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ツンデレガチ勢★聖騎士団編
マンガ肉って何の肉なんだろう…
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「かっ、かかかかカイルさんここここれは一体…!?」
「? 金貨だが? まさか…そんな事も知らないのかお前は!?」
「知ってるわ!! ……でもこれ……何枚入ってんの…?」
城下町を一通り見た後、第2の壁近くで、カイルが小袋を手渡してきた。
俺の拳くらいの小袋を受け取ると手にズシッと重みが……。
驚いて中を見ると、金色の硬貨がギッシリ詰まっていて、その輝きに目が眩んだ。
「小遣いだ。欲しい物があればそこから出せ。足りなくなったら俺に言え。俺はパトロールがあるので毎回出すには面倒だ」
そもそも当然のように奢ってくれるのに驚きなんだけど……いやこれ…本当に何枚あるんだよ?
1枚1万円なら……100万くらいあるんじゃないか?
え、庶民街なんだよな? どうやってそんなに使うんだよ? 1枚でも充分なんだけど。むしろ盗られないように神経研ぎ澄まして楽しめなさそうなんだけど。
「庶民街は城下町より混雑しているが、今度は聖騎士団第1部隊の10人がコージを常に見張っているので、迷子になる心配も絡まれる心配もスられる心配もない」
「俺は罪人か?」
「俺の恋人だろうバカめ」
「バカはお前だ。俺は了承した覚えは無い」
流されなかったか…と舌打ちをするカイルはちょっと楽しそうだった。
ミゲルさんとスティーブさんは俺達を見て何故かニヤニヤ。
一体何だこいつら。なんか微妙にムカつく。
……にしても…カイルの金銭感覚、どうなってんだ…?
疑問に思いつつ、カイルとスティーブさんに挟まれて一緒に第2の壁を潜る。
身長差で捕らわれた宇宙人感でいっぱいだけど…その分、安心感もいっぱいだ。なんというか…龍が攻めて来ても絶対に守ってくれそうな感じ?
複雑な心境でいると、目の前の石の門がゴゴゴ…と音を立てて開いた。
「…おぉぅ……」
どこまでも広がる青空に、キラリと光る太陽。騒々とする人々。笑顔で物を売り、笑顔で物を買う様々な種族。
活気溢れる庶民街には、最初にカイルのジュラムに乗って通った時の倍、人がいた。
流石祭り…。創造祭は世界的なイベントってスティーブさんも言ってたし、このくらいは当たり前なのかも知れない。
「コージ、店の上を見てみろよ」
歩き始めてちょっと経った頃…、俺が銅貨4枚のマンガ肉をもっちゃもっちゃ食べていると、隣でオレンジ色の果実をかじっていたスティーブさんが店の屋根の上を指差した。
「もちゃもちゃ…むむ?」
あ、噛む時、口は閉じてるぞ? ただ…何故か不思議な咀嚼音がするんだよ。何故か。
そして、店の屋根には数人の聖騎士達がいて、俺達の歩くスピードに合わせて付いて来ていた。
驚いていると、その1人と目が合い、にっこりと手を振られた。それに気付いた他の聖騎士まで笑顔で手を振る。
……とりあえず手を振り返すけど…何やってんの?
「アイツらがコージを警護する第1部隊の10人のうち、4人だ。その他は人混みに紛れて前後左右にいるぜ?」
ああ、警護してくれる人か! ありがたやぁ~ありがたやぁ~!!
後に会う事があったらお礼を言おう…と思っていたら、屋根の上の聖騎士達が何故かマッチョマンのポーズをとり、自分の筋肉をアピールし始めた。
「…??」
「ぶはっwwアイツら、コージに惚れて貰おうって必死なんだよww」
「え」
「コージはすっかり聖騎士団のお姫様だからなw」
誰がお姫様じゃいっ! てスティーブさんに突っ込みたいけど、街中だからガマンガマン…。………でもやっぱり不本意だからペシペシ叩いとこ。
「あーあ、アイツら知らねェのか。コージは団長が美味しく頂いちまったってのに…」
「…!? ~~~っっ!?!? な、ななななななんで知って…!!?」
「いや、昨日団長の部屋の前を通りかかったら…気持ち良さそうな声が聴こえて…な?」
───……死にたくなった。
…ぴ、ぴ、ぴぎゃ~~~~~~~ッ!!! 嘘だろマジか~~~~~~~ッ!!!
