53 / 104
第4章
3
しおりを挟む
卒業式。
あっという間に3年間が過ぎたように思っていた。いつも芽依と煌太といたけど、他にも仲良くしてくれた友達もいた。
卒業後はみんなバラバラ。
芽依だけは大学一緒で心強い。
卒業後の柚子は湊と一緒に住むことが決まっていた。その為、もう少し広いアパートへと移り住むことになっている。
芽依は大学の女子寮に入ることになっていた。
「なんで女子寮に入らないのかなぁ」
芽依はそう言った。
「だってうちの父親がうるさい。お兄ちゃんと一緒じゃないと家、出してくれないから」
「湊さんに説得してもらってそうなったんだっけ」
湊と住むことが決まってからずっと言ってくる芽依はどこか寂しそう。
「アパートは決まったのか?」
後ろから煌太が声をかけた。
「うん。お兄ちゃん、自分の荷物はもう運んだって」
「引っ越し業者頼むのも大変だったんじゃ」
「頼んでないよー」
「ん?」
「お兄ちゃんの荷物、零士さんたちみんなで運んだらしい」
湊が新しいアパートに越すことを聞いた零士たちはオフの時間を使って一斉に運び出したのだ。
「仲良しなんだな」
「そうだね」
窓から学校のグラウンドを見る。
「この景色も最後だね」
「ほんと」
「なんだかんだで楽しかったね」
そう感傷に浸ってると先生が廊下を歩いてくるのが見えた。
「愛川、平川、篠宮。教室入れー」
「「「はーい」」」
3人の声が揃い、そのまま教室に入って行く。
高校生活最後の教室。色々あったけど、この学校に来て良かったと柚子は思った。
◇◇◇◇◇
「柚子!」
式が終わりみんな各々話したい人たちと話したり写真とったりしていた時、後ろから勇一が走ってきた。
柚子は芽依と煌太と話していた。
「良かった。最後にちゃんと話する時間取れて」
ついこの前話をしたのに、まだ何かあるのかと警戒する。
「なに」
「いや、本当に最後だからちゃんとさよなら言おうと思って」
「滝山は大学どこだっけ?」
「北海道の大学」
「北海道!?」
「そ」
「ずいぶんと思いきったとこに行くな」
煌太が言うと勇一は煌太を見ないで柚子を見た。
「そうでもしないと、諦めつかないから」
ドキッとした。
(その言い方、まだ私を好きみたいな……)
柚子は何も答えられずにいた。そんな柚子を見てケタケタと笑う。
「冗談だよ!もうなんとも思ってないって!」
そう言って「じゃあな」と他の生徒の方へ歩いて行った。
「アイツはアイツなりにお前に惚れてたんだな」
煌太は勇一の後ろ姿を見てポツリと言った。
◇◇◇◇◇
『卒業おめでとう』
電話越しに聞こえる声が心地いい。この声がとてもいい。
「ありがとう」
『そっち、行きたかったなあ』
「残念でした。それに大騒ぎになるよ」
『分かってるよ。でも会いたい……』
子供のように拗ねる姿が目に浮かぶ。
『いつ引っ越しだっけ?』
「明後日」
『そっか』
「明後日は雑誌の撮影?」
『そ。だから手伝ってやれねぇや』
「平気」
明後日、湊が車で柚子の荷物を運ぶことになっている。ベッドなどの家具は父親が新しく買い与えた。
なんだかんだで柚子に甘いのかもしれない。
『じゃおやすみ』
「おやすみ」
電話を切った後、なんだか無性に寂しい思いが込み上げてきた。
(あと少し……)
引っ越しは目の前。寂しいとは言えない。
あっという間に3年間が過ぎたように思っていた。いつも芽依と煌太といたけど、他にも仲良くしてくれた友達もいた。
卒業後はみんなバラバラ。
芽依だけは大学一緒で心強い。
卒業後の柚子は湊と一緒に住むことが決まっていた。その為、もう少し広いアパートへと移り住むことになっている。
芽依は大学の女子寮に入ることになっていた。
「なんで女子寮に入らないのかなぁ」
芽依はそう言った。
「だってうちの父親がうるさい。お兄ちゃんと一緒じゃないと家、出してくれないから」
「湊さんに説得してもらってそうなったんだっけ」
湊と住むことが決まってからずっと言ってくる芽依はどこか寂しそう。
「アパートは決まったのか?」
後ろから煌太が声をかけた。
「うん。お兄ちゃん、自分の荷物はもう運んだって」
「引っ越し業者頼むのも大変だったんじゃ」
「頼んでないよー」
「ん?」
「お兄ちゃんの荷物、零士さんたちみんなで運んだらしい」
湊が新しいアパートに越すことを聞いた零士たちはオフの時間を使って一斉に運び出したのだ。
「仲良しなんだな」
「そうだね」
窓から学校のグラウンドを見る。
「この景色も最後だね」
「ほんと」
「なんだかんだで楽しかったね」
そう感傷に浸ってると先生が廊下を歩いてくるのが見えた。
「愛川、平川、篠宮。教室入れー」
「「「はーい」」」
3人の声が揃い、そのまま教室に入って行く。
高校生活最後の教室。色々あったけど、この学校に来て良かったと柚子は思った。
◇◇◇◇◇
「柚子!」
式が終わりみんな各々話したい人たちと話したり写真とったりしていた時、後ろから勇一が走ってきた。
柚子は芽依と煌太と話していた。
「良かった。最後にちゃんと話する時間取れて」
ついこの前話をしたのに、まだ何かあるのかと警戒する。
「なに」
「いや、本当に最後だからちゃんとさよなら言おうと思って」
「滝山は大学どこだっけ?」
「北海道の大学」
「北海道!?」
「そ」
「ずいぶんと思いきったとこに行くな」
煌太が言うと勇一は煌太を見ないで柚子を見た。
「そうでもしないと、諦めつかないから」
ドキッとした。
(その言い方、まだ私を好きみたいな……)
柚子は何も答えられずにいた。そんな柚子を見てケタケタと笑う。
「冗談だよ!もうなんとも思ってないって!」
そう言って「じゃあな」と他の生徒の方へ歩いて行った。
「アイツはアイツなりにお前に惚れてたんだな」
煌太は勇一の後ろ姿を見てポツリと言った。
◇◇◇◇◇
『卒業おめでとう』
電話越しに聞こえる声が心地いい。この声がとてもいい。
「ありがとう」
『そっち、行きたかったなあ』
「残念でした。それに大騒ぎになるよ」
『分かってるよ。でも会いたい……』
子供のように拗ねる姿が目に浮かぶ。
『いつ引っ越しだっけ?』
「明後日」
『そっか』
「明後日は雑誌の撮影?」
『そ。だから手伝ってやれねぇや』
「平気」
明後日、湊が車で柚子の荷物を運ぶことになっている。ベッドなどの家具は父親が新しく買い与えた。
なんだかんだで柚子に甘いのかもしれない。
『じゃおやすみ』
「おやすみ」
電話を切った後、なんだか無性に寂しい思いが込み上げてきた。
(あと少し……)
引っ越しは目の前。寂しいとは言えない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
27
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる