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第2章 シャクンタラー対ファウスト
第40話 異能者の蠢き⑥
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「もう嫌だ。…………死にたい。」
そうドア越しに彼女の声が聞こえた。
蚊の鳴くような小さな声だった。
本当に死んでしまいそうなくらい小さい声だったのだ。
ドアは俺が前に破壊していたが、どうやら彼女はガムテープなどを用いて補強したようでまたもや彼女の部屋は塞がってしまった。
そのドアをまた破壊することは容易だが、俺にはそれが根本的な解決に結びつくとは到底思えず、こうして今も彼女が出てきてくれることを待っている。
それは振り出しに戻ったような感覚に陥ったが、今の俺と彼女の関係を鑑みるに、いつか彼女は出てきてくれると信じていた。
しかし、彼女は一カ月経っても一向に自分の部屋から姿を現すことはなかった。
彼女はある日を境に消極的な言葉が増えてきて、いつしかそれは死を願う言葉へと変わっていった。
そうして、俺は彼女の部屋で今日も待っている。
他にどうすることも出来ないのだ。
そして、なぜにこうも彼女が追い込まれているのかもわからない以上俺には何も出来ない。
「そんなことを言わないで。俺はずっと待っているから…………。だから。」
「ごめんなさい。」
「謝らなくていい。大丈夫。ゆっくりでいいから。解決してこう。俺には何も出来ないかもしれないけれど傍にはいるから。」
「ごめんなさい。」
この繰り返しだった。
彼女は謝罪を繰り返し、俺はただひたすら彼女を元気づける。時間が止まっているような気がした。
彼女の声は何の感情も籠っていないような、無機質な音に聞こえて、それがただ俺の言葉に返事をしているだけだ。
問答を繰り返すたびに俺は彼女が分からなくなっていく。何を求めているのかも分からないのだ。
「どうして…………。何があったのかだけでも教えてほしい。」
「ごめんなさい。」
「うん。だから教えて。それだけでも聞きたいんだ。」
「…………。」
そこから何時間もまた彼女は黙ってしまった。異能が暴発して苦しんでいるのだろうか?それとも俺と話したくなくてただ黙っているのだろうか?
このドアの前では何も分からない。同じ建物内にいるのに彼女のことが分からない。
いや、俺は彼女のことなんて初めから何も分かっていなかったのかもしれない。
そう思うと拳を握り締めて声にならない声を上げて耐えることしかできない。
俺は何をしてきたのだろう、なんで彼女をもっとちゃんと見ていなかったのだろうと悔しさなのか?懺悔なのか?ふつふつと煮えたぎった感情が心に巣食う。
「私…………もう駄目なんです。私なんて駄目なんです。またここから出たら貴方を傷つけてしまう。私はこんな異能を持つにふさわしくない。こんな異能。…………。ううん。もしかして、だから私にこの異能があるのかもしれない。だってそう。私は自分の幸せだけを追いかけていたんです。ずっとそう。被害者のことなんて忘れたように和樹君と遊んで。だから私のような人間はこの異能によって苦しめられても当たり前なんです。なのにまだ抗って。本当に学ばない私。いえ。でも。だって。…………。なんで?」
香は誰と話しているのだろう?
それは俺の問いかけに答えているようで、その実、誰か別の人間と会話しているように思える。
もしくは自分自身との問答なのか。
黙ったかと思えば、また小さく話し始める。誰かと会話するように己の懺悔を続ける。
俺の問いかけも聞こえていないのか?
彼女はどうしてしまったというのだ?