「青と赤が入り交じってスゲェ顔色だぜコージwww…!! ちょ、コージその顔止めろ!! 団長がこっち見てる!! 俺を殺気だけで殺そうと試みてる!!」
青くなって喚くスティーブさんが指差す方向に真っ赤で熱々の顔を向けると、人混みの先に部下からの報告を聞きながらこっちを全力で睨むカイルの姿が…。
……お前のせいでもあるんだからな!!
「…あっかんべー」
舌をちょろっと出して『威嚇すんな』と伝えれば、カイルは一瞬驚いた顔をして、直ぐ様嬉しそうにニマニマニマニマ。
その様子を見たスティーブさんは、ほっと胸を撫で下ろして屋根上の聖騎士さんにも『止めろ』と身ぶり手振りで注意。
カイルが恐いのか、マッチョマンポーズの人達はシャキッと背筋を伸ばして真面目アピールする。
「はぁー、助かったぁ…。コージ、頼むからうちの団長の手綱、上手く握ってくれよ…?」
「…頑張る」
気を取り直してマンガ肉をがぶり。
もちゃもちゃ…うん、美味い。肉汁たっぷり。
スティーブさんがくれたオレンジ色の果物もしゃくっと…もしゃもしゃ。これも美味い!
カイルが戻って来た後、色んな食べ物を買ったけど、地球には無い味でいっぱいだった。
唯一似ていたのは、1袋銅貨2枚の『じゃがたんの薄揚げ』だけ。
…そう、俺が大好きだった、ポテトチップスです!
いや~びっくりしたよ。
地球のより厚かったけどポテチがあった事も、それがこの世界ではご飯として売られてた事も!
でも何より…じゃがいもが、じゃがたんって呼ばれているのに一番驚いた。
露店でじゃがいも見たちっちゃな男の子が『ぱぱぁ! じゃかたんがあるよ! じゃがたぁ~ん!』ってお父さんの服を引っ張っていて、滅茶苦茶可愛かった。じゃがたんあげたくなった。子供に飴ちゃんあげようとするお爺ちゃんの気持ちがよく分かった。
「じゃがたんは遠征中の騎士団にとって兵糧にもなる。保存期間が長い上に腹にも溜まるからな」
カイルがじゃがたんの薄揚げを1袋俺に手渡してばりばり食べる。
俺も1枚かじると、ぱりっとした食感と良い感じに塩が効いていて、まんまうすしおポテチだった。
…そこで俺は疑問に思う。
この世界には基本的な調味料が揃っている。だから料理のレベルは地球と変わらないし、塩や胡椒もお高めだけど、そこまで高級品というわけでもないのだ。
だからこその疑問。
……なんで、この世界には地球の料理がないんだ?
300年前には鏡の製法を伝えたとされる『ジン・シノノメ』さんがいたんだから、他に地球の人がいてもおかしくない。
ならばなんで地球の料理を伝えなかったんだろう。
こっちの料理は肉を焼いて味付けしたり魚も串焼きとかそのぐらい。単純だ。
素材が良いのかそれでも充分美味しいんだけど……オムレツが食べたい…。
熱々の半熟をはふはふしたい。丼ものも食べたい。レストラン料理が食べたい。
ワーナーさんの料理は多少複雑そうだったけど、オムレツは知ってるのかな…。ところで米ってあんのかな…。あったら海鮮丼食べたいな…。もしなかったら作って貰ったり出来るかな…。俺、弟に作ってやったお菓子の作り方しか知らないんだけどな…。
………あっ! あのお店海老焼いてる!
