とで遊び歩いている間、クラウディアが何をしていたかなど気にも留めていなかった。
「だ、だとしてもだ! 婚約を破棄してすぐに婚姻など、前から通じていたとしか思えないではないか! だとしたらふて「違います!」……っ」
これまでのヘンリックであれば、王族の言葉を遮るなどありえなかった。だが余程腹に据えかねたのだろう。思わずエーベルハルトが黙り込むほどの強い口調で睨み付けながら否定をした。
「そもそも殿下がそれをいいますか? 少なくともリュシオン陛下と姉の付き合いは、王家にも黙認される程度の常識的なもののみです。あなたの様に婚約者でもない女性と二人きりで出掛けたり、べたべた触れあいながら至近距離で話し込んだり、高価なプレゼントを贈ったり、夜会で何曲も連続で踊ったりする様な不適切な付き合いは一切していませんが!? ああ、殿下だけではなく貴方方全員に言えますが!」
「……っ」
改めて自分とラウラがどう他人からみられているか指摘され、エーベルハルト達は言葉を失う。確かに不適切と言われても仕方ないかもしれない行動だろう。実際何度も周りから諌められた事もある。
そんな彼らに冷たい視線を向けたまま、取り繕うことなく大きくため息を吐くとヘンリックは口を開きエーベルハルトに問いかけた。
「ここまでの話を踏まえてもう一度お聞きします。殿下が婚約破棄を姉に告げたあの日は、何の日ですか」
さすがにこれだけ聞いたらわかるだろう? そう物分かりの悪い子供に話す様な口調で話すヘンリックに一瞬カッとなるが、言葉の内容を考え、思わず呆然となった。
「……まさか、クラウディアの……」
「ハルト様?」
意味を理解する気がないのだろう。不思議そうにラウラがエーベルハルトの名を呼ぶが、今の彼には聞こえていないだろう。
「……やっと思い出していただけましたか? そうです。あの日は姉の十八歳の誕生日でしたよ。この三ヶ月間の姉の様子を既に御存知だったリュシオン陛下は、公爵家で何時になったとしても待つとおっしゃっていたのに、昼には帰宅した姉の姿に流石に驚いていましたよ。同時に姉の萎れた様子に怒りを覚えてもいらっしゃいましたが」
この国でも誕生日に自宅で他人を呼んでパーティーを開く家はあるが、公爵家ともなると招待客の選定が大変であり、クラウディアが華美を好まなかったこともあって、公爵家ではいつも家族だけで祝っていた。本来なら未来の王太子妃の実家としての権威を示すために開くべきであり、クラウディアが幼い頃は毎年行っていたのだが、招待されるべく有象無象の輩による事件も起きた為にクラウディアが心を痛めたため、という事もあった。
だが、誕生日パーティーが開かれないからといって誕生日が無いわけではない。身内だけではあったがお祝いをしたし、プレゼントも届いていた。届いた贈り物の中には国王陛下夫妻からの物もあったのを知らなかったのだろうか。エーベルハルト自身から誕生日プレゼントが届いた事は一度も無かった。
「誕生日プレゼントだけではありませんね。大規模な夜会が開かれる時には、常なら婚約者にドレスやアクセサリーを贈るものであり、王太子ともなればその為に公費からの計上が認められていますが、今まで当家に殿下から何か届いた事は一度もありません。いつも姉は公爵家で仕立てたドレスを着て、公爵家で用意をした馬車に乗って向かっていましたよ。婚約者に迎えに来ていただけなかったので。ああそうそう。以前財務から苦情が届きましたね。『王太子分の公費からの出費が多すぎるので少し押さえていただけないか』と。不思議ですね。姉の所には何も届かないのに、公費は一体何処に消えたのでしょう?」
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