ドアの前では何も分からない。
しかし、このドアを破壊することは駄目だと感じた。このドアを破壊すればすべてが終わってしまう。そんな気がしたのだ。
「香…………。香。答えられるなら答えて。何があったの?」
「何がですか?何もないですよ。何もない。みんな私にどうしてほしいですか?みんな?みんなは誰?」
「うん。聞いてるよ。なにかあったんじゃないの?」
「…………和樹君と遊びました。田村さんの家に行きました。部屋にずっといました。…………あれ、私何もしていませんね。これでは社会不適合者の上に単なるこの家のお荷物ですね。お母さんは怒るでしょうか?」
「ううん。君のお母さんは優しい人でしょ?」
やはり、彼女は田村さんの家に一人で行ったのだ。俺は何も彼女を気遣って彼女に俺も付き添うと言ったのではない。付いて行かなければならないと思ったのだ。絶対に何かが起こるから俺が付いて行かなければならないとそう考えていたのだ。
案の定、彼女は壊れた。
「そうですね。お母さんは優しい人です。そんな人を傷つけて私は生きてます。図々しい女でしょう。え?それはどうなのか?ああ。どうなのでしょう。それは。」
「香。…………。田村さんの家で何があったの?」
頭がおかしくなりそうだ。
彼女は何の脈絡もない話をずっと一人で話している。呪詛のような小さい声でぼそぼそと続く声が俺の鼓膜を揺らす。これではまるで彼女の異能に当てられた時に鳴り響く声のような。
「田村さん…………友達です。友達………。彼女。私を怒らないんです。何も言わず謝ってきたんです。なんで?どうして?おかしい人。優しい人。みんな優しい。みんな優しい。私だけ…………。田村さん。あんなことをされたのに。謝って涙ぐんで。なんで?どうして?…………。ああ。ああ。聞こえる。聞こえる。声が聞こえる。」
「なら。いいじゃないか。それに香は彼女に謝って、彼女は君を許したんだろう。ならもういいんだよ。もういいんだ。」
「何がいいんですか?」
それは冷たく他人を罵るような声だった。それがまるでドア越しに槍を心に突き刺されたような痛みを持った。彼女のこんな冷徹な声は初めて耳にする。
「なんで?だってみんな君を許したし、君に人並みの生活を送ってほしいんだ。それだけなんだ。」
「はは。人並みの生活ですか?はは。は。はは。聞こえませんか?はは。聞こえますよね?はは。私は駄目な人間だと?はは。聞こえます。聞こえますよ。」
途切れ途切れに狂人の笑い声が聞こえた。もう駄目かもしれない。俺にはどうすることもできないのかもしれない。もう手遅れなのかもしれない。
だって、さっきから聞こえるんだ。
その笑い声が頭で反響している。
彼女の呪詛のような声がずっとリフレインするように頭にこびりついて離れない。彼女の頭と俺の頭がつながっているように、声が直接的に脳に語り掛けるように響くのだ。
立っているだけでも眩暈がする。
吐き気も催し、徐々に心を蝕む。
「和樹くん…………。私、もういいかな。もう。」
彼女は最後にいつもそうつぶやく。
その日、俺は耐え切れず、この事態を収拾すべくドアを蹴破った。
そして後悔する。
そんなことをしなければよかったと。見ない方が良いこともあると。
思えば、それが最後だったのかもしれない。
彼女の部屋に足を一歩踏み入れれば、そこには今までの彼女の部屋はもうなかった。何もかもが破壊されており、服も家具も破損しており、その欠片などが部屋に散らばっていた。
その服の中には、一緒に買いに行った彼女の好きなブランドの物もあり、それらは袖口から引き裂かれ、見るも無残な姿で部屋に放置してあった。
それが俺との思い出を彼女が故意に破り捨てたと知り、酷く心は締め付けられる。
そこまで彼女は追い込まれているのかと。
そうして、そんな惨状の奥でベッドにうずくまった彼女がこちらをボーッと見ていた。
美容院で整えた髪は乱れ、ほつれて、癖がついていた。
頬もこけて、青白い肌に生気は感じられない。
服も適当に選んだ寝間着なのか、ただ他に着るものがないので着ているだけなのか、もしかするとずっと同じ服を着ているのかもしれない。そして焦点の定まらない瞳が虚ろげに揺れていた。
俺はたまらなくなって彼女に近づき抱きしめる。しかし、彼女は全くの無反応で未だ虚空を見つめている。
と思うと、俺に気が付いたのか、「ああ。ああ。」と呻き声をあげて俺の手を払いのけ、暴れて抵抗する。
そうして、また救いを求めるようにどこかを眺めていた。
「香…………香。なんで。なんでこんなことになったのかな?なんで…………。」
俺の問いに未だ無反応な彼女を見て、俺は本当にどうすればよいのか分からず涙が溢れてくる。
いつから俺は彼女の中から消えてしまったのだろう。
いつか彼女は異能に連れ去られて、俺にはもう何もできないのだろうか?