********************
「実行は今夜。祭りに乗じてコージを奪い返す。俺はどこでもすぐに駆け付けられる第2の壁の上にいるから、奪還に問題が生じたり、コージの身に何かがあれば笛を吹いて呼べ」
お頭が数百人の団員の前で、厳しい顔をしながら静かに…しかし圧倒的威圧を放ちながら全員に命令を告げる。
「こっちからは絶対に手を出すな。攻撃された場合だけ、応戦しろ。死人を出すのは極力避けろ。ただし、最優先はコージを無傷で取り戻す事だ。無傷というのは心身共に、という意味だぞ」
「「「うっす!!!」」」
「コナー…分かってるな? コージと接触した際に『可能な限り最強の結界を自分とコナーに張れ』と伝えろ」
「はい!」
今夜、俺が聖騎士の宿舎に忍び込み、コージさんを連れ出す。
コージさんは強面の男が苦手なようなので、知り合いの俺が率先する事に決まったのだ。
他の団員は、邪魔をしてくる者共を近付かせないようにしたり、俺達を脱出ルートへ導く役割を担う。
そして全員が武器と笛を持ち、待機場所へ移動しようとした時…。
「あの、あなた方も天使さんを奪還するおつもりなんですか?」
若い男の声。
団員が全員一気に振り返ると、10代後半あたりの半目が特徴的な男が立っていた。
団員の多くが剣を抜き、詠唱を始めるが、お頭に制止されて留まる。
「………冒険者か?」
「はい。オーディアンギルドの者です。えっと…『死神の吐息』の方々ですよね」
「……ああ、確かに俺達は『死神の吐息』だが…。…コージを取り返しに来たのか? 生憎だが、ここにはいねぇよ」
「分かっています。…聖騎士団のもとにいる事も把握しています。……あの、協力、しませんか」
その提案に団員達が男を睨み付けるが、お頭は男を見定めるようにじぃっと見詰める。
「俺達のメリットは?」
「……ツテがあります。俺なら、疑われずに第2の壁を潜れます」
「ほぉーーー。ツテなァ…?」
「兄が、王国騎士として王城で働いています」
「………………」
何かを考えるように目を閉じたお頭。
焦る様子も怖じける様子もない男を少し不気味に思いながら、俺はソイツを観察した。
──…黒髪とは珍しい。一瞬、極東の国々出身かと思ったが、顔立ちはこの辺の人間だ。無表情で、半目。まるで能面のようだ。
「…………お前、名前は?」
「……ロイ・ビーター。A級冒険者です」
……コージさんを迎えに行くのは俺の役目だったのに、ロイという男まで付いてくる事になってしまった。
********************
はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。
…皆さんも、インフルエンザには気を付けましょうね…。
「? 金貨だが? まさか…そんな事も知らないのかお前は!?」
「知ってるわ!! ……でもこれ……何枚入ってんの…?」
城下町を一通り見た後、第2の壁近くで、カイルが小袋を手渡してきた。
俺の拳くらいの小袋を受け取ると手にズシッと重みが……。
驚いて中を見ると、金色の硬貨がギッシリ詰まっていて、その輝きに目が眩んだ。
「小遣いだ。欲しい物があればそこから出せ。足りなくなったら俺に言え。俺はパトロールがあるので毎回出すには面倒だ」
そもそも当然のように奢ってくれるのに驚きなんだけど……いやこれ…本当に何枚あるんだよ?
1枚1万円なら……100万くらいあるんじゃないか?
え、庶民街なんだよな? どうやってそんなに使うんだよ? 1枚でも充分なんだけど。むしろ盗られないように神経研ぎ澄まして楽しめなさそうなんだけど。
「庶民街は城下町より混雑しているが、今度は聖騎士団第1部隊の10人がコージを常に見張っているので、迷子になる心配も絡まれる心配もスられる心配もない」
「俺は罪人か?」
「俺の恋人だろうバカめ」
「バカはお前だ。俺は了承した覚えは無い」
流されなかったか…と舌打ちをするカイルはちょっと楽しそうだった。
ミゲルさんとスティーブさんは俺達を見て何故かニヤニヤ。
一体何だこいつら。なんか微妙にムカつく。
……にしても…カイルの金銭感覚、どうなってんだ…?
疑問に思いつつ、カイルとスティーブさんに挟まれて一緒に第2の壁を潜る。
身長差で捕らわれた宇宙人感でいっぱいだけど…その分、安心感もいっぱいだ。なんというか…龍が攻めて来ても絶対に守ってくれそうな感じ?