俺は彼女を異能から守るためにやってきたのではないか?…………結局何もできていなかったのか。俺は好きな人も守れないのか?
「香…………ごめん。俺がもっとなにか。もっと香を気にしていたら。香の変化に気が付いていたなら。ごめん。ごめん。」
俺はやるせなくなってただ自暴自棄に泣いて、彼女をもう一度抱きしめた。
彼女はただ俺に抱かれて、目をつむっていた。意識を手放したのだろうか?
その時、小さく声が聞こえた。
それは頭に響く声。俺の頭に直接語りかける彼女の声。
最後の声。
「かずきく…………和樹君。ごめんね。」
「香!?…………どうして。」
「ごめん。やっぱりもう駄目だよ。もう駄目。私はもう生きている価値もないの。」
「なんでそんな事言うの?なんで…………。」
「私。やっぱり駄目だったの。この声に勝てなかったの。だってそう。私、貴方を好きだって思えば思うほど、自分が許せなくなる。」
「でも…………それでも、生きてさえいれば、いつか許せる日が来るかもしれない。それまで…………。」
「ごめんね。私を好きになってくれてありがとう。私とまた会ってくれてありがとう。私に好きっていう気持ちを教えてくれてありがとう。」
「香?…………。なんで?もう終わりみたいに言うなよ。俺を…………。俺をまた一人にするのか?そうやって。みんなそうなのか?俺はまた誰も救えないのか?俺は…………。俺は…………。」
香はそうして何も言わなくなった。
彼女の閉じた眼からは一筋の涙が伝っていて、俺は終わりを実感した。
その次の日、彼女の部屋のドアはまた閉まっていた。
俺はそれを見て、西京に連絡をする。
それが最後の砦と知りながら、それが自分のプライドに反することであっても。
それでも、このままの彼女をもう見ていられなかった。
これ以上、彼女が壊れていく姿を見ていられなくなったのだ。
もう彼に頼むしか残された道がなかったのだ。
「西京。頼みがある。」
南は悲痛な面持ちで、こちらに声をかけてきた。最近の彼は何を問いかけても憔悴しており、目も合わせず空返事をするのみであった。そんな彼が俺に頼み事をしてきた。
それは想像していた通りのものだった。
それは想像していながら、想定する中で一番最悪の頼み事であった。しかし俺はそれを断れない。
本当はもしそんな状況に陥り、俺を頼ってきたならば何を諦めているのかと彼の横っ面を八倒してやろうと考えていたが、今の彼にそんなことは言えない。これはもうそこまで追い込まれているという証拠だ。
彼の生気のない瞳がそう物語っている。
もうそれしかないということでもある。
それはあの電話で分かった通り、救いはないということだ。あの精神異能には救いがないのだ。
そのまま異能者本人は自らの異能により精神を崩壊させるしかないのだ。
「本当にいいのか?」
「ああ。もう駄目だ。すまない。」
「分かった。」
俺と南は西山さんの家に向かった。
南と西山さんの部屋の前に立つと、南は無言でそのガムテープで封じられた部屋のドアを破壊した。
中にはベッドで眠っている彼女がいた。
南はずっと震え怯えて、彼女を見ると酷く顔を歪めて、何かを我慢するように拳を握り締めた。
俺はそっと近づき、手をかざす。
「承認する。」
「いや。それはもういらない。…………。でもいいのか?このまま消せば、彼女の異能に関する記憶は消える。お前の記憶と一緒にな。」
南はここに来て迷ったようにあたりを見渡し、俺の目を見据えた。
もう決心したのだ。ならば俺からは何も言えない。
「ああ。やってくれ。もう決心がついたんだ。俺には何もできなかった。俺にはもうどうすることもできない。初めからこうすればよかったんだ。なにを考えていたんだろうな?俺は。馬鹿みたいだ。」
「そうなのか?でも…………それは違うんじゃな…………。」
「やめろ。現にそうなんだ。それ以外に道がなかったんだ。俺は何もできなくて…………。それで。」