複雑な心境でいると、目の前の石の門がゴゴゴ…と音を立てて開いた。
「…おぉぅ……」
どこまでも広がる青空に、キラリと光る太陽。騒々とする人々。笑顔で物を売り、笑顔で物を買う様々な種族。
活気溢れる庶民街には、最初にカイルのジュラムに乗って通った時の倍、人がいた。
流石祭り…。創造祭は世界的なイベントってスティーブさんも言ってたし、このくらいは当たり前なのかも知れない。
「コージ、店の上を見てみろよ」
歩き始めてちょっと経った頃…、俺が銅貨4枚のマンガ肉をもっちゃもっちゃ食べていると、隣でオレンジ色の果実をかじっていたスティーブさんが店の屋根の上を指差した。
「もちゃもちゃ…むむ?」
あ、噛む時、口は閉じてるぞ? ただ…何故か不思議な咀嚼音がするんだよ。何故か。
そして、店の屋根には数人の聖騎士達がいて、俺達の歩くスピードに合わせて付いて来ていた。
驚いていると、その1人と目が合い、にっこりと手を振られた。それに気付いた他の聖騎士まで笑顔で手を振る。
……とりあえず手を振り返すけど…何やってんの?
「アイツらがコージを警護する第1部隊の10人のうち、4人だ。その他は人混みに紛れて前後左右にいるぜ?」
ああ、警護してくれる人か! ありがたやぁ~ありがたやぁ~!!
後に会う事があったらお礼を言おう…と思っていたら、屋根の上の聖騎士達が何故かマッチョマンのポーズをとり、自分の筋肉をアピールし始めた。
「…??」
「ぶはっwwアイツら、コージに惚れて貰おうって必死なんだよww」
「え」
「コージはすっかり聖騎士団のお姫様だからなw」
誰がお姫様じゃいっ! てスティーブさんに突っ込みたいけど、街中だからガマンガマン…。………でもやっぱり不本意だからペシペシ叩いとこ。
「あーあ、アイツら知らねェのか。コージは団長が美味しく頂いちまったってのに…」
「…!? ~~~っっ!?!? な、ななななななんで知って…!!?」
「いや、昨日団長の部屋の前を通りかかったら…気持ち良さそうな声が聴こえて…な?」
───……死にたくなった。
…ぴ、ぴ、ぴぎゃ~~~~~~~ッ!!! 嘘だろマジか~~~~~~~ッ!!!
「青と赤が入り交じってスゲェ顔色だぜコージwww…!! ちょ、コージその顔止めろ!! 団長がこっち見てる!! 俺を殺気だけで殺そうと試みてる!!」
青くなって喚くスティーブさんが指差す方向に真っ赤で熱々の顔を向けると、人混みの先に部下からの報告を聞きながらこっちを全力で睨むカイルの姿が…。
……お前のせいでもあるんだからな!!
「…あっかんべー」
舌をちょろっと出して『威嚇すんな』と伝えれば、カイルは一瞬驚いた顔をして、直ぐ様嬉しそうにニマニマニマニマ。
その様子を見たスティーブさんは、ほっと胸を撫で下ろして屋根上の聖騎士さんにも『止めろ』と身ぶり手振りで注意。
カイルが恐いのか、マッチョマンポーズの人達はシャキッと背筋を伸ばして真面目アピールする。
「はぁー、助かったぁ…。コージ、頼むからうちの団長の手綱、上手く握ってくれよ…?」
「…頑張る」
気を取り直してマンガ肉をがぶり。
もちゃもちゃ…うん、美味い。肉汁たっぷり。
スティーブさんがくれたオレンジ色の果物もしゃくっと…もしゃもしゃ。これも美味い!
カイルが戻って来た後、色んな食べ物を買ったけど、地球には無い味でいっぱいだった。
唯一似ていたのは、1袋銅貨2枚の『じゃがたんの薄揚げ』だけ。
…そう、俺が大好きだった、ポテトチップスです!
いや~びっくりしたよ。
地球のより厚かったけどポテチがあった事も、それがこの世界ではご飯として売られてた事も!