彼の心の叫びを聞いているようだった。
彼の外面は笑っていながら、言葉が泣いている。
彼の言葉は震えて、涙は枯れ果てたのか、ただ眉間に皺を寄せて、鋭くとがった瞳がなにかを否定するように俺を睨みつける。
肯定する自分の行いを悔いて、現実を受け入れて否定することがどれほど辛いことか。
今まで彼女を想って笑って、泣いて、怒って。そのすべてを否定された気分はもう想像すらできない。
したくもない。
しかし、彼はそれを耐えて、今もこうして俺の前では強気な姿勢を見せている。
もう見てはいられない笑顔を貼り付けて。
「そうか。どうする?もし見てるのが嫌なら、この子の異能の消去は俺がやっておくぞ?」
「そうか…………。助かる。」
南は西山さんに近づくと、今までの悲痛な顔がウソのように優しい朗らかな表情で彼女を見つめて、彼女の頬に触れた。
そして何かを話している。思い出でも話しているのだろうか。それは幸せそうに語り掛けるのだ。彼女の眠りを邪魔せぬように最大限絞られた声で、最後の挨拶をしたのかもしれない。
「…………ありがとう。」
それだけが最後に聞き取れた。その後、南は彼女の部屋を後にした。
それを最後に南と西山さんは別れた。
「…………。」
「本当に虫唾が走るな。なんで南が…………。くそっ。こんな異能なんて考えなければよかった。」
俺は一人愚痴ると、どうにか他に手はないのかと考えるが、結局は最後に彼女に手を翳す。
もうそれしかないと分かっているから。
「…………西京さん。」
不意に声をかけられる。彼女はベッドから起き上がると俺を見ていた。
彼女ははじめから起きていたのだ。
その瞳に涙が浮かんでおり、これから俺は彼女の異能を飛ばす決心が揺らぐ。
他に何か救いの道はないのかと思考を止めない。
しかし、彼女は俺に笑いかけた。
「ごめんなさい。」
そう言うと、彼女は涙を手で拭った。
「私、また迷惑をかけようとしている。また。」
「いいさ。南の頼みだ。俺は聞くだけだよ。」
「和樹くん…………。もっと色んな所に行きたかったねって。もっと話したかったねって。そう言ったんです。」
「そう。」
「短い期間だったけれど再会できて、また一緒にいれてよかったって。一生忘れない。一生好きだって。」
彼女の鼻声は何故かすっと耳に入ってきた。それは南が最後に残した言葉だったのだろう。彼女は一つ一つ噛み締めるようにつぶやく。何もかもが今から消え去ってしまうから。
「そうか。」
「はい。…………。和樹くんは本当に優しい人。いつも優しくてでも弱いところもあって。だからずっと見守ってあげたかったけれど。」
「うん。…………でも、その異能は治らなかったんだね?」
「はい…………。ずっと私の罪悪感は消えません。だからって西京さんに頼んで消えるのは逃げているようにも思えて…………。ならば」
彼女は俯きがちに小さくつぶやく。
「それは駄目だ。それは許さない。それは俺が許さない。俺の友が…………南が悲しむでしょ?」
「そうですね。…………これ以上、彼を傷つけることはできません。だから、彼にもう声をかけることはできませんでした。また話したら決心したのに心が揺れるんです。…………西京さん。」
「ん?」
「次にまた私は和樹くんと出会えますか?」
「それが聞きたかったの?」
「はい。私はまた和樹くんと会いたいです。どれほどの小さな確率だったとしても。やっぱり、あの人を一人にはしたくないんです。でも。次は異能なんてないほうがいいですね。絶対。そう絶対に。誰もこんな力を望んでいません。」
彼女の意思の宿った瞳が俺を貫く。
「そうだね。その通りだ。…………分かった。次は俺が。」
「ごめんなさい。分かってます。私は我儘を言っているんです。またあの闇に貴方に行ってほしいとそうお願いしているようなものです。でも、私はもう和樹くんが苦しむところは見たくないんです。」
「うん。でも俺ももう覚悟を決めるよ。南が逃げることをやめたのだから。」
「ええ。私はそのためにここにいるのかもしれません。」
「それを言うために?」
「はい。そう思えばこの異能を授かったことも納得できる気がします。」
「そうか。」
「ええ。ではもし、また会えたら。」
「ああ。その時は南をよろしく。馬鹿で弱くて、女好きだけど優しい俺の友達をよろしく。」
「はい。」
彼女は最後にお日様のような眩しい笑みを残して、気を失った。
その瞬間、精神異能は消え去った。
その瞬間、彼女の頭に木霊する声は消え去ったのだ。
そして最後に彼女の頭から南は消え去った。
そうドア越しに彼女の声が聞こえた。
蚊の鳴くような小さな声だった。
本当に死んでしまいそうなくらい小さい声だったのだ。
ドアは俺が前に破壊していたが、どうやら彼女はガムテープなどを用いて補強したようでまたもや彼女の部屋は塞がってしまった。
そのドアをまた破壊することは容易だが、俺にはそれが根本的な解決に結びつくとは到底思えず、こうして今も彼女が出てきてくれることを待っている。
それは振り出しに戻ったような感覚に陥ったが、今の俺と彼女の関係を鑑みるに、いつか彼女は出てきてくれると信じていた。
しかし、彼女は一カ月経っても一向に自分の部屋から姿を現すことはなかった。
彼女はある日を境に消極的な言葉が増えてきて、いつしかそれは死を願う言葉へと変わっていった。
そうして、俺は彼女の部屋で今日も待っている。
他にどうすることも出来ないのだ。
そして、なぜにこうも彼女が追い込まれているのかもわからない以上俺には何も出来ない。
「そんなことを言わないで。俺はずっと待っているから…………。だから。」
「ごめんなさい。」
「謝らなくていい。大丈夫。ゆっくりでいいから。解決してこう。俺には何も出来ないかもしれないけれど傍にはいるから。」
「ごめんなさい。」
この繰り返しだった。
彼女は謝罪を繰り返し、俺はただひたすら彼女を元気づける。時間が止まっているような気がした。
彼女の声は何の感情も籠っていないような、無機質な音に聞こえて、それがただ俺の言葉に返事をしているだけだ。
問答を繰り返すたびに俺は彼女が分からなくなっていく。何を求めているのかも分からないのだ。
「どうして…………。何があったのかだけでも教えてほしい。」
「ごめんなさい。」
「うん。だから教えて。それだけでも聞きたいんだ。」
「…………。」
そこから何時間もまた彼女は黙ってしまった。異能が暴発して苦しんでいるのだろうか?それとも俺と話したくなくてただ黙っているのだろうか?
このドアの前では何も分からない。同じ建物内にいるのに彼女のことが分からない。
いや、俺は彼女のことなんて初めから何も分かっていなかったのかもしれない。
そう思うと拳を握り締めて声にならない声を上げて耐えることしかできない。
俺は何をしてきたのだろう、なんで彼女をもっとちゃんと見ていなかったのだろうと悔しさなのか?懺悔なのか?ふつふつと煮えたぎった感情が心に巣食う。
「私…………もう駄目なんです。私なんて駄目なんです。またここから出たら貴方を傷つけてしまう。私はこんな異能を持つにふさわしくない。こんな異能。…………。ううん。もしかして、だから私にこの異能があるのかもしれない。だってそう。私は自分の幸せだけを追いかけていたんです。ずっとそう。被害者のことなんて忘れたように和樹君と遊んで。だから私のような人間はこの異能によって苦しめられても当たり前なんです。なのにまだ抗って。本当に学ばない私。いえ。でも。だって。…………。なんで?」
香は誰と話しているのだろう?
それは俺の問いかけに答えているようで、その実、誰か別の人間と会話しているように思える。
もしくは自分自身との問答なのか。
黙ったかと思えば、また小さく話し始める。誰かと会話するように己の懺悔を続ける。
俺の問いかけも聞こえていないのか?
彼女はどうしてしまったというのだ?