でも何より…じゃがいもが、じゃがたんって呼ばれているのに一番驚いた。
露店でじゃがいも見たちっちゃな男の子が『ぱぱぁ! じゃかたんがあるよ! じゃがたぁ~ん!』ってお父さんの服を引っ張っていて、滅茶苦茶可愛かった。じゃがたんあげたくなった。子供に飴ちゃんあげようとするお爺ちゃんの気持ちがよく分かった。
「じゃがたんは遠征中の騎士団にとって兵糧にもなる。保存期間が長い上に腹にも溜まるからな」
カイルがじゃがたんの薄揚げを1袋俺に手渡してばりばり食べる。
俺も1枚かじると、ぱりっとした食感と良い感じに塩が効いていて、まんまうすしおポテチだった。
…そこで俺は疑問に思う。
この世界には基本的な調味料が揃っている。だから料理のレベルは地球と変わらないし、塩や胡椒もお高めだけど、そこまで高級品というわけでもないのだ。
だからこその疑問。
……なんで、この世界には地球の料理がないんだ?
300年前には鏡の製法を伝えたとされる『ジン・シノノメ』さんがいたんだから、他に地球の人がいてもおかしくない。
ならばなんで地球の料理を伝えなかったんだろう。
こっちの料理は肉を焼いて味付けしたり魚も串焼きとかそのぐらい。単純だ。
素材が良いのかそれでも充分美味しいんだけど……オムレツが食べたい…。
熱々の半熟をはふはふしたい。丼ものも食べたい。レストラン料理が食べたい。
ワーナーさんの料理は多少複雑そうだったけど、オムレツは知ってるのかな…。ところで米ってあんのかな…。あったら海鮮丼食べたいな…。もしなかったら作って貰ったり出来るかな…。俺、弟に作ってやったお菓子の作り方しか知らないんだけどな…。
………あっ! あのお店海老焼いてる!
********************
「実行は今夜。祭りに乗じてコージを奪い返す。俺はどこでもすぐに駆け付けられる第2の壁の上にいるから、奪還に問題が生じたり、コージの身に何かがあれば笛を吹いて呼べ」
お頭が数百人の団員の前で、厳しい顔をしながら静かに…しかし圧倒的威圧を放ちながら全員に命令を告げる。
「こっちからは絶対に手を出すな。攻撃された場合だけ、応戦しろ。死人を出すのは極力避けろ。ただし、最優先はコージを無傷で取り戻す事だ。無傷というのは心身共に、という意味だぞ」
「「「うっす!!!」」」
「コナー…分かってるな? コージと接触した際に『可能な限り最強の結界を自分とコナーに張れ』と伝えろ」
「はい!」
今夜、俺が聖騎士の宿舎に忍び込み、コージさんを連れ出す。
コージさんは強面の男が苦手なようなので、知り合いの俺が率先する事に決まったのだ。
他の団員は、邪魔をしてくる者共を近付かせないようにしたり、俺達を脱出ルートへ導く役割を担う。
そして全員が武器と笛を持ち、待機場所へ移動しようとした時…。
「あの、あなた方も天使さんを奪還するおつもりなんですか?」
若い男の声。
団員が全員一気に振り返ると、10代後半あたりの半目が特徴的な男が立っていた。
団員の多くが剣を抜き、詠唱を始めるが、お頭に制止されて留まる。
「………冒険者か?」
「はい。オーディアンギルドの者です。えっと…『死神の吐息』の方々ですよね」
「……ああ、確かに俺達は『死神の吐息』だが…。…コージを取り返しに来たのか? 生憎だが、ここにはいねぇよ」
「分かっています。…聖騎士団のもとにいる事も把握しています。……あの、協力、しませんか」
その提案に団員達が男を睨み付けるが、お頭は男を見定めるようにじぃっと見詰める。
「俺達のメリットは?」
「……ツテがあります。俺なら、疑われずに第2の壁を潜れます」
「ほぉーーー。ツテなァ…?」
「兄が、王国騎士として王城で働いています」
「………………」
何かを考えるように目を閉じたお頭。
焦る様子も怖じける様子もない男を少し不気味に思いながら、俺はソイツを観察した。
──…黒髪とは珍しい。一瞬、極東の国々出身かと思ったが、顔立ちはこの辺の人間だ。無表情で、半目。まるで能面のようだ。
「…………お前、名前は?」
「……ロイ・ビーター。A級冒険者です」
……コージさんを迎えに行くのは俺の役目だったのに、ロイという男まで付いてくる事になってしまった。
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はぁい(* ̄∇ ̄)ノ
メルです。
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