ドアの前では何も分からない。
しかし、このドアを破壊することは駄目だと感じた。このドアを破壊すればすべてが終わってしまう。そんな気がしたのだ。
「香…………。香。答えられるなら答えて。何があったの?」
「何がですか?何もないですよ。何もない。みんな私にどうしてほしいですか?みんな?みんなは誰?」
「うん。聞いてるよ。なにかあったんじゃないの?」
「…………和樹君と遊びました。田村さんの家に行きました。部屋にずっといました。…………あれ、私何もしていませんね。これでは社会不適合者の上に単なるこの家のお荷物ですね。お母さんは怒るでしょうか?」
「ううん。君のお母さんは優しい人でしょ?」
やはり、彼女は田村さんの家に一人で行ったのだ。俺は何も彼女を気遣って彼女に俺も付き添うと言ったのではない。付いて行かなければならないと思ったのだ。絶対に何かが起こるから俺が付いて行かなければならないとそう考えていたのだ。
案の定、彼女は壊れた。
「そうですね。お母さんは優しい人です。そんな人を傷つけて私は生きてます。図々しい女でしょう。え?それはどうなのか?ああ。どうなのでしょう。それは。」
「香。…………。田村さんの家で何があったの?」
頭がおかしくなりそうだ。
彼女は何の脈絡もない話をずっと一人で話している。呪詛のような小さい声でぼそぼそと続く声が俺の鼓膜を揺らす。これではまるで彼女の異能に当てられた時に鳴り響く声のような。
「田村さん…………友達です。友達………。彼女。私を怒らないんです。何も言わず謝ってきたんです。なんで?どうして?おかしい人。優しい人。みんな優しい。みんな優しい。私だけ…………。田村さん。あんなことをされたのに。謝って涙ぐんで。なんで?どうして?…………。ああ。ああ。聞こえる。聞こえる。声が聞こえる。」
「なら。いいじゃないか。それに香は彼女に謝って、彼女は君を許したんだろう。ならもういいんだよ。もういいんだ。」
「何がいいんですか?」
それは冷たく他人を罵るような声だった。それがまるでドア越しに槍を心に突き刺されたような痛みを持った。彼女のこんな冷徹な声は初めて耳にする。
「なんで?だってみんな君を許したし、君に人並みの生活を送ってほしいんだ。それだけなんだ。」
「はは。人並みの生活ですか?はは。は。はは。聞こえませんか?はは。聞こえますよね?はは。私は駄目な人間だと?はは。聞こえます。聞こえますよ。」
途切れ途切れに狂人の笑い声が聞こえた。もう駄目かもしれない。俺にはどうすることもできないのかもしれない。もう手遅れなのかもしれない。
だって、さっきから聞こえるんだ。
その笑い声が頭で反響している。
彼女の呪詛のような声がずっとリフレインするように頭にこびりついて離れない。彼女の頭と俺の頭がつながっているように、声が直接的に脳に語り掛けるように響くのだ。
立っているだけでも眩暈がする。
吐き気も催し、徐々に心を蝕む。
「和樹くん…………。私、もういいかな。もう。」
彼女は最後にいつもそうつぶやく。
その日、俺は耐え切れず、この事態を収拾すべくドアを蹴破った。
そして後悔する。
そんなことをしなければよかったと。見ない方が良いこともあると。
思えば、それが最後だったのかもしれない。
彼女の部屋に足を一歩踏み入れれば、そこには今までの彼女の部屋はもうなかった。何もかもが破壊されており、服も家具も破損しており、その欠片などが部屋に散らばっていた。
その服の中には、一緒に買いに行った彼女の好きなブランドの物もあり、それらは袖口から引き裂かれ、見るも無残な姿で部屋に放置してあった。
それが俺との思い出を彼女が故意に破り捨てたと知り、酷く心は締め付けられる。
そこまで彼女は追い込まれているのかと。
そうして、そんな惨状の奥でベッドにうずくまった彼女がこちらをボーッと見ていた。
美容院で整えた髪は乱れ、ほつれて、癖がついていた。
頬もこけて、青白い肌に生気は感じられない。
服も適当に選んだ寝間着なのか、ただ他に着るものがないので着ているだけなのか、もしかするとずっと同じ服を着ているのかもしれない。そして焦点の定まらない瞳が虚ろげに揺れていた。
俺はたまらなくなって彼女に近づき抱きしめる。しかし、彼女は全くの無反応で未だ虚空を見つめている。
と思うと、俺に気が付いたのか、「ああ。ああ。」と呻き声をあげて俺の手を払いのけ、暴れて抵抗する。
そうして、また救いを求めるようにどこかを眺めていた。
「香…………香。なんで。なんでこんなことになったのかな?なんで…………。」
俺の問いに未だ無反応な彼女を見て、俺は本当にどうすればよいのか分からず涙が溢れてくる。
いつから俺は彼女の中から消えてしまったのだろう。
いつか彼女は異能に連れ去られて、俺にはもう何もできないのだろうか?
俺は彼女を異能から守るためにやってきたのではないか?…………結局何もできていなかったのか。俺は好きな人も守れないのか?
「香…………ごめん。俺がもっとなにか。もっと香を気にしていたら。香の変化に気が付いていたなら。ごめん。ごめん。」
俺はやるせなくなってただ自暴自棄に泣いて、彼女をもう一度抱きしめた。
彼女はただ俺に抱かれて、目をつむっていた。意識を手放したのだろうか?
その時、小さく声が聞こえた。
それは頭に響く声。俺の頭に直接語りかける彼女の声。
最後の声。
「かずきく…………和樹君。ごめんね。」
「香!?…………どうして。」
「ごめん。やっぱりもう駄目だよ。もう駄目。私はもう生きている価値もないの。」
「なんでそんな事言うの?なんで…………。」
「私。やっぱり駄目だったの。この声に勝てなかったの。だってそう。私、貴方を好きだって思えば思うほど、自分が許せなくなる。」
「でも…………それでも、生きてさえいれば、いつか許せる日が来るかもしれない。それまで…………。」
「ごめんね。私を好きになってくれてありがとう。私とまた会ってくれてありがとう。私に好きっていう気持ちを教えてくれてありがとう。」
「香?…………。なんで?もう終わりみたいに言うなよ。俺を…………。俺をまた一人にするのか?そうやって。みんなそうなのか?俺はまた誰も救えないのか?俺は…………。俺は…………。」
香はそうして何も言わなくなった。
彼女の閉じた眼からは一筋の涙が伝っていて、俺は終わりを実感した。
その次の日、彼女の部屋のドアはまた閉まっていた。
俺はそれを見て、西京に連絡をする。
それが最後の砦と知りながら、それが自分のプライドに反することであっても。
それでも、このままの彼女をもう見ていられなかった。
これ以上、彼女が壊れていく姿を見ていられなくなったのだ。
もう彼に頼むしか残された道がなかったのだ。
「西京。頼みがある。」
南は悲痛な面持ちで、こちらに声をかけてきた。最近の彼は何を問いかけても憔悴しており、目も合わせず空返事をするのみであった。そんな彼が俺に頼み事をしてきた。
それは想像していた通りのものだった。
それは想像していながら、想定する中で一番最悪の頼み事であった。しかし俺はそれを断れない。
本当はもしそんな状況に陥り、俺を頼ってきたならば何を諦めているのかと彼の横っ面を八倒してやろうと考えていたが、今の彼にそんなことは言えない。これはもうそこまで追い込まれているという証拠だ。
彼の生気のない瞳がそう物語っている。
もうそれしかないということでもある。
それはあの電話で分かった通り、救いはないということだ。あの精神異能には救いがないのだ。
そのまま異能者本人は自らの異能により精神を崩壊させるしかないのだ。
「本当にいいのか?」
「ああ。もう駄目だ。すまない。」
「分かった。」
俺と南は西山さんの家に向かった。
南と西山さんの部屋の前に立つと、南は無言でそのガムテープで封じられた部屋のドアを破壊した。
中にはベッドで眠っている彼女がいた。
南はずっと震え怯えて、彼女を見ると酷く顔を歪めて、何かを我慢するように拳を握り締めた。
俺はそっと近づき、手をかざす。
「承認する。」
「いや。それはもういらない。…………。でもいいのか?このまま消せば、彼女の異能に関する記憶は消える。お前の記憶と一緒にな。」
南はここに来て迷ったようにあたりを見渡し、俺の目を見据えた。
もう決心したのだ。ならば俺からは何も言えない。
「ああ。やってくれ。もう決心がついたんだ。俺には何もできなかった。俺にはもうどうすることもできない。初めからこうすればよかったんだ。なにを考えていたんだろうな?俺は。馬鹿みたいだ。」
「そうなのか?でも…………それは違うんじゃな…………。」
「やめろ。現にそうなんだ。それ以外に道がなかったんだ。俺は何もできなくて…………。それで。」
彼の心の叫びを聞いているようだった。
彼の外面は笑っていながら、言葉が泣いている。
彼の言葉は震えて、涙は枯れ果てたのか、ただ眉間に皺を寄せて、鋭くとがった瞳がなにかを否定するように俺を睨みつける。
肯定する自分の行いを悔いて、現実を受け入れて否定することがどれほど辛いことか。
今まで彼女を想って笑って、泣いて、怒って。そのすべてを否定された気分はもう想像すらできない。
したくもない。
しかし、彼はそれを耐えて、今もこうして俺の前では強気な姿勢を見せている。
もう見てはいられない笑顔を貼り付けて。
「そうか。どうする?もし見てるのが嫌なら、この子の異能の消去は俺がやっておくぞ?」
「そうか…………。助かる。」
南は西山さんに近づくと、今までの悲痛な顔がウソのように優しい朗らかな表情で彼女を見つめて、彼女の頬に触れた。
そして何かを話している。思い出でも話しているのだろうか。それは幸せそうに語り掛けるのだ。彼女の眠りを邪魔せぬように最大限絞られた声で、最後の挨拶をしたのかもしれない。
「…………ありがとう。」
それだけが最後に聞き取れた。その後、南は彼女の部屋を後にした。
それを最後に南と西山さんは別れた。
「…………。」
「本当に虫唾が走るな。なんで南が…………。くそっ。こんな異能なんて考えなければよかった。」
俺は一人愚痴ると、どうにか他に手はないのかと考えるが、結局は最後に彼女に手を翳す。
もうそれしかないと分かっているから。
「…………西京さん。」
不意に声をかけられる。彼女はベッドから起き上がると俺を見ていた。
彼女ははじめから起きていたのだ。
その瞳に涙が浮かんでおり、これから俺は彼女の異能を飛ばす決心が揺らぐ。
他に何か救いの道はないのかと思考を止めない。
しかし、彼女は俺に笑いかけた。
「ごめんなさい。」
そう言うと、彼女は涙を手で拭った。
「私、また迷惑をかけようとしている。また。」
「いいさ。南の頼みだ。俺は聞くだけだよ。」
「和樹くん…………。もっと色んな所に行きたかったねって。もっと話したかったねって。そう言ったんです。」
「そう。」
「短い期間だったけれど再会できて、また一緒にいれてよかったって。一生忘れない。一生好きだって。」
彼女の鼻声は何故かすっと耳に入ってきた。それは南が最後に残した言葉だったのだろう。彼女は一つ一つ噛み締めるようにつぶやく。何もかもが今から消え去ってしまうから。
「そうか。」
「はい。…………。和樹くんは本当に優しい人。いつも優しくてでも弱いところもあって。だからずっと見守ってあげたかったけれど。」
「うん。…………でも、その異能は治らなかったんだね?」
「はい…………。ずっと私の罪悪感は消えません。だからって西京さんに頼んで消えるのは逃げているようにも思えて…………。ならば」
彼女は俯きがちに小さくつぶやく。
「それは駄目だ。それは許さない。それは俺が許さない。俺の友が…………南が悲しむでしょ?」
「そうですね。…………これ以上、彼を傷つけることはできません。だから、彼にもう声をかけることはできませんでした。また話したら決心したのに心が揺れるんです。…………西京さん。」
「ん?」
「次にまた私は和樹くんと出会えますか?」
「それが聞きたかったの?」
「はい。私はまた和樹くんと会いたいです。どれほどの小さな確率だったとしても。やっぱり、あの人を一人にはしたくないんです。でも。次は異能なんてないほうがいいですね。絶対。そう絶対に。誰もこんな力を望んでいません。」
彼女の意思の宿った瞳が俺を貫く。
「そうだね。その通りだ。…………分かった。次は俺が。」
「ごめんなさい。分かってます。私は我儘を言っているんです。またあの闇に貴方に行ってほしいとそうお願いしているようなものです。でも、私はもう和樹くんが苦しむところは見たくないんです。」
「うん。でも俺ももう覚悟を決めるよ。南が逃げることをやめたのだから。」
「ええ。私はそのためにここにいるのかもしれません。」
「それを言うために?」
「はい。そう思えばこの異能を授かったことも納得できる気がします。」
「そうか。」
「ええ。ではもし、また会えたら。」
「ああ。その時は南をよろしく。馬鹿で弱くて、女好きだけど優しい俺の友達をよろしく。」
「はい。」
彼女は最後にお日様のような眩しい笑みを残して、気を失った。
その瞬間、精神異能は消え去った。
その瞬間、彼女の頭に木霊する声は消え去ったのだ。
そして最後に彼女の頭から南は消え去った。
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